【ぼちぼちクライミング&読書】

-クライミング&読書覚書rapunzel別館-

「失恋延長戦」山本幸久

2010年03月13日 20時39分44秒 | 読書(小説/日本)

「失恋延長戦」山本幸久(祥伝社)

先日、山本幸久さんの新刊を読んだばかりだけど、早くも次の新刊が出版された。
さっそく読んでみた。
今までにない内容。
主人公は真由子、16歳から21歳までの成長を描いている。
他の作家で言えば、「永遠の出口」(森絵都)、「グラデーション」(永井するみ)に相当する作品。
佐藤多佳子さんだったら、「黄色い目の魚」か?
でも、「永遠の出口」、とかだったら、自伝的な作品、と言ってもいいだろうけど、この作品、山本幸久さんだから。
ここまで思春期の女の子の心理を描写していいの、って思った。
(見事すぎる)
最初に書いたけど、今までにない雰囲気。
もうほとんど、「夜の朝顔」「檸檬のころ」、ですよ。
まったくもって、豊島ミホさんの世界。
もし、表紙の著者名を豊島ミホとしたら、信じたかも。
もう、お見事、としか言いようがない。

PS
最後の章は、ほとんど「反則」でしょう。
もう、涙、涙。


上記作品、どれも名作、ハズレなし。


まさか、山本幸久さんが豊島ミホさんに変異するとは思わなかった。
青春小説の白眉。

私は、豊島ミホ作品の中で、これが一番好き。


「『怖い絵』で人間を読む」中野京子

2010年03月13日 11時49分08秒 | 読書(ノンフィクション)

「『怖い絵』で人間を読む」中野京子(日本放送出版協会)

皆さん、『NHK知る楽』観てますか?
これは、その放送のテキスト。
番組は時間に制限があるので、一部しか取り上げていない。
(その代わり、大画面で画像が映し出されて迫力だけど)
こちらのテキストを読むと、さらに楽しめる。
さらにもの足りない方は、単行本「怖い絵」(1)~(3)や、
「危険な世界史」「ハプスブルク家12の物語」を読むとよいでしょう。
以下、私が興味深く感じたことを書いてみる。
第五章「見たこともない風景」・・・風景画の誕生について書かれている。

西洋絵画で純粋に「風景」が主題となるのは、かなり時代が下がってからのことです。中世の半ばすぎまで、人々にとって圧倒的にリアリティがあったのは、神や悪魔の存在でした。しかも当時の教会は、自然を、やがては消滅する物質と見做し、永遠不滅の神に対置させます。そのため人々は、風景を愛でることと肉の快楽に耽ることを似た行為のように思い、罪悪感すら持たされました。
中世後期になり、自然もまた神の創造物であるとの認識が生まれて、やっと目の前の風景が再発見されます。次第に絵の中に精密な風景が登場してきますが、とはいえそれはあくまでも背景としての自然でした。本当の意味で風景が主役になるのはルネサンス以降、さらに絵画の一分野として市民権を得るのは、もっと後の十六世紀後半になってからです。
(中略)
しかしどちらにせよ、十七世紀のアカデミーは「風景画」に冷淡でした。
ジャンルのヒエラルキーの頂点には、神話や宗教を含む「歴史画」が不動のものとしてあり、「風景画」は「静物画」や「風俗画」とともに劣った存在と見做されたのです。

以上、長い引用でしたが、どう感じました。
私はクライマーだけど、元・山ヤなので、山のことを考えた。
どうして、日本人は山に神が住むと考え、西洋人は悪魔が住むと考えたのか?
(ブロッケンの例を考えると分かりやすい。日本人は阿弥陀如来が姿を現したと考え、西洋人は妖怪あるいは怪物と考えた)
また、どうして西洋登山史の始まりは遅かったのか?
(ヨーロッパ・アルプスの最高峰モン・ブランが初登頂されたのは1786年、マッターホルンの初登頂は1865年)
こういった疑問に答えてくれる文章、と私は考える。

でも、モーセは十戒をシナイ山で神から授かっている。
(このあたりの矛盾、どなたか教えて)
また、紀元前218年、ハンニバル将軍は兵と象を率いてアルプス・ピレネー山脈を越えている、ってのも興味深い。
私の山知識レベルは低い・・・山関連の読書も必要ですね。
(気が向いたら、ぼちぼち読んでみようか)



さて、山の話はここまで。
次に、私が「おっ」、と思ったのは、アンヌ・ドートリッシュがハプスブルク家出身、と知ったこと。
恥ずかしながら、私はアンヌ王妃は純粋なスペイン人、と思っていた。
(これで、「三銃士」ファン、と言えるだろうか?)
私のイメージでは、アンヌ王妃、黒髪だった。
違っていたんですね。
(ネットで調べたら、Anne d'Autriche=オーストリアのアンヌと言う意味だった)ファイル:PrincessAnne1.jpg


最後に、興味深かったことをもうひとつ。
TV画面を見ていて、プラド美術館で「ラス・メニーナス」の前に人だかりがしているシーン。
「ラス・メニーナス」は門外不出、とのこと。
(そうなのか!)
もし、スペインに行くことがあれば、バルセロナじゃなく、マドリッド経由にして、プラド美術館を訪問しようかな、と思った。
以上、とりとめもない覚書でスマン。