「教科書に載ってないUSA語録」町山智浩
流行している言葉、話題になった語彙からアメリカの現状をレポート。
415ページの分厚い本だけど、最後まで楽しく読めた。
その辺の大学教授や新聞記者より、よっぽどアメリカの実情をとらえている、と思う。
P44
フレネミーとはFriendとEnemyの合成語で、「友達ぶった敵」という意味。アメリカでは50年代からある言葉らしいが、最近TVドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ』で使われ流行した。
P179
マリスト大学が1020人のアメリカ人にアンケートして集計した「イラっとさせられる言葉」の第1位はWhatever(何でも)だった。
WhateverはWhat(何)の強調。「たとえ何が起きても君を守る」とか「あなたの作る料理なら何でも好き」みたいなポジティブな「何でも」もあるが、イラつくのは投げやりな「何でも」。
「君のためを思って言ってるんだよ」という彼氏に対して、彼女はそっぽを向いて「Whatever(何でもいいわ)」と言い捨てる。つまり「どうでもいい」「勝手にすれば」。これをWhatever!と強く言ったら完全にキレている。女性は「ファック・ユー」の代わりにこれを使う。
ちなみに、2位から5位の“イラつく言葉”は次のとおり。(P176-178)
2位・・・Like(みたいな~)(えーと)
3位・・・You know what I mean?(言ってることわかる?)
4位・・・Actually(実際)
5位・・・To tell the truth(実を言うと)
P186
「血の中傷(Blood Libel)」は、かつてヨーロッパで流布した「ユダヤ人は祭りで食べるパンに、殺害したキリスト教徒の血を混ぜている」というデマを指す言葉で、ユダヤ人迫害を助長した。
・・・ペイリンはこの言葉を不用意に使用したそうだ。
この本には、ペイリンが数多く取り上げられるが、もうボロクソ。
本人が悪いというか、自爆のタネを自分で蒔いているのだけれど。
P226
南北戦争観の対立は、大東亜戦争をアジアの開放と見るか侵略と見るかの対立に置き換えるとわかりやすいだろう。日本も南部も「合衆国」に徹底的に焼き尽くされた。150年経っても南部は恨みを忘れない。日本は?
P296-298
スティーブ・ジョブズについて書かれている・・・印象が180度変わる
英デイリー・メイル紙が中国のiphone工場に潜入取材した記事は衝撃だった。
24時間年中無休の工場で16歳以下の少年少女たちが1日15時間働かされている。2010年に労働者が10人以上自殺し、アップルは労働環境改善に乗り出したが、労働環境基準に達している工場は半分にすぎない。
ジョブズはアメリカの従業員に対しても容赦なかった。フォーチュン誌によると、ジョブズは、失敗したクラウドサービスMobileMeの担当者を他の社員たちの前で、30分にわたって徹底的に罵倒してから更迭した。彼はコントロール・フリークだった。何でも自分の思いどおりに支配したい。だからアップルの互換機を他社に作らせない。関連商品も自分の許可なしに売らせない。
【ネット上の紹介】
連載中の人気コラム「言霊USA」、待望のペーパーバック化です。新聞、テレビ、ウェブでは分からない超大国アメリカの素顔を、現地在住の著者がレポートしています。登場するのは、イスラム教徒扱いをされるオバマ、トンデモ発言でおなじみのペイリン、上場が落胆に終わったフェイスブック、過激なティーパーティ勢力、ウォール街のプレイヤー、民主主義を主張するレディ・ガガ、ギャル語を話すアメリカの女子高生など。本書のポイントは、「日本人の知らないアメリカ語」を引きつつ解説しているところです。Frenemy (フレネミー)=友だちぶった敵、Chinamerica (チナメリカ)=中国とアメリカの運命共同体、Greater Fool Theory(グレーター・フール・セオリー)=もっとバカがいる理論、Nothing,,, (ナッシング)=別に、、など。アメリカ国内を騒がせたこれらの名言、失言、流行語を通して、政治や経済の仕組みから、キリスト教原理主義、ネット業界の最新動向、陰謀論の真偽、今のアメリカを知ることができます。ちなみに映画監督クリンスト・イーストウッドの「アメリカは今、ハーフタイムなんだ」という言葉に、自信を失ったアメリカ国民はみな涙を流したとか。連載でタッグを組んでいる漫画家・澤井健さんによる、ギャグセンスあふれる爆笑イラストも収録しました。まさに町山ワールド全開!一級のアメリカ批評本です。