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「誕生日を知らない女の子 虐待-その後の子どもたち」黒川祥子

2014年05月28日 20時41分32秒 | 読書(ノンフィクション)

誕生日を知らない女の子―虐待‐その後の子どもたち
「誕生日を知らない女の子 虐待-その後の子どもたち」黒川祥子

すさまじい内容である。
世の中に、これほど酷い親がいるのか。
でも、現実は枚挙にいとまがない。
虐待を受けた子どもは保護される。
養護施設に入ったり、里子になったり。
それで、一安心なのか?

P24著者の言葉
「殺されずにすんで」児童相談所によって保護された子どもたちは、それで一件落着なのか。そうではなかった。
ならば、保護された膨大な子どもたちの「その後」に何が待っているのか。そこに、きちんと光をあてなければいけないのではないか。何よりも、まずはこの目でありのままを見ていきたい。


P38里子を引き取って育てている里親の言葉
「私は里子を預かるまで、子どもは愛情さえあればスクスク育つものだと思っていました。実子はそうやって育ちましたから。三歳の男の子が里子に来てから、妻は一年間の記憶がないと言います。私もまだつらくて話せない。ひょっとしたら殺してしまうかもと思ったこともあります。正直、子どもへの怒りが湧くこともありました」

P51保護されて里子になったみゆちゃんの夢
「みゆちゃん、怖い夢を見たの?」
「声がするの。お母さんのコワイ声がするの。『おまえなんか、連れて行ってやる。こんなところで幸せになったらだめだ。おまえなんか、不幸にしてやる。おまえみたいなやつはだめだ。おまえなんか、ぶっ殺す』って・・・・・・」
それは、実母の声だった。

P116
2008年2月1日に行われた「児童養護施設入所児童等調査結果」によれば、養護施設の場合、両親の虐待・酷使が14.4%、両親の放任・怠惰が7.6%、両親の行方不明が6.9%と、それぞれ個別にさまざまな事情があってのことだろうが、数字だけを見ていると親の身勝手さに眼を覆いたくなる。

P213
一般に「親の、子への愛は無償だ」と言われているが、虐待を見ている限り、それは逆だとしか思えない。子の、親への愛こそが無償なのだ。

P231虐待を受けた子どもが、年齢を重ねて母親になった場合はどうか?
それにしても、わが子に愛情を注ぎ、普通の親と同じように育てようとすればするほど、自分の過去と向き合わざるを得ないということを初めて知った。「してもらえなかった自分」の悔しさや悲しみが子どもの成長の節目ごとに湧きあがってくるのが、被虐待児にとっての子育てなのか。だとすれば、それは何と困難なことだろう。

児童問題に興味がある方に、一読をお薦めする。
2013年第11回開高健ノンフィクション賞受賞作である。

【おまけ】
今年放映された日本テレビのドラマ『明日、ママがいない』について、黒川祥子さんが、次のようにコメントされている。(押さえておきたい箇所を、私が抜粋した)

何らかの問題によって親から離れて暮らしている子どもは、深い喪失感を持っています。「無条件に愛してほしい」という子どもなら当然の願いが叶えられていないからです。その喪失感や、その喪失感を周囲の大人がどう受けとめていくかについてを描いてほしい。そこが一番大切なポイントだからです。主人公がヒーローのように周囲の子を助けて、勧善懲悪のドラマにするのではなくて。芦田愛菜さんが演じている子こそ、自分の心にふたをしてしまっている子です。「つらい環境でも、子どもたちは健気に生きています」だけで終わってはダメだと思います。


施設出身者の子たちに、「このドラマについてどう思う?」と聞いたら、「フィクションだと思った」と言っていました。その理由を聞いたら、「子どもたちの関係がフラットだから」と。子どもたちの間に階層があって、「ボス」からいじめられることもある。芦田愛菜さんが演じる主人公と新入りの女の子がすぐに仲間になることこそ嘘くさいと。出身者だからこその言葉だと思いました。 

全文は次のとおり
→虐待受けた子どもたちを取材した著者が語る「明日ママ ...

【ネット上の紹介】
心の傷と闘う子どもたちの現実と、再生への希望。“お化けの声”が聞こえてくる美由。「カーテンのお部屋」に何時間も引きこもる雅人。家族を知らず、周囲はすべて敵だった拓海。どんなに傷ついても、実母のもとに帰りたいと願う明日香。「子どもを殺してしまうかもしれない」と虐待の連鎖に苦しむ沙織。そして、彼らに寄り添い、再生へと導く医師や里親たち。家族とは何か!?生きるとは何か!?人間の可能性を見つめた感動の記録。2013年第11回開高健ノンフィクション賞受賞作!
[目次]
第1章 美由―壁になっていた女の子
第2章 雅人―カーテンのお部屋
第3章 拓海―「大人になるって、つらいことだろう」
第4章 明日香―「奴隷でもいいから、帰りたい」
第5章 沙織―「無条件に愛せますか」