「リアスの子」熊谷達也
「七夕しぐれ」「モラトリアムな季節」に続く、3部作最終巻。
大学卒業後、教師となった和也を描く。
和也は、故郷の宮城県北部の港町の中学校で数学を教えている。
著者は、元教師だけあって、教室の様子、生徒への対応、教師集団の描かれ方がリアル。
P102
教育現場で不登校の問題が頻繁に取り上げられるようになってきたのは、ちょうど昭和から平成に年号が変わったあたりからだ。ただし当初は「不登校」という名称よりも、「登校拒否」という呼び方の方が一般的だったように思う。いずれにしても、無理やりにでも学校に来させる、という指導から、場合によっては来ないのもあり、あるいは、無理に登校刺激を与えてはいけない、という方向へと教育現場が舵を切り始めた時期でもある。
P201
子どもの世界は大人の世界とは違う力学で動いている。けれど、断絶しているわけではなく、両者は緩やかに連続している。どうとでも解釈できるような、ある意味逃げの言い方かもしれないけれど、それが真実に一番近いのではないかと思う。
そのふたつの世界を行ったり来たりすることを必然的に課されているのが学校の先生、という存在なのだろう。
本作でもナオミが登場。
ここまでくると、偶然が重なりすぎる。
著者の『サービス』ではないか、と思う。
(登場させてくれて嬉しいけど)
P254で、ナオミ先生の女生徒分析は鋭い・・・男性に媚びるタイプは、同性に嫌われる?
「(前略)女子の世界って、そういうところも互いに了解した上で力関係ができてグループ化するので怖いんですけど、誰から見ても明らかに媚びているよねえ、っていうくらい露骨な子もいれば、本人は意識してこびを売っているわけじゃないにしても、そんなオーラというか信号みたいなものを出している子もいます」
これにて3部作終了。
おもしろかった!
【ネット上の紹介】
大学卒業後、教師となった和也は埼玉の中学校をへて、故郷の宮城県に戻ってきた。都会とは異なる港町・仙河海市の中学校に赴任。のどかな雰囲気と濃密な人間関係にも慣れたころ、3年生の担任となる。新しいクラスには、転入生がいるのだが、その生徒・早坂希は、何かしら問題を抱えているようだった。そこで、陸上部の顧問でもある和也は教え子たちに一役買ってもらおうとするが…。かつて気仙沼の中学校で教壇に立っていた著者が、教師と生徒における「信頼」という小さな積み重ねの大切さを丹念に描く。