「天使のナイフ」薬丸岳
少年犯罪がテーマ。
妻を生後五ヵ月の娘の目の前で殺された主人公・桧山。
ところが、犯人が中学性だったため、罪に問われなかった。
連日のマスコミの取材攻勢。
犯人の人権は守られ、被害者の「人権」はないのか?
心が疲弊していき、人前で言ってしまう・・・「犯人を殺してやりたい」、と。
主人公・桧山と刑事・三枝の会話。
P51
「桧山さんは刑法41条というのをご存じでしょうか」
三枝が切り出した。
「知りません」
「刑法41条には14歳に満たない者の行為は、罰しない、とあります」
桧山は暗澹たる思いで三枝を凝視した。
「14歳未満の少年は刑事責任能力がないんです。刑罰法令に触れる行為をしても犯罪を行ったとはいえないので、触法少年と呼ばれて保護手続きの対象となります」
P60
罪を犯した子どもたちが立ち直っていくことは必要なことだとは思うが、その理念は、犯罪に遭った被害者やその家族の慟哭を踏みつけた上で成り立っているのだ。
この箇所だけを読むと被害者側から書かれているように思うかもしれない。
実際は、加害者、被害者の両面から描かれる。
故に、両者の感情を追体験できる仕組み。
何重にも伏線が張られ、「そうだったのか!」の連続。
真犯人が分かった、と思ったら、さらに真犯人が!
非常に練られたプロット。
見事である。
【参考リンク・・・少年事件、少年犯罪】
・・・「少年事件」
「心にナイフをしのばせて」奥野修司
「ユニット」佐々木譲
「殺人症候群」貫井徳郎
【ネット上の紹介】
生後五ヵ月の娘の目の前で妻は殺された。だが、犯行に及んだ三人は、十三歳の少年だったため、罪に問われることはなかった。四年後、犯人の一人が殺され、檜山貴志は疑惑の人となる。「殺してやりたかった。でも俺は殺していない」。裁かれなかった真実と必死に向き合う男を描いた、第51回江戸川乱歩賞受賞作。