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「世界の果てのこどもたち」中脇初枝

2015年07月27日 21時24分34秒 | 読書(昭和史/平成史)


「世界の果てのこどもたち」中脇初枝

昭和18年9月、珠子は高知県から両親とその年に生まれた妹・光子と4人で満洲にやってきた。
満州国吉林省白林村大樺樹屯の温日本頭。
珠子は朝鮮人の美子(ミジャ)と、恵まれた家庭で育った茉莉と出会う。
日々の遊びの中で親しくなっていく3人だが、戦争の激化とともにバラバラになる。
やがて終戦を迎えるが、珠子は両親とはぐれ中国人に売られてしまう。
敗戦前に帰っていた美子と茉莉だが、それはそれで苦難の道の始まりであった。

中脇初枝版「昭和史」である。
私は、『きみはいい子』に匹敵する作品、と思う。
3人が出会ったあたりから、俄然面白くなる。
週末出かける予定をキャンセルして読み続けた。
最後まで一気読み。
お薦めの作品です。

P86-87
 美子は二人が食べるのをうれしそうに見ていたが、不意に言った。
「あたしね、ほんまの名前は美子やないがで」
 美子は故郷の村で初めて学校に行った日のことを思いだしていた。
「ミジャっていうが」
 美子は両脇にすわる二人の友達を見た。
「富田でものうてね、ほんまはキムミジャっていうが」
 珠子と茉莉は美子をみつめた。
「別にかまんがやけど、なんか、言うてみたかったけん」
 美子ははずかしそうにわらい、自分の膝を両手で抱いた。
「ミジャっていうがや」
 珠子はつぶやいた。
「知らんかった」

【蛇足】
最後の方が駆け足になったのが残念。
上中下の3巻くらいの長さにしてじっくり描いて欲しかった。

【参考作品】
ポプラ文庫<br> きみはいい子  

【ネット上の紹介】
戦時中、高知県から親に連れられて満洲にやってきた珠子。言葉も通じない場所での新しい生活に馴染んでいく中、彼女は朝鮮人の美子(ミジャ)と、恵まれた家庭で育った茉莉と出会う。お互いが何人なのかも知らなかった幼い三人は、あることをきっかけに友情で結ばれる。しかし終戦が訪れ、珠子は中国戦争孤児になってしまう。美子は日本で差別を受け、茉莉は横浜の空襲で家族を失い、三人は別々の人生を歩むことになった。あの戦争は、誰のためのものだったのだろうか。『きみはいい子』『わたしをみつけて』で多くの読者に感動を与えた著者が、二十年以上も暖めてきた、新たな代表作。