【ぼちぼちクライミング&読書】

-クライミング&読書覚書rapunzel別館-

「教誨師」堀川惠子

2016年10月21日 20時12分37秒 | 読書(現代事情)


「教誨師」堀川惠子

2014年 第1回 城山三郎賞受賞
教誨師とは、受刑者の精神的救済をする者のこと。
教誨師・渡邉普相の人生を辿りながら、教誨の問題を考える。
彼らは、いったい「改心」するのか?
多くの死刑囚も登場する。
読み進めるに従い、死刑問題を考えることになる。
非常に深い内容の作品だ。 

P75
人間にとって、自分が満たされ幸せと感じることが出来るかどうかを測る方法に、分母は「欲望の大きさ」で、分子は「今、自分が持っている量」という話がある。

P84
死刑囚を見ていると、事件が悲惨であればあるほど、その犯人には気が小さい者が多いのは間違いないように渡邉には思えた。彼らは「殺す」ためよりもむしろ、「逃げる」ために人を殺める。

P91
病人には医者がいる。医者が病状を診断し治療してくれる。犯罪者にあるのは法律だ。しかし法律は裁くだけで後々の面倒は見てくれない。

P145
渡邉は、死刑囚の多くが殺人を犯す前に自殺を試みているのは本当に共通しているなと思った。

P266
教誨の「誨」に、「戒」という字は使わない。それは、彼らを「戒める」仕事ではないからだ。「誨」という字には、ねんごろに教えるという意味が込められている。

【ネット上の紹介】
一四歳の夏、渡邉普相は広島の爆心地のすぐそばにいた。そこで見たものは、戦争という人間の愚かさが作りだした無用の「死」だった。後年、教誨師となってから見たものは、人間が法律という道具で作りだした罰としての「死」であった。ふたつの死とともに歩んだ僧侶の人生が語りかけること。
[目次]
序章 坂道
第1章 教誨師への道
第2章 ある日の教誨室
第3章 生と死の狭間
第4章 予兆
第5章 娑婆の縁つきて
第6章 倶会一処
終章 四十九日の雪