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「たてもの怪談」加門七海

2016年11月24日 21時03分17秒 | 読書(エッセイ&コラム)


「たてもの怪談」加門七海

七海さんと言うと若竹七海さんを思い出すかもしれない。
若竹七海さんはミステリ作家。(コージー・ミステリの印象が強い)
一方、加門七海さんは、俗に言うオカルト作家。
民俗学・風水に造詣が深く、そっちの感度も良く、心霊体験豊富。
今回読んだのは、建物にまつわる怪談話。

ある日、著者は、「引っ越しをしよう」と決意する。
そこから物件探しが始まる。
普通、間取り、便利さ、金額を考えて、絞り込む。
しかし、そこは加門七海さん、単純にはいかない。
家相、風水、歴史、治安、霊能者への問い合わせ、氏神様、方角。
そして、やっと住むべきマンションを決定。
次にするのは、新居の清祓。
氏神様の宮司に来て頂く。
こうしてやっと、引越完了。
だがしかし、超常現象続出、である。
普通の方なら、耐えられないでしょう。

P94
自慢ではないが、どんな場所でも、私が一定期間逗留して、何も現れなかったことは、今まで一度たりとない。

P244
今の家に越してから、私はモノノケ対策として箒を買った。
箒というのは、本来、女性が用いる呪具で、神の宿るものでもあるからだ。
実際、正倉院には孝謙天皇が用いたという「玉箒(たまははき)」が収められている。これは正月三日、子の日の儀式において、蚕部屋を清めるために用いられた。
埃だけではなく、罪・穢れ・禍までも、箒は掃き清めるとされたのだ。
最近ではあまり見かけないが、「高砂」で描かれる媼が箒を持っているのも同じ理屈だ。
婦人の「婦」という文字が、女性が箒を持つ姿を表しているのも、同様の意味を持っている。これを差別的というフェミニストもいるのだが、本来、この文字は魔力・呪力に富んだ女性の力を示している。西洋の魔女が箒に乗るのも、遠いところで繋がっている。
つまり、箒は女性にとって、最強の魔除けアイテムなのだ。

[目次]
引越物語
道の話―終わらない話
幽霊文化財
ホーンテッド・スウィート・ホーム
夜遊び好き…らしい
ひとり旅の醍醐味
お化け屋敷の話
東京の「顔」―風水の話
在宅怪談 

【ネット上の紹介】
幻の原稿、そして、4編の書き下ろし!;ファンの間では「幻の原稿」と呼ばれていた、自身の引越しを綴った長編オカルトエッセイがついに書籍化! また、本書のために、新たに4編を書き下ろし。自宅での恐怖体験や、訪れた文化財で出会った“この世ならざるモノ”、東京の最新風水考察など、オカルト好きならたまらないテーマが詰まっています。「建築」と「妖しいモノ」をこよなく愛する江戸っ子オカルト作家・加門七海ならではの、ゾクゾクッとイキのいい、実話怪談をご堪能ください。