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「津軽双花」葉室麟

2017年02月01日 21時13分32秒 | 読書(歴史/時代)


「津軽双花」葉室麟

長編と短編が収録されている。
「津軽双花」…タイトル作品、168ページの長編
「鳳凰記」…「大坂の陣」について(淀殿)
「虎狼なり」…「関ヶ原の戦い」について(石田三成)
「鷹、翔ける」…「本能寺の変」について(斉藤内蔵助・明智光秀)

「津軽双花」は、江戸幕府初期の話。
津軽藩が舞台。
石田三成の娘で北政所の養女・辰姫は津軽家に嫁いで仲睦まじく暮らしていた。
そこへ、徳川家康の姪で養女の満天姫が正室としてやってくる。
こうして、女たちの「関ケ原」が始まる。

P127
「徳川と石田は関ヶ原で戦いましたが、おのれの野望、欲得で戦ったとはわたくしは思いません。天下を静謐にし、民を安寧ならしめるためにこそ、戦を起こしたのではありませんか。いま、福島正則殿が謀反を起こされれば天下の平安が乱れます。これを止めるのは、徳川家康、石田三成を父に持つわたくしどもの務めではありますまいか」

タイトルとなった「津軽双花」もよかったが、短編も楽しめた。
思った以上の完成度で、特に「鷹、翔ける」が優れている。
あまり知られていない斉藤内蔵助の視点で、本能寺の変を描いていく。
非常に臨場感のある作品となっている。

今回も葉室麟作品を楽しめた。
史実を押さえながら、人物描写をしっかり描いていく。
歴史小説の作家で、一番好きかも。

【おまけ】
途中、辰姫が天秀尼を訪ねるシーンがあって、感激した。

【ネット上の紹介】
天下分け目の戦いは決し、敗者は歴史に葬られた―。父・三成の死後、ひっそりと津軽家に嫁いだ辰姫。当主の信枚と仲睦まじい日々を送るが、三年後、家康の姪・満天姫との縁組が決まる。正室の座は取って代わられる―。辰姫の胸に浮かんだのは、「父の仇」という言葉だった。美姫たちの戦いはここから始まった!乱世の終焉を辿る「大坂の陣」「関ヶ原の戦い」「本能寺の変」を描いた傑作短編も同時収録。