「ジニのパズル」崔実
日本とアメリカを舞台にして、著者の分身と思える少女の青春を描く。
非常にビター、カカオ80%の作品だ。
2016年 第59回 群像新人文学賞受賞
2016年 第33回 織田作之助賞 大賞受賞
P46-47
「日本には私のような日本生まれの韓国人が通える学校が二種類あるんだ」
私は、そう靴紐をなぞりながら言った。
「もちろん日本の学校にも通えるけどね。コリアン系の学校もあってさ、南側の韓国学校と、北側の朝鮮学校がある。私はその北側の朝鮮学校に通っていたんだ。韓国学校は一校しかないし、生徒たちは韓国生まれの子ばかりで、日本生まれの韓国人なんてほとんどいないんだよ。朝鮮学校は、日本生まれの朝鮮籍や韓国籍を持った子たちが通う学校なんだ。すごく混乱しやすいと思うけど、大丈夫かな」
「ええ、なんとか」
そう答えたステファニーの眉間には、少ししわが寄っていた。
【感想】
P51の「最初の登校日」から、怒濤の展開。
一気読みのおもしろさ。
[要旨]
オレゴン州の高校を退学になりかけている女の子・ジニ。ホームステイ先でステファニーと出会ったことで、ジニは5年前の東京での出来事を告白し始める。ジニは日本の小学校に通った後、中学から朝鮮学校に通うことになった。学校で一人だけ朝鮮語ができず、なかなか居場所が見つけられない。特に納得がいかないのは、教室で自分たちを見下ろす金親子の肖像画だ。1998年の夏休み最後の日、テポドンが発射された。翌日、チマ・チョゴリ姿で町を歩いていたジニは、警察を名乗る男たちに取り囲まれ…。二つの言語の間で必死に生き抜いた少女の革命。21世紀を代表する青春文学の誕生!第59回群像新人文学賞受賞作。