「鬱屈精神科医、占いにすがる」春日武彦
精神科医・春日武彦さんによるエッセイ(のようなもの)。
P61
わたしは阿倍なんてインチキ男は大嫌いで、テレビのニュースを見ているとしょっちゅう「死ね、クソ阿倍!」なんて悪態を吐いている。見え透いた態度の、むかつく政治家だと思っている。だが、安倍首相の小心さと傲慢さとがミックスされたような口調、愚かな割には妙な運の強さを発揮するそのしぶとさ(それが本人にとっても日本にとってもマイナスの意味になってしまうことも含めて)、再び突然の辞任をしそうな危うさ、ぎこちない「あざとさ」、おそらく心の中に抱えているであろう低レベルの鬱屈(学歴や人望など)、力づくの振る舞いへの憧憬などは、実は結構わたしと似通っているかもしれない。
p78-79
ついでに、わたしが普段の診療で用いている診断名を示しておく。わずか六つ。治療を行うという立場からすれば、経験的に六つで事足りるのである。
(1)統合失調症。
(2)(躁)うつ病。
(3)神経症。
(4)器質性精神病(認知症を含む)ないしは症状精神病。
(5)パーソナリティ障害。
(6)依存症。
もう少し詳しく述べるなら、(1)と(2)はいわゆる内因性精神病と呼ばれ、脳神経細胞に生化学的な失調が認められるものの、いまだに本当の原因は不明のもの。(3)はストレスや悩みによって直接的に導き出される心因性精神病。(4)は心ではなく物質としての脳がダメージを受けたことによって生ずる外因性の精神病。(5)は先天性ないしは生育史において生じた心の構造の歪み(6)はむしろ(5)の一部と考えるべきかもしれない。
P104
相手の話へ熱心に耳を傾けることがモテるコツ、といった話はかなり知られているのではないだろうか。もはや都市伝説に近いかもしれない。
でもそれを実践している人は案外少ない。だって相手の話はおおむねつまらないうえに「くどい」のである。
P193
念のために申し添えておくが、自傷行為と自殺とは似て非なるものである。(中略)おそらく死を迎える前に、自殺志願者は思考も感情も既に活動を停止している。だからあらゆる自殺は惰性によって遂行される。したがって恐怖や痛みに怯むことなどない。自殺を思いとどまるように説得しても功を奏するケースは少ない。首を括ったり電車に飛び込むのは、(比喩的に申せば)リアルな人間ではなく抜け殻である。
【ネット上の紹介】
人間が“救済”されるとはいったいどういうことなのか。心の医者にとって救済とは?
第1章 占い師に「すがり」たくなる気分のこと
第2章 世界を理解する方法としての占い
第3章 カウンセリングのようなもの、としての占い
第4章 「救い」に似た事象について
第5章 一線を越える、ということ