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「海が聞こえる」氷室冴子

2023年06月09日 17時26分36秒 | 読書(小説/日本)


「海が聞こえる」氷室冴子

久しぶりの読み返し。
土佐、東京を舞台にした氷室冴子作品。

ジブリ作品になったので内容ご存じかもしれない。
宮崎駿作品とは異なる路線の先駆けでもある。

あらすじは、里伽子の父母が離婚。
母親の実家がある高知県に、高校2年2学期に引っ越すことになる。
東京に父と残りたかった里伽子は、土佐の高校生活に馴染めず、他生徒と軋轢を生じる。これらのことが、土佐の高校生・杜崎拓君の1人称で語られる。

以上簡潔にまとめたら、自分勝手なワガママ女に振り回される男の話。
今この手の話は時々あるが、先駆的な作品と思う。

P63
「妻持ちで浮気っていう常識からいえば、卑怯なやつかもしれないけどさ、知沙も男を見る目はあったわけだよ。だけど先着順だからな、こういうのは」(一夫一婦制なので、結婚は先に出会ったもの勝ち、っていう面がある。そういう意味で、「先着順」である。不倫は電車の順番待ちで横入りしてちゃっかり座る大阪のおばちゃんのようなもの。それにしても、米国なら3組に2組、日本なら3組に1組が離婚するのに、「法律婚」を国策・行政・福祉の根幹に据えているのも考えもの)

P248
「選手生活やってた10年間で覚えたのは、負けることだって」
「負ける・・・・・・」
「どんなに努力しても、どんなに練習つんで万全だと思っても、やっぱり神様に愛されたやつってのが、スポーツ界にはいるんだそうだよ。骨格とか筋肉のつき方、それとセンスな。これはもう、どうしようもないんだそうだ」


以下、Wikipedia「海がきこえる」からの抜粋。

ジブリとしては宮崎駿や高畑勲が全く関わらない初めての作品となり(中略)
鈴木敏夫は「宮崎・高畑には絶対に作れない作品。彼らにしか描けないものがちゃんと描けている」と絶賛している

宮台真司は、宮崎駿との対談において「『耳をすませば』よりも『海がきこえる』の方がより現実的な女子中高生の描写ができている」と発言し、二人の間で論争となった。

1995年公開のスタジオジブリ作品『耳をすませば』は、同作の脚本・絵コンテ・製作プロデューサーを担当した宮崎駿が『海がきこえる』に触発されて制作に乗り出したものであるとされ、同じ若者の恋愛物をぶつけてきたことについて近藤勝也は「ジブリの恋愛物と言えば『海がきこえる』ではなく『耳をすませば』を皆が連想するようにしたかったのでは」と推測している。また、2011年公開の宮崎駿企画のスタジオジブリ作品『コクリコ坂から』とは脚本とキャラクターデザインが共通であるなど非常に密接な関係がある。


「耳をすませば」「コクリコ坂から」より、「海が聞こえる」が面白いと思う。
やはり、原作・氷室冴子さんの力量と言える。
早世されたのが残念でしかたない。

PS
会話が見事な土佐弁で描かれている。
氷室冴子さんは、「雑居時代」では、大阪弁を駆使されていた。
感心した。

もしだけど、「RDG」で、高柳一条が京都弁で話したらどうなんだろう?
荻原規子さんは、あえて標準語で会話を進めている。
物語の雰囲気がだいぶ違ってくるかも。

【ネット上の紹介】
写真の里伽子を見ているうちに、いくつかの里伽子がいるシーンが甦ってきた。六年生(高3)になって同じクラスになったことや。ゴールデンウィークの小旅行や。ふたりで泊まったホテルや、いろんなことを。ぼくにはわりに楽しかったり、驚いたりもしたいくつかのことも、里伽子には、なんの意味もなかったわけだな。それはなんだか、すこしばかり淋しいことだった。ぼくはそのとき初めて、里伽子をすごく好きだったことに気がついて、とりかえしのつかないような気持ちになった。作家生活15周年を期して氷室冴子が贈る、土佐、そして東京を舞台にした青春小説の決定版。

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