MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

「愛称」と「略称」

2016-12-24 00:09:52 | Weblog

 経済協力開発機構(ОECD)が実施した学習到達度調査において日本が「読解力」の成績で4位から8位に落ちたことに関連して12月7日付毎日新聞朝刊に掲載されていた26面の「語彙不足に警鐘」という伊澤拓也記者の記事を引用してみる。

「6日公表された2015年の学習到達度調査(PISA)で、読解力は前回より平均点が22点も下がり、順位も落とした。文部科学省は筆記からコンピューターで解答する方式への移行が一因としたが、日本の生徒が他の分野で操作に苦慮した傾向は見当たらない。PISAの他にも読解力の低下を示すデータがあることから、専門家は「読解力の基礎となる語彙(ごい)の量が不足している」と警鐘を鳴らしている。

 読解力は文章を読み、内容を理解したかを問う調査。日本は過去2回連続で平均点、順位とも上げたが、今回は09年と同じ8位に戻った。
 この結果について、国立情報学研究所の新井紀子教授は「本文が複数ページにわたって画面が変わるなど読み取りにくい問題があった側面はあるが、各国とも同じ条件で解答しているし、マウスの操作も他の分野では問題なかった。過去の順位から考えれば、日本の読解力は8位程度とみるのが自然な解釈ではないか」と分析する。
 東大入試に挑戦する人工知能(AI)「東ロボくん」を開発中の新井教授は、開発の過程で子供の読解力に疑問を持ち、中高生を対象にした調査を実施している。短い文章を読んで選択肢を選ぶ内容だが、簡単な文章の主語を読み違えたり、「てにをは」などの助詞を正しく理解できていなかったりするような誤答が目立ったという。新井教授は「教科書の文章を理解できていない子どもが多数いる。危機的な状況」と指摘する。
 要因として、新井教授は語彙量の不足を挙げる。世帯人数の減少に伴って家庭内で大人同士の会話が減り、活字離れで長文を読む機会が減ったことなどの環境の変化が背景にあるという。
 新井教授は「国語の授業で文学作品を読むだけでなく、論理的な文章をグラフや表と併せて読み解く作業も必要だ。教科の中身を見直す時期に来ているのではないか」と提言している。
 11年3月まで中学校教諭だった笠井正信・中央大特任教授(国語教育)は教育現場の問題も指摘する。「教えられたことを暗記するという思い込みの学習観が読解力向上を阻害している。学力調査対策としてドリルなどに『答え』を書くことに終始する授業や勉強法がいまだに当たり前だ」という。「読むことは、考え学ぶことだと徹底する必要がある。どんな意図や意味があるのか、書き手と対話をしながらテキストと向き合うように仕向けることが教師の役割だ」と注文した。

 新井教授の調査例
【問題】
 Alexは男性にも女性にも使われる名前で、女性の名Alexandraの愛称であるが、男性の名Alexanderの愛称でもある。
 この文脈において、以下の文中の空欄にあてはまる最も適当なものを選択肢のうちから一つ選びなさい。

 Alexandraの愛称は(  )である。

  中学生の解答
(1)Alex(正答)・・・38%
(2)Alexander・・・11%
(3)男性・・・12%
(4)女性・・・39%」

 不覚にも私は「Alexander」を選んでしまい、落ち込んでいたのであるが、12月17日付毎日新聞の「メディア時評」でノンフィクション作家の高橋秀実も「Alexander」を選んでいたので多少は安心した。高橋の意見を引用してみる。

「正解はAlexなのだが、私は不正解とされるAlexanderかと思った。なぜなら愛称は面白くなくてはいけないから。ルールに従うならそれは愛称ではなく略称なのだ。おそらく論理を読み取れるかという問題なのだろうが、論理とは言葉のルールにすぎず、何も伝えない。論理的に正しい文章とは、誰が読んでも同じ結論に導出される文章であって、無難であっても、何も生み出さない。これを読解力などというから新聞の記事は面白くないのである。」

 私は高橋ほど新聞記事に対して厳しくはない。私の間違いの原因は英語を母国語にする人たちの感性が理解できていないことから起こったことで、愛称と聞いて「アレックス」というのはあまりにも素っ気ないように感じただけで、提示された問題にクレームをつけるつもりは毛頭ない。


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