MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『海賊とよばれた男』

2016-12-30 00:02:05 | goo映画レビュー

原題:『海賊とよばれた男』
監督:山崎貴
脚本:山崎貴
撮影:柴崎幸三
出演:岡田准一/吉岡秀隆/染谷将太/鈴木亮平/野間口徹/ピエール瀧/國村隼/綾瀬はるか
2016年/日本

「力ずく」で描かれる豪商について

 個人的には全く評価しない『永遠の0』と同じ製作チームだったので多少不安はあったが、原作に漂うイデオロギーを薄めた分、出光興産創業者の出光佐三をモデルとした主人公の国岡鐡造の生き様が活写された佳作に仕上がっているように思う。
 後に石油の精製販売会社として大企業になる「国岡商会」であるが、その道のりは正に紆余曲折で、「ポンポン船」に搭載されているエンジン用に灯油の代わりにダブついていた軽油を売ったり、大連の満州鉄道には冬場に凍らない機関車の車輪に使用する車軸の潤滑油を売り込んだり、終戦直後に石油が手に入らない間はラジオの修理で会社を維持したり、なかなかメインの「石油」にたどり着かないところが興味深い。
 しかし国岡が決断して自社で所有する「日承丸」でイランから石油を輸入しようとした際に、圧力をかけていたイギリスのフリゲート艦「バンカーベイ」に見つかるものの、停船勧告されても通過できてしまうシーンには、何故原作にないシーンを撮っていながら理由を明かすことなく上手く通れてしまうのかよく分からないし、東雲忠司を中心として全国の石油タンクの底に残る石油をさらう業務を請け負うのであるが、あのような危険な作業で事故が起きないのが不思議なくらいで、妻の国岡ユキに対する態度も含めてやはり詳細な描写は違う意味で『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』(三木孝浩監督 2016年)のように甘い、というよりも「力ずく」で押し通したように感じる。


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