原題:『Shock Corridor』
監督:サミュエル・フラー
脚本:サミュエル・フラー
撮影:スタンリー・コルテス
出演:ピーター・ブレック/コンスタンス・タワーズ/ジーン・エヴァンス/ジェームズ・ベスト
1963年/アメリカ
自由の女神像の「不自由さ」について
原題は「衝撃的な廊下」という意味で、新聞記者のジョニー・バレットがスワニーという患者が亡くなった原因を探るために恋人のキャシ―を妹と偽り、近親相姦を犯そうとする精神異常者のフリをして精神病院に潜入する。冒頭はその練習風景から始まる。
そこでジョニーは、かつて朝鮮戦争に従事し、今はゲティスバーグで南部連邦の将軍のジェブ・スチュアートのつもりでいるスチュアートと、クー・クラックス・クランに所属しているつもりの黒人のトレントと、原子物理学者であると同時に6歳の子供のような素振りを見せるボーデンたちから情報を収集し、スワニーは看護師のウィルキスに殺されたことを突き止める。
しかしここから不思議なことが起こるのであるが、精神のバランスを崩しながらもようやくウィルキスの名前を思い出し、ジョニーはウィルキスと取っ組み合いながら自分が犯人であるとみんなの前で自白させることに成功するのだが、翌日(?)にキャシ―が面会に行くと、ジョニーは体が固まったまま何も喋らなくなっているのである。これはジョニーが狂気に陥ったというよりも、不祥事が表ざたににならないように病院長のクリストによって薬物を打たれたと考える方が自然であろう。
作品の冒頭とラストでエウリピデス(Euripides)の言葉とされる「神が人類の滅亡を願う時、彼らを狂わせることが神が最初にすることだ(Whom God wishes to destroy he first makes mad.)」が引用され、さらに病院長の室内の壁に「Statue of Liberty to be Unveiled Today(今日、自由の女神像のヴェ―ルが取れる)」という見出しが書かれた新聞が貼られている。その記事とジョニーの凝り固まった状態が「自由」の女神と同じ状態であるという皮肉が込められているように思う。クリストが自由の女神像と同じようにジョニーの手を上げさせるところが洒落ている。因みにパートカラーで、その映像も狂っている。