原題:『オケ老人!』
監督:細川徹
脚本:細川徹
撮影:芦澤明子
出演:杏/黒島結菜/坂口健太郎/笹野高史/左とん平/小松政夫/藤田弓子/石倉三郎/光石研
2016年/日本
下手な演奏の「加減」について
主人公で梅が岡高校に赴任してきた数学教師の小山千鶴が間違えて入団していまった楽団、「梅が岡交響楽団」は老人ばかりが集う集団なのだが、要は実力の差によって優秀な演奏者たちが「梅が岡フィルハーモニー」として独立してしまったのである。「梅が岡交響楽団」では指揮者として監督を務める千鶴ではあるが、「梅が岡フィルハーモニー」のヴァイオリン奏者としての千鶴は完全な落ちこぼれであり、そこの対照性は面白い。
結局千鶴はヴァイオリン奏者としては目が出ず、「梅が岡交響楽団」においても自分の教え方の悪さを痛感して、退団する決心をするのだが、前指揮者の野々村秀太郎に懇願され、著名な世界的指揮者のフィリップ・ロンバールの励ましもあり指揮者を続けることになる。
初めてのコンサートは大ホールを貸切って、ドヴォルザークの交響曲第9番『新世界より』の第二楽章、エルガーの『威風堂々』、ベートーヴェンの交響曲第6番『田園』が演奏されることになるが、正直に言って演奏が「上手過ぎる」と思うのは、やはり『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』(スティーヴン・フリアーズ監督 2016年)を観た後だからだと思う。個人的にはアマチュアはどこまで頑張れば楽しめるのかという問題を深く追求して欲しかったのであるが、例え、入場無料の田舎のアマチュアオーケストラのコンサートといってもあまりにも下手だったら映画として観賞に耐えられるかどうかという問題はある。
オー・ヘンリーの『最後の一葉』に着想を得たギャグは面白かった。