MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『人魚伝説』

2016-12-15 00:39:28 | goo映画レビュー

原題:『人魚伝説』
監督:池田敏春
脚本:西岡琢也
撮影:前田米造
出演:白都真理/江藤潤/清水健太郎/神田隆/青木義朗/宮口精二/宮下順子
1984年/日本

タイトルだけではもはやテーマが分からない作品の存在意義について

 タイトルで想像してしまうようなファンタジー作品とは正反対の「反原発」映画だったことに驚かされる。波摩という漁師町に住む29歳の主人公の佐伯啓介は妻の佐伯みぎわと共にアワビ取りで生計を立てていた。ある晩啓介は網番のために船で沖に出ていた際に釣り人が乗ったボートが爆破されるのを目撃するのであるが、翌日この出来事を伝えても誰も信じてくれなかった。
 死体を確認するためにみぎわと共に船で現場に向かい、みぎわが潜水して死体を探していると啓介の死体が船から落ちてきて、みぎわも水中銃で片腕を負傷する。何とか逃げ切ったみぎわが沖に上がって警官に助けを求めたら夫殺しの容疑がかけられており、警官を突き落とした後に再び逃走し、啓介の親友の宮本祥平の計らいで渡鹿野島に渡って身を潜めた。
 つまり啓介は原発反対派の下川殺しを目撃したために、レジャーランドを作るという口実で密かに原子力発電所建設を目論む土木会社の社長の宮本輝正と地元の衆議院議員の花岡の企みの障害として殺害されたのであり、原発推進派に取り込まれた警察はみぎわを夫殺しの容疑者扱いにしたのであるが、実はみぎわを助けてくれた宮本祥平も輝正の息子で、原発推進派なのである。
 渡鹿野島に宮本輝正と部下たちがやって来た際に、みぎわを殺害しようとした部下の一人が逆にみぎわの返り討ちに遭うのだが、何故か翌日に輝正たちが船に乗って帰ろうとしてもその殺害された部下を探す様子がなく、なおかつみぎわが泳いで島から輝正の自宅まで戻ってこれるところなど不自然なシーンを見かけるが、クライマックスにおけるみぎわの超人的なスタミナと風や水を操って機動隊を蹴散らすところなど、超能力者としてみぎわが描かれる。おそらく『キャリー』(ブライアン・デ・パルマ監督 1976年)を参照していると思われる。
 本作が傑作であるとするならば、それは監督の力量という以上に主人公の佐伯みぎわを演じた当時25歳の白都真理の迫真の演技によりものであることは間違いない。この熱演こそ「伝説」である。


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