MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『溺れるナイフ』

2016-12-28 00:28:43 | goo映画レビュー

原題:『溺れるナイフ』
監督:山戸結希
脚本:山戸結希/井土紀州
撮影:柴主高秀
出演:菅田将暉/小松菜奈/重岡大毅/上白石萌音/市川実和子/ミッキー・カーチス/堀内正美
2016年/日本

「呪縛される男」と「自由な女」のすれ違いについて

 東京で雑誌モデルをしていたほどの美少女である望月夏芽が父親の故郷の田舎に引っ越してきたのをきっかけに、夏芽を巡って不良少年の長谷川航一朗と優等生の大友勝利の、性格が正反対の男子が奪い合うという典型的な学園ラヴストーリーであるが、荒れた映像の質感が愛に忍び寄る甘さを拒絶しているように感じる。
 夏芽は航一朗と付き合うようになるが、ある祭りの晩に、祖父の鉄男が倒れて病院に運ばれたと知らせてきた知り合いの蓮目匠の車に乗せられた夏芽はひと目の無いところに連れていかれ蓮目に暴行されそうになる。機転を利かせた航一朗がいち早く夏芽を助けにくるが、蓮目に返り討ちに遭うのだが、夏芽は他の村人たちに救われる。
 しかし自分を助けてくれなかった航一朗を夏芽は許すことができず、そんな時に優しくしてくれる勝利と親しくなるのであるが、夏芽は再び芸能界に復帰するために東京で暮すことになる。東京へ向かう前日、航一朗の勇姿を見ようと夏芽は「月ノ明リ神社」の小屋へ行くと、再び蓮目と遭遇し乱暴されそうになるのだが、今回は航一朗に助けられる。
 ところで本作が何を言いたいのか勘案してみるならば、その美貌で世界を自由に渡り歩ける女性と、「その土地一帯を取り仕切る神主一族の末裔で跡取り」であるが故に夏芽に一緒に東京に行こうと誘われても断らざるを得ない航一朗と、カラオケで吉幾三の『おら東京さ行くだ』を歌って不本意ながら東京に行く夏芽に別れを告げる勝利の態度に見られるように、生まれ育った土地に縛られて動けない男性の違いが描かれているのである。このようなテーマを扱った作品は今はあまり見られないが、かつてATGが低予算で好んで描いていたテーマなのである。このようなテーマに27歳の女性監督が挑んだことに驚かされる。
 望月夏芽を演じた小松菜奈が頻繁に全身がびちゃびちゃになるところが笑える。


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