先週の大きな動きは、全米の主要大学でイスラエルのジェノサイドとそれを幇助するアメリカ政府に対する学生と教官による巨大な抗議行動の広まりでした。
最初、ロスアンジェルスの名門校、南カルフォルニア大学(USC)が、卒業生代表のスピーチをキャンセルしたというニュースがありました。パレスティナ系であったこの卒業生代表のAsna Tabassumさんが、卒業式でガザの虐殺とイスラエルの戦争犯罪について喋るのではないかと大学当局が懸念したに違いないとの憶測で、このニュースはあっという間に世界に広まりました。結果として、USCは今年の卒業式イベントでは、通常は学生とその関係者65,000人を集めて開かれるメインステージでの学内、学外からのスピーカーを含む儀式を「安全確保」の名目で全面的に中止しました。TVインタビューでTabassumさんは、「言論の自由」は大学の精神の中心にあり、学生が意見を自由に表現することは尊重されないければならない、その大学が卒業式での代表スピーチを抑制するということは残念だ、と述べました。
その直後に起こったニューヨークのアイビーリーグ校、コロンビア大学で、学生のプロテストを抑制するために大学が警察を介入させた事件は、事態の早期収束を図ろうとした大学の思惑とは逆に全国的な大問題となって非難を呼び、現在、大学当局への捜査が入る事態に発展しつつあります。コロンビア大では、ガザ虐殺を続けるイスラエルに武器武力支援を続けるアメリカ政府に抗議して、学生が学内の芝生にテントを張り、泊まり込みの抗議運動を4/17から開始、コロンビアの学長はその抗議活動が大学の許可なしに行われたことをもって直ちに警察を介入させたため、それが逆に抗議運動に拍車をかけ、泊まり込み運動は少なくとも50校以上の全米の有名大学に一斉に広がりました。今回、この運動のシンボルとも言えるコロンビア大での泊まり込みで、100人余りの学生が警察によって逮捕されたことから、コロンビア大は刑事告発される事態になっています。
コロンビア大では1968年、ベトナム戦争に反対して学生が大規模な抗議運動を行い、当時も警察が介入し学生運動を力で抑えつけたという過去があります。その事件は小説や映画にもなりました。大学生はしばしば損得勘定で動く大人よりも成熟した正しい判断力をもち、そして行動することができます。学生が、言論の自由に基づいてアメリカの戦争犯罪幇助に対して怒りをもって抗議を行い、「ヒューマニティへの冒涜に反対する」のはいちご味が好きとか嫌いとかいう類の話ではない、ということが大学当局は55年経っても理解できないのでしょうか。大学運営に携わる彼らもかつては学生であって、ベトナム戦争突き進むアメリカ政府に対し言うべき言葉を持っていたはずだろうと思うのですが。
この泊まり込み運動は海外にも飛び火し、フランスのパリ大(ソルボンヌ)、イタリアのサピエンザ大、イギリスのロンドン大、リーズ大、ワーウィック大、オーストラリアのメルボルン大、シドニー大、カナダの名門マッギル大などでも始まりました。その一方、アメリカではコロンビア大の事例に学ぶことなく、大学が警察権力を介入させることを躊躇らわず、USCやテキサス大オースティン校では数十人の学生が警察に逮捕、アトランタのエモリー大では学生の抗議運動に暴力を振う警官に事情を尋ねただけの65歳になる女性教授が問答無用で警官に地面に組み伏せられ逮捕、同様にセントルイスの名門ワシントン大でもキャンパス内に警官が入り込み、学生や教員が暴行されるという異常な事態になっています。これは個人の自由意志と権利を尊重するのが建前のアメリカという国の理想とする姿ではありません。
アメリカ合衆国憲法修正第一条が保証するように、アメリカという国では言論の自由は最も尊重されてきた権利であり、特に大学での学生の活動の自由は保障されてきました。ところが、そのアメリカの精神の中心にあって、アメリカの強さの源であったはずの言論の自由が「力」によって押さえつけられるという現実が世界に発信されています。
アメリカが最も大切にしてきた価値観を捨て去るかのように、力によるイスラエル批判の言論統制が露骨に行われているということは、シオニストのアメリカ支配の根深さを示唆しています。と同時に、シオニスト側がそれだけ追い込まれているということを示しているのではないかと感じます。まもなくと予想されている国際犯罪裁判所(ICC)からのネタニヤフに対する逮捕状が出されれば、この運動は更に勢いを増すのではないかと思われます。
つまり、シオニストは今回のイスラエルの戦争犯罪が世界中の非難を浴びてその目的遂行がそれだけ困難であるということを認識しており、自分たちがこれまでアメリカという国をステルス操作してきたことを隠すこともできないほど追い詰められているということだと思います。彼らが被害者を装い、イスラエルの戦争犯罪を非難するするものを「反ユダヤ」とラベルを貼ってきた手口もすっかり晒されてしまいました。幽霊はその正体が明らかになってしまえば力の半分を無くしたも同然です。イスラエルというシオニストによる虚構の国家は崩壊しつつあると感じます。