百醜千拙草

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独裁者とオリガルヒ

2025-02-25 | Weblog
ロシア-ウクライナ戦争においてロシアの即時撤退を求めるウクライナ案の決議が先ほど国連で行われました。日本を含む93カ国が賛成、65カ国が棄権、18カ国が反対したわけですが、ロシアと共に反対に投じたうちの一つがアメリカでした。まもなく戦争は終わるでしょう。実際に戦争の中止、継続、凍結に力を持っているのはアメリカとロシアであり、ヨーロッパでもウクライナでもないわけですから。

さて、先週末のTwitterでは、ウクライナの刑務所で一年前に死亡したアメリカ人作家のGonzalo Liraのビデオクリップが流れてきました。今頃、なんだろう?と思っていたら、翌日に、トランプがゼレンスキーを支持率4%の「選挙なき独裁者」と呼んで非難したとのニュース、イーロン マスクがGonzola Liraの死亡に関してゼレンスキーを批判したというニュースを見て、ああ、これか、と納得しました。

ま、民主的な戦争というものはあり得ないので、戦時中のリーダーは事実上、独裁者なわけですが、それでも、それは憲法に従って裏付けられた立場である必要があります。ヒトラーは民主主義の手続きによって選ばれましたし、第二次世界大戦中も、アメリカでは大統領選が行われ、日本でも衆議院選挙が施行されました。トランプが批判しているのは、ゼレンスキーは、戦時中であることを口実に憲法を無視して選挙を延期し、法的裏付けのない権力を握り続けているということでしょう。ウクライナ議会議員代表代理のAnna Skorokhodによると、ゼレンスキーの支持率は、さすがに4%ではなく、6 - 9%だろうという話ですが、公称57%とは随分開きがありますね。この支持率が本当だとすると、選挙となれば落選可能性が強いわけで、それがゼレンスキーが選挙を延期している理由でしょう。

非常時を口実に独裁権力を握り続ける、何か聞き覚えがあると思う方も多いと思いますが、これは、自民党が導入しようとしている改憲案「非常事態条項」ですね。一旦、権力をとってしまえば、非常事態を宣言することで、永久に独裁権力を法的に維持できる仕組みのことです。

さて、ゼレンスキーが独裁者であるのは仕方がないですが、長い選挙戦を戦って大統領の地位を得たトランプにしてみれば、任期切れで正式な大統領ではないゼレンスキーとは話はできないと、和平交渉からのウクライナを排除することの口実にしたということなのではないでしょうか。

独裁者の目的は、自己利益の増大とリンクする権力の維持でしょう。下のLiraのビデオにある通り、現在、ゼレンスキーは大金持ちです。ゼレンスキーに負けたポロシェンコも大金持ちでしたが、彼は自身が運営するのビジネスを通じて裕福になったのです。ならば、どうやって実業家でもない俳優のゼレンスキーが大金持ちになったのでしょう?それは、下のLiraの話にあるように、ウクライナのオリガルヒとの取引があったからだと思われます。

いずれにしても、現時点で、ゼレンスキーが権力を握り続けるためには、戦争をウクライナに有利な条件で終結させるか、さもなければ戦争を継続し続けるしかないわけですが、前者は有り得ません。そして、後者はアメリカの支援がなければ無理です。

これまでも、すでにゼレンスキーはアメリカの支援と引き換えに、国有地の多くをBlack Rockに売り払ってきました。そして、今回、トランプが出してきたウクライナ支援の条件は、アメリカの継続支援と引き換えにウクライナの鉱物資源を提供することでした。このトランプのご都合主義、呆れ返るばかりですが、トランプもゼレンスキーのどちらもウクライナの国民のことなど二の次、三の次ということでしょう。下に示す先日のEU議会でのJeffrey Sachsの講演の中での発言、「トランプは、モラルとかの理由で、この戦争を終わらせたいのではない、彼は負け戦には関わりたくないだけだ」とのトランプ評は腑に落ちました。

今回の戦争は1990年代からの「NATOによってロシア包囲網を築く」というタカ派を中心としたアメリカの政策に始まっていますが、転期は2014年のクーデターによるウクライナ政権転覆でしょう。この時のオバマ政権の誠意のない行動を見て、危機感を抱いたロシアは、クリミア住民の住民投票と独立宣言を受けてクリミアの併合に動きました。その後、ウクライナからの独立を求めたウクライナ東部ドンパス地域の勢力に対してウクライナ政府は武力行使を行い、内戦となりました。2014年、2015年とウクライナ政府と独立勢力との停戦交渉が二度にわたってミンスクで行われ、結果、ウクライナ、ウクライナからの独立を宣言をしたルガンスクとドネツク、ロシア、ドイツ、フランスが二度目の合意書にはサインをしました。しかし、この合意は守られることなくウクライナ政府はドンパスへの攻撃を継続し、最終的にロシアに庇護を求めたドンパスのルガンスクとドネツク共和国の求めに応じると言う体裁で今回のロシアの軍事介入につながっています。

チリ系アメリカ人であるGonzalo Liraはウクライナ人と結婚し、そうしたウクライナ政府と独立を求める東部州との武力紛争の中で暮らし、ウクライナ政府への批判を繰り返した結果、逮捕拘留されました。その経験から、二度目の逮捕が迫ってきた時、次の逮捕では殺されると、SNSを通じてアメリカ政府と関係者に助力を要請したのち政治的亡命をしようとしたがかなわず、再逮捕されました。バイデン政府はアメリカ市民である彼の保護要請を無視、そしてLiraは、自身の言葉通り、「ロシアの侵攻を正当化した罪」によってウクライナ刑務所に8ヶ月の勾留され死亡しました。それが、イーロン マスクの「ゼレンスキーがアメリカ人のLiraを殺した」という言葉の経緯です。

さて、バイデンがLiraを見殺しにしたのには個人的な理由もありそうです。かつての彼のビデオの中にゼレンスキーとコロモイスキーとの繋がりを述べたものがありますので紹介します。(調べてみると、ハンター バイデンは確かにコロモイスキーと繋がりがあるようですが、ジョー バイデンにコロモイスキーからの金が流れていたかどうかについては不明でした)

「、、、ゼレンスキーとハンター バイデンには共通点がある。、、、ゼレンスキーは『作られた政治的虚像』である。彼は、ウクライナ人でイスラエル人の大金持ちの権力者、イゴール コロモイスキーによって仕立て上げられた。コロモイスキーは、ウクライナの”One plus One media"の所有者で、"One plus One media"は「人民のしもべ」というTV番組を作った会社だ。この番組がゼレンスキーという政治経験も興味もゼロであった俳優を雇い、人々のために尽くす大統領役をやらせた。この番組は大人気となったが、多くの人が、そこに含まれるプロパガンダやPRの量に不審を感じた。他の番組に比べても、それは度を超えていた。この番組は2015-2018年まで放映された。それと同調してコロモイスキーは「人民のしもべの党」という(番組名と同じ名の)政党を作った。そして、その党からの大統領選候補がゼレンスキーだった。それまで政治的経験も興味もゼロであった男だ。コロモイスキーはゼレンスキーに資金支援をした。そして、今や、ゼレンスキーはビリオネアである。何人の億万長者の俳優をわれわれは知っているだろうか?トム クルーズでさえビリオネアではないだろう。ゼレンスキーは単なる俳優ではない、コロモイスキーの指人形なのだ。コロモイスキーが他に誰を支援しているか知っているだろうか?、、、ハンター バイデンだ。2014年、ウクライナのオイル会社のブリズマがハンター バイデンを雇用した。そしてブリズマのオーナーはコロモイスキーだ。ゼレンスキーとハンター バイデンは同じ奴と繋がっている。おまけのこの二人はヤク中でもある。もちろん、違いもある。ゼレンスキーの父親はアメリカ大統領ではない。、、、なぜ、アメリカはウクライナに躍起になっているのだろうか?、、、それは、ワシントンの支配者層は、ウクライナを個人的な貯金箱がわりに使ってきたからだ。彼らは経済的にウクライナをレイプし、ウクライナ人から金や資産を搾り上げた。これがウクライナが貧乏な理由の一つだ。、、、『高齢の男(ジョー バイデンを指すと思われる)』はハンター バイデンが得た資金の10%のキックバックを受けている。コロモイスキーはこうして、ジョー バイデンとゼレンスキーに資金提供をしてきたのだ。、、、私の言うことをそのまま信じる必要はない、調べてみれば良い、簡単に調べられるのだから。コロモイスキーのような男はウクライナに他にも大勢いる。、、、アメリカがウクライナに躍起になっているのは、真実が漏れ出すのを恐れているからだ、、、」

結局のところ、この戦争については、対露政策のついでにウクライナを喰い物にしてきたアメリカ ネオコン、軍産複合体の行き過ぎた野望が起源であり、ゼレンスキーは高額の報酬と引き換えに大統領役を演じた文字通りの「役者」であったと解釈できるしょう。コロモイスキーやアメリカ ネオコンにとっては、ウクライナ戦争はゲームなのです。しかし、ロシアにとっては深刻な安全保障上の問題であり、ウクライナ人とロシア人にとっては生死と生活の問題です。

戦争終結に向け、トランプは先日、これまで西側が使ってきた「ロシアの軍事侵攻」という言葉遣いを止めるよう要求したとNHKは伝えています。NHKは、バイデン政権の意向を忖度し、これまでも、ロシアのウクライナ領内での軍事行動は「侵略戦争」であり「軍事侵攻」と呼ぶ一方、ウクライナ軍のロシア領内での軍事行動は「越境攻撃」と言葉を使い分け、クリミア併合以来のロシア-ウクライナの紛争において、強大な軍事大国ロシアが小国ウクライナを一方的に力によって支配し、ロシア帝国を再建しようしている、という印象操作に沿った報道をしてきました。Jeff Sachsはこうした報道の仕方を「あまりに子供じみたプロパガンダ」といい、「子供じみた話ほど人々は信じるものだ」と嘆いています。先日は、NHKに出演した「専門家」は「ウクライナが譲れない戦争終結の条件とは何か」と聞かれて「ウクライナのNATO加盟による安全保障だ」と答えていました。呆れてため息しか出ません。

さて、Sachsが言うように、ネオコン嫌いのトランプは、負けが決まっている勝負に投資するのは嫌なのでしょう。しかし、これまで西側メディアがやってきたように一方的にロシアを悪者に仕立て上げられた状態で、ウクライナが領土と国民と資産を失って完敗の状態で手を引くのは得策ではないとでも考えたのではないでしょうか。そのためには西側ウクライナ(キエフ)とヨーロッパにも戦争の責任を認めさせる必要がある。今回のトランプの度が過ぎたようなゼレンスキー批判にはそんな意図もあるのかもしれません。(一番の悪人はアメリカだと思うのですけどね。詰腹を切らされるのはいつも悪党に利用された弱者です。)

こうしたトランプ政権の見解は、下は副大統領のツイートにも表れていると思います。

For three years, President Trump and I have made two simple arguments: first, the war wouldn't have started if President Trump was in office;… https://t.co/xH33s6X5yf
、、、3年間、トランプ大統領と私は2つのシンプルな主張をしてきた。1つ目は、トランプ大統領が大統領であれば戦争は始まらなかったということ、2つ目は、ヨーロッパもバイデン政権もウクライナ人も勝利へ見込みは持っていなかったということだ。これは3年前もそうだったし、2年前もそうだったし、昨年もそうだったし、今日もそうだ。 、、、、ロシアはウクライナにおいて人員と武器で圧倒的な優位に立っており、その優位性は西側のさらなる援助に関係なく続くだろう。繰り返すが、援助は現在も行われている。、、、紛争が続くことはロシアにとっても、ウクライナにとっても、ヨーロッパにとっても、アメリカにとって悪いことだ。、、、以上の事実を踏まえると、我々は和平を追求しなければならない。トランプ大統領はこれを掲げて出馬し、勝利したのだ。

最後に、今回のウクライナ戦争に至る歴史的背景と経緯を知りたい人は先日のJeffrey SachsのEU議会での演説をお聞きください。普段冷静な彼がアメリカ外交政策への怒りを顕わにしています。
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