百醜千拙草

何とかやっています

消費税の意味(4)

2022-06-28 | Weblog
今回も随分、長くなってしまいました。同じ話を繰り返しているせいでもありますが、消費税に対する認識の歪みは深刻だと思っているからです。もうこの話題はこれで一旦、終わりたいと思います。長いので、これまでと今回の話の前半部を要約すると、1)消費税は社会保障の財源ではない、2)消費税は税の本来の目的に反する悪税である、3)消費税が今日の不況と社会格差を産んできた主原因となっている、ということなので、この話を聞き飽きたという人はとばしてください。

選挙戦が始まり、消費税は主な争点になりつつあります。れいわや共産党などの主張、消費税は社会保障の財源であるというのは建前に過ぎないこと、そもそもが消費税は法人税や所得税などの直接税の引き下げのために導入されたものであり、社会保障の財源であるというのは後付けの建前に過ぎず、実態は異なること、の認識が広まりつつあります。

「なぜ、政府は悪税である消費税を増税したがるのか」という話をしようとして、ついつい前置きが随分長くなってしまいました。結論から言うと、これは、日本に歴史的にある「島国根性」に由来する「陰険なみみっちさ」だろうと私は思っています。

その前に、もう一度、消費税の歴史的経緯を簡単にまとめたいと思います。
消費税の前にも間接税はありました。物品税とよばれていましたが、当時は贅沢品のみに税がかけられていました(現在、消費税率の高い諸外国でも、消費税は生活必需品は無課税もしくは低税率で、当時の日本と同様のシステムです)。が、80年代の終わりごろに、高い法人税を下げてくれ、という経団連からの要望が強まり、自民党政権は、間接税を上げて法人税減税の穴埋めをする目的で、消費税を広く生活必需品も含めてかけはじめました。当時、大蔵省は「直間比率の是正」というフレーズを編み出して、この言葉によって消費税導入を正当化しようとしました。つまり、税制的に問題があるから変えないといけない、という理屈で議論されました。

民主主義国家においては、富を再配分し、金はあるところから取って、ないところに回すことで、格差を是正し国家の安定を図るのが、政府の仕事です。富の再配分については、金持ちの中でも、アメリカで言えば「小さな政府」を望む共和党的小乗的金持ちと、積極的に自らの資産を広く投資することで共存共栄を図る大乗的金持ちや慈善家がおります。古代ギリシア時代から、いわゆる"noblesse oblige"という文化を受け継ぐ西洋では、富の再配分は富裕層の彼らの身分を安定化させるという利他利己両方の効果があることを知っており、多額の納税、寄付、社会への投資は彼らの義務でありかつ特権であると捉えていたと思います。しかし、経済成長に陰りが見え始めた80年代の日本においては、企業も金持ちも、高い法人税と所得税は彼ら自身の脅威となりはじめたのでしょう。経団連や富裕層の組織票で権力を維持してきた自民党政府は、貧乏は自己責任、と憲法に基づく政府の責任を放棄し、政府は国民のためではなく一部の支配者階級のために国民から年貢を取り立てるだけのヤクザ機関に成り下がりました。

結果、「直間比率の是正」という名目で導入された消費税ですが、いつのまにか社会保障財源という建前が全面におしだされ、野田政権の三党合意での消費税増税時には、財務省は「税と社会保障の一体改革」という意味不明の言葉を編み出し、消費税増税 = 社会保障財源 という実態とは異なる建前だけを主張しだして、今に至ります。

税金は社会保障にも使われるわけですから、(予算上は)企業や富裕層から集められ、再配分される富が一般国民の社会保障にあてられることになりますから、「消費税は社会保障に使われる」というのは100%ウソではありませんが、もちろん、これは建前です。そういう事情で、消費税は使用用途が制限されている「目的税」とされていないのです。消費税は、一般財源として国庫に入り他の一般税と一緒にされ、あらゆる用途に使われます。「れいわ」がデータで示してきた通り、消費税税収の7割以上の額が法人税の減税分に相当しますから、これは文字通り、「消費税によって法人税減税分が穴埋めされた」ということです。

ようやく本題。前回書いた通り、消費税は複数の悪い性質を持つ悪税です。実は悪税であること、それこそが、日本政府が消費税を増税したい理由の一つではないかと私は思っています。格差を広げ、雇用を不安定化し、国民がどれほど困窮しようと絶対に取り立てることができ、弱者がもっともその悪影響を被る、悪税であるからこそ、自民党は消費税を増税したいのだろうと思います。

つまり、意図的に国民を経済的に余裕のない状況に置いておくことが、自民党と経団連企業の互助利益にとって都合がよいのです。一般国民が選挙に行かず、企業従業員の組織票が与党を決める国、そして、「お上」の言うことに逆らわず、苦境を受け入れ、容易にプロパガンダに乗って付和雷同する国民性、それを利用して、意図的に一般国民を貧しくすることが、この国の支配者が権力を維持しつづけるために日本が江戸時代から採用してきたメカニズムであると思います。

カネは一般人にとっては力です。カネを操ることができるということは、人を操る権力を持つということです。人々が豊かな生活を送れるような社会ではカネの持つパワーは減弱するのです。権力者は、持てるものと持たざる者の間の格差に内在するポテンシャル エネルギーを利用して、カネと権力のパワーを維持しているのです。

国家で言えば、カネの配分をするのが財務省です。それゆえに彼らが全省庁の中で最大の権力を持っています。そして、彼らは、常に人々や(他の省庁)をカネ不足の状態に置くことによって、権力をより強固なものとしているわけです。そのために明らかにおかしい理屈をつけては、持たざる者により負担が大きい消費税を増税し、プライマリーバランスがどうとか政府の借金がどうとかという理由で緊縮財政を行っているのだろうと思います。

つまり、相手よりも優位に立つために自らを高めるのではなく、相手を下げるというみみっちい戦略の一つとして、権力(支配者)側が予算を絞り、消費税によって被支配者の力を抑え込むことを行っているのだと私は思います。
島国の小さな世界で完結し、鎖国がうまくいっている間は、その安易でみみっちい戦略が有効です。日本の支配者層に、このような島国根性、猿山のサル根性が脈々と受け継がれているのはその地形に応じた淘汰と選択の必然の結果ではないかと思います。

当然、そんな戦略では、より強大な力をもった外からの相手にはどうしようもありません。それが江戸末期の徳川幕府の崩壊であり、現在の日本だろうと思います。

端的に言えば、財務省と自民党が消費税を下げないのは、国民の困窮を望んでいるからに他なりません。国民が困窮すればするほど、カネを持つものの権力は増大し、持たざる国民をより安く使い捨てにできます。大企業にとっては困窮した国民は使いやすい。法人税引き下げを望んだ経団連は消費税増税によって二重の恩恵をうけることになり、国民は二重に苦しむことになりました。そして、自民党はその経団連の大企業から組織票を得ることで政権を維持しています。

つまり、日本が諸外国から「経済政策の失敗で貧しくなった初めての国」と評されているのは、実は失敗ではなく、この貧困は意図したことであったと私は思います。わざと貧しくなった。これは、他の大陸の諸国には理解できないことでしょう。どうして国をわざと貧しくし、人々が苦しむような政策を政府がするのか。普通の民主主義国家では、そんな政権はあっという間に倒されて、政権交代がおきます。だから、政治家は国民が喜ぶ施策をおこないます。日本のように消費税をどんどんあげ、年金はカット、財産はあれば株式市場にぶちこませて一文なしになっても自己責任、非正規雇用をどんどん増やし、国富を外国に売っぱらい、汚職腐敗が当たり前、のような政権が長期にわたって支持されるような異常事態は、ふつうの国なら起こりません。しかし、生活に余裕がなく、選挙に行かず、権力に牛耳られてマトモな報道がなされない国では、組織票さえあれば政治権力は維持できてしまうのです。

一般国民と「支配者層」の格差を保つことが支配者層のパワーを維持する戦略であるのですが、昔から日本においては、そのために自らのパワーをあげるのではなく、相手を下げるという陰険でみみっちいやり方をしてきたのです。

もちろん、多数の困窮の上に一部のものだけが得をする、そんな国が栄えるはずがありません。歴史の独裁国や江戸時代の鎖国下の日本と同じです。一部のものが権力を保持するためにわざと国を発展させず、人々を豊かにしなかった結果、外国との圧倒的な力の差が生まれて、力づくで開国させられ、300年に及んだ徳川レジームが崩壊しました。

そう考えると日本が再び多少マシな国になるためには、また外国によって屈服させられる経験が必要なのかも知れません。明治の開国も戦後の経済発展も外国の強大な力で屈服させられたあとに、西洋化、民主主義を受け入れ、体質を無理矢理変えさせられた結果として起こりました。結果、われわれは、下駄、着物に丁髷ではなく、体に合わない洋服を着て、蒸れる靴を履いて生活することになりました。屈辱ではありましたが、悪いことばかりではありません。

しかし、いい加減、日本も外国に叩かれてようやく変わるというような主体性のない国ではなく、一般国民の力で自ら変えていってもらいたいと私は望んでいます。それが、日本戦後史上、初めての国政市民政党である「れいわ」の躍進に期待する理由です。
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消費税の意味 (3)

2022-06-24 | Weblog
この話題をここまで引っ張る気はなかったのですけど、長くなってしまいました。歳をとると話がくどくなります。

一口でまとめると、この20-30年の日本の国力の急激な衰退は政治の腐敗が原因です。前世紀末以降、民主党政権の一年目(鳩山/小沢)を除く二十年あまり、利権でしか動かない自民党のみみっちい政治のツケが現在の惨状を生み出したと言って過言ではありますまい。経済は一流、政治は三流と言われ続けた日本が、いまや経済も二流、三流、政治といえば目を覆うばかりの腐敗ぶり。

われわれは、目の前の自分たちだけの利益のみを追い求めようとする賤しい根性で、政府も総理大臣も平気でウソをつき、法をねじ曲げ、国民、弱者を見捨て、強者に阿ねる、未曾有の政治腐敗ぶりを見せつけられてきました。その腐敗がピークに達したのがアベ政権、その腐臭を放つ政権のゴミ箱のフタとなったスガはそのあまりの無能ぶりがたたって、現職でありながら総裁選に出ることさえも許されずに終了、結果、「透明人間」キシダがその腐敗政治をつぐことになりました。この男には主体というものがない。それ故に、ゴミ箱のフタとしてはスガよりもはるかに役に立つのであるが、国民にとってはより厄介なのです。

さて、今回の参議院選挙後、3年間の選挙空白期間を利用して自公政権は暴走し、消費税はさらに上がることになります。一方で、国民へのサービスはますます悪くなり、貧困化は進み、格差は広がり、予算は軍事費にあてられ、日米軍産の金儲けとそのキックバックのために使われます。

日本経済がここまで衰退した直接の原因は消費税であるのは間違いないと思います。輸出産業は円安時代の戦後経済を引っ張りましたが、GDPの6割は内需です。国内の消費、経済活動の不振が主な原因であり、それを作り出した原因が消費税です。

その問題点を述べる前に、そもそも政府が消費税に関して国民に説明してきた「消費税は社会保障の財源」という短い言葉の中に複数の大きなウソがあることをわれわれは理解しないといけません。そもそもこの言葉自体が矛盾です。社会保障とは国民の経済の安定を主目的とするものです。5割以上の国民が生活苦を訴えている中で生活必需品にさえ課税して、その生活苦を一層強めている時点で消費税は社会保障を直接破壊します。
第二のウソは、前回、前々回と述べましたように、徴税の目的は財源確保ではなく、主に経済の安定化などの社会機能の調節のためであり、消費税は財源ではないこと。第三のウソは、先日NHKで自民党政調会長がどうどう言った「消費税を社会保障だけに使っている」というウソ。予算というものがある以上、財源と言う言葉を便宜上使うにしても、消費税に関しては一般財源ですから、社会保障に限定して使われているわけではありません。それどころか、アベはそれを社会保障以外の用途に使っていると国会で答弁までしている。

山本太郎が党首討論で述べたように、30年前、消費税が導入されたのは、直間比率(直接税と間接税の比)是正が名目でした。すなわち、そもそもが、法人税を減税してその穴埋めをするものとして導入されたものであり、「社会保障の財源」という新たな言い訳は増税に際して編み出されたものに過ぎない。

加えて、税金の中でも消費税は特別に悪い性質を持つ税です。消費税の大きな問題点については前々回に紹介したサイトでもまとめられてありますので、リンクしておきます。是非、一読をおすすめします。


このサイトでは、消費税の三つの大きな問題は、①安定化装置(ビルト in スタビライザー)の機能が無い ②消費性向の高い人ほど実質的な税負担が高くなる ③雇用を不安定化させる  と指摘してあり、その理由が述べられています。消費税こそが、現在のように非正規雇用が増えて雇用が不安定化した原因の主要原因となっています。そしてこのサイトは、山本太郎の指摘すると同じく、「消費税は、企業減税のために導入されたもので、日本経済や国民のことを考えた仕組みではない」と結論しています。繰り返しますが、消費税は、社会保障の財源ではなく、法人税減税の目的で導入されたものであり、税の本来の目的に反く悪税であるということです。

それでは、最初の疑問に戻って、そもそもなぜ日本政府やマスコミはウソの言い訳を主張して、国民を苦しめることばかりをするのか、なぜ日本政府は他の国がやっているような当たり前にやるべき経済政策を行わず、「先進国で唯一、経済政策の失敗によって貧困化した国」と評されるようになったのか、という本題ですが、また長くなってしまったので、続きは次回。
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消費税の意味 (2)

2022-06-21 | Weblog
参院選の争点は国民生活、すなわち経済政策にしないといけない、とれいわの山本太郎は言いました。事実、衣食足りて礼節を知るですから、今は防衛とか憲法9条の話をしているような余裕はありません。国防も憲法も、まず国民が普通に喰っていけてからの話ですけど、「透明人間」キシダは、改憲は喫緊の課題だと言う(というか、言わされている)。与党にしてみれば、経済の話をされるのが一番困るのでしょう。とにかくこの参院選さえ乗り切れば、あとの3年はやりたい放題だと思っているのです。

あえて、真面目に反応すれば、国民生活が困窮し、食料自給が不可能という時点で、日本の国防はすでに破綻しています。自前で食料もエネルギーも調達できない国が、戦争になって勝てるわけがない。戦争になってエネルギーと食料を絶たれたら、一週間ともちますまい。そうでなくても、ミサイルを数発、原発や都市部に打ち込まれたら即終了で、それを防ぐ方法はないのです。

現実をみれば、軍事費はいくら増やしても国は守れないのですから、こんな与太話を真顔でするのは、国民をバカにしているのです。与太話で国民を騙せると思っているのです。国防と軍事費増大の話をするのは、当然、彼らには、経済を争点にしたくないという目的以外に別の目的があります。大体、すでに世界五位の軍事大国である日本で、さらなる軍事費の増大を言うのは、さらにアメリカ製兵器を買ってアメリカ軍産と兵器をライセンス生産する国内軍需産業に儲けさせるためでしょう。これは、アメリカ主導での日本の軍事増強を義務づけた「日米相互防衛援助協定(8条)」(1954年締結)にはじまり、以後連綿と日本政府の対米隷属関係が現在にいたるまで強化固定されてきた結果であろうと思います。日米軍事同盟を利用して一部の国内企業が得をするシステムがあるのです。このことについては少し古いですが12年前の記事をご覧いただくと、防衛費が増えて儲かるのはアメリカ軍産に加えて、日本では三菱、川重、日本電気、富士通、東芝などなどと大企業であることがわかります。つまり、これらの国内軍需産業がアメリカにライセンス料を払った上で兵器を生産してもうけているということです。支払いは、言い値で日本政府。消費税によって企業減税を可能にし、防衛費の増大によってさらに大企業に金を回す、その見返りにそうした企業の組織票によって与党の権力と地位を維持してきたのが自民党の戦略だったわけです。投票率の低い日本では、企業にサービスすることが組織票によって自民党の地位を安定化することにつながるが、一般国民へサービスは票に結びつかないので、やらない。自民党のこの一貫した利己的態度は、原発事故への対処を見れば明らかに見て取れるでしょう。被害者を見捨て、加害者企業を助けるのは、被害者を助けても票にならないが、企業を助ければ票になるからです。利権でしか動かないのが自民党政治、と小沢一郎も言っています。

さて、今回のコロナと戦争の影響による不況と物価高という庶民の苦境に対して世界の国々がとってきた経済政策と真逆のことを日本政府はやってきました。いまや世界91カ国が今回の苦難に際して消費税減税に踏み切りましたが、日本政府は頑なに拒否しています。アメリカはやっていませんが、アメリカではそもそも消費税は日常必需品にはかかりません。日本では、生きていくのに必須のものにも容赦なくかけられ、国民がどんなに貧乏になって、収入がなくなったとしても、税金だけは取り立てられるという仕組みになっています。

与党政府、財務省は消費税は「社会保障の財源」として重要と言い続けてきましたが、このような状況では、消費税そのものが社会保障を破綻させていると言わざるを得ません。そもそも、前回、述べたように、税金は「財源の確保」が目的ではありませんし。

先日TVの討論会で、山本太郎はその与党政府の言い訳の矛盾をついて、消費税増税のときだけ「財源論」をもってくるが、企業減税や軍事費増強などに際して「財源」の話が出たためしがない、と指摘。なぜなら「財源」を云々するのは増税のためのただの言い訳に過ぎないからです。かつて自民党の会合でアベは「カネがないなら刷れば良い、20円のコストで一万円札が刷れる」と言いました。自民党も財源論はウソであることを解って言っているのです。

それに、消費税税収も他の一般税収も区別されて国庫に入るのではありません。納められた時点で一緒くたにされるのです。だから、れいわが主張するとおり、「消費税の7割以上が企業減税の穴埋めに使われている」という表現は全く正しいのであって、先日の日曜討論での自民党の高市氏の主張こそがデマです。

随分、脱線しました。日本政府は、本来、税を通じて行うべき景気の安定と格差の縮小(税金の4つの目的の1と2)の真逆のことを消費税を通じて過去30年間やり続け、「社会保障の財源にする」というウソの言い訳を続けてきたわけです。その理由は、すでにもう述べましたが、自民党と経団連企業との相互利益関係であるのは間違いありません。キシダは「財務省と資本家の犬」だと先日、国会で罵倒されましたが、飼い主にエサをぶら下げられて芸をさせられているという意味ではこの表現は的確と言えるでしょう。企業の組織票、全有権者の2割弱の票をもっていれば、余裕で与党でいられるような低投票率の国であるということが、自民党が一般国民ではなく、企業の方ばかりを見ている理由です。しかし、一般国民一人一人が「票」というエサを持っているのですから、国民がキシダに芸を仕込むこともできるのです。

また長くなってしまいましたので、続きは次回。
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消費税の意味 (1)

2022-06-17 | Weblog
まもなく、参院選の公示となります。不況と物価高の進む中で、「れいわ」の以前からの主張である消費税廃止の重要性を人々は切実に感じているのではないでしょうか。この参院選を前にして、与党は、国防や憲法を争点にしようと、テレビなどを使って動いています。経済を争点にされると困るのです。「国を守るということは、国民の生活を守ること」という民主主義国家で当たり前の主張を自民党はしない。彼らにとって、国とは支配者層のことであり、一般国民は、彼らにとっての国を守るための駒に過ぎないと考えているからでしょう。

現在、一般国民救済のための経済政策を強く主張しているのがれいわと共産党だと思います。国会閉会前の質疑で、共産党の大門さんは、「コロナと戦争で物価が上がり、人々の収入が減った中で、世界で89カ国が消費税の減税に踏み切った」とデータを見せて消費税減税を迫りましたが、キシダは、消費税を下げるつもりはない、と明言。山本太郎はキシダを評して、透明人間、味のないパスタ、全く存在感がないのにやることがエゲツない、だからこそ恐ろしい、と言いましたが、全く同感です。彼も「財務省と資本家の犬」と国会で罵倒されるだけの理由があります。結局、犬ですから、しつけられたとおりに芸をしているだけなのです。だから平気でエゲツないことができるのでしょう。慈悲深いキリストなら「父よ。キシダをお赦しください。彼は、何をしているのか自分でわからないのです」とでもいうかも知れません。

脱線しましたが、なぜ財務省と経団連とその犬は消費税減税をしたくないのか、という話をしたいと思います。

その前に、管理通貨性であり通貨発行権を持つ国において、「税金」を集めることの意味とは何か、ということをよく考えるべきだろうと思います。実は、徴税の目的については、高校の政経の教科書にもちゃんと書いてあるそうです。真面目な高校生なら、一般納税者よりもよく税のことを知っているかも知れません

税の目的については、この一般向けのサイトによい解説がありますが、このサイトの言葉を使えば、税金の本来の4つの目的は、1景気の安定化 2所得の格差縮小と社会の安定 3政策的目的 4国内通貨の固定、です。そして、その目的として現在、最も重要なのは 1 であろうと思います。山本太郎の言葉を借りれば、国家が行う徴税の主目的は、流通している通貨を間引き、通貨流通量を減らすことです。つまり、われわれ大勢が思うように「財源を確保する」ことは、税の主目的ではないのです。

つまり、自前で通貨を管理している国の政府が行う徴税と、通貨発行ができない地方自治体や一般の会社などでの会計での「税」では、その目的は違うのです。この一般家計での常識を国の財政にそのままあてはめてしまうことが、われわれ一般人が国の徴税の目的を勘違いする原因になっている思います。われわれ個人にとってはカネは実体のある現実ですが、国家にとれば、ただの口座の数字にしか過ぎず、しかも基本的にその数字は自由に変えれるのです。「税金を集めて何かに使う」という表現をよく聞きます。しかしこれはむしろ、単なる比喩表現であると考えるべきで、国家の税金は何かに使うために集めるのではなく、経済操作のためのツールであると理解すべきでしょう。

つまり、通貨流通量をコントロールすることによって、インフレ、デフレを調整し、経済を安定化させるために徴税や金利の調節や国債発行があります。格差を是正するために累進性課税があります。ゆえに、コロナと戦争でスタグフレーションとなっている外国の国々では89カ国が、一般市民の生活を救い、不況を脱するために、消費税を減税し給付金を出し、通貨量を増やして景気を刺激するという当たり前のことをやっています。それをしないのは先進国では日本だけです。むしろ、日本政府は、税の本来の目的である、経済の安定化、格差の是正に関しては、逆方向の行動をとっています。消費税を増税してより不況を悪くし、一般国民から消費税をとりたてて、金持ち企業は減税して、格差をより広げています。どうして、そんなアベコベのバカをするのか、そして、諸外国から「経済政策の失敗で貧しくなった唯一の国」といわれるようになっても、与党政府は経済政策を改めないのか、というのが本題だったのですが、すでにマクラが長くなり過ぎました。続きは次回にします。
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捏造の文化

2022-06-14 | Weblog
中国からの捏造論文は何年も前から問題になっています。大量に投稿されるこうした捏造論文は、プロセスする編集者や査読者の大きな時間と労力の無駄になっているだけでなく、一旦発表されてしまえば、本物か捏造かの見分けは困難ですから、その研究分野に少なからぬ負の影響を与える可能性があります。

Nature Medicine フロントページから。

(DeepL、一部引用)近年、世界最大の科学論文の供給源は中国からである。、、しかし、中国からの学術論文の大量撤回が懸念されるようになった。例えば、2020年1月から2021年3月にかけて、中国の病院出身の著者によって少なくとも370本の論文が撤回された。それらは主に捏造論文工場が作成した捏造論文であった。
、、、
影響力のある機関(復旦大学病院管理研究所など)が毎年発表する病院のランキングは、中国の病院の学術的パフォーマンスを評価する上で重要であり、国際学術誌への論文掲載が重要な指標となる。その結果、多くの大学病院や三次病院では、国際学術誌への論文掲載が昇進のための必須条件となり、学術的評価や報酬に関連する機関業績の重要なパラメータとなっている。
、、、
臨床医と患者の比率が低く、臨床と教育の仕事量が多いため、中国の病院のほとんどの臨床医は研究に十分な時間とエネルギーを割くことができない。言葉の壁もまた大きな課題である。また、多くの中国人臨床医が臨床研究に関する体系的で正式なトレーニングを受けていない。
、、、
しかし、大学の基礎科学研究者と大学教育病院の臨床医とは、通常、研究業績について同じ基準で評価される。以上のような要因が、キャリアアップのプレッシャーと相まって、学術的な不正行為のリスクを増大させたと考えられる。
学術的な不正行為を最小限に抑えるため、中国の政府機関は最近、ゼロ・トレランス・アプローチを採用している。、、、しかし、学術的誠実性における主要な課題に対処し、研究不正を最小限に抑えるためには、かなりの進歩が必要である。
(引用 終)

この大量の中国からの低品質の低品質の論文は、あきらかに科学界のエコシステムに悪影響を及ぼしています。正直、論文の体を成していないようなものが大量にレビュー出版パイプラインに投入されることによって、目詰まりを起こしている状況ですから、なんらかのフィルタリングをして、あまりに質の悪いものはシステムに入る前に弾いていくべきではないかとさえ思っています。それでも科学的に正直に行われた研究ならば救いもありますが、捏造論文工場で作った捏造論文が流入することは不法投棄ゴミによる環境汚染に等しいと思います。

ま、結局はカネと地位という人間の欲があって、医学や科学界での報奨システムが論文発表というポイントを集める競争に依存しているのだから、ズルをするやつが必ずでてきます。

もっと根本的には、医学科学の世界も、カネと地位をエサに競争させれば必死で働いて生産性があがるだろうと考える支配者層の思惑に踊らされているとも言えるでしょう。そうして競争によって階層化していき、「勝ち組」と「負け組」にわけて、持たざるもの同士を競わせるシステムが資本主義社会のエンジンになっています。

一方で真の支配者層は競争に勝つ必要もないので、最初からこの「Rat race」には参加しません。逆に言えば、子供のころから勉学に励み、競争に勝ち抜いて、一流企業で出世して大金を稼ぐ自称「勝ち組」の人でも、このRat raceに参加させられている時点で、ただの競争ネズミに過ぎないです。しかし、残念ながら、資本主義社会では、大多数の普通の人は、物心もつかぬ子供の時から否応なくこのレースに放り込まれることになっています。

研究費欲しさ、カネで簡単に転ぶ学者の世界、競争社会は欧米でも同様ですが、中国ほど露骨な捏造論文は乱発されていません。科学研究の歴史が違うので、研究倫理の成熟度の差もあるでしょうが、私は、この差はそもそも、一神教の宗教の上に成立した西洋社会とそうでない東洋との文化の差が大きいと考えています。西洋の神は誤魔化しの効かない裁きの神なのです。だから、絶対神を信じない日本でも「恥」の文化がなければ、中国なみに捏造論文は出るだろうと思います。事実、恥知らずの政権では、文書や統計の数字の隠蔽、改竄、捏造、虚偽答弁が大量発生しましたし。

競争によって勝者が報われるというシステムは、人間を何らかの価値を産む機械の部品として扱うわけで、学問の世界とそもそも相入れないものだと思います。捏造論文とはすなわち学問の精神の否定ですから。
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新しい言語

2022-06-10 | Weblog
先日、日銀総裁、クロダ、「家計が値上げを受け入れている」という言葉を発して、大バッシングを受けました。この人の三文詩人なみのレトリック、恥ずかしくないのですかね。値上げを受け入れている「家計」って誰?あんたの知り合い?加計なら百億ほど受け取ってますけど。

そしてこの発言へのバッシングのあとの言い訳がまたすごい。
「企業の価格設定スタンスが積極化している中で、日本の家計の値上げ許容度も高まってきている。その理由として仮説と断った上でコロナ禍で消費が抑制され貯蓄が増えたことが影響している」と言ったそうです。
表現はポエム、内容はでたらめ、ちょっと何をいっているのかわからない。「価格設定スタンスが積極化」というのは、「気候変動問題にセクシーに取り組む」みたいな感じですかね?「家計の値上げ許容度が高まってきている」とか、「コロナ禍で貯蓄が増えた」という明らかな理解力の障害は、この人の脳神経接続フラクタル次元が減少している中で思考無秩序エントロピーが増大してきているとしか思えません。あるいは、頭脳がアルツハイマーを受け入れているのでしょうか。

さて、言葉といえば、Duolingoで続けているフランス語もあと数ヶ月で一通りのレッスンは終わりそうです。一通り終わりそうな段階でも、現在のところ、私のフランス語スキルは英語でいえば、高校一年生レベルぐらいで実用にはなりません。多分、あとはひたすら読み書き聞くを繰り返し、一つ一つ覚えていくしかないのでしょうが、これでは「エマニュエル夫人」を原語で観るとかいう目標は達成できそうにありません。フランス語の次はスペイン語もと思っているので、この際、フランス語は、「エマニュエル夫人」から「タンタンの冒険」ぐらいに最終目標を下げるしかないかな、と思っています。

実は、スペイン語の前にもう一つ覚えたい言語があって、ちょっとオンラインでやりはじめました。Pythonですけど、もう挫けそうです。Johns Hopkins大が提供しているゲノムデータサイエンス ビギナーのためのオンラインコース取り始めましたが、最初のモデュールの中頃なのに、課題のテストが強烈に難しく、10問の簡単なコーディングの問題を解くのに一時間ぐらいかかって、二、三度、挑戦してようやくパスできるかどうかという具合です。

コロナで仕事が中断した二年ほど前、一通りRの初心者コースをとったことがありましたので、ちょっと、ナメてました。と、いってもRもコース終了後も、せいぜいデータを読み込んで、グラフをつくったりする程度で、それなら市販のPrismなどのソフトの方がはるかに効率的だったので、使わなくなってほとんどRは忘れてしまいました。

今回の動機は、少し前のプロジェクトでRNA-seqのちょっと厄介な解析をお願いした大卒の若者が、ズブの素人だったのに、あっと言う間にシングルセル-seqの解析を覚えて、Pythonのプログラムを使ってやっていたことです。私は、最終的には、大規模データ解析で、パブリックデータベースにあるデータをいろいろ解析して楽しみたいと思っているのですけど、これもフランス語でいえば「エマニュエル夫人」クラスなら、結局は実用レベルに達しないかも知れません。

オンライン コースではターミナル ウインドウを使ってのレッスンですが、タイプミスの多い私は、ターミナルではやりずらいことに気づき、PyCharmという RでのR Studioみたいなものを入れてやっています。IDEというそうです。これで操作性は多少は向上し基本演習はやりやすくなりました。

そして、今回のレッスンからいよいよゲノム生物学に関連したレッスンが始まりました。が、始まる前からいきなり躓きました。Biopythonというパッケージをインストールすることさえできません。結局PyCharmを使っていたのが悪かったのですが、始まる前にすでに躓いている状態ですから、不安でいっぱいです。誰か本当の素人でも着実に学習できる方法を教えてもらえないでしょうか。
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地獄の三年

2022-06-07 | Weblog
ロシアはまたキエフを攻撃しだしたようです。その目的はどうも西側から供給される武器を断つためのようです。そもそもロシアのウクライナ侵攻の目的が、近年、アメリカから大量の武器供給を受けてきたウクライナが露骨にNATO入りを希望している状況で、ウクライナがロシアの脅威となることを阻止すること(少なくとも表向きは)だったわけです。戦争の長期化に伴って、西側がどんどん武器を供給することは、対話の可能性を狭めて、火に油を注ぐようなもので、逆効果です。ロシアにしても攻撃を強めることは、マントを力ずくで脱がせようとする北風のようなもので、お互いに引くに引けなくなっています。こういうのを泥沼というのでしょう。

加えて、イギリスとアメリカがウクライナに前線に配備するための50マイル射程の長距離ミサイルを供給するというニュース。「専守防衛のため」とは言っていますが、その気になればロシア領内を攻撃することも可能であり、プーチンは「もしもロシアが脅威に晒されるなら、新たに攻撃を加える」と釘を刺しています。

いまとなっては、停戦を実現するためにはアメリカが逆方向に動くしかありません。戦争を煽るのではなく止めることに集中すべきでしょう(本気でウクライナのことを考えているならば)。アメリカでなければ他のNATO諸国が一致して、バイデンに停戦調停をするよう説得するしかない。戦争を止めるには、どう考えてもアメリカが、ロシアとウクライナの停戦交渉に当事者として臨むしか手はないのに、当のアメリカが、自国が戦場にならないことをよいことに、戦争を煽り立てているという救いのない状況です。終わったころにはアメリカの希望通りロシアは消耗しているでしょうが、ウクライナも激しく荒廃し簡単には立ち直れない状況になるでしょう。

さて、日本。岸田政権、最初からわかっていましたけど、無能、不誠実、悪質なのは、アベ スガ並み。アベのように聞いているだけで不快感を与えるようなアクもなく、スガのように喋れなくて立ち往生するわけでもないのが、却って悪性です。中身はあかわらずアベ スガ以上にスカスカ、対米隷属路線は全く変わらず。生活苦を訴える国民が5割以上もいるのに、バイデンに言われるまま軍事費をGDP2%レベルに引き上げ、戦争放棄している日本を世界第三位の軍事大国にしたいらしい。そんなレベルでは本気でやりあえば中露にはとても敵わないです。アメリカは、それでも有事の際は日本を東アジアでの中露の防波堤として使い捨てればいいし、それまではアメリカ産の武器を言い値で買ってくれればよいと思っている。戦争になれば、ちょうど日本を今のウクライナのように、武器だけ供給して「日本軍」に戦わせて、捨て石にするでしょう。

首相は「財源は?」と聞かれても、もちろん答えられない。消費税を上げ、年金額を引き下げ、社会保障予算を削ればよいなどと選挙前には言えないのでしょう。結局、選挙が終われば、与党にとれば無敵の三年が訪れるのです。その間、増税と改憲を進めて、アメリカに財産も生命も貢ぐ。国民にとっては地獄の三年。

日本が近年、驚くべきスピードで自滅し、地盤沈下し、世界から取り残され、貧困化してきたことの直接の原因は自公政権、それから、見境なくSLAPP訴訟を乱発し言論人に嫌がらせをする自民党の下請け、チンピラ政党の維新であることは間違いありませんけど、そもそも、彼らをのさばらせ、腐るに任せてしまったのは国民ですから、結局は自業自得ではあります。

参院選で与野党が逆転することは、まずないでしょう。その後の三年で、国民生活の破壊はますます進行することになります。希望があるとすると、唯一の市民政党である「れいわ」の躍進でしょう。かつて国民政党としてアメリカと企業と国民との利益バランスを調整していた自民党は二十年前に消滅しました。今はただの権力保持マシーンです。アメリカに逆らえば田中角栄のような目に遭い、隷属していれば権力の座を維持できる、故にアメリカの要求はすべて二つ返事。組織票だけで票が十分あるから企業を優遇し国民の富は彼らに付け替え、消費税を上げて企業は減税する。酒類供与をうけたサントリーには酒税法の改定を見送る(ああ、みみっちい)。かつての自民党のように面従腹背でアメリカの搾取から国民と国の富を守るという知恵も工夫もないただの権力の操り人形となりさがったのが、小泉政権以降の自民党で、アベ政権で腐敗が一気に進み今に至ります。

日本が立ち直る可能性があるとすれば、現時点ではまだまだ先が長いが「れいわ」勢力の拡大しかないように思います。山本太郎の「与党にも野党にも嫌われる政党を目指す」という言葉の意味は、政策実現のためには手段を選ばないということでしょう。逆に言えば、政策が実現するのなら、権力にはこだわらないということです。「れいわ」は、アメリカで温暖化対策を進めたい市民によるSunrise movementのやり方を参考にしているようです。アメリカではこの市民活動から数人の強力な議員が誕生し、民主党を動かしました。プロの政治屋ではない当事者市民による市民のための政治を支えたのは市民のSNSなどによる地道な運動でした。そう思いながら、これを書いています。
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凋落する日本の研究

2022-06-03 | Weblog
沈下する日本の学術レベルについての最近のScience紙の記事。

この記事を書いた記者はDennis Normileで、上海からの発信。かつては欧米企業のアジア支部は日本にあるのが普通でしたが、次々に中国、韓国へと移動。東京は、すでに東アジアの中心では無くなってしまいました。


(一部引用) 大学の地位が低下していることに危機感を抱いた日本は、大学の存在感を高めるために、一部の大学に年間23億ドルもの資金を投入することを計画している。、、、1年以上前から検討されていたこの動きは、沈む一方の日本の研究の運命をどう立て直すか、研究者の間で再び議論を呼んでいる。、、
 新計画は「世界のトップ大学が提供するはずの研究環境を若い有望な研究者に提供し、国際協力を劇的に強化し、国内外での頭脳循環を促進することを目指しています」、、、
 しかし、熊本大学の中国人発生生物学者であるGuojun Sheng氏は懐疑的である。「この計画が、日本の研究活動のランキングや国際競争力の低下を食い止めるのに役立つとはとても思えません」と、彼は言う。中国、米国、英国で研究・仕事をした経験を持つSheng氏は、新計画は、女性や外国人科学者が少なすぎる、変化を恐れる、若い科学者へのサポートがない、といった日本の研究機関の根本的な問題には対処していないと指摘する。、、、
 日本の科学的影響力の衰退に対する懸念は、何年も前から高まっている。経済協力開発機構(OECD)によると、2020年の日本の研究開発費は1670億ドルで、米国と中国に次いでトップである。しかし、研究生産性は「(20カ国)平均を著しく下回り、引用インパクトも低い」、、、
 日本は1997年から1999年まで被引用数上位10%の論文のシェアで4位だったが、2007年から2009年は5位に、2017年から2019年は10位に下がった。、、、カナダ、フランス、イタリア・オーストラリア、インドも日本を抜いた。、、、
 シンガポール国立大学の日本人幹細胞研究者である須田敏雄氏は、(日本の)トップダウン型のプログラムは、その規模と広大な課題により責任の所在が曖昧になり、パフォーマンスの評価を難しくしていると指摘する。また、基礎研究よりも応用に重点が置かれているという。一方、文部科学省が競争的に審査する科学研究費補助金は、過去10年間は年間20億ドル以下で停滞している。、、、
 「さらに悪いことに、日本の大学は固定的なブロック資金で運営されているため、若い科学者に(常勤の)職を与えることをやめてしまった」。また、幸運にも職を得ることができたとしても、スタートアップ資金を得ることはほとんどなく、「リソースの面では上級教授の言いなりになってしまう。
 このようなキャリアの見通しの悪さが、人々をアカデミアから遠ざけている。文部科学省のデータによれば、修士号取得後すぐに博士号取得を目指す学生の数は、20年間で25%減少している。そして、博士号を取得した人の中には、海外にキャリアを求める人もいる。、、、

という内容ですが、日本の問題は他国の組織と比べてみると明らかです。具体例として表れているのは、「アカデミアに職がなく、あっても不安定で将来が見通せない」、「資金配分を広く浅く行うのではなく、トップダウンで集中投下するため、研究格差が拡大し、底力となる裾野の研究者が育たない」、「組織の硬直化と過剰な雑用と報告書の強制によって、研究者なのに研究しているヒマがない」などなどですが、その根本的な問題は、日本政府の不勉強と不作為と短慮です。つまり、やる気がないのです。日本政府の無能さの例を挙げるときりがないです。例えばコロナ対策に30兆円の予算をつけておきながら、有効につかえず余らせる、挙句に何兆円もその使途さえわからない、というような政府です。これでは、小学生のお使いレベル未満です。

記事では日本は多額の研究開発費を費やしているが生産性が悪いと書いてありますが、しかし、この多額の研究開発費に占める政府資金は、諸外国と比べると驚くほど貧弱です。例が挙げられている文科省の科学研究補助金の年間20億ドル未満という数字は、アメリカの政府の研究予算の多くを占めるNIH年間予算の5%未満にしか過ぎません。政府は国の科学技術で世界トップクラスを維持したいのであれば、人口比から考えても、アメリカの1/4規模の予算を組む必要があるでしょう。つまり100億ドルぐらいは出せということです。そして政府が今回、投入しようとしているのが年間23億ドルです。しかし、これでは日本の科学研究を底上げするには全然、不十分なので、一部の大学に選択的に回すと言っているのです。これもマトモに科学振興を考えていない証拠です。これでは、一瞬はよくても10年も経てば元の木阿弥でしょう。その目先のことしか考えられない無能ぶりにくわえて、やることがみみっちくケチくさい。一部の大学だけ立派にして外国に見栄を張り、大半の疲弊する一般大学や研究室は見捨てるというわけです。張り子の虎作戦とでも言いましょうか。

一事が万事ですが、日本が経済的に凋落し、人々が貧困に苦しむのも、科学技術立国の地位を失ったのも、政府の失策。経済政策、科学政策の失敗が原因と言って良いと思います。政府がここまで堕落し無能になったのも、この10年ほどで極度に腐敗が進んだ自民党政治であると言えるでしょう。

2年前にNatureがアベ政権での日本の科学政策の失敗について述べていましたが、自民党政権は誰が頭になっても中身は同じです。失敗から学ばず、同じ失敗を何度も繰り返す。それは、志低くして、誠意乏しく、民間の努力の結晶と国民の富を吸い上げることしか興味がない与党政府が起こした人災です。

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