色々、面白いことがあった1週間でした。最初は、最近のノルウィの政治学者の論文を紹介するだけにしようと思っていましたが、おかげで、すごく長くなってしまいました。
まずは、爆発的話題となったトランプとゼレンスキーのホワイトハウスでのケンカです。ケンカのきっかけはバンスですけど、これは歴史的な映像として残るでしょう。「外交というが、どんな外交をするつもりなのか。2014年のロシアのクリミア、ドンパスでの軍事行動でもアメリカの大統領は十分に何もしてくれなかった」と文句を続けたゼレンスキーに、トランプは「(このまま戦争を続けると)ウクライナは全滅する、アメリカが手を引けばウクライナは2週間しか持たない、立場を理解しているのか?アメリカなしではお前はなんの手札も持っていないんだぞ。第三次世界大戦でも起こすつもりなのか?(アメリカがロシアと話をつけてやろうと言っているのだから)もっとアメリカに感謝すべきだ」と、パワハラ ヤクザぶり。ま、トランプが言っていることは半分はもっともですけど。
ネットでは、ネタニヤフにも同じように言ったらどうか、との意見多数。
この会見の後、ウクライナではゼレンスキーの罷免を求める動議が提出されたようです。スロバキアでは、首相のRobert Ficoは、スロバキアはウクライナを経済的にも軍事的にも支援しないと表明し、ついでに、ウクライナが止めているロシアからのガス パイプラインをさっさと開けろと要求。人間とは勝手なものですな。
しかし、ロシア恐怖症の西側ヨーロッパは、ウクライナを矢面に立たせてロシアと戦わせないと自分たちに危険が及ぶという妄想に囚われており、戦争継続を支持しています。それが2022年4月にトルコでの和平交渉をぶち壊したボリス ジョンソンの意図でしょう。その和平交渉に参加したウクライナのOleksandr Chalyiは、一年前、「プーチンは侵攻当初から、和平を実現するためにあらゆる努力をしていた。それは覚えておくべき重要なことだ」と語っています(下のビデオ29分あたり)。その上で、彼は、将来的にはウクライナはロシアとヨーロッパの橋渡し国になるという選択もあるが、現時点では、NATOへの加盟がベストだと思うと述べています。
というわけで、トランプにパワハラ喰らって袖にされ、ゼレンスキーは今度はヨーロッパ巡りです。そもそものこの戦争の原因はアメリカ主導のNATOであり、NATOに安全保障を丸投げして、真面目にロシアとの外交努力をしてこなかったヨーロッパは共犯者です。このヨーロッパの「ロシア恐怖症」がもたらした経済的マイナスは大きいです。例えば、この紛争でバイデン(CIA)は、いつもの偽旗作戦でノルドストリーム2を破壊し、ロシアのドイツ経由でのヨーロッパへのガス供給を止めたわけですが、おかげでヨーロッパは高いアメリカ産のLNGを買わされる羽目になりました。燃料コストの高沸で製造業は大きな打撃を受けました。いくらスターマーやマクロンがウクライナ支援をしようとも、ウクライナが戦況をひっくり返せるはずもないです。NATOの活動費の70%をアメリカが出しているのです。アメリカが全力で支援してロシアとはトントンの勝負ができる程度なのに、アメリカなしのNATOなら焼石に水です。それを、スターマーが理解していないとは思えません。下に示す論文に示されているとおり、スターマーの目的は、ウクライナを「捨て駒」として使い、最後の一人までロシアと戦わせ、ウクライナの滅亡と引き換えに、ロシアを消耗させることと思われます。そもそも、ロシアを黒海までに封じ込めるというのは、元々は1850年代の大英帝国対ロシア帝国のクリミア戦争時からのイギリスの戦略でした。それをアメリカ ネオコンが引き継いだわけです。スターマーにはその大英帝国時代の亡霊でもついているのでしょう。
それから、もう一つの週末の興味深い映像は、Piers MorganショーでのGeorge Gallowayです。イギリス人外交専門家で政治家の彼は何度かモーガンのショーに出ており、これまではモーガンに対しても比較的紳士的に議論をしてきました。一方、討論番組ホストのモーガンは、典型的な西側プロパガンダ拡散装置です。何十回も様々な専門家と議論をし、その都度、今回のウクライナの戦争についても教育されてきているのにかかわらず、常に、「邪悪な独裁者のプーチンがヨーロッパの独立国に一方的に侵攻した」という「おはなし」を延々と繰り返しています。イスラエル問題にしてもモーガンは、何度、専門家に教育されても「10/7にハマスがイスラエル人を虐殺したことが全ての発端である」と言い続けてきました。モーガンが単に理解力と記憶力に問題のある知的障害者であるはずがありませんから、彼は、意図的に(Jeff Sachsが言うところの)「子供じみたプロパガンダ」をがなりたて、よく事情をよく知らない人々に西側支配者にとって都合の良い思い込みを植え付けようとしているわけです。「いまだにロシアがこのウクライナ戦争始めたと思っているなら、それは、腐敗しているか、無知なのか、洗脳されているかだ」とJacob Creechは言っていますが、統一教会ではないですけど、無知につけ込んでのメディアによる洗脳というのは厄介なものです。
Gallowayは、モーガンの態度にブチ切れて最初から全開でモーガンを「君の手はウクライナ人の血に濡れている、戦争の共犯者だ」と批判。つまり、戦争のそもそもの責任はNATOの拡大であり、それをロシア恐怖症を煽って正当化してきた西側メディアだと主張したのです。モーガンはGallowayに喋らせまいと何度も口を挟み、揚げ足を取ろうとしますが、最後はほぼ無理矢理会話を終わらせざるを得ませんでした。
さて、ウクライナ情勢に気を取られている間にもイスラエルはウエスト バンクの違法入植を進め、レバノンのナスララの葬儀にまで空襲をかける鬼畜の行いを続けております。3/1には停戦第一期間が終わりましたが、ネタニヤフはいつも通り、ガザからのイスラエル軍の撤退するとの約束を守ろうとしません。こうして自ら約束を一方的に破ることでハマス側の反発を招き、それを口実にさらなる軍事作戦を開始するというのがこれまでのイスラエルのやり口でした。間違いなく、ガザへのジェノサイドを再開させるでしょう。そして、トランプといえば、イスラエル・パレスティナ問題についてはイスラエル支持の姿勢を崩しません。つい先日もイスラエルと$7 billionsの兵器売買に合意しました。ま、トランプの資金元がシオニストユダヤですから、イスラエルの要求には二つ返事、ウクライナに対する態度とは違うでしょう。ただし、ネタニヤフの悲願である対イラン戦争へアメリカを引き込むという目論見に関しては、トランプは一期目からその可能性を否定していますから、イラン戦争は避けられると思います。だからと言って、トランプにモラルとか高潔さとかを求めるのは無い物ねだりというものです。イスラエルのパレスティナへの破壊とジェノサイドは止めようとはしないでしょう。パレスティナ人を追い出してガザを高級リゾート地に再開発することは「取引」の一つぐらいにしか考えておらず、ネタニヤフ同様、人の命もパレスティナ人の苦難も地球の将来でさえも二の次です。
さて、ようやく本題。イスラエルの破壊と殺人活動が再開して、パレスティナの問題に戻る前に、ウクライナ戦争について、先週、ノルウェーSouth-Eastern大学の政治学教授のGlen Diesenが書いた記事を下に紹介します。ウクライナがこの破滅的な戦争に突き進むようになった経緯についてまとめてあります。冷戦後、ヨーロッパがロシアとの関係構築を怠り、盲目的にNATOに依存してしまったこと、それをアメリカネオコンが煽ってNATOを拡大してきたことが、今回の戦争の原因と考えられます。下に述べるように、そもそもNATOの役割は、30年前に終わっていたはずでした。しかるに、冷戦終結後は、1999年のユーゴスラビア爆撃に始まり、イラクにアフガニスタン、リビアにソマリア、などなど、NATOは、安全保障の機関ではなく、アメリカの他国へ政権転覆のテロ活動の道具として使われ、その都度、多くの市民を殺してきたのでした。むしろ、NATOはヨーロッパの安全を脅かす元凶であったといえるでしょう。
NATOと言えば、先週、5月のルーマニアの大統領選挙に立候補している最有力候補のCalin Georgescuが「偽情報拡散」の罪で逮捕されました。ルーマニアでは昨年12月に大統領選が行われGeorgescuが決選投票に残ったのですが、政府は親ロシア派の介入があったとして、突然、選挙の無効を主張し、大統領選を今年5月に延期したのです。一番人気のGeorgescuの大統領就任を現政府が阻止しようと不当逮捕までするのはNATOが原因のようです。というのは、黒海に面するルーマニアのウクライナ国境よりにNATOは巨大な軍事基地を建設しようとしており、Georgescuはそれに反対しているからです。結果、ルーマニアでは現在、大規模な反政府デモが起こっております。
NATOは米ソ冷戦時の1949年にレーニンのソビエト連邦の社会主義のヨーロッパへの拡大を阻止するためにできた組織です。当時は、ソビエトの社会-共産主義の西方拡大は アメリカと西ヨーロッパにとっては真の脅威であったのでしょう。しかし、冷戦が終わり、ゴルバチョフの経済政策が裏目に出てソビエトは弱体化、解体に至り、同時に、ソビエトがNATOに対抗して作ったワルシャワ条約機構も解体されています。本来なら、その時点でNATOも解体して然るべきでした。NATOが解体されなかったことで、今度はNATOがロシアにとっての脅威となりました。それで、冷戦終了時、ロシアが西側に約束させたことは「NATOの東進はしない」ことでした。しかるに、その直後のクリントン政権から、アメリカはその約束を反故にし、NATO加盟国を劇的に増やしてきました。プーチンはNATOの東方拡大が起こる度に抗議を続けてきましたが、NATO拡大は止まらず、当初の10カ国から今は加盟国を3倍に増やし、ついにウクライナにまで手を出したということです。このあたりの話は何度も繰り返していますので、省きます。要は、NATOは1989年のマルタ宣言、そして1991のソビエト崩壊で本来の存在意義を失ったのであり、解体されるべき組織であったということです。そして、元々の存在理由を失った後はNATOは存続することそのものが目的となりました。NATOが存在するためには敵が必要でした。それで、アメリカの外交アジェンダに沿って、タリバンだったりフセインやガダフィであったり、さまざまな敵を作ってはアメリカと一緒に他国に侵攻してきましたわけですが、もちろん、最大の仮想敵国は「強いロシア」をスローガンにしたプーチンのロシアでした。そして、モーガンのようなプロバガンディストのトーキングヘッドを通じて「ロシアの脅威」を喧伝し続けてきたのでした。だから、かつてエリツィンやプーチンが「ロシアもNATOに入るよ」と言った時にNATOがパニックになったのはそういう事情でしょう。戦争することが目的であるNATOの存在には外部に敵が必要であって、敵の中枢にはロシアがいなければならなかったということです。
さて、前置きが長くなりました。それでは、ノルウェーの政治学者、Glenn Diesenの記事を紹介します。この戦争の本質という点において、専門家の意見はほぼ一致していますが、ここでは主に、ヨーロッパの視点から議論されています。
— Glenn Diesen (@Glenn_Diesen) February 25, 2025
「最後の一人のウクライナ人まで戦う」という戦略は、いかにして道徳的に正しいものとして国民に売られたのか?
戦場で何十万人もの兵士が命を落としているにもかかわらず、NATO諸国はロシアとの外交的接触を3年近くもボイコットしてきた。外交は過剰な暴力を減らし、エスカレートを防ぎ、さらには平和への道をもたらすことができたはずだ。しかし、政治・メディアのエリートたちは、「外交拒否」を自分たちの道徳的正義の証拠として巧みに国民に売り込んだ。
本稿ではまず、ロシアを疲弊させるために、NATOがいかに長期戦を計画していたかを概説する。第二に、政治・メディアのエリートたちが、「外交は反逆」であり、「戦争は美徳」であるとどのように伝えたかを示す。
NATOの長期戦争
長期戦争はロシアを疲弊させるためであり、そのためにロシア人とウクライナ人ができるだけ長く殺し合うようにすることをNATOは目論んだ。ロイド・オースティン米国防長官は、ウクライナ戦争におけるアメリカの目的を、戦略的敵対国を弱体化させることだと説明した。ロシアがウクライナへの侵攻で行ったようなことができなくなる程度までロシアを弱体化することが目的だった [1]。2022年3月下旬、ゼレンスキーは『エコノミスト』誌のインタビューでこう明かした。 「たとえロシアとの戦争が、ウクライナの滅亡を意味し、ウクライナ人の命を犠牲にすることになったとしても、それはロシアを疲弊させることにはなる」[2]。
イスラエルとトルコの調停者は、ロシアとウクライナがイスタンブールでの平和的解決の条件に合意したことを確認している(2022年4月の交渉)。その条件はロシアが退軍させる代わりにウクライナが中立を保つことだった。しかし、米国とその同盟国は、ウクライナの軍隊を使ってロシアを弱体化させることができる絶好の機会を逃し、ウクライナが中立に戻るようなことを受け入れるはずもなかった[3]。
トルコ外相は、「戦争継続を望むNATO加盟国は、(ウクライナに)戦争を続けさせ、ロシアが弱体化することを望んでおり、彼らはウクライナがどうなろうと気にかけてはいない」と認めた[4] 。仲介役のイスラエルの元首相も、「プーチンを攻撃し続けるという西側の決定」のもと、アメリカとイギリスが和平合意を「阻止」したことを認めた [5]。 ドイツ連邦軍の元トップであり、NATO軍事委員会の元委員長であるハラルド・クジャット退役ドイツ軍大将も、「これはNATOが意図的に引き起こした戦争であり、米英はロシアを政治的、経済的、軍事的に弱体化させるために和平へのあらゆる道を妨害した」と主張した[6]。 2022年3月の米英首脳とのインタビューでは、「今の最終目的はプーチン政権の終焉だけ」として、「紛争を拡大し、それによってプーチンを血祭りに上げる」ことが決定されていたことが明らかになった[7]。
チャス・フリーマン元国防次官補(国際安全保障問題担当)兼米国務省中国担当局長は、ワシントンが「最後のウクライナ人まで戦わせる」ために戦闘を長引かせることを目的としていると批判した[8]。共和党のリンジー・グラハム上院議員は、最後のウクライナ人までロシアと戦ってくれれば、米国は有利な立場をとることができると主張した。 「これまで上手くいっている。我々がウクライナに必要な武器と経済支援を提供する限り、ウクライナは最後の一人になるまで戦うだろう」と[9] 。共和党のミッチ・マコーネル党首も同様に明言している。「ウクライナを支援し、ロシアの侵略者を撃退し続ける最も基本的な理由は、冷徹で現実的なアメリカの利益である。この戦争に勝つために東欧の友好国を支援することは、アメリカを脅かし、同盟国を脅かし、我々と利益を争うウラジーミル・プーチンの将来の能力を低下させるための直接的な投資だ」[10]。ミット・ロムニー上院議員は、この戦争への資金提供は「これまでで最高の国防支出である」と主張した。アメリカ下院議員のダン・クレンショーも、「アメリカ軍人を一人も失うことなく、敵対国の軍隊を破壊できるなら、それは良い投資だ」とプロキシ戦争を称賛した[11]。
キース・ケロッグ退役米軍大将も同様に、ロシアを打ち負かせば米国は中国に集中できるとして、ウクライナでの戦争を延長するよう求めた。「米軍を使わずに戦略的敵対国を打ち負かすというのが、プロというものだ」。NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長もこの論理を共有し、戦場でロシアを打ち負かせば、米国が中国に集中しやすくなると主張した。ストルテンベルグはまた、「もしウクライナが勝てば、ヨーロッパで2番目に大きな軍隊であるウクライナ軍が戦いに慣れて我々の味方にできる上に、ロシア軍を弱体化できる」とも述べている[12]。
反逆としての外交と美徳としての戦争
長期戦が決定されると、政治家とメディアは、「外交は反逆」であり、「戦争は美徳」であると国民を納得させるための「物語」と道徳的事例の創作を始めた。
世界を「善」対「悪」の戦いとして提示することは、戦争プロパガンダの基礎である。それによって、「外交」は危険な宥和策と見なされる一方で、平和の実現には軍事的勝利が必要だと考えるようになるからだ。ジョージ・オーウェルの「戦争は平和である」を彷彿とさせるように、ストルテンベルグは「武器こそが平和への道」だと主張する。
西側諸国の国民は、プーチンを交渉のテーブルに着かせるためには戦争を煽ることが必要だと考えていたが、3年近くにわたる戦争の間、西側諸国が交渉を提案することはなかった。西側のメディアの報道では、ロシアが交渉を拒絶しているかのような印象を受けるが、ロシアは外交や交渉に反対したことはなく、ドアを閉ざしたのは西側諸国の方だった。西側は、いわゆる「和平サミット」を開催し、各国政府が和平を追求しているという印象操作をしたが、そこには肝心のロシアは招待されていなかった。さらに、その目的はロシアに対する世論と資源を誘導することだと明言されていた。
2022年11月、マーク・ミレー統合参謀本部議長はロシアとの交渉開始を主張した。ウクライナはケルソンとハリコフで広大な領土を獲得したばかりであり、ウクライナは、和平交渉に有利な立場にあると主張した。ミレーのこの判断は正しかったが、彼は戦争の主目的がロシアを疲弊させるために、戦争を継続させることであるということを軽視していた。結果、ミレーは、戦争終結につながる発言を撤回しなければならなくなった[13]。
EUは、世界中の紛争においてほとんど常に即時外交と交渉を提唱している。ところが、ウクライナでは、開戦当初のEUの外交政策責任者であったジョゼップ・ボレルは、戦争は戦場で勝利することだと主張した[14]。 EUの次期外交政策責任者であるカーヤ・カラスは、戦争中の外交の必要性を否定した。 「なぜ彼(プーチン)と話す必要があるのか。彼は戦争犯罪人だ」[15]。外交とは今や、自分の意見に同意する人々と部屋に座り、敵対者を孤立させたことを仲間内で喜びあうようなことに成り下がった。EUは平和プロジェクトから地政学的プロジェクトへ移行してしまったのだ。
外交の回復や交渉の開始を提案する者は、即座に極左や極右の親ロシア派の手先として中傷される。戦争に反対する者が敵国の側にいるように見せかけるのは斬新とは言い難いが、反逆罪の告発は反対意見を圧殺する強力な手段である。ハンガリーのオルバン首相は、ウクライナ、ロシア、中国、そしてアメリカ(トランプ大統領との会談)を訪れ、和平への道筋を描く可能性を探った。しかし、EUはハンガリーを罰することで対抗し、政治・メディアのエリートたちは彼をプーチンの操り人形として委縮させようとした。同じことが、戦争終結を提案する誰に対しても適用されている。
プーチンの侵略に領土で「報いる」という危険な前例に反対する議論も、和平交渉に反対する道徳的な議論に見える。しかし、この議論は、戦争が領土問題から始まったという誤った前提に基づいている。イスタンブール和平合意でわかったように、ロシアは、ウクライナが中立を回復すれば、ロシア軍を撤退させるということに同意した。(しかし、ヨーロッパとウクライナはそれを拒否して戦争を継続し、その結果)この代理戦争で、ウクライナは敗北を続け、日を追うごとに兵力と領土を失い続ける結果となっている。
NATOがウクライナを加盟国にすると主張し続けているのは、ウクライナに対する道義的な支援の表れとして国民に示されているが、実際には政治的解決を妨害する結果となっている。NATOの拡張主義こそが戦争の元凶であるため、それを終わらせることが、恒久的な和平合意の礎石でなければならない。
来るべき反動
ウクライナの前線が崩壊し、死者が続出するなか、アメリカはウクライナに徴兵年齢の引き下げを迫っている。若者を犠牲にすれば、戦争をもう少し長く続けられるからだ。ウクライナ国民はもはや戦うことを望まず、脱走者は激増し、「徴兵」は路上から民間人をつかまえてバンに放り込み、ほとんどそのまま前線に連れて行くことで成り立っている。最近のギャラップ社の世論調査によれば、ウクライナで戦争継続を支持する人が過半数を占める州はひとつもない[16]。
ゼレンスキー大統領の元顧問であるオレクシイ・アレストヴィッチは2019年、NATO拡大の脅威が「ロシアを刺激し、ウクライナに対して大規模な軍事作戦を開始するだろう」と予測した。そして、NATOはウクライナ軍を使ってロシアを打ち負かすだろうと。 「この紛争では、武器、装備、支援、ロシアに対する新たな制裁、NATO軍の派遣、飛行禁止区域の導入など、西側諸国が非常に積極的に支援するだろう。我々は負けないし、それは良いことだ」[17]。
しかし、戦争は計画通りに進まず、ウクライナは破壊されつつあり、アレストビッチは戦争を続けることの愚かさを認識せざるを得なくなった。ウクライナ社会では、NATOが最後のウクライナ人までロシアと戦うために和平を妨害したという認識が広がっている。ウクライナ人は今後数十年にわたってロシアを恨むだろうが、西側諸国に対する憎しみもあるだろう。そして、西側メディアの戦争プロパガンダ担当者たちは当惑し、ロシアのプロパガンダを非難するのだろう。
参考文献: (リンク先の原文を参照ください)
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