百醜千拙草

何とかやっています

トルコと日本

2022-03-29 | Weblog
ロシア ウクライナの停戦協議がトルコのイスタンブールでまもなく開始される予定です。

しばらく前からウクライナは「中立化」すると言いだしていました。これがウクライナの真意なのであれば、ロシアの建前上の意向に沿った大きな譲歩であると思いますし、ロシア側も戦争は早く収束させたいでしょうから、東部の独立に関してなんらかの合意がなされれば話はまとまるかも知れません。あまり楽観的になれませんけど。

思うに、大体、1/2ぐらいの人は相手が譲歩すると単純に喜んでそれを受け取り、1/4ぐらいの人は譲歩に見合うようなお返しをしようとし、1/4ぐらいは、その譲歩に更に付け込もうとするようです。ロシア側が相手の譲歩に付け込もうとして、自体を悪化させるようなことがないことを望みます。

ウクライナのNATO加盟の阻止と以前からウクライナ政府軍と独立勢力の間で紛争が起きていた東部の親ロシア地域の保護が、ロシアの本当の目的だとすると、この東部のウクライナ州の独立承認が最大のネックになる可能性が高いと思います。軍事的中立化に関しては、ウクライナにとって、現在のベストオプションでしょう。NATOに加盟するのは不可能であること、アメリカはいざというときに自国の得にならないことは何もしないということはウクライナ政府は身に染みたでしょうから。しかし、ロシアは中立化を承認するかわりにかなりの見返りを要求する可能性が高いだろうと思います。フィンランドの時は領土の割譲でした。それを思うと、ロシアの要求には東部の親ロシア地区の独立の承認は最低含まれるはずです。

ところで、北方領土に関して、その日本返還がありえない、というのは、なにもプーチンやロシア政府がケチだからという理由だけではなく、ロシア憲法によって領土の割譲が禁じられているからだと思います。つまり憲法によって縛られているので、たとえプーチンでもロシア政府であっても交渉を進めることはできず、前に進めるには、ロシアの憲法を変える必要があるということだと思います。憲法がアメリカや日本のように権力者の暴走を縛るためにあるものだとすると、ロシアが憲法を変えるためには、国民投票を行い、ロシア国民が改憲に合意しないとなりません。よほどの見返りがない限り、自国の領土を仮想敵国アメリカの属国である日本に割譲するためにそもそもロシア政府が改憲の動議を出すはずもないし、出したところでロシア国民が合意するわけがありません。早い話が、戦争のどさくさでロシアに盗られた北方領土を取り戻すには、もう一度、戦争をやって、ロシアに勝って力ずくで取り戻すしかないです。そして、それは今度は日本の憲法を変えないとできないことです。とすると、現実問題として、正式に北方領土を日本の領土することは不可能なので、憲法より下位レベルの法律の変更などで、日本の国益と関係者の利益(ビザなし交流など)を増大していくしかないのです。ご存知のように、今回の政府の安易なウクライナ支援によって、それさえも失われました。

さて、ウクライナ東部の独立承認がロシアの譲れない条件であるとすると、同様にこれは非常に厄介です。ウクライナの憲法がどう言っているか知りませんけど、自国の領土をやすやすと諦めるような国はありません。ここの交渉は簡単ではないでしょう。そして、ウクライナは当初の希望、NATO加盟とEU経済圏への参加、から大幅に要求を後退せざるを得なくなって、現在は、中立化できれば恩の字、悪ければロシアの軍事同盟国としてソ連時代のように西側との前線に立たされたうえ、経済に関してもロシアの属国状態、という辛い状況に立たされてしまう可能性があります。

さて、本題、今回の停戦協議が行われるトルコ。イスタンブールは黒海から地中海への水路の要にあり、ウクライナのクリミア半島に軍事拠点を持つロシアにとって非常に重要な地点です。そして、トルコは、黒海を挟んでロシア、ウクライナ両国と独自の関係をもち、特にウクライナとは非常に友好的な関係にあります。トルコはNATO加盟国、エルドアン政権は親米政権であり、完全に中立とは言えませんけど、仲裁役としてこの戦争の終結に一役買うことになりました。日本も軍事的にはアメリカの属国ですが、本来なら戦争放棄をした国として、仲裁役を買って出て、国際社会にアメリカの属国としてではない存在価値を示すこともできたのです。

しかし、誰も日本のそのような役割を期待していないし、日本もそうしようとしなかった。というのは、日本政府に国際的な信用が皆無だからです。敗戦後から現在に至るまで、アメリカの属国として、アメリカの言うことに唯々諾々と追従し、国外最大の米軍基地に法外な資金を出す。アメリカ大統領は日本に来るのに正規の入国手続きもせず、米軍基地から無許可で入ってくるのに咎めもしない。アメリカの属国だという評価が確立してしまっているので、世界第二位の経済大国であったときでさえ、国連の常任理事国には入れない (ま、第二次大戦の敗戦国なので、そもそも無理ですけど)。首相がコロコロ変わる国で誰も責任をとらず、責任の所在が常に不明な国。最近ようやく長期につづいた政権は腐敗にまみれ、交渉どころかまともに対話もできないレベルで、全てがやってるフリだけ。

日本が政治三流国から脱皮し、国際政治に貢献できるようになるには、マトモな人が国会議員や首相に選ばれることが不可欠です。建前上は民主主義、つまりは国民しだいということですが。
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自民党と政府が失ったもの

2022-03-25 | Weblog
あらら、いわんこっちゃない。
日本がウクライナに軍備品を送ったことを口実に、早速、ロシアは北方領土返還が前提となる平和条約締結交渉はしないと明言した、というニュース。

東京新聞 3・22

、、、岸田文雄首相は22日の参院予算委員会で、交渉停止通告について「断じて受け入れられない」と強く反発。「今回の事態は全てロシアのウクライナ侵略に起因している。日ロ関係に転嫁しようとする対応は極めて不当」と非難した。、、、日本側はこれまで、「4島返還」から「2島返還」に要求のハードルを下げ、経済協力をてこに交渉の進展を目指してきたが、誤算が続き、成果を上げられないまま、水泡に帰すことになる。、、、首相在任中にプーチン氏と27回の会談を重ね、現在の日ロ交渉の土台を築いた安倍氏は22日、「時間が取れない」として、記者団の取材要請に応じなかった。

ははは、皮肉が効いてますな。岸田さんも平和ボケですかね。戦争中にロシアの敵方を露骨に支援しておきながら、「それはそれ、日露関係は別問題」というの理屈は手前勝手としか言いようがありません。それは正論かもしれませんけど、正論がすんなり通るなら誰も苦労しません。「戦争は悪だ、だからやめろ」と正論を言って、やめる国がどこにあるのでしょう。敵を露骨に味方しておいて、一方で平和条約は結びたい、という態度を、ロシアの立場に身を置いて多少でも考えてみたのでしょうかね。

そもそも、最初から北方領土に関してのロシアの態度ははっきりしていたと思います。プーチンにせよロシア外相にせよ、これまで露骨に明言することはありませんでしたが、北方領土を日本に返還することはあり得ない、というメッセージは何度も発せられていました。それがわからぬほど日本政府は愚鈍ではないでしょう。つまり、与党政府はロシアの意図がわかっていて、これまでも単に交渉しているフリをしていただけです。さすがに記者もそうは書けないので「誤算」という言葉で誤魔化したのでしょう。アベは、プーチンとの信頼関係などゼロだったという批判に応えることがができないので当然のように逃げの一手。「日露交渉の土台を築いたアベ」、記者も書いていて苦笑いしたでしょうな。土台など最初からなかったのですから。

ま、ロシアにとっては、日本が安易にアメリカやNATO諸国に追従してくれたおかげで、いい口実ができて、これから先、アベのような男が国内向けのパフォーマンスをするために、二十回以上もロシアにやってきてはくだらない茶番に付き合わされることがなくなって、サッパリした、というのが本音でしょう。

アベが意味のないプーチン詣でをし、演説では「ウラジミール、君と僕は同じ未来を見ている、行きましょう、、、二人の力で、いっしょに駆けて、駆けて、駆け抜けようではありませんか」などというような鳥肌の立つようなポエムを本人の前で語って、プーチンを沈黙させるような真似をしたのは、北方領土や拉致問題という長年の解決困難な課題に取り組んでいるフリをして、それを国内の人気取りに利用するためでした。

日本人なら、アベのポエムを聞いて、大国の大統領相手に、理想を語り理想に向けて努力しているのだと好意的に見る人もいないではないでしょうが、普通の外国人は呆れたでしょうし、プーチンはうんざりしたでしょう。最初から「同じ未来をなど見ていない」のはお互いにわかっているだろうと。

そもそも、外交は戦争の代わりにやるもので、交渉の場です。握手と笑顔の裏でいかにお互いの利益を最大限にするかの駆け引きを行うのが外交というものでしょう。アベの「外交」という名の遊びは、税金を使って地球をぐるぐるして金をばら撒いて一緒に記念写真をとってもらうだけ。アメリカには下僕のようにこびへつらい、タフガイのプーチンにはポエムと接待、そんなもので交渉が進むわけがない。そして、アベが気持ち悪いポエムを語る理由をプーチンが察しないわけがありません。交渉どころかまともに対話もできないのに無意味に何十回も会いに来る理由は自分と話をするためではない、この男にとって外交とは単に日本国内向けのパフォーマンスに過ぎず、自分はダシに使われているだけなのだと。プーチンもいい加減イライラしていたのでしょう、三年前には、アドリブで「前提なしで、平和条約を締結しようじゃないか」と言い出してアベをおちょくり、外務省がアタフタするという事件もありました。いうまでもなく、「前提なし」とは、北方領土は返さないよ、という意味です。当然、日本政府もアベも「それはできない」と言う。その予想通りの返答を逆手ににとって、この時もプーチンは、平和条約には信用が大切であり、(申し出を断るのは)信用がまだ十分とはいえない(から、交渉はできない)とアベにトドメをさしています。

さて今回、岸田政権がウクライナへの軍備支援をし、ゼレンスキーに国会で演説をさせ、れいわ以外の国会議員が総立ちになってそれに拍手したことを、ロシアは渡りに船だと思ったことでしょう。日本が戦争相手のウクライナを手放しで支援することはロシアに対する敵対行為であるから、北方領土返還とセットとなっている平和条約締結の交渉はしない、という口実ができたわけです。つまり、この機会を利用して、ロシアは「正式に」北方領土は未来永劫ロシアのものであると日本に宣言したということです。

もしも、日本政府がウクライナとロシアの戦争に中立的立場を表明し、両国の紛争の終焉に向けて協力する、と言っていれば、ロシアはこの口実を使うことはできず、平和条約交渉に(すぐには)トドメをさされることはなかったのではないでしょうか。

とすると、今回、直接の悪手を放ったのは岸田政権とれいわ以外の与野党です。しかし、この経緯をつらつら考えると、そもそもの原因は、アベがアメリカには下僕のように振る舞う一方で、ロシアに対しては、ロシアが自国の領土としている北方領土を、接待とポエムと多少の経済協力で分けろと言って交渉の用意もせずに何度もやってきては、プーチンをイヤというほどうんざりさせたのが原因でしょう。

ここでも、平和条約交渉の一方的な停止について、ロシアを非難するのは容易いですけど、ロシアに付け込まれる原因をつくったのは、アメリカの属国でありながら、表面だけはロシアに友達づらですりよるアベの中身のない外交であり、それに続く岸田政権の安易なウクライナ支援です。

そういう視点で今回のロシア-ウクライナの戦争も見てみれば、そもそもの原因はNATOのアグレッシブな東進を進めたアメリカそれに安易に縋ったウクライナ政府の不用心さと言えるのではないでしょうか。当事者同士はもうすでにどっちに理があるというレベルは超えてしまっていますから、中立の第三国しか、おたがいの話を聞いて仲裁する役目を担えません。日本は、今回、少しはあったそのチャンスを全面的にウクライナ側につくことで失い、ロシアに正式に敵国認定される口実を与えてしまったということです。

とすると、自民党は、ずっと人気稼ぎのネタにしてきた外交上の問題、北方領土と拉致被害を、岸田政権の浅慮な判断、つまり、この戦争においてウクライナ側に立つという表明と、先の自民党大会の演説で拉致問題を無視した、ということによって、同時に失ったと言えます。
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全体主義のプロパガンダ

2022-03-22 | Weblog
先日、子供が残していったものを整理していたら、ジョージ オーウェルの「動物農場」が出てきました。高校時代に読んだもののようです。

オーウェルは若い頃、スペイン内戦時、フランコによる独裁政府の反政府活動員として、マルクス主義統一労働者党に加わったところ、スターリン指導下の共産党による粛清に遭い、結果として反スターリン派の民主社会主義者になったとWikipediaにあります。動物農場に関しては、「報道の自由とロシアのスターリン主義と共産主義への痛烈な批判。人間の農場主へ革命を起こした動物たちが二人の指導者の片方により苛烈な支配をされる過程を描いた風刺小説」とまとめられてあります。

子供の持っていた版は、ピュリッツァー賞ジャーナリストであるRussel Bakerが
前書きを書いたもので、そこをパラパラと読んでみると、「動物農場」のウクライナ版が出版された時の前書きで、オーウェルは、スペインでの粛清の経験から、「民主主義国家の優秀な人々の意見が、いかに容易に全体主義プロパガンダにコントロールされるかを学んだ」と述べたそうです。

今の日本を見ていると、この言葉を人々は肝に銘じるべきだと思います。とくに、同調圧力が強く、長いものに巻かれて付和雷同するのが処世術とでも考えられている日本という国で、少数意見を主張したり、あるいは全体主義に注意すべきだと当たり前のことを言うだけでも、叩いて萎縮させようとする連中が山のように出てきます。自分の頭で自分の考えを練り発言する努力をするよりも、多数派に従う方がラクだからでしょう。考えなくて済みますからね。

全体主義を煽るステルス的なメッセージは子供のみるアニメにも危険なぐらい溢れています。アクションものは大抵、敵がいて、自分の同胞を攻撃してくるものと戦うという筋ですけど、「街や村の人々を守る」ために身を危険にさらして敵と戦うことが美徳のように描かれます。いまの与党の極右政治家はメディアを巻き込み、着々と抑圧的な全体主義、あるいは民主主義が非国民であった時代に向けて動いているように私には見えます。この空気はすでに広く一般国民にも広がりつつあります。

今回のロシア侵攻に関して、多くの日本人がロシアが独立国家に侵攻し戦争を仕掛け、多くの民間人が犠牲になったという一点をもって、ロシアが悪だから、ウクライナを助けないといけない、という単純思考をしているように感じます。そういう意見が多数なので、その意見は正しく、それに反対するものは「非国民」だとでもいうようないじめチックな雰囲気さえあります。そこには、なぜこの戦争が起こったのか、プーチンの目的とゴールは何か、この予想されたロシアの行動に対してなぜゼレンスキーは対処を怠ったのか、というような考察がかけています。さすがに、漫画のように「プーチンが人殺しと破壊に快感を覚える異常者で世界征服の野望をもっていたからウクライナに戦争をしかけた」と考えるような人はいないでしょう。侵攻については、議会で議論され、国民に対しては、プーチンは侵攻の前に一時間にわたるウクライナとロシアの歴史について演説をし、ウクライナ侵攻の理由を説明して、説得しようとしたのですから、この戦争には、少なくとも、ロシア議会が納得できるような論理と証拠に基づいて議論されるに値する正当な理由が(ロシアには)あったはずです。

また、ウクライナも一枚岩ではなく、大勢のロシア人やロシア人との血縁者が住んでいる国です。民主的な手続きを経て大統領は選ばれましたが、それは別に彼に国民生活に直結する政治の全てを白紙委任したわけではありません。いま、彼が西側諸国や日本で演説をして、軍事的協力を得ようとしているのは、冷静に見れば、彼がロシアの侵攻を防ぎ、ウクライナ国民の安全を確保するための施策を怠った結果であり、その責任の一端はアメリカや西側諸国にあると考えているからでしょう。ならば、ウクライナ国内には、大統領の西側への過剰な擦り寄りと対ロシア外交の失敗が招いた惨事であるという批判がウクライナ国内には当然あるものだろうと想像されます。その辺のあって然るべき議論や批判もあまり聞こえてきません。私が不気味に思うのは、メディアは単純に出来事を伝えてロシアの攻撃を非難する浅薄な報道に終始し、そうした根源的な事実や疑問に関する情報が(侵攻当初には多少みられたのに、今では)ほぼ議論されることもなくなっているように感じることです。ツイッターでは「ロシア悪、ウクライナ支援」の大合唱ですが、私はオーウェルの言う「全体主義のプロパガンダ」の匂いが強くなってきているのを感じます。

先日のアメリカ議会の演説で、ウクライナ大統領はno-fly zoneを再度要請しました。これはアメリカとNATOがウクライナ上空のロシア戦闘機を攻撃することを意味しますから、アメリカがウンというはずがありません。アメリカとNATO諸国は戦闘に,加わらず、武器や物資の供与でお茶を濁すつもりです。彼ら自身の利益、国益を考えれば当然でしょう。ロシアもこのアメリカやNATOの動きを見て、その意図を理解したはずです。これが普通の政府の考え方です。自国の利益を損なわないこと、それが優先です。

しかるに、日本は政治家が、与野党、前のめりでウクライナ側に立つという姿勢を示そうとしています。慎重なのは、共産党とれいわ。ロシアにとって、日本はアメリカの属国ではあっても敵ではなく、むしろアベのばら撒き外交のおかげで、カモであったはずです。今回の日本政府の安易なウクライナ支援の表明は、全体主義に流されやすい日本人のその傾向を刺激し、ロシアに要らぬ不快感を与えたかも知れません。下手をすると、ロシアは北方領土に日本の原発を標的にしたミサイル基地さえ建設し始めるかもしれません。日本政府は、まず自国の心配をした上で、ウクライナの心配をするのが順序です。しかし、安易にウクライナに防弾チョッキを贈ったり、ウクライナ大統領に国会で遠雑させることがロシアにどういうメッセージを送ることになるか考えているようには見えません。

戦争は絶対悪、ロシアが悪いと非難するのは 簡単です。そしてそれに同意しない人を批判するのも容易い。しかし、いくら日本やその他の国々が、「戦争は悪、ロシアは戦争をやめろ」と言ったところで、起こってしまった戦争を止めるのには役に立ちません。むしろ、第三国の政府ならば、戦争当事国の一方に安易に与するような行動をとることが、如何なる結果を産み、その国民や引いては世界の安全と利益にどういう影響が考えられるかを熟慮した上で、ウクライナ大統領の国会での演説やウクライナ政府への支援を考えるべきでしょう。

長くなっていまいました。全体主義が危険であるのは、多数派にのれば安全で、自分の頭で深く考える必要がなくラクだからでしょう。それで、感情に任せて容易に流され、あっという間にブレーキが効かなくなるのです。特に日本人にはこの傾向が強い。

宮沢喜一の言葉、保守とは立ち止まること、立ち止まって考えることだ、という言葉を思い出したいと思います。
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論文評価

2022-03-18 | Weblog
ようやく小さな論文がアクセプトされました。最初に投稿してから半年弱です。投稿時にBioRxivで公開されたものに比べると、リバイスの間に多少のデータが加えられて見栄えは若干よくはなりましたけど、要点には変化はありません。多少の見栄えのために、この半年の間に費やされた労力とコストと時間を考えると、つくづくアホらしいと思います。ま、暇つぶしができてよかったと思うようにしています。

この雑誌に発表するのは初めてですが、初めて経験したことの一つは、ツイッターでの拡散用の要点をまとめた図の作成と一行要旨の提出でした。私もツイッターで情報を集めるようになって、初めてこのツールのパワーを実感しました。毎日、何千と出版される論文の中から興味のあるものを探して要約を読むという作業だけでも大変ですけど、ツイッターで情報の発信源をいくつかフォローしておけば、一日に数分それを眺めるだけで、重要なニュースは受動的に入ってきます。いちいち検索サイトを立ち上げて、キーワードをタイプして、何度もクリックして目的地にたどり着くということを繰り返す能動的な作業は必要はありません。というわけで、ツイッター拡散用の図の作成にまた丸一日費やすことになりました。それから筆頭著者の人のインタビュー記事用の原稿と写真、これは本人に任せます。これもこの雑誌の面白い試みだと思います。論文の簡単な解説を裏話もふくめて著者にやらせるわけです。普通はフロントページでの議論に値するような論文はレビューアの一人が第三者の立場で解説記事を書くと思います。しかし、多分、このような専門分野に特化したマイナー雑誌では、フロントページに割く予算も解説記事を引き受ける人もいないでしょうから、かわりに筆頭著者に論文のポイントを説明させる簡単な論文紹介ページを設けたのだと思います。これは、読者にとっても、著者のモチベーションという点にとっても、雑誌にとっても良いアイデアだと思います。

さて、少し前、学術論文の出版と評価について、従来の発表方法、つまり、商業雑誌などに投稿してピアレビューなどの評価を受けた上で論文を発表するという形、ではなく、まずpreprintでオンラインで出版し、それが評価を受けれるようなシステムにするべきだという話を書きました。今回の論文にしても、ピアレビューの間に要した半年の時間と労力に、それだけの意味があったとはとても思えません。結論は何も変わらず、主にコスメティックな部分が改善しただけです。

雑誌での発表は、限りある紙面に載せるための取捨選択が行われるので、論文に優劣をつけ、研究を評価するシステムとして代用されており、ゆえに研究者は雑誌のインパクトファクター (IF)を気にします。だからこそ、雑誌社はIFをあげ、人気を得ることで多くの出版料を集めるというビジネスが成り立ちます。先日、論文レビューの依頼がきた聞いたことのない雑誌はIFが5以上あるというので、見てみると、掲載されているほとんどの論文が総説論文で原著論文が見当たりません。そういうことか、と思って依頼は受けないことにしました。この総説論文を多く載せて引用回数を増やし、IFをあげるという雑誌の戦略は多分、Cellなどが始めた手法だと思います。雑誌にしてみれば、一旦、IFをあげてしまえば、自動的に質の良い原著論文を集めることができるようになり、それがさらにIFの上昇に寄与するというわけでしょう。こうしたIFエンジニアリングとでも言うべき手法でIFを気にする研究者を操作してビジネスに繋げるわけで、IFのわりに掲載論文の質が悪い雑誌というのにしばしば見受けられるようになりました。

先日、Qeiosという団体から興味深いメールを受け取りました。BioRxivに発表された私の分野に関連するある論文を評価してほしいという依頼です。この団体はどうも、オンラインで研究成果を発表する研究者の補助をすることで、商売をしているようです。preprint論文でフィードバックを得ることで、正式な雑誌投稿に際して原稿の改善に役立てるという目的なのでしょう。レビューは実名でBioRxivの論文サイトのコメント欄につけてほしいという依頼でした。ビジネスとして成り立っているのでしょうか?

しかし、こういうpreprint論文のレビューアを探して、論文の評価づけをするサービスを第三者の独立機関が受け負い、資金配分機関、例えばNIHや文科省などが、それを研究者の評価に考慮すると言えば、preprintで公開ピアレビューは広く成り立つと思います。これだと迅速に発表されたpreprint論文が、雑誌社のビジネスの影響を受けずに、低コストで評価を受けることができる思います。つまり、雑誌社を通じた論文出版と研究者の評価を切り離すことができ、その間に費やされる多大な時間と費用と労力が節約できると思うのですが、どうでしょう。
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絹の靴下

2022-03-15 | Weblog
ウクライナ情勢、泥沼の消耗戦になってきていますが、ロシアはどこを落とし所と考えているのでしょうね。現政権を潰して傀儡政権を立てたとしても、国民が納得しないでしょうし。双方ともに停戦を目指しており、双方ともに歩み寄りがありそうなので、遠からず、妥協点にいたりそうには思いますが。

ロシアが先に手を出したのでロシアが一方的に責められていますけど、事の発端はアメリカと西側諸国のアグレッシブな東方への勢力拡大ではないしょうか。この構図はパレスティナ問題とも類似性があるように思います。第一次対戦中、パレスティナでは、ロシアやヨーロッパで迫害されていたユダヤ人のイスラエル建国を、イギリスは金銭的な見返りと引き換えに焚き付ける一方、その裏でアラブの独立もこっそりと支援、結果としてこのユダヤとパレスチナの対立と紛争が激化し、現在に至るまで続行中です。この二枚舌は米英のお国芸で、第二次大戦以降もアメリカは第三国間同士の対立を煽っては、それを利用して金儲けをしてきました。

今回の戦争も、西側に入って「いい暮らし」をしたいと望むウクライナの欲求を利用して、アメリカがウクライナの脱ロシア化を焚き付け、武器を売り込み、西側化を煽ってきた結果ではないかと思います。ロシアが言うように、西側諸国とウクライナはロシアが国防上許容できるギリギリの線を、ロシアの意向を無視して超えてしまったのでしょう。いずれにせよ、結局、苦しむのは、地理的に東西の間に置かれた小国の人々です。

ウクライナの気持ちは理解できます。しばらく前、「フィンランド化」の話を書きましたけど、ウクライナが最初から、妥協してフィンランド化を選んでいれば、こうならなかったかも知れません。思うに、ウクライナはEU圏で豊かな生活を享受するフィンランドが羨ましかったのでしょう。しかし、ロシアに跪くのは嫌だった。NATOの一部となることで、西側とアメリカの庇護を得て、ロシアに跪くことなく、西側の一員となって、豊かになりたかったのでしょう。

ロシアは軍事大国ではありますが、経済的にも人口的にも、もはや大国とは言い難いです。むしろ製造業は弱く、世界に先駆けて開発したコロナワクチン、スプートニク5号も、自前で大量製造ができず、製造を外注する始末。経済の多くは天然資源の輸出に頼っているという状態。

一方、フィンランドはロシアに隣接しながらも、EU経済圏に属し、一人あたりのGDPで比較すると、ロシアよりもはるかに豊かな国です。2020年のデータだと、フィンランドは世界13位です。一方、ロシアは66位で、国民一人当たりの経済規模はアメリカの1/6、フィンランドの1/4と言うレベルです。(ちなみに日本は24位)ロシアの経済力は人口割でみれば他のソ連諸国の多くよりもまだ低いのです。そして、ウクライナと言えば120位、そのロシアのさらに1/3しかありません。

ウクライナは肥沃な農業地帯を持ち、優秀な人材もいるのに経済的に苦しんできました。ソ連時代の核やチェルノブイリなど負の遺産も多く残されています。地理的に近く、ロシアとの関係においても共通点があるにもかかわらず、フィンランドと現在のウクライナの差は大きいです。片や、EU経済圏で、国民一人あたりでみれば世界でもっとも豊かな国の一つ、一方は、ソ連時代からの負の遺産に苦しめられ、世界でも下から数えた方が早いぐらいの弱い経済に喘ぐ国。ウクライナがフィンランドのように豊かになりたいと思うのは当然でしょう。

それで、1957年のMGMミュージカル映画、「絹の靴下 (Silk stockings)」を思い出しました。これはFred AstaireのMGM最後の映画で、見どころはCyd Charisseの踊りです。下にリンクする「赤のブルース」の踊りのシーンの前では、パリでの仕事のあとすっかり西側の生活に魅了されたソ連政府職員がロシアに帰ってから再会し、甘美なパリでの思い出に耽り、「退廃的な」西側風の音楽を演奏し始めるという部分があります。その後に続くロシア風の振り付けを交えたCharisseの踊りは圧巻です。

この映画は、これよりさらに20年前につくられたグレタ ガルボ主演の映画「ニノチカ」を元にしたものあり、「絹の靴下」が意味する西側の物質的な豊かさに憧れるロシア人を描き、抑圧的で官僚主義なソビエト時代のロシアを皮肉っています。

この映画のように、ウクライナも幸福を追求したいと願っていたに違いありません。おそらくクライナは強く感じていたのです。共産主義の理想も死に、貧しさだけが残された、オラ、もうこんな村、イヤだ、と。EUに入って豊かになって、銀の匙で食事をし、絹の靴下を着けるのだと。フィンランドにできて、自分にできないわけがないのだ、と。これまで、我慢に我慢を重ねてきたのだ、もうロシアの言いなりにはならないのだ、と。

しかし、ロシアは力ずくで侵攻し、反ロシアを煽り続けてきたNATOもアメリカも口先だけで動かない。西側とロシアの間で、ロシアにはいじめられ、西側には利用され見捨てられた、泥沼の戦争の中で、幸福な未来は遠のくばかり。

Silk Stockings (1957)


ついでにNinotchikaでの上に相当するシーン、Back in the USSR

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忘れてはならぬもの

2022-03-11 | Weblog
深刻な事態が続くウクライナ情勢ですが、情報がロシア側の主張とウクライナおよび西側の主張に大きな隔たりがあって、どう判断していいものかこまります。原発や病院への攻撃があったという事実は間違いないようですが、事実を客観的に報道できる者がいない以上、当事者の証言に頼るより他なく、結局は「藪の中」状態です。チェルノブイリの電力喪失に関しては、ロシア国防省は「ウクライナの民族主義者が原発の変電所や送電線を攻撃した」と主張し、ロシア関係当局がベラルーシの支援を受けて電力供給を再開させる方針という話。また、マリウポリの小児病院がロシア軍の爆撃を受けたということで、戦争法、ジュネーブ条約の重大な違反としてロシアが攻撃されていますが、これに対してもロシアは、「同病院は以前からアゾフ大隊(Azov Battalion)などの過激派によって占拠されていた。これらの集団が妊婦や看護師、職員を追い出した。配置されたウクライナ軍部隊が攻撃していると説明、小児病院爆撃は偽ニュースであり、情報テロに等しいと表明した」とのこと。

ウクライナ側にとれば、ロシアの非人道的な行いや国際法違反があったのなら、それを広くニュースにすれば国際社会からの圧力を加えるのに有効と思われますが、ロシア側の病院を攻撃する動機がわかりません。80年前の東京大空襲ではあるまいし、意図的に市民を攻撃してプレッシャーをかけて、ウクライナの降伏を促すというような、勝ったところで、ロシアとウクライナの双方に禍根を残す手段をロシアがわざわざ取るとは思えません。太平洋戦争の時は人種の違う日本人は邪悪だから殺してもよいという理屈が通ったかもしれませんけど、今回は同胞間戦争ですしね。

いずれにしても、ロシアが先に手を出したという事実は動かしようはありませんから、国際社会はウクライナの言い分をより信じるのでしょう。しかし、数日前から、ウクライナも限界に達しつつあるのか、妥協点を探り出しているようです。ウクライナにとってみれば、本来の目的はEU圏に入ること、NATO入りはそのための安全保障。そもそも内紛が進行中の国はNATO入りは無理ですし、NATOもウクライナに手をだしてロシアとやりあうのは御免なので、ウクライナがいくら切望してもNATO入りは不可能です。ウクライナはこれを交渉の手段に使って、軍事的に中立化すること、それから東部二洲のウクライナ人の権利保護を条件に自治区化を認めるあたりを落とし所にロシア側に歩み寄るのではないでしょうか。今回のことで、ウクライナの西側諸国、アメリカに対する不満も急激に増大しているようですから、この戦争が終わった後もウクライナの困難はまだまだ続きそうです。

一方で、ツイッターのラインからすでにウクライナ関係のニュースの扱いが徐々に薄れつつあります。人々の興味の移り変わりは早く、人はすぐに新しい現実に順応し、昔を忘れていくようです。

現に、今日で11年目にしか過ぎないのに、福島原発の爆発はすでに過去のものとなりつつあります。あの大量の汚染水や汚染土の問題も話題に上らなくなりました。福島の核燃料の取り出しには数百年かかり、その間も汚染は現在進行中で、今年から汚染水は海に流され、多くの避難民が取り残されているというのに。

忘却することがなければ、人間は気が狂ってしまうでしょうが、忘れてはならないものというのはあって、戦争はその一つだと思います。その戦争に至った歴史を学び、きっちりと総括して、責任の所在と原因を明らかにして、国民で共有することが必要なのだと思います。日本は敗戦後、アメリカ主導で東京裁判が行われ、そして復興にあたって、アメリカによって戦後民主主義と憲法が導入され、社会の形が与えられました。

日本人が自身によって戦争を総括したわけではなかったことが、責任の所在をうやむやにして、現在の改憲論者や核武装論者が跋扈する状況を生み出したのではないかと私は思っています。結果は、A級戦犯が戦後日本の首相としてアメリカの間接統治の手先として働くことになりました。仮に当時の日本が民主主義国家であって、日本人が自らの手で日本側の戦争責任者を裁いていたら、そうはならなかっただろうし、その孫が国会でウソを吐き続け、モリカケ桜のような恥ずべき行いをし、プーチンには徹底的にバカにされて北方領土返還を永久に不可能にし、途上国に出向いてはカモにされ、経済政策は大失敗し、パンデミックにあたってはマスク二枚で誤魔化そうとして冗談のネタにされるような、そんな悲劇は起こらなかったでしょう。

日本人の気質として、問題の原因をつきとめ責任の所在を明らかにするよりは、昔のことは水に流して「終わりよければすべてよし」と丸く収めることを好むのだと思いますけど、この波風たてずやりすごすことを優先する態度が、結局、問題を直視することを拒否し、結果、その解決や予防への教訓を学べず、考えなしに付和雷同し、赤信号をみんなで渡っては全滅するような愚かな過ちを繰り返す原因になっていると思います。

アベやその近辺の核武装論者に欠けているのは、日本という国は唯一の被爆国であり、最大の原発事故をおこした国であるという自覚とその意味についての理解ではないかと思います。今回のロシアの攻撃をみれば、普通の想像力のある人なら、50基以上も国内に無防備な原発が乱立している日本は戦争になれば必ず負けるということが想像できないわけがありません。それをアメリカに発射ボタンを預けたままで核シェアリングすれば防げるなどと正気で考えていたら気が狂っています。だいたい、核シェアリングって何ですかね?アパートを二人で借りるのじゃあるまいし。さすがにそこまでバカではなくて、核武装には裏に真の目的があるのでしょうけど、何といっても、マスク二枚で世界的パンデミックを乗り切ろうとしたようなレベルですから、マジもんかもしれません。それに、ウクライナはソ連時代の核兵器をシェアリングしてますけど、ピンチですね。

脱線しました。われわれは80年前の戦争も福島原発事故も、それがどのような原因でおこり、そしてどういう結末を生んだのかということを忘れてはならない、ということが言いたかったのです。

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戦争法

2022-03-07 | Weblog
今回、ロシア軍がウクライナの原発施設を攻撃したというニュースが流れています。ロシア側はウクライナの自作自演だと主張。ロシア軍は電力供給を奪い、兵糧攻めにする計画なのか、あるいはロシアのいうように、ロシアへの国際的非難を高めるためのウクライナの芝居なのか、ニュースからはよく判断はつきませんけど、総合的に考えて前者だろうとは思います。

原発の攻撃は「戦争法(戦時国際法)違反」であると非難が多く見られます。法律は人々、団体、社会などの間でのコンフリクトを軽減するために上位に設けられているものだと思いますし、それを守るための強いの強制力や罰則がなけれ法律違反を抑制する効果は乏しいでしょう。強制力のない場合に法は確信犯には意味がないです。

現代の戦争において戦争法に違反した際の罰則は経済制裁しかありません。しかし、対立する側と経済圏で独立している場合であるとか、経済制裁を罰とも思わないような独裁者なら、効果は薄いでしょう。

そもそも、戦争法とか国際法という言葉に違和感を感じるのは、戦争は、直接暴力によって相手を屈服させるために行われる無法なものであり、この法が無法なものに関する法であるという理由でしょう。勝ったものが正しいのが戦争というものですし。

しかし、戦争は無法に行われるわけでも、不条理でもありません。仕掛ける方は、論理に基づく大義をもって戦争の必要について、兵士や国民を説得する必要があります。一定の手続きを踏み、段階を踏んで、暴力の行使に至るのですから、本来、長期的それから短期的目的に見合うような戦争のやり方を選択するはずです。とすると、戦争のやり方そのものは、戦争の大義とは別に、「誤ったやり方」があり、それを法として明らかにしておくことは意義があります。

ちょっと調べてみると、古代から戦争のやり方にはいろいろ決まりがあったようです。思うに、昔から戦争は何らかの問題を解決するための直接的方策であったわけで、その解決によって戦争を仕掛けた方に大きな損害が及ぶようなやり方では意味がないと考えたからでしょう。

Wikiによると、例えばユダヤのトーラーには、戦争でやってはいけないことなどが決められていたようです。例えば、戦争で木を伐採しないといけない場合でも、実のなる木は切ってはならない、とあるそうです。多分、戦争に勝ってその土地を手に入れもそれを荒廃させてしまったのでは意味が乏しいからだったのでしょう。他にも、いろいろと戦争においての制限があって、それは戦争を仕掛ける側が、自らに対して課すルールであったようです。こうした歴史的な戦争の目的を振り返ると、原発への攻撃はやってはならないことであると戦争法で定められている理由も明らかです。

ですので、ロシアの原発への攻撃が本当であったとして、戦争法を無視し、本来の戦争によって達成する目的から外れた行いに手を出してしまうことの意味は重大です。これは、追い詰められたプーチンが正気を失いつつあるという読みに合致します。そうではなく、もしKGBスパイ出身のプーチンが正気でやっているのなら、さらに危険であると思います。

戦争という無法手段に頼るということは、国際的な意見に反する行為、最後の手段をあえて選んだというわけですから、勝ってはじめてトントンの収支、負けるか引き分けならば、おそらく先に手を出した側のその責任者は重罰を受けることによってダメージの軽減を図るしかなくなると思います。とすると、プーチンは精神的に相当、追い詰められて、勝つためには手段を選ばない、というレベルに達している可能性は想像できます。

キエフの早期掌握に失敗したプーチンは、すでに、どういう形であれこの戦争が終わったらタダではすみますまい。というよりも、プーチンの失脚か急死以外にこの泥沼化しつつある戦争が終結するシナリオが見えません。ひょっとしたら、プーチンは、すでに拳銃自殺したヒトラーに自らを重ね合わせているのかも知れません。

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フィンランドの決断とプーチンの終わり

2022-03-04 | Weblog
ロシアのウクライナ侵攻、分単位で変化する情勢は流動的であり、まだまだ帰趨が読めませんが、当初の予想をはるかに越えて泥沼化したということだけは言えるでしょう。

前回、ウクライナが「フィンランド化」を拒絶して、ロシアと全面戦争になったことに触れましたが、その直後に、スウェーデンについで、フィンランドもウクライナ政府側に武器の供給を表明したというニュースが出ていました。このスウェーデン、フィンランドというNATO非加盟国がウクライナ支援を表明したことの意味は大きいと思うのですが、このことをメディアはあまり議論していないようなので、素人の床屋政談を。

これら二国は軍事的にはNATO非加盟ですが、経済圏としてはEUに属しています。そして、ウクライナは、旧ソ連国で(プーチンによれば、ベラルースとともにロシアと一体である)のにもかかわらず、新政府の大統領は政治経験のないユダヤ人コメディアンのゼレンスキーで、西側に接近し、EU入りとNATO入りを望んで、西側の軍事拠点を提供する意思さえ見せました。かつてはソ連のバルト三国も共産圏多くの国もすでにNATO加盟国ですから、こうした経済的、軍事的な西側の勢力拡大の中で、ウクライナ新政府が示した露骨な西側へ接近をプーチンが黙って見逃せるはずがありません。私はこの点で、ウクライナ大統領の経験不足に付け込んだアメリカの未必の故意を感じざるを得ません。少なくとも、中国はそう解釈していました。ゲスな話をすれば、今回のようにヨーロッパへのロシアからの天然ガスの供給が止まって代わり天然ガスを売って市場を拡大するのは誰か、自分は手を汚さずウクライナに前線でロシアと戦わせて武器を売りつけ、あわよくば軍事拠点を手に入れて得をするのは誰か、ちゅーことですね。

こういう目でみると、ロシアのウクライナ侵攻は、日本の真珠湾攻撃とも重なります。日本が追い込まれて開戦に活路を見出すしかなくなったと同じく、ロシアも西側のあおりとウクライナ政府のロシア離れを危機的状況と捉えて、ウクライナに侵攻せざる得ない状況に追い込まれたのでしょう。今のロシアは戦況を有利に導こうとして、神風特攻隊なみの異常な攻撃性をみせています。大きく異なる点は、日本は当時、追い込まれて闇雲に勝ち目のない戦争をしかけたが、ロシアは圧倒的に勝てる状況と読んで先制攻撃をしかけたにもかかわらず、その読みがはずれたということでしょうか。いずれにしても、これらの戦争で大きく傷つくことなく、得をするのがアメリカという点は共通しています。

話がずれましたけど、何年も前からロシアは中国、インドなどのBRICS諸国ととEUに対抗する経済圏を構築しようと努力をしてきました。しかし、ソ連崩壊以後のロシアの凋落は明らかです。プーチンが「強いロシア」をスローガンを掲げるのも、ロシア国力の凋落に加えて、アメリカ、NATO諸国の勢力拡大に非常な危機感を覚えているからでしょう。事実、ロシアはフィンランドに対しても先月の始めに、NATO加盟をしないようにとの通達を出しています。かつてなら、言うまでもないことをわざわざ念押しする事態になっていたのです。フィンランドやウクライナがNATOに加入し、ウクライナがEUに取り込まれるという事態が起こることを、プーチンは許すことはできません。しかるに、ウクライナ新政府は状況を理解してか、いないのか、アメリカの煽りにホイホイ乗って、プーチンを挑発し、この事態に繋がったと考えられます。いずれにせよ、追い詰められていたのはプーチンの方です。

そして、ウクライナ侵攻が始まり、ことを見守っていたフィンランドとスウェーデンは、ロシアの苦戦に驚き、追い詰められたプーチンの状況を理解し、ロシアがかつての力を失いつつあることを確認したスウェーデンがまずウクライナ支援を表明し、そして翌日フィンランドもそれに続いたということだと思います。つまり、フィンランドは「フィンランド化」を脱する好機であると事態を評価したのでしょう。

ニュースには下のようにあります。

北欧フィンランドの政府は2月28日、ウクライナにライフル銃や対戦車兵器などの武器を供与すると表明した。非同盟国で武力紛争で中立政策をとってきたフィンランドの今回の対応を受け、ロイター通信は「政策の転換を意味する」と指摘した。同じく中立政策をとってきたスウェーデンも27日、ウクライナに対戦車兵器5000基を供与すると発表していた。

フィンランドはかつてスウェーデン、それからロシアに支配された歴史をもつ小国であり、独立後もつねにロシアに主権を奪わかねない状況に置かれ、中立を保ちロシアの敵ではないことを示すことよって独立を保ってきた国です。喩えてみれば、家族の生活を守るために、イヤなパワハラ上司にもゴマをすり、頭も下げ、雨にも負けず風にもまけず、いつもヘラヘラ笑っている、そういう戦略でしたたかに生き延びてきましたのです。それが、武器支援とはいえ、中立を捨て、ウクライナ政府側、つまり西側に立つとの意志を明らかにしたということを、ロイター通信は政策の転換であると指摘したのでしょう。ということは、フィンランドは、ウクライナはロシアの思い通りにはならないことを確信したに違いありません。そして、フィンランド人は、現ウクライナ軍を80年前の自身の姿と重ねたでしょう。80年前のスターリンによる攻撃の際も、フィンランドは数日で陥落すると思われていたにもかかわらず、フィンランドは抵抗し、そして一年におよぶ戦争の末、領土の一部と引き換えに独立を維持したのだそうです。

長いものに巻かれるしかなかったフィンランドは、戦況から西側とウクライナ政府に分があると判断し、パワハラ親父との決別のチャンスに賭けたと解釈できます。そしてパワハラ親父を跳ね除けようとするウクライナ軍の姿に損得なしの共感を覚えたのかも知れません。

とすると、もしロシアがあと数日のうちにキエフを掌握するか、満足する条件で停戦合意に達することができなければ、この戦争は長く続いて、双方に大きな犠牲を出したあと、ロシア国内からの批判に耐えきれなくなったプーチンの失脚に伴って終息するのではないでしょうか。独立国の内政に干渉し、軍事侵攻したのですから、西側諸国や国連が圧倒的多数でロシアを非難するのは当然ですけど、いくら外から非難しても止まりません。プーチンもそう非難されることも、戦争が罪ない大勢の人々の生活と生命を破壊する悪であることも十分承知の上で始めたのですから。止めることができるのはロシア人の声であり、その声は日に日に大きくなっています。
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プーチンの誤算

2022-03-01 | Weblog
ウクライナのロシア侵攻、当初、戦争被害者は一般人を含めて数万人の規模になると予測されていました。この数字は、ロシアが侵攻開始後、キエフを掌握するまでに必要な軍事行動に伴うものとして算出されました。その前提は、ロシア軍は侵攻後、数時間、長くても1-2日でカタをつけるだろうとの予測の上になりたっていました。私もそういうことになるだろうと思っていました。しかし、意外なことに、事実はそうはなっていません。

日曜日、ツイッターで内田樹さんは、次のようにツイートしていました。

たぶんプーチンのシナリオは(1)電撃的にウクライナ軍を撃破(2)キエフ占領(3)大統領逮捕(4)傀儡政権樹立(5)傀儡政権によるロシアとの平和条約締結と東部独立承認(6)反ロシア派市民の大量国外脱出、というものだったと思います。それを48時間以内くらいで仕上げるつもりだった。
 国際社会が安保理で議論している間に事実上の領土併合を終えてしまえば、欧米は軍事介入できない以上、それぞれの国益優先で足並みが乱れる。計算外だったのがウクライナ国民が果敢に抵抗しているということとロシア国内世論が味方をしてくれていないこと。
 ふつう戦時大統領に対しては熱狂的に支持率が高まるものですが、そうなっていません。プーチンが一番恐れているのはロシア国内で「この戦争には大義がない」という世論が広まることでしょう。この機に乗じてプーチンの側近の中から「背中から刺す」裏切者が出てくるかも知れません。、、、、

私もほぼ同意見です。ウクライナ軍の抵抗とロシア国内の世論に関しては、プーチンもロシア議会も、かなり大きく過小評価していたのでしょう。プーチンは出鼻で失敗り、方向転換を余儀なくされつつあります。停戦交渉は当初、ウクライナはNATO加盟国であるポーランドでの開催を希望しましたが、結局、ロシア同盟国のベラルースで、イスラエル首相の仲介で実現し、現在進行中です。両者の要求の差があまりに大きので、おそらく不調におわると思われます。しかし、プーチンはすでに失敗の恐怖を感じ始めているでしょうから、ひょっとしたら条件のすり合わせの合意が起きて停戦が実現するかも知れません。

現ウクライナ政権には飲めない条件でしょうけど、東部二州の独立をウクライナが認め、NATOとアメリカと距離を置く「フィンランド化」を約束すれば、(「フィンランド化」はロシアから独立を守るために小国のフィンランドが採った中立戦略で、当初、フランスがウクライナに提案したものですが、ウクライナ政府が拒絶しました。これについては、のちの機会に触れたいと思います)多分、ロシアは引くと思います。フィンランドと同じくNATOに加盟せず、中立的立場にあったスウェーデンは、今回、はじめてウクライナ軍支持のために武器供給などの支援を決めました。ウクライナの武力支援を行なって、ロシアのキエフ陥落を阻止し、ロシアとウクライナが停戦して交渉をせざるをえない状況を作り出すためでしょうけど、キエフ陥落が長引けば市民の被害も増えます。

さて、先のツイートのように、プーチンの読み間違いは、ウクライナ軍の抵抗とロシア国民の反戦を過小評価していたことだと私も感じます。ロシア市民に今回のウクライナへの侵攻への積極的な支持が乏しいどころか、反戦争デモがロシア各地で起こっているという状況は、グローバル化した現代で、かつての冷戦中と異なって、人々が国家に求めるものも人々の意識も変わったということを示していると思います。プーチンは、その時代の変化を読みきれず、自分の若い時の経験がそのまま通用すると思ってしまったのかも知れません。

昔の知り合いで、スウェーデンに住み、スウェーデンとモスクワで二つの研究室を運営しているロシア人がいます。小国のスウェーデンからの研究費は限られている一方で、福祉国家なので研究員には手厚い待遇せざるをえず、研究室の運営が苦しいので、こうして二カ国で研究費を集めてプロジェクトを分散しているのです。去年のクリスマスに、思いがけず電話をくれて他愛ない話をして、それなりに元気でやっているようでよかったな、と思ったのです。今回の制裁措置でモスクワの研究室運営が困難になっているのでは、と思ってメールしてみました。彼はペレストロイカとソビエト崩壊後の最悪の時期に学生時代を過ごし、大学を終えたあとロシアを脱出しました。西側で生きるロシア人として複雑な思いがあった中で起きたこの事件です。返ってきたメールは下のようでした。

「思いやり深い言葉をありがとう。私はこれらのニュースに動揺し、ショックを受け、破壊され、押しつぶされそうです。戦争は常に恐ろしいものであり、受け入れがたいものです。しかし、今回の戦争は同胞戦争であり、あり得る限り最悪のものです。
 私と妻は、ただ心配しているだけでなく、プーチンが私たちの人生を、ロシア人が他の国と同じように普通の人々であることを示すための20年にわたる努力を破壊したと思っています。
 私のモスクワの研究所は、東西を結ぶもう一つの大きな努力の結晶でしたが、それは一日で破壊されました。私はプーチンを憎みます。バルコニーに「戦争反対」のポスターを貼っただけで刑務所に入れられるような抑圧的な国ですから。しかし、私はこれがプーチンの時代の終わりであることを願っています。子供を無意味に失った母親は、世界で最も強い力です。
ご自愛ください」

普段は、陽気で困難を笑い飛ばすようなタイプの彼が、これほど強い感情を出してプーチンを批判するとは驚きました。また市民の抵抗がプーチンの強権的なロシアを終わらせるだろうと考えているようです。西側で働くロシア人としては、今回の戦争は迷惑な話ではすまない話です。戦争が普通の市民に与える影響には何一つプラスのものはありません。

「戦争が絶対悪である」ことに異論はありません。そして、これはプーチンであってもそう考えているはずです。しかし戦争はなくなりません。わかっているのにやめられない。その理由は個々に特有の理由があるせよ、結局は、人間の欲と恐れと疑いの心が原因なのだろうと思います。その感情に理屈がついた場合に戦争は理性によって正当化されるのでしょう。プーチンは8年前のクリミア併合の時から今回のことを想定し、その意義も勝算も計算した上で、周到に侵攻を決断したと思いますが、八年は短いようで長い月日、肝心のロシア国民の気持ちの変化を図り損ねたのかも知れません。
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