ロシア ウクライナの停戦協議がトルコのイスタンブールでまもなく開始される予定です。
しばらく前からウクライナは「中立化」すると言いだしていました。これがウクライナの真意なのであれば、ロシアの建前上の意向に沿った大きな譲歩であると思いますし、ロシア側も戦争は早く収束させたいでしょうから、東部の独立に関してなんらかの合意がなされれば話はまとまるかも知れません。あまり楽観的になれませんけど。
思うに、大体、1/2ぐらいの人は相手が譲歩すると単純に喜んでそれを受け取り、1/4ぐらいの人は譲歩に見合うようなお返しをしようとし、1/4ぐらいは、その譲歩に更に付け込もうとするようです。ロシア側が相手の譲歩に付け込もうとして、自体を悪化させるようなことがないことを望みます。
ウクライナのNATO加盟の阻止と以前からウクライナ政府軍と独立勢力の間で紛争が起きていた東部の親ロシア地域の保護が、ロシアの本当の目的だとすると、この東部のウクライナ州の独立承認が最大のネックになる可能性が高いと思います。軍事的中立化に関しては、ウクライナにとって、現在のベストオプションでしょう。NATOに加盟するのは不可能であること、アメリカはいざというときに自国の得にならないことは何もしないということはウクライナ政府は身に染みたでしょうから。しかし、ロシアは中立化を承認するかわりにかなりの見返りを要求する可能性が高いだろうと思います。フィンランドの時は領土の割譲でした。それを思うと、ロシアの要求には東部の親ロシア地区の独立の承認は最低含まれるはずです。
ところで、北方領土に関して、その日本返還がありえない、というのは、なにもプーチンやロシア政府がケチだからという理由だけではなく、ロシア憲法によって領土の割譲が禁じられているからだと思います。つまり憲法によって縛られているので、たとえプーチンでもロシア政府であっても交渉を進めることはできず、前に進めるには、ロシアの憲法を変える必要があるということだと思います。憲法がアメリカや日本のように権力者の暴走を縛るためにあるものだとすると、ロシアが憲法を変えるためには、国民投票を行い、ロシア国民が改憲に合意しないとなりません。よほどの見返りがない限り、自国の領土を仮想敵国アメリカの属国である日本に割譲するためにそもそもロシア政府が改憲の動議を出すはずもないし、出したところでロシア国民が合意するわけがありません。早い話が、戦争のどさくさでロシアに盗られた北方領土を取り戻すには、もう一度、戦争をやって、ロシアに勝って力ずくで取り戻すしかないです。そして、それは今度は日本の憲法を変えないとできないことです。とすると、現実問題として、正式に北方領土を日本の領土することは不可能なので、憲法より下位レベルの法律の変更などで、日本の国益と関係者の利益(ビザなし交流など)を増大していくしかないのです。ご存知のように、今回の政府の安易なウクライナ支援によって、それさえも失われました。
さて、ウクライナ東部の独立承認がロシアの譲れない条件であるとすると、同様にこれは非常に厄介です。ウクライナの憲法がどう言っているか知りませんけど、自国の領土をやすやすと諦めるような国はありません。ここの交渉は簡単ではないでしょう。そして、ウクライナは当初の希望、NATO加盟とEU経済圏への参加、から大幅に要求を後退せざるを得なくなって、現在は、中立化できれば恩の字、悪ければロシアの軍事同盟国としてソ連時代のように西側との前線に立たされたうえ、経済に関してもロシアの属国状態、という辛い状況に立たされてしまう可能性があります。
さて、本題、今回の停戦協議が行われるトルコ。イスタンブールは黒海から地中海への水路の要にあり、ウクライナのクリミア半島に軍事拠点を持つロシアにとって非常に重要な地点です。そして、トルコは、黒海を挟んでロシア、ウクライナ両国と独自の関係をもち、特にウクライナとは非常に友好的な関係にあります。トルコはNATO加盟国、エルドアン政権は親米政権であり、完全に中立とは言えませんけど、仲裁役としてこの戦争の終結に一役買うことになりました。日本も軍事的にはアメリカの属国ですが、本来なら戦争放棄をした国として、仲裁役を買って出て、国際社会にアメリカの属国としてではない存在価値を示すこともできたのです。
しかし、誰も日本のそのような役割を期待していないし、日本もそうしようとしなかった。というのは、日本政府に国際的な信用が皆無だからです。敗戦後から現在に至るまで、アメリカの属国として、アメリカの言うことに唯々諾々と追従し、国外最大の米軍基地に法外な資金を出す。アメリカ大統領は日本に来るのに正規の入国手続きもせず、米軍基地から無許可で入ってくるのに咎めもしない。アメリカの属国だという評価が確立してしまっているので、世界第二位の経済大国であったときでさえ、国連の常任理事国には入れない (ま、第二次大戦の敗戦国なので、そもそも無理ですけど)。首相がコロコロ変わる国で誰も責任をとらず、責任の所在が常に不明な国。最近ようやく長期につづいた政権は腐敗にまみれ、交渉どころかまともに対話もできないレベルで、全てがやってるフリだけ。
日本が政治三流国から脱皮し、国際政治に貢献できるようになるには、マトモな人が国会議員や首相に選ばれることが不可欠です。建前上は民主主義、つまりは国民しだいということですが。