世間はすっかりお休みモード。楽しく過ごそうと思っていましたが、生き物を扱っているとなかなかそういう具合にもいきません。加えて半年前に引き受けた総説原稿の締め切りをすっかり忘れていて、締め切りが1月1日だということに気がついたのが先週です。今年は休暇が取れなかったので、クリスマスはゆっくりしたいなあ、と思っていたのですけど、ダメでした。その前に引き受けた二本の論文レビューもそろそろ催促のメールがきそうです。私、こういう締め切りのプレッシャーに弱いのです。締め切りものを抱えているというだけでイヤーな気持ちになります。催促メールが来ると罪悪感を感じてしまいます。ちょっと情けないですが。
先週は、ステムセル研究者の人々の会でチョークトークをするというイベントがあって、しゃべることにしました。しゃべると言っても5分、スライドなし、ホワイトボードとマーカーを使って、各研究室でやっていることを紹介するということで、全部で約20人ぐらい、いろいろな分野でステムセルがらみで研究している研究者がしゃべりました。このハイプロファイルな人々の中でステムセル研究者でもなく、Natureクラスの論文もプライマリーで書いたこともなく、ポジティブデータもないというのは、きっと私だけだったでしょう。ちょっと前からやりだした私の研究アイデアは専門家はどう思うのか知りたかったのですが、感じたことは一流のステムセル研究者と言っても、結構、自分の分野外のことは十分に知っているわけではないのだな、ということでした。大したアドバイスもありませんでしたが、否定的な意見もなし。安心した気持ち半分、がっかりした気持ちが半分。しかし、やはり各分野のリーダーたる人々や、数人の新進気鋭の若手の話は大変面白く、それだけで半日を潰したかいがありました。5分のチョークトークでこれらの新鮮な研究のエッセンスを知ることができるというのも素晴らしいアイデアだと思いました。
その会では、別の施設の知り合いの人がそばに座ったので、休憩時間に雑談。この方は私の分野の大先輩で、私が大学生の時にとあるバイオテクにいて、ウチの分野に大きなインンパクトを残す発見をScienceに発表し、その後アカデミアに移った方です。その後もアクティブに活動され、数ヶ月まえのウチの分野のメジャーな学会では大きな賞を受賞されました。私も大学院の最初はこの発見を使った実験をしていました。
あいにく、話す内容はいつものカネの話です。いま出しているグラントが通らなければ、研究室を閉めないといけないかもしれない、という話。学会の賞はいらないから研究資金が欲しい、(私は賞には無縁ですが)その気持ちはよくわかります。私の身の回りにもこの方を含めてあと数人、この分野の大教授と言うべき大先輩が、研究費の獲得に苦労しており、研究者引退の危機にあります。また別のベテラン教授、この方も関連した分野の大御所ですが、また聞きで知ったところによると、しばらく十分な額の研究費が取れずに、個人の引退資金を崩して研究費の足しにしていたとの話。書きはじめた総説にはこの方の歴史的な研究成果を複数を引用していますが、あらためてこれほど分野に偉大な貢献をしてきた人が、研究のために引退資金を切り崩しているという現状に寒気を覚えます。
これらのベテランの人々は過去の偉大な業績はもちろん、いまだに毎年、一流紙に研究成果を発表し続けている私などよりよっぽど生産性の高い人々です。そんな人が引退を迫られるような研究システムはおかしい、という当たり前の結論になりました。かと言ってわれわれに何ができるわけでもなく。結局、お互い愚痴ってガス抜きで終わりました。ま、精一杯できることをやって、運を天に任せるしかありません。
日本ではイザナギ景気を超えるイザナミ景気らしいですが(皮肉です)、株価は全世界的に乱降下しながら暴落中。研究の世界での不景気はこの15年間改善の兆しを見せません。知る限り、ウチの分野のグラント採択率の現状は史上最低です。
ま、やるべきことをやって、あとは坦々と運命を受け入れる、そう気持ちで来年もやっていきたいと思います。
先週は、ステムセル研究者の人々の会でチョークトークをするというイベントがあって、しゃべることにしました。しゃべると言っても5分、スライドなし、ホワイトボードとマーカーを使って、各研究室でやっていることを紹介するということで、全部で約20人ぐらい、いろいろな分野でステムセルがらみで研究している研究者がしゃべりました。このハイプロファイルな人々の中でステムセル研究者でもなく、Natureクラスの論文もプライマリーで書いたこともなく、ポジティブデータもないというのは、きっと私だけだったでしょう。ちょっと前からやりだした私の研究アイデアは専門家はどう思うのか知りたかったのですが、感じたことは一流のステムセル研究者と言っても、結構、自分の分野外のことは十分に知っているわけではないのだな、ということでした。大したアドバイスもありませんでしたが、否定的な意見もなし。安心した気持ち半分、がっかりした気持ちが半分。しかし、やはり各分野のリーダーたる人々や、数人の新進気鋭の若手の話は大変面白く、それだけで半日を潰したかいがありました。5分のチョークトークでこれらの新鮮な研究のエッセンスを知ることができるというのも素晴らしいアイデアだと思いました。
その会では、別の施設の知り合いの人がそばに座ったので、休憩時間に雑談。この方は私の分野の大先輩で、私が大学生の時にとあるバイオテクにいて、ウチの分野に大きなインンパクトを残す発見をScienceに発表し、その後アカデミアに移った方です。その後もアクティブに活動され、数ヶ月まえのウチの分野のメジャーな学会では大きな賞を受賞されました。私も大学院の最初はこの発見を使った実験をしていました。
あいにく、話す内容はいつものカネの話です。いま出しているグラントが通らなければ、研究室を閉めないといけないかもしれない、という話。学会の賞はいらないから研究資金が欲しい、(私は賞には無縁ですが)その気持ちはよくわかります。私の身の回りにもこの方を含めてあと数人、この分野の大教授と言うべき大先輩が、研究費の獲得に苦労しており、研究者引退の危機にあります。また別のベテラン教授、この方も関連した分野の大御所ですが、また聞きで知ったところによると、しばらく十分な額の研究費が取れずに、個人の引退資金を崩して研究費の足しにしていたとの話。書きはじめた総説にはこの方の歴史的な研究成果を複数を引用していますが、あらためてこれほど分野に偉大な貢献をしてきた人が、研究のために引退資金を切り崩しているという現状に寒気を覚えます。
これらのベテランの人々は過去の偉大な業績はもちろん、いまだに毎年、一流紙に研究成果を発表し続けている私などよりよっぽど生産性の高い人々です。そんな人が引退を迫られるような研究システムはおかしい、という当たり前の結論になりました。かと言ってわれわれに何ができるわけでもなく。結局、お互い愚痴ってガス抜きで終わりました。ま、精一杯できることをやって、運を天に任せるしかありません。
日本ではイザナギ景気を超えるイザナミ景気らしいですが(皮肉です)、株価は全世界的に乱降下しながら暴落中。研究の世界での不景気はこの15年間改善の兆しを見せません。知る限り、ウチの分野のグラント採択率の現状は史上最低です。
ま、やるべきことをやって、あとは坦々と運命を受け入れる、そう気持ちで来年もやっていきたいと思います。