前回、論文レビューに関しての愚痴を書きましたけど、画像操作が明らかだった投稿例に関しては雑誌編集部が更に調査することになったと編集者の方から連絡がありました。真面目にやっている雑誌社は大変ですね。浜の真砂と研究不正、これが蔓延るのも研究業界のreward systemが論文出版に大きく依存しているからです。そのニーズに目をつけた金儲け主義の出版社がさらに低品質の論文の大量生産に加担し、それに巻き込まれる人々の時間を奪い、科学研究への信頼を損なって行っていると感じます。
多分、これは科学出版に関わる人々の共通の感想だと思います。私は一応、知らない雑誌からのレビューの依頼は、その雑誌のインパクトファクターとその雑誌がいわる”predatory journal”でないことをチェックしてから引き受けることにしていますが、その線引きは曖昧です。
Predatory Journal という言葉は、コロラド大の図書司書、Jeffery Beallによって広まった言葉で、彼のつくったリストが発端だと思います。リストが閉鎖された五年前に出版された彼自身の記事があることに気が付き、読んでみました。流石にアカデミアの科学出版を追ってきた人の考察は興味深く、少し前に私が論文評価というエントリで述べたように、今後の科学出版は商業出版ではなく、preprint が重要なプラットフォームになると予測しています。結局はカネの問題ですから、時間と共に、科学出版業界や研究業界そのものが腐敗してしまうのは避けられないことです。思うに、腐敗したシステムは丸ごと廃棄して、新たなシステムを構築しなおすしかないだろうと思いますし、そのときには、科学論文は、レビューなし、紙媒体なしで出版する形になると思います。その評価は専門家のピアによる実名での公開評価となと思います。これによって論文出版は、雑誌社の商業主義に影響を離れ、論文と個人ベースでの評価が主となり、かつ、これまで裏方であった査読者としての研究者も評価とクレジットを受けることなると思います。
下にBeallの論文の一部のDeepLしたものを添付します。学問の世界で研究に携わる人には一読をおすすめします。
(一部引用)、、、そして、自分たちの利益のためだけに著者報酬モデルを利用する、略奪的なジャーナルが現れ始めたのです。私が最初に気づいたのは、2008年から2009年にかけて、それまで聞いたこともないような、広範な分野を扱う新しく創刊された図書館科学の雑誌への投稿を勧誘するスパムメールを受け取ったときでした。そして、学術図書館員として、この新しい情報を整理し、共有したいと思うのは自然なことでした。私は、Posterousというブログ・プラットフォームで、略奪的出版社の最初のリストを公開しました。、、、
私が略奪的出版社から学んだことは、彼らはビジネス倫理、研究倫理、出版倫理よりもお金をはるかに重要視しており、利益のためにこれら学術出版の3本柱は簡単に犠牲にされるということです。
所有者に利益をもたらすことを目的としているため、ゴールド(著者支払型)オープンアクセス学術誌は、査読に関して強い利益相反を有しています。彼らは常にお金を稼ぎたいと考えており、論文を拒否することは収入を拒否することを意味します。この対立は、現在進行中の学術出版の没落の核心にあります。
医学研究は現在の人類にとって最も重要な研究であるにもかかわらず、もはや本物と偽造の医学研究を明確に分けることはできないのです。、、、
かつて隆盛を誇った学術出版業界は、急速に衰退の一途をたどっている。学者の間では、学術出版は崩壊しつつある、という感覚が一般的です。、、、この業界は一貫して、自らを規制することに失敗してきました。略奪的なジャーナルが出現し、増殖し、繁栄することを許し、見て見ぬふりをしてきたのです。、、
略奪的な出版社は、学術出版業界を崩壊させ、科学と査読も一緒に崩壊させています。オープンアクセス・ジャーナルが登場する以前、学術出版は、研究者、ジャーナル編集者、出版社、読者の間の暗黙の「紳士協定」によって支配されていました(6)。この合意は、研究および出版プロセスのすべてのレベルにおいて、高いレベルのインテグリティを維持するというものでした。しかし、略奪的な出版業者とそれに加担する著者が、自分たちの目的のために学術コミュニケーションを堕落させたため、この合意はいまや破棄されたのです。
学術出版の未来
最後に、学術出版の未来について少し考えてみましょう。この未来では、プレプリント・サーバーとオーバーレイ・ジャーナルが役割を果たすと私は考えています。プレプリントサーバーは、arXiv.orgによって開拓され、その数は増え続け、より多くの学術分野にサービスを提供しています。私はこの状態が続くと予想しています。高品質の学術雑誌に比べれば、プレプリントサーバーは安価に運営できます。特に、査読の管理やコピー編集をする必要がないのですから。最低限の審査は行いますが、審査する場合は、論文レベルではなく、研究者レベルで行われるのが普通です。つまり、科学的コンセンサスから乖離した論文を提出した研究者をブラックリストに載せているのです。、、、、