この二日で一気にウクライナ情勢はレッドゾーンの危機に達してしまいました。
今回、ロシアがウクライナのドネツクとルハンシクの独立を独自承認し、ロシア系住民の保護を建前に「平和維持軍」を侵出させたことを以て、アメリカと西側諸国は、非難、経済制裁を発動しました。アメリカの金魚のフン、自民党日本政府も追従。ま、国際社会はだれも日本政府を相手にしていませんが、ロシアと関係のある日本人や日本と関係があるロシア人にとってはいい迷惑です。
西側とアメリカの動きはプーチンは十分にシミュレーションしているでしょうから、すべて想定内。軍事行動は東部の独立承認国の範囲はあるかにこえて、ウクライナ各地で開始、すでにキエフにおよんでいるという話ですから、多分、あと数時間でウクライナはロシアが掌握したという宣言がでるでしょう。そして、西寄り現政府をパージし、新ロシア傀儡政権を新たに建てて、ウクライナ全土をロシア下に抱き入れることになりそうです。
日本や米国のメディアは西側からの解釈をもとにしているので、軍事侵攻であって、ミンスク合意を踏み躙るとロシアを非難。一方、ウクライナ政府に近づいて武器を供給し西側に引き入れ、ロシア系ウクライナ地域に武力行為をしかけ、ロシアに軍事的脅威を与えているのはNATOとアメリカであるとロシア側は考えているようです。
他の国のメディアの論調をみてみました。
例えば、イランのメディアによると、ロシアの独立承認以後、ウクライナ東部のドネツクとルハンシクからロシアへ向かう難民の数がそれまでの数日間と比べて減少しており、その理由に同地域へのロシア平和維持部隊派遣への期待と安全面の向上が挙げられている。とのことで、これは、長らく続いてきた西側寄りのウクライナ政府軍と親ロシアのこの地域との紛争が、2014年ミンスク合意による停戦合意後も解決にいたらず、紛争が継続してきたため、住民の多くがロシアに難民として避難していた状況であったのが、ロシアの介入を受けて収まってきたということです。
また、中国は、一方的な対ロシア制裁を非難。「ロシア・ウクライナ間の緊張の扇動者であるアメリカが今後、どのような役割を果たすか、彼らが何してきたのかを注視する必要がある。戦火を抑えず、この戦火に油を注いだとして他者を非難することは無責任で倫理に反する行為である、アメリカはウクライナへの武器送付を続けることで、常に恐怖感を拡大してきた」とアメリカを非難。
双方に言い分はあるでしょうが、アメリカがこれまで世界中でやってきたことを考えるとごもっとも。
当のウクライナでは、ロシアがウクライナ東部に「特別軍事作戦」を開始したことをうけ、ウクライナ議会の議員は西側による見せかけのウクライナ支援を批判し、「西側によるウクライナ防衛の保証はどこか?」と疑問を投げかけたとのこと。
これまでアメリカ、西側が武器をウクライナに売って政府を西側に引き寄せてきたのに、実際にロシアが領土で軍事行動をおこしたら、口先の批判と経済制裁だけでお茶をにごしていると、裏切られた気持ちにはなるのでしょうな。
トルコは23日、プーチンと首脳会談。ロシアのこの二国の独立承認は認めないとしたものの、黒海を挟んでウクライナ、ロシア両国とは隣国関係にあり、双方と独自の関係を持つトルコは、中立的立場で解決を望んでおり、NATOの対応に期待するとの話。
前回、この事件が将来的に中東に戦争をもたらすのではないかという妄想を述べたわけですが、その中心となるであろうイスラエルは、ロシアの動きにはかなり敏感に反応しています。私の妄想をイスラエルの人はもう少し現実味をもって妄想しているようで、二日前の次のイスラエルの新聞記事から、長いので断片的に少し。
米露間で第三次世界大戦や核ミサイルの応酬が起こることはないとは思うが、月曜日の夜から、ウクライナに関するにらみ合いは、間違いなく、1962年10月のキューバ・ミサイル危機以来、世界の安全保障において最も危険な時を迎えている。、、、今回のウクライナ侵攻の意味は、空間的にも時間的にもウクライナをはるかに超えたところにある。、、、プーチンは頻繁に「NATOの拡大」論とウクライナの軍事同盟への加盟を、彼の関連する不満と正当化として持ち出した。そのため、西側諸国は、プーチンの主張にも一理あると信じ始めた。
、、、アメリカは試されているのだ。そう、危機がドンバス地域を超え、中露の暗黙の枢軸形成の一部であることを認識しているのだ。そして、「アメリカの秩序」が挑戦されていることも認識している。
、、、うまくいけば、アメリカにとってもう一つの厄介な頭痛の種であるイラン核合意の締結と相まって、アメリカの信頼性とリーダーシップを回復することになる。しかし、バイデンは、自分がロシアに対処するために選ばれたのではないこと、そしてウクライナの解放者として再選されることはないだろうということを、最初に認めることになる。
、、、うまくいけば、アメリカにとってもう一つの厄介な頭痛の種であるイラン核合意の締結と相まって、アメリカの信頼性とリーダーシップを回復することになる。しかし、バイデンは、自分がロシアに対処するために選ばれたのではないこと、そしてウクライナの解放者として再選されることはないだろうということを、最初に認めることになる。
わかりにくい言い回しですけど、イスラエルの新聞にこの記事を書いた人はこれをキューバ危機に例えるほどの事態であると考えており、バイデンにはこの危機を乗り切ることはできないだろうと考えているということでしょう。
この揉め事が長引けば長引くほど、アメリカとロシアとの対立は自然とエスカレートし、世界的核戦争に至る可能性は現実味を帯びてきます。キューバ危機の時と違って「強いロシア」を掲げるプーチンは自ら引くわけにもいかず、バイデンも振り上げた拳を降ろせぬまま、事態は悪化していくでしょう。
ひょっとしたら、この対立の平衡を崩すのは、イスラエルのもつ危機感なのかも知れません。