百醜千拙草

何とかやっています

豹変のワケ

2015-12-30 | Weblog
一昨日の従軍慰安婦に関しての日韓合意のニュースを聞いてちょっと思ったこと。

いくらアベ政権が単に日本の黒い歴史(と国際認定されている)を無かったことにして、「美しい国」に整形したいからといって、従来の日本政府の見解を簡単にヒックリ返すわけにはいきません。そんなことをしても自己満足だけで、アジア諸国、世界からますます嫌われるだけですから。標準の偏差値をもつ人間なら、今後のよりよい関係のためには、たとえ個人的に納得できなくても、国際認定されている従軍慰安婦の責任問題に関しては、従来の政府見解を踏襲する「大人の対応」を選ぶはずです。

その点から、政府の今回の行動は(当然のことをしたという点で)評価できます。

東京新聞、本音のコラムで斎藤美奈子さんは、今回のアベ政権の100%逆方向へ転換と言ってもよいような行動の動機を推察しています。1)自らの過ちに気がついて心を入れ替えた、2)逆らえない相手に翻意や譲歩を命じられたので、しぶしぶ従った、3)本当は考えを変えたわけではないが変えたふりをして、その場を乗り切ることにした。

この合意後のアベ政権周辺の行動を見ると、やはり1)はありえないと思います。どこかの新聞では「オバマに背中を押された」とも書いてありましたから、これは間違いなく2)が主な理由でしょう。

私は、以前からこの政権が、国民の意思を全く顧みず、独裁的、強権的にムリヤリことを進めようとする態度がどこから来ているのだろうか、と考えておりました。普通の頭のある人間であれば、今後の政権維持のことを考えたら、たとえ現在党勢が圧倒的であったとしても、アベ政権がやってきたようなムチャはしません。自分の頭で己の損得を考えることができるのであれば、大勢の国民を敵に回すような行動は避けようとするはずです。

しかるに、アベ政権の行動を見ると、自分で考えるという頭があるようにはとても思えません。喩えてみるならば、この政権の行動は、まるで使いパシリのチンピラです。つまり、上から降りてくる命令は絶対であり、その命令の是非を自分では判断できず、ゆえに絶対命令を忠実に執行することが使命であると考えているものの行動に似ています。つまり、アベ政権はアメリカを含む上の組織からの命令を機械的に執行するだけの機関なのではないでしょうか。だから、上の命令が変われば、自分の持論(みたいなもの)に無関係に、行動はコロコロ変わるし、命令を遂行するためには、法律違反であろうが国民が抵抗しようが無関係に押し通そうとするのではないでしょうか。その態度は、チンピラがそのシマの住民に対する態度と似て、自分より「下のもの(すなわち、一般国民)」は、自分の命令を聞くのが当たり前だ、(なぜなら、自分自身も上からの命令に絶対服従しているのだから)とでも思っているかのような態度です。だから、強引に強権的、一方的に物事を進めようとし、人々の意見を一顧だにしないのでしょう。

そう考えると、この政権のおかしな行動の謎が解けるように思います。アベ氏はかつて自分でも口走って失笑を買いましたが、自分が「権力の頂点にいる」とでも本気で考えているようです(日本限定ですが)。つまり、「自分は、頂点で、残りは下だ(選挙の時以外は)、下が上の命令を無条件できくのは当然で、下が上に意見をするようなことは許されない」とでもいうような意識があるのではないでしょうか。そして、その根拠は、「自分自身が上の命令には絶対服従しているから」でしょうね。

ならば、日韓最終合意で、急に100%態度を翻して、ほとんど自説を撤回したかのようなアベ政権の豹変ぶりもなるほどでしょう。なぜなら、上にそうしろと命令されたからです。表面上は豹変したかのように見えて、「上の命令には絶対的に従順」という行動基準は一貫している。だからこそ、豹変しても平気なのです。この政権には、己や国の利益のために、頭をつかって「上」と粘り強く交渉するという知恵が全く欠如しているように見えます。

おそらくそういう事情なので、辺野古も移設をするという選択を押し付けるだけだし、いくら言っても聞く耳も持たないのでしょう。それが厄介です。翁長知事のアメリカ行脚の際も、当事者でありながらアメリカは、沖縄は日本政府と交渉しろ、と逃げたワケですが、当の日本政府は、アメリカの命令を忠実に実行することしか考えていないのだから、沖縄はどうしようもありません。

今の日本の政府の状態では、日本の問題は、結局はアメリカから変えないとなんともならないのだ、と思った今回の日韓合意でした。
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汚い手口、その後

2015-12-29 | Weblog
先日の福井地検の高浜原発再稼動差し止めをひっくり返したデタラメ判決、私は、中央官僚の顔色を伺ってやったのだろうと思いましたが、実はもっと露骨に圧力があったようです。詳細が不明なので真偽のほどはわかりませんけど、わざわざ45ページも割かないと形にならないような苦しい言い訳をして判決をひっくり返したのだから、裁判長も情けなかったでしょうな。法を守る方が法を曲げたようなものですからね。犯罪を取り締まる立場のものが犯罪を犯す、国民のために働くべきものが国民を搾取する、重要な案件であればあるほど建前と実際が真逆なのがこの国での「常識」なのでしょう。

さて、もう一つの国家の横暴、アメリカ政府と基地利権にぶら下がる連中が結託し、沖縄一県に米軍基地を押し付け、住民、県民の意志を無視して、無理やり辺野古を埋め立てて米軍基地を恒久化しようとする政府。アメリカの防衛費の肩代わりを約束させられ、その言いつけをバカ正直に守ることが仕事だと考えているとしか思えないアベ政権が、福祉を削り、消費税を上げて、マイナンバーで国民財産を管理して、国民の生活は苦しくさせる一方で、防衛費だけは四年連続の増額の5兆円越え、史上最高値の大盤振る舞い。この政権、一般国民には本当に百害あって一利なし、ですね。もちろん、国民の9割を下流層に釘付けにして、経済的にコントロールするというのが支配者層の狙いであり、アベ政権はその指示の通りに動いているわけです。国民の不満がたまればたまるほど、戦争に希望を持つ若者が増え、軍隊にリクルートするのも容易になる。福祉を削って消費税を上げ、国民は生かさぬように殺さぬように管理する、というワケですな。

話がずれました。辺野古問題に関しては、これは沖縄の人権の問題です。アメリカの人道主義と民主主義という建前が本音なら、良識あるアメリカ人にとっては許されないことで、アメリカ国内の有識者から、この一件でダシに使われたケネディーの娘を批判する声明が出ているようです。

3週間ほど前、沖縄の辺野古問題に関して、沖縄県と国との間で法廷闘争が開始されようとした時期のこと、国があたかも沖縄に配慮しているかのようなポーズを見せつけるために、一部の普天間基地の敷地を返還決定というニュースを、マスコミに流し、ケネディーを担ぎ出して記者会見しました。その姑息さに、腹が立って「汚い手口(沖縄辺野古問題)」という記事を書きました。その返還の実際の内容は、大手マスコミは正確には報道しませんでしたが、実は、基地のたった1%にも満たない面積(実際は0.031%)を2017度に返還するというふざけた内容だったのです。0.03%でも一部は一部、というのが国の言い分、ケネディーはその片棒を担がされて、大いに失望を与えました。

その普天間基地の返還に関しての実情は、東京新聞への投書をとりあげた記事によると、返還されるとされる土地は、交通渋滞の緩和のために何年も前から地元の要請があり、しかも25年前に返還が約束されていたものだったそうです。そんな前から決まっていたようなことを取り上げて、ケネディーを引っ張りだして大げさに記者会見までして、あたかも政府は基地問題で沖縄県民に配慮をしているかのようなポーズを取ったワケですから、翁長知事が怒るのも無理ありません。やり方が汚いのです。政府が姑息なことをするのはいつものことですが、こういうことを戦後70年もやられ続けてこられた沖縄の人々の立場にたってみると、耐え難い気持ちになります。

さて、辺野古最善は「侮辱」 米識者70人、ケネディ氏発言に抗議声明 という記事では、アメリカの有識者がケネディーの辺野古問題に対する公式見解を批判したということで、われらがチョムスキーを含む70人がケネディーを批判し共同声明を出しています。

映画監督オリバー・ストーン氏や言語学者ノーム・チョムスキー氏ら米国の文化人や識者ら70人は22日、ケネディ駐日米大使が17日の日本記者クラブでの記者会見で米軍普天間飛行場移設に関して、名護市辺野古への移設が最善だとの考えを示したことに抗議する緊急声明を発表した。声明は大使の発言について「(辺野古移設計画に)激しく反対してきた沖縄の圧倒的多数の人々に対する脅威、侮辱、挑戦であり、同時に法律、環境、選挙結果を軽視する行為だ」と批判した。その上で「米国市民として、米政府が沖縄市民の基本的人権を否定することをやめるよう強く要求する」とし、辺野古移設をやめるよう訴えた。

<ケネディ駐日米大使発言への抗議声明> (一部抜粋)
 12月17日、東京の日本記者クラブでの記者会見で、キャロライン・ケネディ駐日米大使は辺野古が米海兵隊の新基地の場所として最善であるとのオバマ政権の主張を忠実に繰り返した。
 、、、
 米国が普天間飛行場を閉鎖し、辺野古に基地建設を一刻も早くすることを求めているというケネディ大使の発言は、この計画に激しく反対してきた沖縄の圧倒的多数の人々に対する脅威、侮辱、挑戦であり、同時に法律、環境、選挙結果を恥ずかしげもなく軽視する行為である。
 、、、
 大使は父親が「アメリカの軍事力によって世界に強制的にもたらされるパックス・アメリカーナ(米国による平和)」を拒絶した演説をもう一度読むべきだ。
 もし再読したならば、ケネディ大使は父親が「平和とはつまり基本的に、荒廃の恐怖を感じることなく生活できる権利、自然の空気をそのまま呼吸する権利、将来の世代まで健全に存続する権利といった人権に関する問題ではないか」と問うたことを思い起こすことになるだろう。
 これらの言葉はわれわれにとってまだ意味があるために、われわれは米国市民として、米政府が自己決定権、健全で安全な環境で暮らす権利を含む沖縄の市民の基本的人権を否定することを止めるよう強く要求する。


単なる政府の道具に使われるケネディーはアメリカの恥だ、というわけですな。日本も同じようなタイプの人々が政権に居座っております。やはり、日本でもアメリカでも、名前や家柄だけで、実力もないのに権力ポジションにに就く人間というのは一般の人々にとっては害しかなさないようです。

そしてクリスマスの日、沖縄県は正式に国を提訴。

辺野古問題、沖縄県も国を提訴 普天間移設、異例の訴訟応酬

沖縄県は25日、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設をめぐり、翁長雄志知事が辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消した効力を石井啓一国土交通相が停止したのは違法だとして那覇地裁に提訴した。国側も既に訴訟を起こしており、国と県が互いに訴え合う異例の事態に発展した。翁長氏は記者会見し「県民の誇りと尊厳を守る意味から、やむを得ないものだ」と提訴の意義を強調した。


辺野古問題に関して、愛媛新聞は社説で、かなり厳しく国を批判。
辺野古移設問題 泥沼の法廷闘争、政府が終止符を

、、、、なし崩し的に進む工事に県が危機感を募らせるのは当然だ。そうした心情を理解しようとしない政府の姿勢に失望を禁じ得ない。
 県の提訴を、菅義偉官房長官は「法令に基づいて対応していく」と述べ、対立の激化についても「残念だ」とするだけ。自ら事態を打開しようとする意思はまったくうかがえない。強権的な手法が、将来に大きな禍根を残すのは間違いない。
 翁長氏は「県民の誇りと尊厳を守る」と提訴の意義を強調した。戦後70年にわたって多大な基地負担を強いられてきた沖縄の「魂の叫び」である。


政府からの圧力で、大手メディアは思っていても口に出せない悲しき本音。(そうえいえば、原発問題などで政府に批判的な言動をした報道ステーションのメインキャスターも辞めることになりましたね。この件に関して、東京新聞は、「政権批判がテレビから消える日」という記事の中で、アベ政権が露骨にメディアに圧力をかけていることを批判しました。)

国家権力という勝てない相手ですが、県民と大多数の国民は翁長知事の味方です。
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高浜三文芝居

2015-12-25 | Weblog
高浜再稼働 同意を伝達 福井知事 司法判断待たず というニュース。

 福井県の西川一誠知事は二十二日、経済産業省で林幹雄経産相と会談し、関西電力高浜原発3、4号機(同県高浜町)の再稼働に同意すると伝えた。これで地元の同意手続きは全て完了した。関電は来年一月下旬の3号機の再稼働を目指しており、燃料装填(そうてん)など最終工程を急ぎたい考えだ。 
 西川知事はこの日午前、政府が前面に立って原子力政策を担うことが確認できたと評価し、再稼働への同意を表明。林経産相は会談で「ご英断に感謝を申し上げます」と述べた。
 、、、


そして、その後、高浜原発再稼働認める、福井地裁 関電、25日燃料装填開始、という判決。

 福井地裁(林潤裁判長)は24日、関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)の再稼働を差し止めた4月の仮処分決定を取り消した。審査合格を認めた原子力規制委員会の判断に不合理な点はなく「周辺住民の人格権が侵害される具体的な危険性はない」と認定。仮処分の効力は消え、2基は再稼働できる。住民側は年内にも名古屋高裁金沢支部に抗告する。
 関電は25日から3号機の原子炉にプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料24体を含む157体の燃料集合体の装填を始め、来年1月下旬の再稼働を目指す。プルサーマル発電を東京電力福島第1原発事故後、全国で初めて開始する。



とんだ茶番もいいところ、「ご英断に感謝を申し上げます」には、呆れました。心の中では「筑前屋、お主も悪よの」とでも思っているのでしょうな。結局は、やりたい放題ですからね。原発稼働に反対して汚職事件をでっち上げられて失脚させられた前福島県知事のことが頭にチラつけば、知事もなかなか政府の言いつけにノーとは言えないでしょう。人間だれでも我が身がかわいいですからね。(しかし、その結果が今回の福島の史上最大の原発事故になったのですから皮肉なものです。それでも利権と欲に駆られた人間は学ばないのですね)中央行政に司法も立法も牛耳られている現状では、裁判所もお上の顔色を伺って判決を出します。そうでなけば我が身が危ないですからね。

毎日新聞は、この判決について多少、掘り下げて議論しています。
高浜原発3、4号機  NOからYESへ…8カ月で大転換

 「事故に向き合う姿勢の違いが、司法判断の違いになった」。九州大の吉岡斉教授はこう話し、今回の地裁決定を批判。原発の新規制基準を作った原子力規制庁の担当者は「当事者ではなくコメントできない」と話した。

 今回の決定はA4判で225ページで、46ページの仮処分決定(4月14日)の約5倍に及んだ。争点の一つは、将来、原発に到来する揺れの大きさを示す「基準地震動」だ。仮処分決定は「楽観的見通しに過ぎない」と批判したが、今回の異議審決定は、争点の中でも最も多い44ページを費やして異なる見解を示した。

 異議審決定は、基準地震動を超える地震が起きる確率を「1万~10万年に1回程度という極めて低い数値」とし、想定の合理性を認定。「最新の科学的、技術的知見に照らして算定された基準地震動であり、原発の耐震安全性を確保するための基準として信頼に足る」と評価した。、、、、


現に、福島の地震と事故が起こり、収束の見込みもついていない状況で、一万年に一回なら許せるというのはどういう理屈なのか。その一万年に一回が、明日、起こらないという保証はあるのか、もし起こったら、どのような悲惨なことが起こるか多少の想像力があれば分かるでしょう。万が一のときに何の対策も取れないということが今回の事故で十分に分かったのだから、万年に一の確率でも起こる確率があるのなら、動かしてはならないと思います。ビール一本ぐらいなら運転事故を起こす確率は低いから飲んで運転しても許される、というのに近い被害者の立場を無視した理屈だと思います。

ま、最初から再稼働ありきで、政府、関電、地方行政と裁判所の三文芝居と言えばそれまでなので、判決文などただの言い訳にすぎないわけですが。人間の欲というのは醜いものです。
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ChIP-seq素人解析続く

2015-12-22 | Weblog
目先の研究はまずまず順調ではあるのですけど、先立つものが心細く、節約第一の日々です。指をしゃぶってガマンしているのに、金持ちの研究室がガンガンやっているのを横目で見ていると、心が荒んできますな。昔、制限酵素は薄めて使うとか、アガロースゲルは再利用するとか、手袋は100円ショップで調達するとか、貧乏自慢したりした覚えがありますが、きっとそういう貧乏性が貧乏を引き寄せるのでしょうね。しかし、必要なところをケチって失敗するぐらいならやらない方がマシというのは真理であります。

ま、それで、お金のかからないドライな実験ということで、ChIP-seqデータの素人解析を継続中です。実は、折角、高い金をかけてやったChIP-seqですが、私の方は出版が遅れ、そうこうしている間によく知っている金持ちのラボから同じような実験のデータがGEOで最近公開されたことに気が付きました。彼らがその実験をやるのを知っていたならやらなかったのになあ、、、と言ったところで、最初に実験したのは二年前の話ですから今更どうにもなりません。折角なので、先日から使わさせてもらっているソフト、SraTailorを使って、データをダウンロードして私のデータと比べてみました。同じような細胞を使って、同じような抗体を使っているのに、結構、違うものですね。もちろん、大事なところでは合致していましたが。私のデータの方が感度が高いような感じですが、それがテクニカルな差なのか、あるいは生物学的なばらつきなのか、この辺を判断するのは難しいです。

私は、ChIP-seqの新しいデータが返ってきたつい10日ほど前まで、エクセルファイル以外にいろいろ付いている色々なフォーマットのファイルは何なのかさえわからないようなレベルのど素人でしたが、この十日間ほどチマチマやっている間に、とりあえず自分が欲しい情報を得る最小限の簡単な解析が多少できるようになりました。コメント欄で情報提供していただいたり、詳しい人に教えてもらったりと、皆さんの親切のおかげです。

とにかく、コマンドを打つのは、はるか大昔にDOSからウィンドウズ3.1を立ち上げる作業をしたことがあるのがほぼ唯一の経験と言ってよいぐらいですから、コマンドを打つ作業だけはどうしても避けたかったのです。SraTailorのおかげで、かなりのことがアイコンのクリックだけでできるようになったのですが、もう一つ必要な作業、ChIP-seqのピークをアノテートする、という作業はSraTailorではできないようでした。ピークのアノテーションについて知っている人に聞いてみると、USCSなどのデータベースからの遺伝子の位置情報とピークデータを照らし合わせるという作業をするのに、BedToolとやらを使うようで、これにはコマンドを覚えないといけないようでした。「簡単だよ」と言われたのですけど、アレルギーというのはごく少量の抗原に過剰に反応してしまうからアレルギーなのです。それで、いろいろ探してみたら、PAVISというオンライン ソフトをNIHの研究者の人が開発して公開しているのを発見しました。このソフトは本当に素晴らしい。素っ気ないウェッブ デザインもステキです。それで、私のようなど素人でも、SraTailorとPAVISとUCSCブラウザーのおかげで、コマンドを全くさわることなく、一通りのChIP-seqデータのなんちゃって解析ができてしまいました。これには自転車に初めて乗れるようになった時ぐらいに感動しました。しかも全部、タダ。本当に皆さまのおかげです。

とはいうものの、ChIP-seqという実験はマイクロアレイと同程度に怪しいと思います。論文などでChIP-PCRのデータを良く見かけるようになった十数年前ぐらいに、こんな方法が信頼できるわけがない、と私は疑いの目で見ておりました。当時は、将来自分でやるようになるとは思いませんでしたが、やってみると、やっぱりなんとなく信用できないという感じがぬぐえません。実験なので、そういうものなのでしょうけど、将来的にきっとこの方法はもっと別の信頼度の高い方法で置き換わっていくのではないかと想像します。例えば、ゲノムワイドのクロマチン マススペックとか。ひょっとしたら、私が知らないだけで、そうした技術はすでに開発されているのかも知れません。
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Brace for impact

2015-12-18 | Weblog
米、9年半ぶり利上げ FRB、ゼロ金利終了 というニュース。

米国の中央銀行、連邦準備制度理事会(FRB)は16日、主要政策金利を事実上ゼロに抑える異例の措置を終え、金利を年0・25%引き上げることを決めた。利上げは2006年6月以来9年半ぶり。リーマン・ショックに対応するため08年12月に導入し7年に及んだゼロ金利終了は米経済復活を示す。米金融政策は危機対応を終え、金利の上げ下げで景気を調節する正常な姿に戻る。
 FRBは金融政策を決める16日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、短期金利の指標フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を年0・25~0・50%に変更することを全会一致で決めた。


いよいよ来たか、という感じです。アメリカ経済の復活などしていません。単なる株式ゲームのバブルですから、このFRBの金利引き上げは、ひょっとしたら世界大恐慌の呼び水となるかも知れません。株式市場暴落7年の法則で、7年おきに市場は暴落する(させられる)と言われています。リーマンショクが7年前、その時にも原油価格がまず急に下がったのでした。ガソリンの値段はこの一、二ヶ月で随分、下がっています。お膳立ては整ったという感じですね。このFRBの決定が世界恐慌の始まりの合図となるのかも知れません。一般庶民にできることは限られていますが、万が一の時の衝撃に対する心の準備だけはしておきましょう。最悪、銀行閉鎖ぐらいまで行くかも知れません。

それにしても、政治、社会面では、長年、明るい話題を聞いてないような気がしますが、気のせいでしょうか。そもそも、明るい、暗いも気持ちの持ちようだとも言えますが。ま、良いことにも悪いことにも必ず終わりがあります。今は悪くても必ず良くなります。上がれば下がり、下がれば上がる、株式市場の真理は世の中の真理でもあります。

ところで、先日の「筆洗い」のコラムは、今年の漢字として「安」が選ばれたという話題を取り上げていました。ウンチクに富むウィットの効いた文章で関心しましたの貼り付けておきます。

 京都には「逆さ札」なる泥棒除(よ)けのまじないがあると聞く。「十二月十二日」と書き、その紙を家のどこかに張っておく。これだけである▼なぜ、ひっくり返して張るのか。十二月十二日は天下の大泥棒、石川五右衛門がこの世に生まれた日と考えられているそうで、それが「逆さ」になっていれば、三条河原で釜ゆでにされた日の意味につながる。泥棒がその「逆さ札」を見て、無残な五右衛門の最期を思い、犯行を断念するのだという▼現在も逆さ札を張るお宅があるそうだが、今、それを見て「まずいっ」とひるむ悪者は相当の歴史通かもしれぬ▼これも「逆さ」に張った方がいいのではないか。考え込んでしまう。二〇一五年の世相を表す漢字として「安」が選ばれた。国民の意見を二分した安保法制の影響だろう。「安心してください」なる流行語も効いたか▼「(今年の漢字は)私にとっても『安』。安を倍増すると安倍になる」と胸を張る首相だが、乱暴な政治、不透明な経済、テロの相次ぐ国際情勢など、どこを切っても安心、安定の「安」の字を感じられぬ一年でもあった。選ばれた「安」は逆さまにした「不安」の「安」であり、「安」を求める願いだろう▼やはり逆さに張っておこう。そういえば、中華料理店などでは「福」の字を逆さに張るところもある。あれには「福」が至るとの意味があるそうだし。
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素人用ソフト求む

2015-12-15 | Weblog
私、自分が持たされている携帯電話の使い方も良くわからないレベルで、新しいテクノロジーは興味があることに関しないものはなるべく近寄らないようにしてきました。しかし、生物学研究は、近年、ゲノムワイドのデータ解析が付きまといます。マイクロアレイのデータをエクセルで解析するぐらいのことならできますが、それ以上になると苦しいので、専門家に丸投げするという方針でやってきました。

ところが、ここに来て、ChIP-seqのデータを解析しないといけなくなりました。ChIP-seqをやってもらった所に、私でもわかるようにエクセルの形にしたものをつくってもらい、2年前にやったときのデータと比較しようとしたら、随分、データに非整合性があることがわかりました。それで、もう一度、データの解析を二年前のもの一緒にやってもらおうと思ったのですが、時間あたりで解析料金を請求されるので、最低限の知識を覚えてからにしようと思いました。そもそも今の段階では言葉が通じるかどうかさえ疑問です。

ウェッブの大海の中をキーワードを頼りに、ChIP-seq解析の初歩の初歩あたりが書いてありそうなページを、パラパラ読んでみて、改めて、私のこの分野の無知ぶりに我ながら愕然としました。

とりあえずしたいことは単純なことで、ChIP-seqのピークの同定と、一部のデータをゲノムブラウザ上に表示させることです。2年前は誰かに頼んでやってもらいました。その誰かは忙しいし、当時使っていた有料解析ソフトにアクセスできなくなっており、どうしたものか、悩んだ末、自分である程度やるしかない、という結論に達したわけです。

それにしても、インターネットの時代というのはすごいですね。チョロチョロと検索しただけでなんとなくできそうな気になってくるぐらいの情報は得られました。どうも、まず、SRAという最初のデータから作られたFastqとういうフォーマットのデータファイルが必要らしいと言うことがわかりました。手元のデータフォルダーを見てみると、一つのサンプルに各々5GBほどのFastqファイルが二つずつあります。それから、Fastqのシークエンスをまず、ゲノムにマッピングするようです。マッパーはGalaxyというソフトを使うのが最も一般的なようです。次に、シークエンスリードからピークを作っているゲノム領域を同定めしていくのに、MACSという方法を使うのが一般的で、最後にブラウザ上に表示させるのにIGVやUCSCブラウザに認識できるようなフォーマットに変えるようです。多分、この分野をちょっとやった人なら、常識中の常識で、何を言っているのかコイツは、と呆れられるレベルだろうと思いますが、三日前まではBigWig Fileってなんぞや、というようなレベルだったのです。インターネットでは、それぐらいの知識のある人を対象に書いてあるサイトが多く、本物のド素人が「なんちゃって解析」ができるぐらいになるように易しく、手とり足とり書いてあるサイトはほとんどありません。

もうこの時点で、Galaxy、MACS、IGVなどのサイトから複数のプログラムの使い方を覚えないといけないのか、と半ば絶望しておりましたが、必要は発明の母で、私レベルの素人でも使えそうなソフトを見つけました。九州大学の賢人が開発したSraTailorというソフトがあることを知りました。この教室はバリバリの発生生物学の教室で教授の出身ラボの仕事は10年前ぐらいはよく一流雑誌で目にしたことがあったので、やっぱり、みんなゲノムワイド解析には真剣に取り組んでいるのだな、と思いました。

最初はウインドウズマシンで使おうとしたのですが、Unix系のOS,Ubuntuとやらを使う必要があることがわかり、かつてOSをいじって痛い目にあって以来、「触らぬOSにたたりなし」という格言を守っているので、ウインドウズマシンは諦めました。そもそもここでも、Ubuntuとはなんぞや、状態でした。結局、Macに入れることにしました。ダウンロードはできました。でも、チュートリアルにあるようには、すんなりとはやはり行きません。二時間でできるはずものが三日かかって未だにできません。「なんとなくできるような気がする」と「実際にできる」との間には遥かなギャップがあるようです。はたして、リバイスに間に合うのでしょうか。

絶対失敗しないど素人向けのソフトはないでしょうか。
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ニュースなど

2015-12-11 | Weblog
野坂昭如さん逝去ニュース
寂しいですね。戦後の昭和という時代がまた遠くなった気がします。そういえば数ヶ月前、安保法案に反対する野坂さんの言葉を書いた覚えがありました。その時の言葉の一部を再録。

言っておく。国は国民の生命、財産について保障などしない。国が守るのは、国家、国体である。かつて愚鈍なリーダーの下、大日本帝国は崩壊していった。戦後70年、今再び日本は破滅に向かって突き進んでいる。安保法制は、戦争に近づく。血を流すことになる。


愚鈍なリーダーが国を滅ぼす、まさに、今、現在、起きつつあることです。

愚鈍なリーダーが国を滅ぼすのは日本に限ったことではありません。

「全イスラム教徒の入国禁止」 トランプ氏に批判続出 というニュース。

二〇一六年の米大統領選に向けた共和党指名争いで支持率トップの不動産王ドナルド・トランプ氏(69)は七日、米政府に対し当面、イスラム教徒の入国を完全に遮断するよう要求する声明を発表した。、、、 トランプ氏は「米国を、ジハード(聖戦)だけを信じて理性を失い、人の命を尊重しない人々による残虐な攻撃の犠牲にできない」として、国が状況を把握するまで、イスラム教徒の入国禁止措置を続けるよう訴えた。、、、

何という論理の飛躍、あたしゃ、この人の方が理性を失っているとしか思えませんね。ミスコンの若い娘を集めて住まわせている成金趣味のNYのトランプタワーを思い出して、急に気持ち悪くなってきました。こういう俗物道を極めたような人間がアメリカ大統領候補の候補か、、、、(てん、てん、てん)と思います。ま、アメリカの心配をしている場合ではありませんけど。
共和党もパッとした人がいないし、とにかく選挙に勝てる候補を出すのが第一だと思っているので、話題性があって知名度が高く、担ぎやすい人間が欲しいということで、こういうことになるのでしょう。かつて話題性だけで共和党の副大統領候補に急に祭り上げられたアラスカ州知事のことを思い出します。本人のトランプにしたら大統領選はTVショー程度に思っているのではないでしょうか。政治はショーだというのは、当たらずと言えども遠からずですが。それで、保守白人層を主たる支持層にもつ共和党ですから、移民問題、テロ、この辺を争点にすれば共和党員の支持を得られやすいとトランプ本人は計算しているのかも知れません。

また、支持率低下に悩むフランス与党が、パリでのテロのあと、渡りに船とばかりに、「ISISを制圧し、フランスをテロから守る」と急に勇ましくなったのも、ある種の下種な計算があったからであろうと容易に想像できます。

アベ政権も、アメリカからの無理筋の上意下達をムリヤリに通して、ついでにカルト集団まがいの「日本会議」の倒錯した理想を実現するために、外国が攻めてきたらどうするのだ、と恐怖を煽り、改憲だ、戦争だ、と息巻いています。本当の事情を知らない単純な人は頼もしいとさえ思うかもしれません。そうした人々、口車に乗せやすい人、自分で考えるよりも声の大きい人の意見を素直にきく人、などを集めるために、選挙年齢を引き下げ、NHKや新聞報道に圧力をかけ、と姑息なマネをしてきているわけですし。ま、アベ氏本人が「そうした人々」の典型例ですけど。

岩下おじさん、来年の参院選に向けてのアベ政権の方針について、次にように書いています。

来年の彼らの札束攻勢は何段にも用意されている。先行きの経済がどうなろうと国家が破綻しようととにかく目先のゼニをばら撒けば悲願の憲法改正が行える千載一遇のチャンスなのだから、年が明ければ直ちに次々と7月まで「は」躊躇することなく札束の雨が降ることになるだろう。

それも

軽減税率導入とかわずか三万円のばら撒きをする一方で、公務員や大企業正社員を上げたり法人税を切り下げることにより格差をますます拡大させて行くとこを狙っているようにしか見えない。

なぜなら

格差で増えた下層の民の行きつく先が追い詰められた挙句「戦争」にしか展望がなくなることを安倍一族はよ~く知っているからである。


ざんねんながら、このままだと、国民は兵糧攻めにされ、アベ政権の口車にのって、ニッポン軍に入隊して、アメリカ戦争産業の手下となって、中東で人殺しの手伝いをさせられることになるでしょう。

多少、関連して、

パリでのテロに関して、鳩山元首相が、イスラム国とワシントンとのつながりについて、11月に講演会で語っているYoutube映像を見ました。



遠からず消されてしまうかもしれないので一応、要点だけ書いておきます。

オランダのジャーナリスト、ウォルフレンさんがメールをくれて、ウォールストリートジャーナルの編集者、ポール クレイグ ロバートソンという人が書いた記事を紹介してくれた。その中で、イスラム国というものはCIAによって作られたものだ、とある。その記事では、現在でもイスラム国はワシントンからサポートを得て、ワシントンに依存していることが書いてある。さらに、現在、フランスの政権が危ないことやドナルド トランプが共和党からの大統領候補指名を受けようとしていることなど(イスラム国のテロを政治的に利用できる人間がいる)が述べてあり、イスラム国の行動に関して、誰が得をするのか、よく考えてみる価値があるとある。これらが真実かどうかはわからないが、イスラム国が(他の利権集団とのつながりなく)単独で行動しているとは考えにくい部分が多すぎると思う。
真実は必ずしも目に見えない。自分も総理の時に真実が目に見えなかったために短命政権に終わったのかも知れない。


こういう話を、陰謀論と一蹴し、思考停止することは容易いです。しかし、目の前で起こっていることが単にイスラム過激派のイディオロジカルな行動だと考えてしまうのでは、あまりにナイーブすぎるでしょう。文学青年なら三島由紀夫でもいいでしょうが、世の中の多くの人々はもっと身も蓋もない現実を生きています。無差別テロをやることによって、一体、誰が得をしているのか、は考えておくべきであると思います。

ノーム チョムスキーは、出版されるニュースメディアの情報だけから、アメリカが世界にしてきたことの真実は容易に分かると言います。行間を読む、すなわち、書いてあるべきであるのにもかかわらず書いていないことを理解するだけの読解力を持てば、普通に流れるニュースから、真に起こっていることを理解できるということでしょう。とりあえず、読売と東京新聞を読み比べてみればいいのではないでしょうか。

この世の中、人間を動かすもっとも大きな動機は「欲」です。その欲も多くの場合、自己利益です。その「欲」の目指すものは、パワーであり、すなわち、金と権力です。テロ行為で誰が金を儲け、支配力を手に入れるのか、とても「イスラム国」だとは思えません。そそのかされ、洗脳されてテロ行為をさせられた人々もある意味、被害者です。オウムの実行犯みたいなものでしょう。イスラム国やアルカイーダ、そうした組織を作ったり、動かしたりして得をする(金と支配力を得る)のは誰か、ということです。

地球は狭くなり、人間が持つパワーが大きくなった今、人々は、個人や一族の「欲」だけではなく、人類全体として地球を守り共存することの大切さを学んできました。それが人間としての進化であると私は思います。しかし、まだまだ先は長そうです。
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壊すは易し

2015-12-08 | Weblog
11/12号のNature でゲノム編集技術のヒトへの応用について記事がありました (A path through the thicket - D.J.H. Matherws et al Nature 527 , 159-)。9月にはHinton Groupと呼ばれる研究者、倫理学者、議員、雑誌編集者や資金提供者らが集まり、イギリスのマンチェスターで、ヒトへのゲノム編集応用における倫理、政策的問題について議論がありました。CRIPR/Cas9が技術的に確立して、多少の知識があれば誰でも簡単にゲノムを弄ることができるようになった今、今後の規制や倫理的問題などについて十分に議論して、慎重にことを勧める必要があると私も思います。

早速、この記事について、11/26号のNature Front page、Correspondenceに二件の興味深い投稿がありました。

ゲノム編集技術は、癌や免疫疾患などに応用され(実際、臨床で試験的に応用されていますが)有効な治療法となることが期待されておりますが、一方で、遺伝性慢性疾患にへの応用に関しては、障害者側の立場からは少し異なった意見があるようです。

遺伝子編集:身障者の視点に注意が必要
CRISPR-Cas9は多大なポテンシャルを持つゲノム編集技術であるが、身障者の権利という視点からは、必ずしもそうではない。
身障者の人々が遺伝子編集技術に列をなすとは考えにくい。なぜならば、彼らの優先することは偏見や差別と闘うことであるからだ。
稀な疾患を起こす遺伝子の変化を「なおす」ことは明らかに利益のあることのように思われる。しかし、そのような治療は、「正常範囲内でのばらつき」と「障害(異常)」との境界線に関して明らかなコンセンサスがあるという推論に基づいている。広く信じられていることとは逆に、障害を持つほとんどの人々は、彼らのQuality of lifeは、非障害者の人々と同等であると報告している。イギリスNuffield Council on BioethicsはCRISPRの倫理的、社会的側面について議論を重ねている。国際的なガイドラインは直ちに必要であるが、加えて疾病や障害を持って生活している人々の意見を聞いていく必要がある。  Tom Shakespare (University of East Angla)

遺伝子編集:健常期待(ability expectation)をコントロールせよ。
身障者の権利という視点から、ヒトの遺伝子編集の関する議論につきまとう問題は、US National Academies of Sciences, Engineering and Medicine 会議の開幕から充満している。「専門家」からの「英智」を受動的に「受け取る」のが一般大衆だとする著者ら (前出のNatureの特集記事 ) の捉え方は、責任ある研究とその制御に関しての健全な議論に逆行している。身障者の権利を考えるコミュニティーは、身障者の捉え方に関して、当局、科学者、医者らを含む「専門家」と意見を異にしてきた歴史がある。このことは、障害をヒトの多様性(のあらわれ)と見なさずに、「異常」であると考える「ableism(健常者からの差別)」に集約される。それは、誤った「解決」に導き、当事者を無力化することになる。
「どのような世界に生きたいのかは、みんなで決定すべき時にきている」とMathewsらは書いたが、この議論は健常期待といかにそれをコントロールするかという問題を含んでいないければならない。


「Ability expectation」と「Ableism」という言葉の概念を私ははっきり把握しているわけではないので、訳がおかしいかも知れませんが、言わんとしていることは、障害者(患者)からの視点からも十分に考える必要がある、ということなのでしょう。障害者差別、人種差別、性差別、すべてが一方的な視点を弱者に押し付けるところから来ているような気がします。遺伝子の「おかしい」ところを「なおしてやる」という考え方が根本にあるのだとしたら、当事者にとっては余計なお世話だと思うのも無理ない話です。我々はそうした傲慢さに意識的でなければならないと思った次第です。

それから、12/1-4には、前述のヒトのゲノム編集に関してのサミット、the National Academy of Sciences international summit on the safety and ethics of human gene editingがワシントンで開かれました。それに関してのこの記事によると、議長のDavid Baltimore は 「妊娠につながる可能性があるときに、精子、卵子、胎児のゲノムを弄ることは無責任である」と述べました。Klaus Rajewsky(定年でアメリカに来たのに、知らない間にまたドイツに帰っていたのですね)は「我々は遺伝子操作が巧みになってきたが、まだまだ遺伝子の機能や相互作用の理解は極めて限られている」と言い、Broad Institute director のEric Landerは、遺伝子のシステムは非常に複雑であり、意図しない結果を生まずに、部品を交換するかのように操作するわけにはいかない、と言いました。さらにLanderはCRISPRによる遺伝子操作が有効な疾患はいくつか思いつくが、本当に遺伝子操作をすることが良いのかどうかよく考えるべきだ、なぜなら「自然」は何百万年とかけて同じような実験をしてきて、それはまだ終わってはいないからだ、もし遺伝子操作がそんなにいいアイデアならば、どうして「進化」はその方法を取らなかったのだろう、と不思議に思う。われわれは限定された知識しか持っていないのだ、と述べました。
ゲノムプロジェクトのCraig Venterは1998年、ゲノム科学について、「この技術の理性的な応用は一、二世紀先になるだろう」と言ったそうです。

当然ながら、ほとんどの多くの科学者は、CRIPRのヒトへの応用に関して、非常に慎重な態度を示しています。私も、将来へ深刻な影響が考えられる技術の使用はその前に十分すぎる議論が必要であると思います。破壊するのは簡単でも元に戻すのは多くの場合、簡単ではないし、しばしば不可能です。地球の環境破壊、処理方法もないのに増え続ける核廃棄物、年間300種というペースで絶滅していく生物種、すでに人間は取り返しのつかないことをやってきました。そのツケは遠からぬ将来の人類が払うことになります。いまやCRIPRで下手をすると「人類」という生物種そのものに手を加えようとしています。賢い人が技術を開発しても、使うのは愚かな人々です。なんとかに刃物、アベ政権に権力、みたいになりかねません。
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汚い手口(沖縄辺野古問題)

2015-12-04 | Weblog
今日のニュースを見て、いきなり沸騰してしまいました。政府が沖縄知事を訴えるという愚挙中の愚挙を行い、その裁判が始まったばかりなのに、こういうことをするか、と最初は呆れ果てた直後、怒りが抑えきれず、これを書いています。

日本政府はこのような姑息で汚いことを平気でするのです。それに使われるケネディー、もともと飾りで使われているのですから、文句をいうスジではないかも知れませんが、日米政府が結託して、永久に沖縄にババを押し付けようとしています。これでよく日本は民主主義国家などと言えたものです。

政府与党よりの 毎日新聞では、
沖縄基地:普天間東側など一部、返還前倒し 日米合意

菅義偉官房長官は4日、米国のケネディ駐日大使と首相官邸で会談し、沖縄県の米軍嘉手納基地(嘉手納町など)より南の米軍施設・区域のうち、普天間飛行場(宜野湾市)東側など一部を前倒しして2017年度中に返還することなどで合意した。、、、
 合意では、普天間飛行場の名護市辺野古移設が「唯一の解決策」と改めて確認した。菅氏は共同記者発表で「沖縄の負担軽減のための話し合いが実を結んだ」と強調。ケネディ氏は「県民の日常生活にプラスの影響を与える」と述べた。

 沖縄県の翁長雄志知事は県庁で記者団に「辺野古新基地を巡って裁判で争っている最中に発表したことは作為的で強い憤りを感じる」と述べた。宜野湾市の佐喜真淳市長は「粘り強く米軍と交渉してくれた政府の尽力に心より感謝する。市民の喜びもひとしおだ」とのコメントを出した。【村尾哲、高本耕太、佐藤敬一】


流石に、辺野古移設を巡って知事と政府とで裁判沙汰になっていることに触れないわけにはいかなかったのでしょう。知事のコメントを加えています。

一方、ローカルながら大手メディアの中では、唯一マトモな東京新聞では、

普天間4ヘクタールを先行返還へ 全体の1%未満、日米合意

米両政府は4日、沖縄県宜野湾市の中心部にある米軍普天間飛行場(約481ヘクタール)のうち、全体の1%に満たない約4ヘクタールを2017年度中に先行返還するとした合意文書を発表した。菅義偉官房長官とケネディ駐日米大使が官邸でそろって明らかにした。普天間の名護市辺野古への県内移設をめぐり国と県の対立が続く中、来年夏の参院選や1月の宜野湾市長選をにらみ、基地負担軽減に向けた努力をアピールし、沖縄世論の反発を回避する狙いがある。
 文書は「日米共同報道発表」と題し、政府が進める普天間の同県名護市辺野古への移設については「唯一の解決策」との立場を再確認している。


「普天間基地を一部返還を前倒し」と聞けば、あたかも、政府は沖縄に配慮しているかのように聞こえます。事実は、たった1%未満の面積の返還に過ぎず、「一部返還で合意」という事実を作るためだけにやったことがあまりに明らかです。この国の政府というのは総会屋のヤクザですか。正々堂々と県知事と県民に向き合わずに、こんなに姑息なマネをしながら、口先だけ勇ましいアベ政権、恥ずかしすぎます。
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翁長知事陳述

2015-12-04 | Weblog
沖縄県民の意思を蹂躙し辺野古に米軍基地を作る作業を強行するために、沖縄県知事を訴えるという、愚かとしか言いようのないことを平気でする「国」、権力をかさに着て有無を言わさずに一方的にやりたいように推し進める傲慢なアベ政権のやり方行動には怒りが湧くばかりです。

代執行訴訟での、沖縄の翁長知事の陳述書全文が琉球新報に掲載されているのを読みました。

陳述書は冷静に書いてはありますが、これまでの、そして今も進行中の日本政府やアメリカが沖縄に対してやってきた非人道的行為とに対するの沖縄の人々の苦しみと怒りに、共感せずにいられません。

長いので、一部だけ抜粋しましたが、是非、全文をお読みいただきたいと思います。

1 知事に立候補した経緯と公約

沖縄県には、県民自らが持ってきたわけでもない米軍基地を挟んで「経済か」、「平和か」と常に厳しい二者択一を迫られ、苦渋の選択を強いられてきた悲しい歴史があります。

世論調査の結果を見ますと、普天間飛行場の辺野古移設に対する県民の反対意見は、約8割と大変高い水準にあり、オール沖縄という機運、勢いは衰えるどころか、さらに高まっていました。

そのような中、海底ボーリング調査など移設作業を強行する政府の手法は、これまで安倍総理大臣や菅官房長官が繰り返し述べてきた「誠心誠意、県民の理解を得る」、「沖縄の負担軽減」といった言葉が、空虚なものであることを自ら証明したようなものでした。

2 沖縄について

琉球はその25年後の1879年、日本国に併合されました。私たちはそのことを琉球処分と呼んでおります。、、、その先に待ち受けていたのが70年前の沖縄戦でした。「鉄の暴風」とも呼ばれる凄惨(せいさん)な地上戦が行われ、10万を超える沖縄県民を含め、20万を超える方々の命が失われるとともに、貴重な文化遺産等も破壊され、沖縄は焦土と化しました。

このように沖縄は戦前、戦中と日本国にある意味で尽くしてまいりました。その結果どうなったか。サンフランシスコ講和条約で日本が独立するのと引き換えに、沖縄は米軍の施政権下に一方的に差し出され、約27年にわたる苦難の道を歩まされることになったわけであります。

また当時は治外法権のような状況であり、犯罪を犯した米兵がそのまま帰国するというようなことも起こっていました。日本では当たり前の人権や自治権を獲得するため、当時の人々は、米軍との間で自治権獲得闘争と呼ばれる血を流すような努力をしてきたのです。


3 米軍基地について

 (1)基地の成り立ちと基地問題の原点

沖縄の米軍基地は、戦中・戦後に、住民が収容所に入れられているときに米軍が強制接収を行い形成されました。強制的に有無を言わさず奪われたのです。そして、新しい基地が必要になると、住民を「銃剣とブルドーザー」で追い出し、家も壊して造っていったのです。沖縄は今日まで自ら進んで基地のための土地を提供したことは一度もありません。

また、サンフランシスコ講和条約発効当時は、本土と沖縄の米軍基地の割合は、おおむね9対1であり、本土の方が圧倒的に多かったのです。ところが、本土で米軍基地への反対運動が激しくなると、米軍を沖縄に移し、基地をどんどん強化していったのです。日本国憲法の適用もなく、基本的人権も十分に保障されなかった沖縄の人々には、そのような横暴ともいえる手段に対抗するすべはありませんでした。その結果、国土面積のわずか0・6%しかない沖縄県に、73・8%もの米軍専用施設を集中させるという、理不尽きわまりない状況を生んだのです。

 (2)普天間飛行場返還問題の原点

政府は、県民が土地を一方的に奪われ、大変な苦痛を背負わされ続けてきた事実を黙殺し、普天間基地の老朽化と危険性を声高に主張し、沖縄県民に新たな基地負担を強いようとしているのです。私は日本の安全保障や日米同盟、そして日米安保体制を考えたときに、「辺野古が唯一の解決策である」と、同じ台詞を繰り返すだけの政府の対応を見ていると、日本の国の政治の堕落ではないかと思わずにはいられません。

また、政府は過去に沖縄県が辺野古を受け入れた点を強調していますが、そこには、政府にとって不都合な真実を隠蔽(いんぺい)し、世論を意のままに操ろうとする、傲慢(ごうまん)で悪意すら感じる姿勢が明確に現れています。

 平成11年、当時の稲嶺知事は、辺野古を候補地とするにあたり、軍民共用空港とすること、15年の使用期限を設けることを前提条件としていました。つまり、15年後には、北部地域に民間専用空港が誕生することを譲れない条件として、県内移設を容認するという、苦渋の決断を行ったのです。さらに、当時の岸本市長は、知事の条件に加え、基地使用協定の締結が出来なければ、受入れを撤回するという、厳しい姿勢で臨んでいました。

 沖縄側の覚悟を重く見た当時の政府は、その条件を盛り込んだ閣議決定を行いました。ところが、その閣議決定は、沖縄側と十分な協議がなされないまま、平成18年に一方的に廃止されたのです。

 当時の知事、名護市長が受入れに際し提示した条件が廃止された以上、受入れが白紙撤回されることは、小学生でも理解できる話です。

 私は、政府が有利に物事を運ぶため、平然と不都合な真実を覆い隠して恥じることのない姿勢を見るにつけ、日本国の将来に暗澹(あんたん)たるものを感じずにはいられません。

 (3)「沖縄は基地で食べている」 基地経済への誤解

、、、ですから、基地で沖縄が食っているというのは、もう40年、30年前の話であって、今や基地は沖縄経済発展の最大の阻害要因だということをしっかりとご理解いただきたいと思います。

 (4)「沖縄は莫大な予算をもらっている」 沖縄振興予算への誤解

 沖縄は他県に比べて莫大な予算を政府からもらっている、だから基地は我慢しろという話もよく言われます。年末にマスコミ報道で沖縄の振興予算3千億円とか言われるため、多くの国民は47都道府県が一様に国から予算をもらったところに沖縄だけ3千億円上乗せをしてもらっていると勘違いをしてしまっているのです。、、、

 (5)基地問題に対する政府の対応
、、、、
 今日まで、基地問題がさまざまな壁にぶつかる時に、時の政府は、基地問題の解決あるいは負担軽減策等々、大変いい話をして、その壁を乗り越えたら知らんふりをするということを繰り返してきました。その結果、多くの県民は今ではそのからくりを理解しています。これが70年間の沖縄の基地問題の実態なのです。

 (6)県民世論

、、、昨年の名護市長選挙、特に県知事選挙、衆議院選挙、争点はただ1つでした。前知事が埋立承認をしたことに対する審判を問うたのです。私と前知事の政策面での違いは埋立承認以外に大きなものはありません。ですからあの埋立承認の審判が今度の選挙の大きな争点であり、その意味で10万票の差で私が当選したことは、沖縄県民の辺野古新基地建設反対という明確な意思が示されたものであります。

4 日米安全保障条約

 私は、自由民主党の県連幹事長をしておりましたので、日米同盟、日米安保を十分理解しておりますが、国土面積のわずか0・6%しかない沖縄県に、73・8%もの米軍専用施設を押し付け続けるのは、いくらなんでもひどいのではないですかということを申し上げているわけです。

 しかし、政府は、どこそこから攻められてきたらどうするのだ、沖縄に海兵隊がいなければとても日本は持たないのではないかという発想で日米安保を考えています。
、、、
 沖縄一県に日本の防衛のほとんど全てを押し込めていれば、いざ、有事の際には、沖縄が再び戦場になることは明らかです。

 私は自国民の自由、平等、人権、民主主義を守れない国が、どうして世界の国々にその価値観を共有することができるのか疑問に思っています。

私はこれまでに橋本総理大臣、小渕総理大臣、そしてその時の野中官房長官、梶山官房長官等々、色々と話をする機会がありました。野中先生なども国の安全保障体制の考え方に違いがありませんが、当時、県会議員の1、2期の私に、土下座せんばかりに「頼む。勘弁してくれ。許してくれ」とお話をされるような部分が、どの先生にもありました。後藤田正晴先生も私が那覇市長になった15年程前にお会いしたら「俺は沖縄に行かないんだ」とおっしゃいました。私は沖縄が何か先生に失礼なことをしたのかなと思ったのですが、その後の話に胸が熱くなりました。「かわいそうでな。県民の目を直視できないんだよ、俺は」とおっしゃったのです。こういう方々がたくさんおられました。

 そういった中で、日本の安全保障あるいはアジアの安定、日米同盟の大切さ、あるいは中国が台頭してきている米中の関係等も全て踏まえながら、沖縄への思いを伝えながらの対話でありました。私も基本的には「こんなに基地を置いてもらっては困りますよ」と申し上げましたが、沖縄への深い思いを抱いていた当時の先生方とは、対話は成り立っていたのです。

しかしながら、この5、6年というのは全くそれが閉ざされてしまっています。沖縄の歩んできた苦難の歴史への反省や洞察が十分ないまま、沖縄が何か発言すると、政府と対立している、振興策はあれだけもらっていて何を文句を言っているのだ、生意気だと非難されます。今のような状況を考えますと、戦後27年間、その間に日本の独立と引換えに沖縄が切り離され、米軍施政権下に置かれ続けた、あの時代は何だったのだろうと思います。


5 前知事の突然の埋立承認
、、、
 仲井眞前知事の突然の埋立承認に対する疑問は、あまりに突然の対応の変化が不自然であったという感覚的なものだけではありませんでした。承認に至る手続の中で示されてきた知事意見や生活環境部意見を踏まえても判断を誤っているのではないかと思われるものでした。
、、、このように、前知事の承認は、単純に公約違反というような政治的な意味合いにとどまらない問題をはらんでいると思われました。世論はもちろん、環境関係の専門家らから要件を充足していない違法な承認であるとの抗議が一斉に起きたのです。、、、
その結果、平成27年7月16日に法律的な瑕疵があったとの報告を受けました。報告書は、約130頁に及ぶもので、公水法の各要件について詳細な検討がなされておりました。

その後、平成27年8月10日から9月9日まで、沖縄県と国とが集中的に協議をするということで国が工事を中止して、会議が始まりました。
集中協議では、ある意味で溝が埋まるようなものが全くない状況でございました。、、、
、、、
5回目の最後の協議には、安倍総理大臣も出席されておりました。私は安倍総理大臣にはこういう話をしました。

 私たちがアメリカ、ワシントンD.C.に行きまして、米国政府関係者に話を聞いていただいても、最後は国内問題だから日本政府に言いなさいとなります。そして、日本政府に申し上げると、アメリカが嫌だと言っていると。こういうものが過去の歴史で何回もありました。

 私はそれを紹介した後に、沖縄が米軍の施政権下に置かれているときに、沖縄の自治は神話だと高等弁務官から言われましたが、日本の真の独立は神話だと言われないようにしてください、ということを総理大臣に申し上げたわけです。しかし、総理大臣からは何も意見はありませんでした。

 集中協議の終了後、顧問弁護士や県庁内での精査の結果、承認には取り消し得べき瑕疵があることが認められたため、私は取消しの決意を固めました。

今回、取消手続の中で、意見聴取、あるいは聴聞の期日を設けましたが、沖縄防衛局長には応じていただけませんでした。陳述書は提出されましたが、聴聞に出頭してもらえなかったことを考えますと、政府の皆様が繰り返しおっしゃられる「沖縄県民に寄り添ってこの問題を解決する」姿勢は微塵(みじん)も感じられませんでした。

なお、原告である国土交通大臣は、地方自治法に基づく代執行手続に入る前日に、沖縄防衛局長が行った審査請求に対し、審査庁として取消処分を停止する決定を行っております。準司法的手続であり、審査庁である国土交通大臣には厳格な中立性が求められます。その審査庁自身が、原告として知事を訴えるという、異様としか言いようのない対応が行われています。法治国家であることを自ら否定するような国土交通大臣の対応は、沖縄県民の民意を踏みにじるためなら手段を選ばない、米軍基地の負担は、沖縄県だけに押しつければよいという、安倍内閣の明確な意思の表れに他なりません。
、、、
7 主張

 (1)政府に対して
 安倍総理大臣は第一次内閣で「美しい国日本」と、そして今回は「日本を取り戻そう」とおっしゃっています。即座に思うのは「そこに沖縄は入っていますか」ということです。そして「戦後レジームからの脱却」ともおっしゃっています。しかし、沖縄と米軍基地に関しては、「戦後レジームの死守」のような状況になっています。そしてそれは、アメリカ側の要望によるものではなく、日本側からそのような状況を固守していることが、様々な資料で明らかになりつつあります。、、、
、、、
 (2)国民、県民、世界の人々に対して
、、、
 平成26年12月に知事に当選した私が、官邸の方とお会いしようとしても、全く会ってもらえませんでした。いろいろ、周辺から意見がございましたが、私があの時、今のあるがままを見て、県民も国民も考えてもらいたい、ということを3月までずっと言い続けてきたわけであります。

 政府は、大勢の海上保安官や警視庁機動隊員を現場に動員し、行政不服審査法や地方自治法の趣旨をねじ曲げてまで、辺野古埋め立て工事を強行しています。それに対して、私たちは暴力で対抗することはしません。法律に基づく権限を含め、私はあらゆる手法を駆使して辺野古新基地建設を阻止する覚悟です。

 そのあるがままの状況を全国民に見てもらう。私からも積極的に情報を発信し、政府とも対話を重ねていきます。そうすることで、今まで無関心、無理解だった本土の方々もこのような議論を聞きながら、小さな沖縄県に戦後70年間も過重な基地負担を強いてきたことをきちんと認識してもらいたい。まして日本のために10万人も県民が地上戦で亡くなって、そういうふうに日本国に尽くして日本国を思っている人々に対し、辺野古新基地建設を強行し、過重な基地負担を延長し続けるということが、どういう意味を持つのか、日本国の品格、処し方を含めて考えていただきたいと思っております。
、、、
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知識の集積とその応用

2015-12-01 | Weblog
この数年、「Synthetic biology」という生物学研究分野の名前を聞くことが多くなりました。

数年前にCraig Venterがある細菌のゲノムを全て化学合成して入れ替えたという論文が出たことがあり、こういう研究のことなのかなあ、と勝手に思っておりました。その研究に関しては、ゲノムDNAを全て化学合成して入れ替えたのだから、これは一種の「人工生命」だとういう議論がありました。当時の私は、DNAを入れ替えただけなのだからそれはとても人工生命とは言えないし、そもそも一体何の目的でこんな研究をしたのだろう?と疑問に思った記憶があります。もちろんあのVenterがやったことですからなんらかの隠された深い意図があったはずです。テロメアでノーベル賞を受賞したJack Szostakも近年、似たような研究をしているようですが、彼の場合は「生命」というものを成り立たせているエッセンスを解明したいという動機があるようです。それで、無生物の人工的に合成したコンポーネントで生命現象の一部を代替するという実験を使う研究分野のことを、私は「Syntehtic biology」と呼ぶのだろうか、と何となく思っておりました。

ところが、実際のSynthetic biologyというのは、生命活動の成り立ちを解明するという目的ではなく、どうも高度の遺伝子操作などによってヒトにとってなんらかの有用性を生み出すように生物を操作すること(すなわち新しい生命現象を創り出すこと)を目的とするような分野なことのようです。なるほど。考え方としてばBiologyというよりはEngineering, Technologyという分野に含まれるべきでしょう。Bioengineering とという従来の分野とはどう違うのでしょうか? 分子遺伝学的手法を主に使ったBioengineeringを差別化して「Synthetic Biology」とかSynbioとか呼んでいるのでしょうか。

ならば、こういうのは、ある意味、ポエム化ではないのだろうかと思うのです。細かい喩えですが「Super enhancer」みたいなものではないかな、と思います。従来の概念と連続性もあり、厳密な定義も難しいのだが、差別化したいということではないだろうかと思います。新しい言葉は新しい概念があるように思わせます。

さて、Engineeringというのは応用科学であり、実際的な有用性を目指してなされる研究活動かと思います。EngineeringやTranslational Researchの分野が相対的に拡大傾向にあるのは、複数の理由があると思います。一方、生命現象の原理を解明するという目的であった「生物学」という分野が、これまでの知識の集積に伴って縮小していきつつありるようです。

生物学の隆盛の第一の理由は、生物学をやることで、カネにつながる有用な発見ができたからであろうと思います。抗生物質、抗がん剤、といった薬剤は、商品化され巨大な利益を生みました。ロッシュやノバルティスといった巨大製薬会社がほぼ純粋な基礎研究を目的とする研究所をかつては運営しており、そこから世界最先端の生物学研究が生み出されていました。いまや、そのような研究所はほとんど閉鎖されてしまいました。鳴り物入りでHarvardとMITの共同プロジェクトとして始まったBroad Instituteも近年は、出資者から最先端の基礎研究の知識以上に実際に役に立つものを生み出せというプレッシャーにさらされているそうです。Harvard Stem Cell Instituteのco-directorであるMeltonは、十周年目の会議のスピーチで、この10年でInstituteから、Nature, Cell, Scienceに300本ほどの論文が出たが、Nature論文をいくら患者に注射しても病気は治らないのだ、と述べました。NIH directorのコリンズは、progeria研究グループを現役で運営している医師研究者であり、わざわざ既存のinstituteを潰して、新たにtranslational medicine専門のセンターを作りました。つまり、知識の集積の時代は終わりつつある、何か役に立つ研究をしろ、という時代の趨勢 なのだと思います。

それで生物学をやっていた人々が、応用分野へと向かい、従来、生体を使った工学系分野に近づいてきたのではないかと思います。これらの出自の違うグループ、生物系グループと工学系グループが、近づきつつもお互いのアイデンティティーを保ちたい、そういう動機がSynbioという新しい名前の (古い?) 分野に生物系出身者を集めているのではないかな、と想像しております。

一応、特定の臓器で疾患との関連性の上ではやっていますが、比較的基礎的な研究をしている私にとって、(生命現象の理解を目指すことを第一目標とする)従来の生物学分野が縮小していることを感じるのは寂しいです。
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