百醜千拙草

何とかやっています

Negative dataの出版

2012-05-29 | Weblog

Negative dataを論文にするのが大変なことは、研究者であれば誰でも身にしみて知っているでしょう。人の論文をうっかり信じて、それに基づいた研究を計画したものの、中核の結果さえ再現できず、ずるずると深みにはまり、引くに引けなくなるケースも多々あります。そうならないように、どんな研究でもExit Strategyをしっかり考えておくことは重要だと思います。

この間のNatureのフロントベージ(2012; 485, 298-)で心理学の論文を例に上げて、Negative dataの問題と、しばしばその原因となっている先行論文の再現性の問題などが考察されていました。

ある研究分野が成熟してくるにつれて、新しくてパラダイムを変えるような発見をするのはますます困難になって来ています。簡単に発見できる部分は既に発見され尽くされているからでしょう。なんらかの技術的なブレークスルーなどで全く新しいレベルでの発見をするか、もしくは既存の概念をひっくり返すような発見をしないと、成熟した研究分野では注目を集めません。しかるに、有名ジャーナルは、そういう論文を好むわけで、そこに、確実でしっかりした論文よりも、話題性が高くであっと驚くような論文を書きたいというインセンティブが生まれるのだと思います。再現性の低い研究や場合によってはデータ捏造をする原因が、(カーディフ大のChris Chambers言うところの)「見世物ショー的(freak-show-ish)」結果を好む人間心理に源をなしているというのは多分正しいと思います。私も一番熱心に読むNatureの記事はゴシップ記事です。誰が捏造したとか、誰のデータが怪しいとか、そんな下世話な話で、Natureにこの手のゴシップ記事が多いのも、読者のそんな下品な好奇心を知っているからでしょう。

ヒ素をリンの代わりに使うことができる細菌を発見した、とScienceに発表して、専門家からボコボコにされた論文の話は記憶に新しいですし、ついこの間、これまたシークエンス実験のアーティファクトであることが明らかにされた複数のグループの発見(Harvard Dulacらのグループの哺乳類では1000以上の遺伝子がImprintingを受けているという発見や、RNA editingは普遍的現象であるという発見)も話題になりました。いずれの例も、本当だったらこれまでの概念を覆す発見ですが、普通だと、そんな信じられないような結果が出たら、研究者は必要以上に疑り深くなって、あらゆる手を使ってその結論を否定しようと努力し、大抵の場合、取るに足りないような原因を見つけて、がっかりするものです。そして、ごく稀に本当の大発見がなされるのだと思います。然るに、これらの例では、研究者は比較的、安易にその驚くべき結論に飛びつき、有名雑誌もそれを通し、結果、すぐその筋の専門家からクレームがつく、というみっともない結果になっています。見世物ショー的論文を好む読者とジャーナル、それに無意識的または意識的に迎合する研究者という両者のポジティブフィードバックが、話題性に富むが科学的に怪しい論文の増加を促進しているのではないでしょうか。

このNatureの記事には興味深い数字があげてあります。1990-2007年の間に「Positive data」が報告される割合が22%以上も上がったのだそうです。これは、Positive dataに対する指向性がより強まっている傾向を示しているのかも知れませんし、あるいは、実験方法などの複雑化によって、Negative dataを解釈することがより困難になってきているというような理由なのかも知れません。しかし、少なからぬ論文のポジティブデータが再現できないことを考えると、そもそも論文になっているデータそのものに手心が加えられている場合も少なくないだろうと想像できます。

疫学者、John Ioannidisによれば、統計的論理によると「ほとんどの出版された論文の知見は間違っている」のだそうです(Ioannidis JPA (2005) Why Most Published Research Findings Are False. PLoS Med 2(8): e124 )。(このPLoSの論文には26のコメントがついており、この雑誌で最もよく読まれた論文なのだそうです) 基礎生物学では、ほとんどの論文が間違っているというのはちょっと当てはまらないかも知れませんけど、私の分野の論文での感覚では、一流雑誌に出ている論文は、そうでない専門分野の雑誌の論文と比較して、結論が誤っているかまたは一部のデータに再現性が無い可能性ははるかに高いと感じます。

もう一つ、この記事で、Negative dataを発表できた二つの例が上げてあります。いずれも、通常のジャーナルにリジェクトされて、PLoS Oneに発表したのだそうです。これは興味深いです。PLoS Oneが当初の予想に反して多くの論文数にもかかわらず、それなりのインパクトファクターを保って、成功している大きな理由ではないかと思います。しっかりとした研究(即ち、Negative dataの解釈が可能な研究)であれば、論文のインパクトと無関係に採択するという方針が、Negative dataの論文や、Solidであるが余りExcitingとはいえないタイプの論文の受け皿になっているのでしょう。

一方で、怪しい論文を掲載した一流雑誌も、その責任を負うべきだと思います。先のDulacのScienceの論文に対する反駁論文はPLoS Geneticsに発表されました。PLoS Geneticsは十分、立派な雑誌ですし、著者がScienceに投稿したかどうか知りませんけど、もし、したのであれば、Scienceは掲載すべきではないかと思います。一方、しばらく前、Sir2の過剰発現が寿命を延長しないとのNegative data論文はNatureに掲載されました。Lenny Guaranteさん、最近どうしてるのでしょうか?

 

ところで、西松献金事件、陸山会事件という小沢氏失脚を狙った検察のでっち上げ事件を書いた森ゆう子議員の本、「検察の罠」がすごい売れ行きだそうです。こういう検察や最高裁の犯罪こそ、新聞やテレビといったマスコミが報道しないといけないのに、マスコミは権力側で国民を騙し欺くことしかしないから、非権力側の人々が、こうやって戦わないといけないのですね。この本の中で、黒幕の一人は法務省の黒川弘務であると名指しで書いてあり、波紋を呼んでいます。そして、勘ぐり通り、この男と繋がっているのが例の赤い狸、悪徳弁護士のようです。

また、八木さんたちの東京地検特捜に対する一連の刑事告発が、(地検ではなく)最高検に受理されたと話を聞きました。検察の中にも良識のある人々は大勢いて、今回のような犯罪に手を染める連中を何とかしないといけないと思っているらしいということも聞きました。教授主導で研究不正をする研究室も有害ですが、検察の場合、おのれの出世や組織の利益のために、罪を創り上げ、証人を恫喝し、場合によっては自殺に追い込み、証拠を捏造し、無実の人間を陥れるのですから、その罪の重さは比較になりません。陸山会事件関係検事は不起訴、訓告という"Slap on the wrist"で終りにしようとしているというリーク情報が新聞に流れましたが、どうもそれでは済まなくなってきたような情勢です。検察も最高裁も自分たちが小沢氏失脚を主導したのではなく、弱みを握られて、この犯罪をやらされた部分があるのです。とことん追求して、本当の病巣にメスが入れられることを期待します。

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フェイスブック上場に思うこと

2012-05-25 | Weblog

フェイスブックの鳴り物入りのナスダック上場後、数日であれよあれよという間に2割近くも株価が下がり、バクチで儲け損なった連中が文句を言っています。もちろん、損した連中がいるということは、儲けた奴もいるということで、さすがに異常な値崩れにSECが調査を開始したという話。

フェイスブックが上場する理由が私はさっぱりわかりません。同じナスダック系のコンピュータ関連企業と違って、ネットワーキングサイトでしょう?どんな設備投資が必要なのでしょうか?上場して金を集めて、その金を何に使うつもりでしょう?そしてその投資によって、さらにどれほどの利益の上昇が期待できるというのでしょうか?原則的に会社の収入は広告収入という話ですから、金を集めて投資したところで、そう簡単に広告収入が増えて会社の利益が上がるとは思えないのですが。

何か深い訳があるのかも知れませんが、私から見れば、フェイスブックの上場は、消費税増税と同じぐらい「大儀がない」と思うのです。つまり、上場のための上場に過ぎないように感じます。上場させて、IPOで値段を釣り上げて、前からの株主が株を売って金もうけをするための上場なのではないでしょうか。ライブドアみたいなものですね。だからこそSECが動いているのでしょう。

社長は30前の若者のようですが、会社を金儲けのネタに使われたのではないかと私は思います。この社長が上場の意図について語っているのを聞いたことがないので、私の下種の勘ぐりがあたっているかどうかわかりませんが、この若者社長がそそのかされて、金儲けに利用されたのでないとしたら、二つ、可能性があると思います。この社長が、会社のコントロールを失い、会社を捨てるリスクを侵しても、金もうけになればよいと考えたか、あるいは、本当に集めた資金で凄い利益のでる事業展開をする具体的な名案があるか、です。あいにく、私のボンクラ脳では、後者の場合の金になるアイデアとはどんなものかさっぱり思い浮かびませんが、もしあっと驚く事業展開が示されるのならば、私もフェイスブック株を買わせてもらいたいと思います。

そういえば、ウォレンバフェットは、フェイスブックに投資するつもりはない、と言っていたそうですから、少なくともバフェットもフェイスブックがパブリック企業として長期的に成長するとは考えていないということでしょう。あるいはバリュー投資、長期投資のポリシーを貫き、volatileoverpriceぎみなナスダックのハイテク株には最初から興味が無いというだけなのかも知れませんが。

集めた資金を使って、フェイスブックが本当にあっと驚くような事業展開をすることを私は多少は期待しているのですが、どうでしょうか。タダの金儲けのダシに使われたというありがちな話より、そういうドラマがあった方が面白いです。

私が、この社長の立場で、会社に思い入れがあるなら、上場はしないですね。バクチ打ちのおもちゃにされて、捨てられるのが関の山だと腰が引けますから。逆に、会社はどうでもよくて、上場の目的が一生分のカネを作って30前に引退して遊んで暮らすことなのであれば、頃合いを見計らって株を売り逃げるという手は理解できます。

 

ま、どうでもよい話でした。それより、東北復興財源めあてで、放射能汚染の可能性のある瓦礫を全国バラまくキチガイどもの方が深刻な問題です。もうつける薬も無いのでしょう。先日、北九州での瓦礫受け入れのニュースを聞きました。市民の大多数が反対している中、強行して、市長はいまや雲隠れしているという話。北九州で処理する瓦礫は全体の0.1%とかいう話で、たかだか0.1%の瓦礫を処理するために、運賃をかけて、放射能をバラまいて、市民を危険にさらす目的は、この復興財源利権です。つまり、東北復興財源は東北の復興には使われないということです。それで太るのは、国民のカネが出所の財源をあさり、おのれの利益のために全国に被害を拡大するこのような連中です。下のまんがを見て、国民新党の下地幹事長が、クーデターをおこし、党首を追い出してまでも与党に残ろうとした浅ましい行動の理由がわかりました。

 まんが復興利権に群がる連中 (PDF file 4.5Mb)

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ディスコの終り

2012-05-22 | Weblog

ドナサマーと言えば、ディスコ、ディスコと言えばドナサマー、63歳でガンで死去とのことで、ビックリしました。もう63歳だったのですね。歌がそううまいというワケではないので、ディスコ音楽というジャンルがなかったらここまで有名にはなっていなかったでしょう。出身はボストンのドルチェスター、ヨーロッパで活動してオーストリア人と結婚したのでドイツ語が堪能だという話も聞いたことがあります。最盛期のアルバムジャケット(もちろんLP)の写真とかいまだに何となく覚えていて、ちょっと変わった雰囲気のお姉さんという印象でしたが、もう還暦を越えていたとは、月日の経つ早さに驚くばかりです。沢山のヒット曲の中から、"Hot stuff", "Last dance", そして"Heaven knows"を拾いました。"Heaven knows"などは、ドラムはちょっと典型的とは言えませんが、単調な8ビートにストリングスのシンセサイザーで、当時よく流行ったディスコ音楽の作りです。

 

 それから、昨日は、ディスコブームのシンボル的映画、サタデーナイトフィーバーで大ヒットしたビージーズのロビンギブが死亡したという話。62歳とのこと。ファルセットの男性コーラスは私の好きな音楽ジャンルです。ファルセットで歌うグループは今ではそう多くありませんし、白人グループだと他に知りません。思うに、アメリカ出身でなかったからこそ、このスタイルで成功したのかも知れません。ディスコサウンドより、"How deep is your love"や"Too much heaven"のバラッドの方が私は好きでした。

 

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カネの奴隷

2012-05-18 | Weblog

JP モーガン、バクチで負けて、少なくとも$3 billionの損を出したという話。以前もこの手の話は何度もありました。一人の若手トレーダーが大相場を張って負けて、200年以上の歴史をもつ由緒あるベアリングス銀行を潰したのが95年でした。この時の損失額が8.6億ポンドですから、今回の負けはこれ以上と考えられます。これがきっかけでリーマンショックのときのような株式市場暴落を起こすかも知れません。市場の暴落は半分はヤラセのようですから、これも誰かがワザとやらせたのかも知れません。株が暴落すると、また一般人の引退基金用アカウントを犠牲にして焼け太りする連中が増えるでしょう。

カネの話で思い出しました。アホウドリの糞の堆積でできたと言われるナウル共和国、そのリン資源で世界一裕福になった後、資源の枯渇で、急激に転落したという「ナウルの悲劇」という話がしばらく前に話題になりました。資源を売って外貨を得て来たナウル国民の多くが生まれてこの方、「働いた事がない」のだそうで、資源が無くなった今、働かなければならなくなったのに「働き方がわからない」らしいです。

これを「悲劇」ととるか「啓示」ととるか、あるいは「祝福」ととるか、は見方によるでしょう。杜子春を思い出させますね。日本や資本主義社会で、資本家でない普通の人々は、働いて、賃金なり報酬を得て、それで命と生活の維持に必要なものを買うのが当たり前だと思っています。私は人間である以上、働くことは大切だと思いますが、「生きていくために働かねばならない」というのは間違っていると思います。貧しかったころの日本はエンゲル係数が高いことが貧しさの指標でした。限られた耕作地で作られる限りある食料を取引するわけですから、食料が割高であったのは理解できます。しかし、農業技術は進歩し、農作物の収穫効率は上がって来ています。工業製品も随分安くなりました。にもかかわらず、現代人の労働時間はむしろ長くなり生活は困難になって来ています。本来なら、生活必需品のコストが下がれば、生活はラクになって、「働かなくてもよい」時間が増えて然るべきです。事実は逆です。なぜでしょうか?なぜ、本当なら、そんなに働かなくても良いはずなのに、逆にもっと働かなければ生きて聞けないのでしょうか?一次、二次産業の生産性は上がりコストは低下し、それに従事する人の数は減ってきています。ならば、これまで10人かかるところが5人でよいのなら、残りの5人はブラブラしていてもいい筈でしょう。しかしそうはなっていません。言うまでもなく、これは資本主義における富の偏在ゆえだと思います。この富を偏在させるシステムが人々の奴隷化を促進している元凶であると言えるのではないでしょうか。私、何度もこの言葉を使いますが、現代人は「カネの奴隷」となっています。というより、カネというシステムを使って人間を支配している連中がいるワケです。そういう金持ちはカネはもう要らないのですが、それとは別の欲望があるわけですね。

百ドル札を印刷するコストは数セントなのだそうです。(一方、一円玉を一つつくるには三円かかるという話もありますが)それでは、一ドル未満の製造コストで百ドル札が作れるとして、残りの99ドル余りはどこに消えてしまうのでしょうか。最近は現金決済も少なくなりましたから、お札を印刷するコストさえ必要さえありません。この辺をちょっと考えてみれば、この現代の管理通貨制に基づく経済というものがトンでもないイカサマであることが実感できるでしょう。これがアメリカではFRBという銀行、日本では日銀がやっているいわば「詐欺」です。これらの銀行が、ほぼゼロからカネを作り出すことによって、実際に行っていることは、一般の人々にその無から作ったカネを貸し出し、借金させ、カネがないと行きて行けない社会システムににして、結果として、人々をカネの奴隷にしているということです。このゼロからカネを作り出すイカサマを発明した連中が、現在の世界を牛耳っていますが、その歴史はそう古いものではありません。そして、挙げ句にこのシステムはイカサマだと開き直ったのが、金本位制を廃止した時でではないでしょうか。ロンポールがFRBシステムに反対しているのは、このイカサマによって人々が奴隷化されているという現状ゆえでしょう。あいにく、一般の大勢の人は、自分たちがイカサマの被害者で奴隷であるという意識が乏しく、行きて行くためには働いて金を得るのは当然だ、と考えているようです。

日本政府の増税の理屈も考えれば非常におかしいです。日本は借金王国だ、借金を返さないといけない、負の遺産だ、とか騒ぐわけですが、そもそもその借金(国債)のほとんどは日本国民が貸し主なわけでしょう。つまり、日本の国の借金を返す相手の多くは日本国民です。その借金を返すカネがないから日本国民から増税してムリヤリ取り立てようとしているわけです。国民の立場からすれば、自分が貸してやったカネを返してもらうために自分のカネを出してやるということになるのだから、これは丸々取られ損です。得している連中はその国民のカネを国民から取って国民に返す作業している間にチョコチョコとつまみ食いする中間業者、即ち、官僚組織です。だから、官僚は、天下り、渡り、裏金という税金横領スキームをあくまで守り、財政が健全化しないように努力します。財政が良くなってしまうと、増税の口実がありません。増税しないと国民のカネをつまむ機会が減ることになります。だから、いくら増税しても財政は改善する見込みはないし、官僚どもがますます力を持つようになるだけのことです。建前通りに消費税増税を社会福祉に使うのであれば、それをその目的以外に使えない「目的税」としなければなりません。もちろん、ドジョウはそんなことはしません。消費税増税の本当の目的が社会福祉ではないからです。

ウチの子供には、カネの奴隷にはなって欲しくないので、「カネというものには実体がない」と常々、言っていますが、なかなかわかってもらえません。日常生活のレベルでは、実際にカネには力がありますから、カネを沢山持つともっとパワフルになる、と考えてしまうのも無理はありません。しかし、その考え方が自分を奴隷化する一歩です。その典型例が、毒饅頭を喰って法を曲げる検察や司法であり、原発マネー欲しさにウソを垂れ流すメディアや御用学者でしょう。哀れなカネの奴隷だとも言えますが、社会にとっては同時に非常に有害な連中です。

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Keep going through hell

2012-05-15 | Weblog

アメリカのNIHディレクター、フランシスコリンズの講演は、財政難のアメリカ政府の研究資金の今後に心配を寄せる研究関係者が相手です。ヒトゲノムプロジェクトをやっていたころは、クリントンのNIH予算倍増計画中のバブル景気もあって、バラ色の未来を語ることも多かったようですが、その後、急激に財政は悪化し、そして自らは一研究所所長という立場からNIHディレクターというアメリカ研究会にとっては大統領のような立場に置かれて、近年は愉快でないことの方が多くなったのではないかと想像します。明るい未来を無責任に語ることはできず、かといって非情な現実に研究者を突き放すわけにもいかず、といったところなのでしょう、コリンズの最近のお気に入りは、チャーチルの言葉をムンクの「叫び」の絵のバックで紹介することです。

"If you are going through hell,  

                                   ........ keep going"

NIHディレクターが、政府研究資金の現状を伝える精一杯の婉曲表現がコレですから、研究者にとっては余り面白い冗談ではありません。NIH予算は、大統領の提案をもとに議会で議論して決定されますから、絶対的に不足している資金そのものに関してはコリンズは何の権限もありません。もちろん、メッセンジャーを射ったところで問題は何も解決しないことも、"keep going through hell"以外に研究者ができることは何もないことも皆、わかっています。

 

日本の社会もこれに近いのではないかと最近思います。瀬戸内寂聴さんも、最近、日本の社会を評して、90年生きてきたが、現在ほど悪い時代はない、と言ったという話も聞きました。日本が地獄の中にあるのなら、いつか地獄が終わることを信じて歩み続けるしかないのでしょう。

収拾がつかない福島原発、現状の隠蔽と棄民政策、汚染がれきの全国拡散、消費税増税、TPP参加、自衛隊の米軍下部組織化とそのための改憲、言論統制法案、治安維持法まがいの法案、数え出したらキリがありませんが、日本国民を地獄に釘付けにするための政策を次々に繰り出すドジョウや自民党が、いったい誰のメッセンジャーなのかを考えておく必要があります。この反国民政策を推進する本体はおそらく粘菌のような集合組織であり、その中枢にあるのは、戦後の体制、即ちアメリカによる日本支配とその支配にぶら下がって一部の国内の人間が利権を得てきたという歪んだ構造を維持したいという意志であり、その根源は変化に対する恐怖と強い自己保存本能であろうと思います。その国民の敵は取りあえずアイク氏にならってカバル(cabal)と呼んでおきましょう。そしてドジョウ民主党の政策は明らかにカバルのアジェンダであり、国民のアジェンダではないということを理解する必要があります。カバルのアジェンダに反対する小沢氏は、敵を「権力」とも呼んでいました。権力とは何か、官僚組織という互助組織が動かす行政や司法であり、それらを動かす資本家であり、宗主国アメリカであり、様々なものの集合的あるいは部分的なパワーだと思います。

法曹界も批判するように、今回の小沢氏の強制起訴の無罪判決に対する指定弁護士による控訴が政治的なものであり、控訴には正当性がないことは明らかです。皆が疑問に思っていることは、この哀れな罪人どもを操っている本当の悪人は誰か、という疑問でしょう。これに関して、私が意外に思ったのは、アメリカの意志だ、と推測している人が結構、多いことでした。私はアメリカが直接関与した可能性は低いと思います。この指定弁護士が己の弁護士としてのintegrityを捨ててでも、政治案件を追求するmotivationはまず一つしかありません。検察などの組織であれば、組織を守り、組織の命令系統を尊重するという組織の掟があるので、組織内の末端の人間を操るのは容易です。しかし、検察役の指定弁護士は立場が違います。この手の人間を動かせるのはカネだけでしょう。そして、そのような「ヒモのついていない」億単位のカネを配れる人間は、与党政権内にしかおらず、そして指定弁護士に危ない橋を渡らせるように説得できるような繋がりを持つ人間は限られている、ということです。下から眺めればこの筋書きしかありません。それでは、この与党の悪人にアメリカから指示がでていたのかどうか、可能性はゼロではありませんが低いでしょう。アメリカがそこまでできるのならば、そもそもなぜドジョウを首相にしたのかという辺が不可解です。ドジョウを捨て石にして、次にポチを出すつもりだったという説もあるかも知れませんが、そんな回りくどいことをするとは思えませんし、そもそもドジョウは捨て石にさえなっていません。

ま、下種の勘ぐりはこれ位にしておきましょう。まもなく、リーク情報の第二弾が出るという噂もありますから、政治謀略を弄する小悪人どもが動けば動くほど、巨悪の証拠が暴露されていくことになります。一方、マスコミは、「この控訴で代表選に出れなくなった」としつこく己の願望を垂れ流していますが、このことこそ、この控訴が「政治的」謀略に他ならないことを示しています。原則論で言えば、現在、小沢氏は法に基づいて無罪であり何の拘束もありませんので、堂々と代表選に出ればよいと思います。それまでには小悪人どもは悪事がバレて動けなくなっているでしょう。

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仕事のできる人間を出せ

2012-05-11 | Weblog

陸山会裁判、検察役指定弁護士が控訴を決めたとニュースがありました。新聞の報道どおりとすればキチガイです。もちろん、彼らはキチガイではなく確信犯でしょう。証拠があれだけ却下されて、検察の不正を糾弾されての判決で、新たな証拠はゼロの状態で控訴するのだから、小学生が考えても判決が覆るわけがありません。勝つつもりは毛頭なく、裁判を長引かせ、9月の代表選を妨害するのが唯一の目的ということです。指定弁護士の報酬を考えたら、この連中がタダで控訴を決めるわけがありません。この検察役の弁護士に聞いてみればよいでしょう、いったいどれぐらい毒まんじゅうを喰ったのかと。

この控訴は理屈で言えば、複数の問題があります。第一に、検察審査会で強制起訴され無罪となった件に対して、検察役の弁護士による「控訴」が認められるかどうかの規定がありません。控訴そのものが有効性が疑問ということです。第二に上にも述べましたが、新たな証拠は何もないことです。ま、今の日本、理屈が通る国ではありませんが。

しかし、この控訴で、逆に、検察と最高裁は追求を免れることができなくなったと私は思います。すなわち、毒饅頭を配った小悪人(たぶん悪徳弁護士、aka 赤い狸でしょうが)は己の利益のために、小沢失脚をしつこく追求しすぎて、引き際を誤り、国民搾取システムの官僚組織という大悪を危険に晒すことになるということです。もとはと言えば自民党、そして今は民主党反小沢派の連中が、裏金づくりという官僚の弱みを握り、検察と裁判所を脅してやらせた政治謀略でした。ところが、今や、検察と最高裁が犯した小さな犯罪の積み重ねが取り返しのつかないレベルの国家の根幹を揺るがす大問題へとなろうとしています。かなり劇的な状態でこれらの組織は崩壊することになると私は予想します。

饅頭を配った狸には、自民党も検察も最高裁も、本音では余計なことをやってくれたと、迷惑していることでしょう。これで危ない橋を渡り続けなければならなくなりました。

ところで、一昨日の内田樹の研究室に次のような説がありました。

沖縄基地問題についての私の仮説を申し上げる。
それは「日本のエスタブリッシュメントは、『アメリカの国家意思を忖度する』ことで、そのつどの政策を決定している」というものである。
別に珍しい話ではないが、この仮説のかんどころは「忖度」という動詞にある。

「小沢失脚陰謀」は、そもそもが、アメリカの意志を「忖度」した連中のが己の保身とあいまって、勝手に始めたことではないか、私もそんな気がします。彼らは戦後に刷り込まれた負け犬根性のせいで、この40年程、思考停止したままなのではないでしょうか。「田中角栄はアメリカ様に楯ついて、独自に日中国交を回復したので、キッシンジャーがロッキードで失脚させた。ならば、角栄の弟子で、日本の防衛には第七艦隊だけで十分だ、となどという小沢氏もアメリカ様にとって都合の悪い奴に違いない」と「忖度」したのでしょう。「なにより、小沢氏が力を持つと、俺たちも困る」という利己的な理由で思考停止を正当化したこのボンクラどもは、時代も変わり、アメリカのスタンスも変わり、国民のメディアや国家権力に対する見方も変ってきたにもかかわらず、バカの一つ覚えのように、小沢失脚謀略をひたすら突き進めてきたのだろうと思います。そこへ、これまた己の利益のことしか頭にない狸が、クビを突っ込んで引っ掻き回し、収拾がつかなくなった、そのように見えます。次に官僚組織に嵌められるのはこの狸かもしれません。

アメリカ様は、無能の固まりのドジョウやこれまでの自民党政治家は既に見限っているのですよ。無能でゴマをするしか能のない奴よりは、ゴマすりはヘタでも、力があって話の通じる人間と交渉したいと思っているのですよ。それほどまでに、アメリカの国力は落ちてきていて、これ以上、国外のことにいろいろ構う余裕がないということなのですよ。ゴマをすって、プレスリーのモノマネでも覚えて、幇間芸の一つも身につければ、それで安心という時代は終わったのですよ。実行力も実力もないドジョウがいくら口先だけで「命をかける」のなんのと力んでも、誰も信用しないのですよ。

オバマの前で、憲法9条もなんのその、日米軍事同盟を深化させると、とんでもない口約束をしたドジョウの評判がアメリカでもここまで悪いのは、ドジョウの巧言令色をアメリカも全く信用していないからでしょう。

天木さんが、こう書いています。(記事から抜き書き)

野田政権はほぼ終わったことは確実だ。

 皮肉なことに、政権浮揚のテコと目論んだ米国公式訪問を終えた
途端に、野田首相の政治生命は尽きたようだ。

 その象徴が野田訪米に対する米国メディアの酷評である。

 それを見越してか、きょう(5月9日)の日経新聞でケント・カルダー元
駐日米大使特別補佐官が次のようにメッセージを発信している。

 「・・・米政治にとって2013年は極めて重要な年になる。オバマ大統領
が再選されれば3-9月、ロムニー前マサチューセッツ知事が大統領に
なれば6-12月の時期に、米政府内部で人事や政策の基本が固まる・・・
その時期、具体的には来年8月まで日本の政治が混乱していたら、日本
は米国と政策などで協調する重要な機会を失うことになる・・・」

 そして日本の政治家は、保身や私益を捨てて、米国の新政権より一足
先に、政治主導を発揮できる強固で安定した新しい政治体制をつくり、
来るべき米国の新政権と日本国民の暮らしと安全を守るために彼我の
国益をぶつけ合う正しい外交ができる態勢を整えておく必要があるのだ・・・

このメッセージは普通にそれを聞くことができる人間にとっては、比較的明瞭です。無能なくせに自分のことだけしか考えられないような首相や政権はアメリカは(もちろん、日本国民にとっても)いらないということです。もっと仕事のできる人間を出せ、ということです。狸もドジョウも、それぐらいは「忖度」できてもいいだろうと思うのですけど、ナントカは死ぬまで治らないともいいますからね。

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米権力移動と小沢氏の今後

2012-05-08 | Weblog

フランス大統領選、下馬評どおり、サルコジ氏は社会党オランド氏に敗れ、政権が交代しました。サルコジ氏は、ロックフェラーの後ろ盾があったと言われていますから、今回のフランスでの政権交代は、ひょっとしたら、後で述べるアメリカ、ロックフェラーの権力交代を反映しているのかも知れません。

政権交代に関して、ちょっと前に読んだ下の議会制民主主義についてのアイク氏の批判、日本の空きカン以来の民主党と自民党を見ていると、その通りだなあ、と思います。

この政治的『選択』の幻想を与える目くらましはこの様に働く。

(1)与党はどんな時も人々を奴隷状態にするためのカバルのアジェンダを導入する。
(2)野党や野党員はそのアジェンダに反対する:これは彼らには力がないので意味が無いのだが、政治を議論しているという幻想を提供する
(3)選挙をして野党が与党になった時、選挙運動でそれに反対して選挙に勝ったにも関わらず、カバルのアジェンダを導入する。
(4)今までそのアジェンダを進めていた与党は、今、野党となり同じアジェンダを批判する。

このように、この終止符を打つべき非道行為に国民が十分気がつくまで、奴隷状態の人々に希望が叶うだろうと思わせたまま、この茶番劇は続いていく。

この言説には民主主義というのは表向きだけのことで、実は一部の人間によって民主主義国家の国民は支配されている、という仮説に基づいてます。この仮説も証拠が出そろってきて、いよいよ陰謀論というレッテルを貼っておしまいにはできなくなりました。これまで、陰謀だ、勘ぐり過ぎだ、と言われていたことのどれほどの多くが実は事実であったかを考えると、陰謀論を語る側ではなく、陰謀論とレッテルを貼る方がむしろ思考停止していたのだと思わざるを得ません。仮説を立て、目に見えるものをとりあえず疑ってみる、その方法的懐疑によって、隠れているものを明らかにしていく作業が、科学という方法でした。仮説を立てて、仮説をテストして、その正否を判定する、そうやって、目の前にある事柄の後ろに隠れているものを明らかにしてきました。今、目の前に見えているものとは、空きカン以来の民主党が政権交代の時の公約を片っ端から破棄し、自民党と同じような政策を主張し、原発を強引に再稼働させようとし、IMFやアメリカにはドンドン金を出す約束をする一方で、国内にはカネがないと叫び回って、貧乏人からも税金を巻き上げようと消費税増税を命がけでやろうとしている異常な政府です。目に見えないものとは、この異常なできごとをcoherentに説明できる論理です。暫定的には、日本政府は国民を搾取し、アメリカの利益になるように働いており、アメリカの「誰か」が日本政府に指示を出している、というのが最も強い仮説でしょう。(もうこれは余りに証拠が多過ぎるので仮説や陰謀論とは言えませんが)。

そのアメリカの「誰か」に変化の兆しがあるという話は、ちょっと前からあって、元毎日新聞記者の人が書いているこのブログの最近の記事では、こうあります。

米国最大財閥デイビッドロックフェラー失脚後、世界支配の実権を掌握したジョン デビッドソン ロックフェラー四世(民主党上院議員、ゴールドマンサックス社オーナー)が、日本の政治について、「小沢一郎元代表を支持する」と明言しているという。

ジョン (ジェイ)ロックフェラーはロックフェラー家の本流からみれば異質で、共和党ではなく民主党議員であり、デイビッド ロックフェラーとは確執があるという話を聞いたことがあります。この権力の移動は、「戦争で儲けるか」、「金融で儲けるか」の差ですから、どっちに転んでも、究極的には日本にとっては大差はないとも言えます。しかし、これまでデイビッド系の勢力が日本の政治を操ってきたのだとすれば、今回のロックフェラー家の権力移動により、アメリカは小沢支持に向かうことになり、それに伴って、マスコミの論調も変化していくであろうことが想像されます。

前回、触れたように、陸山会事件での、捏造調書のコピーがインターネット上にリークされ、その悪質な捏造の手口がパッと広がったせいもあるでしょうが、突然、マスコミが小沢バッシングを抑え出して、検察批判をし始めました。変わり身の早い連中です。ひょっとしたら、ジェイ ロックフェラーの小沢支持明言の影響が早くも出始めたのかも知れません。

因みにこの捏造調書などをリークしたのは、一市民T氏が考えているように、たぶん最高裁事務局でしょう。検察に全部押し付けて、自分は知らないフリをするつもりなのだと思います。そうは行きません。森ゆうこ議員らが最高裁が発注したイカサマくじ引きソフトの不正の証拠をつかんでいますし、検察側も最高裁が最初からグルなのは重々承知の国策捜査ですから、最高裁に手が及ぶのも時間の問題でしょう。現在、国民の批判は主に検察に向いていますが、田代検事やその上司らのクビを切って幕引きさせてしまっては行けません。最高裁と謀略を最初に思いついた麻生内閣自民党まで追求する必要があります。

話もどって、ジェイロックフェラーが実権を握り、小沢支持を明言したというこの動きは、思うに、これまでよりも少なくともマシな結果に繋がると思います。これで、多分、口害をまき散らす言うだけ番長や悪徳弁護士も力を失い、消えてくれるのではないかと期待しています。

最高裁と検察は大チョンボをやらかし、もう小沢氏失脚を画策することはできなくなりました。加えて、このJ ロックフェラーのendorseで、小沢氏は復権し、新党結成という話はなくなると思います。この辺は間もなく、明らかになるでしょう。

国民にとってその後の問題は、小沢氏が復権し小沢内閣ができたときに、本当に「国民の生活が第一」の約束を守ろうと努力するかどうかです。アイク氏がいうように、これが茶番である可能性が皆無とは言えません。ただ、小沢幹事長、鳩山内閣の時に、結局、うまく行きませんでしたが、努力はしていたと私は思いますから、小沢内閣となった時にも、国民のために働いてくれることを期待したいです。

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放射線被曝の安全閾値は無い

2012-05-04 | Weblog

ようやくトランスジェニックマウス用のコンストラクトが完成しました。4ヶ月半、シコシコと、いろいろな障害に阻まれつつやってきたので、感慨深いです。ようやく研究のスタート地点にたどりついた、という感じです。約160 kbのBAC DNAに三度の操作を加えて作りました。数えてみると、この操作を入れるために作ったプラスミドコンストラクトは約50個。最後に組んだプラスミドコンストラクトは、全長16 kbで8つのモデュールを切り貼りしましたが、なかなか大変でした。これでも利用できるリソースは使えるだけ使ったので、もしこれが10年前だったら、ヘタするとこの二倍ぐらいの時間はかかったかも知れません。後は、無事にこのコンストラクトが動いてくれて、意味のあるデータがとれるかどうかですが、それはマウスを作ってみて実験してみるまでわかりません。その実験も簡単なものではないので、これからも苦労は続きそうです。しかし、千里の道も一歩から(その一歩も三歩進んで二歩下がった一歩ですが)ということで、地道にやりたいと思います。 

さて、一月程前、放射性物質で汚染された牛肉を食べる会が催されたという話を聞きました。いくら福島農家支援のためであっても、こういうことはやってはならないことだと私は思ったのですが、つい先日、中部大の武田邦彦さんのウェッブサイトで下の論文を知りました。武田さんのウェッブサイトで解説つきの文を読むのが早いですが、私もアブストラクトだけ意訳してみました。重要な部分を強調しましたが、この疫学調査では、従来の考え方に一致していると思いますが、実際の人の疫学調査から、被曝の安全閾値などというものは無い、と結論しています。放射線被曝はゼロにするべきだということです。また、被爆時の年齢が若いほど、後期にがんを発症するリスクが高まるとあります。かなり劇的に上がるようです。これらのデータからも、放射線被爆、とりわけ子供、青年期の被爆はゼロにする努力が必要であり、政府の無根拠な基準値などを真に受けてはいけないといえるでしょう。

 

原子力爆弾生存者の死亡率についての研究、第14報、1950-2003:がんと微小がん疾患についての概観

Radiation Research 177(3):229 – 243. 2012  Ozasa et al.  広島放射線影響研究所、疫学部  e-mail: ozasa@rerf.or.jp 

この論文は、放射線影響研究所がフォローしている原子力爆弾生存者の生存調査のおける死亡率報告の第14報であり、原子力爆弾由来の放射線が長期的に与える健康への影響を調査したものである。1950 – 2003年の期間中、DS02 量の(放射線を浴びた)86,611人の追跡対象の58%が死亡したと推計される。前回の報告以来、更に6年のフォローアップによって、放射線被曝後、より長期間の、遥かに多くの情報が得られた。(被曝のない群との比較で)被爆者はがんでの死亡率が17%多く、被爆時10歳未満であった者の死亡率は58%高かった。ポワソン回帰分析により、放射線影響の程度、線量-効果関連、被爆時の年齢、性別について解析した。あらゆる死亡原因のリスクは放射線被爆量と正の相関を示した。重要な事は、固形がんに関しては、放射線の追加的影響(即ち、一グレイ、104人年あたりの過剰がんを持つ症例)が、線形の量-効果関連性をもって、生涯を通じて増加したことである。線形モデルによれば、固形がん全体に関して、性別平均化後、30歳で被曝し70歳以上で過剰がんを罹患する相対危険率は、一グレイあたり0.42[95% 信頼区間(CI)0.32, 0.53]であった。このリスクは被爆時年齢が10年高くなるごとに約29%低下した(95%CI:17%, 41%)。全固形がんにおいて、有意なERRをもつ推定最小放射線量は0-0.2グレイであり、正式な線量-閾値解析において、閾値は無い、即ち至適被曝放射線閾値はゼロである、ということが示された。がんによる死亡リスクは、胃、肺、肝臓、大腸、乳腺、胆嚢、食道、膀胱および卵巣を含むほとんどの主要臓器で増加しているが、直腸、すい臓、子宮、前立腺よび腎臓実質においては有意な増加はなかった。循環、呼吸、消化器系でのがん以外の疾患リスクの増加が認められたが、放射能がこれらの疾患の原因かどうかは更なる研究が必要である。感染性疾患または外的な死亡原因に放射線の影響があるという証拠は認められなかった。

 研究所のweb siteは、http://www.rerf.or.jp/index_j.html です。

 

ところで、ついさっき覗いた八木啓代さんのブログ(大暴露:とんでもないものが届きました)で、ロシアのサイトに陸山会事件の捏造調書などがアップされているという情報がありました。私も早速見てみました。本物だろうと思います。田代検事とその上司の木村検事の(自筆であろう)サインがあり、調書にも割印が押されています。多分、裁判中などにコピーされたものがリークしたのでしょう。捏造調書、なまなましいですね。天網恢々、悪事の証拠は一瞬にして世界をかけ巡る時代になりました。

研究不正がバレたら、普通、責任研究者は廃業になったりしますが、検察では、調書捏造が明らかにされて、本人まで認めているのに、「お咎めなし」はおかしいでしょう。そもそも、証拠捏造の村木さん事件も、この調書捏造の陸山会事件も、両方とも民主党政権にダメージを与えるためにセットになった政治案件でした。前者は石井一氏を狙ったものであり、後者はもちろん小沢氏失脚を狙ったものです。結果、石井一氏の几帳面な記録癖で検察ストーリーが崩れ、証拠捏造がバレて、村木さん事件は失敗に終わりました。一方の小沢氏を狙った西松献金事件では、検察証人が検察ストーリーを覆して公判維持できなくなり、今回の陸山会事件では、調書の捏造がバレて無罪判決となりました。そして、今回、スケープゴートを作るのに失敗した東京地検特捜は、多分、解体を余儀なくされるでしょう。特捜は今や、国家権力の腐り始めた右足のようなものです。切断して取り除かないと本丸に影響が及ぶでしょう。もちろん私はそれを願っています。一旦腐りきった権力構造はとことん解体するべきです。腐っているのは右足だけではありません。

 

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