百醜千拙草

何とかやっています

株価は上がる

2008-09-19 | お金
日本では禿鷹ファンドとして悪名高いリーマンブラザーズの破産申告うけ、株価は急降下しています。さすがに半官の住宅金融公庫、Fannie MaeやFreddie Macの場合とは異なり、アメリカ政府は経営立て直しに補助を出すことを拒否、受けて、株式市場から資金が引き上げられていっているようです。この不良不動産モーゲッジ問題は、ドミノ倒しのように、大手金融、保険業界に悪影響を及ぼしています。最大の保険会社AIGも事実上破産、さすがにこちらには政府の救助が入ったようです。保険会社はともかく、投資銀行などの会社は、他人の金を右から左へ動かす間に、かすめ取った金(彼らは利益と呼んでいますが)で、社員に高給を与えてきました。その金とは元をたどれば、国内外の一般投資家の損失に他ならないわけです。破産宣告後も、日本リーマンブラザーズのホームページでは、良いスーツを着てにこやかに微笑む会長が、「リーマン・ブラザーズは、世界の主要な市場で確固たる地位を確立し、お客さまのビジネス戦略の成功を支援するサービスの提供に尽力しています。リーマン・ブラザーズの今日までの好業績は、徹底したお客さま第一主義という経営理念を追求することにより達成されてきました、、、」などと白々しいことを言っています。お客様第一とかいいながら、おそらく例によって、会社が潰れる直前に取締役連中は、たんまり臨時ボーナスをもらっていたりするのでしょう。
プロでさえなかなか勝てない金融業界、特に株式において、短期的予想は不可能であることは、複雑系の理論からも示されています。しかし、株式で負けない方法はあります。2つあると思います。一つは株式に手を出さないこと。もう一つは株を売らないことです。前者は負けもしませんが、勝ちもしません。「株を売らない」方式は、かなり高確率で勝てます。利益や損失は株を売った時に確定しますから、売らない限り、勝ち負けは決定しないので、売らなければ負けないのは当たり前ですが、最終的に売る時に高く売れれば勝ちです。歴史的に見れば、株価は上がったり下がったりを繰り返しながら、結局は上がっていきます。この歴史的事実が今後も継続していくと仮定すると、素人が、株式で「勝つ」もっとも確実で安全な方法は、多分、インデックスファンドを買って長期保持し、(可能であれば永久に)売らないことではないか、と思われます。事実、Warren Buffetをはじめとする株式投資の大成功者の多くは、株式の理想的な保有期間を訊かれると、「永遠」と答えます。株価の上昇によるCapital gainはむしろオマケで、配当金だけで十分に日々必要なお金ができるぐらいの規模の投資ができるのなら、それがベストでしょう。ロックフェラーも、楽しみとは何かを訊かれて、配当金の小切手が送られてくること、と答えています。401kやIRAなどの引退資金の積み立ては、基本的に売らずにできるだけ長く持ち続けるこのストラテジーを使っています。今回の株式市場のクラッシュから立ち直るのにどれくらい時間がかかるか分かりませんが、株式市場に引退資金の流入が継続してある以上は、株式市場はいずれ立ち直り、長期的には株式は全体として上って行くであろうと思われます。
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お金の問題

2007-04-27 | お金
クリントン政権時に倍増したアメリカNIHの研究予算がブッシュ政権に変わってから横ばいとなり、研究コミュニティーに非常な不安感をかき立てるようになってから数年になります。予算が潤沢であった時期に拡張したアカデミックプログラムは維持が困難になり縮小もしくは廃止していかざるを得ない状況に追い込まれてきています。個々の研究者を見てみれば、殆どのprimary investigatorの研究並びに職そのものが、NIHの競争的資金を獲得できるかできないかにかかっている訳で、現在だいたいトップ15%の枠に入れるか入れないかで人生大きく変わってしまうわけです。悪い事に競争的と言っても、本質的に多様な研究計画の評価を公平に行えるような基準があるはずもなく、どうしてもスコアのつけ方に恣意性が入ります。にもかかわらず、ペイラインは非常にはっきりしているので、1パーセンタイルでもペイラインからはずれると何ももらえません。こんなことを書いているのも、今朝、某有名科学雑誌のフロントページを読んでいて、個人的に知っている人が、NIH資金をぎりぎりで獲得できず今月で長年すごした研究所を離れざるを得なくなったということを知ったからです。彼は問題の多い動物施設の利用状況の改善を図るべく、利用者のグループのオーガナイザーとして定期的にミーティングを開いていたのでしたが、最近ミーティングのお知らせが回ってこないなと思っていたところでした。長期的な目で見れば、能力があり成果を出せる人が最後は残るのですが、現在のこの不安定な研究環境では、一時的な不運がちょっと重なっただけで、能力にかかわらず研究を断念しないといけない状況に追い込まれてしまいます。一人前の研究者を育てるには何十年とかかるのに、一時的なピンチを救済できる経済的体力が衰えてしまったためにそうした貴重な人材を永久に失う可能性が高まってきています。一旦失われるとそれを補充するのにはまた何年もの時間が必要となります。日本は医師不足らしいですが、十年前は医師過剰時代で医学部の定員がどんどん減らされていっていました。十年前の医療費支払い基金の経済的なバランスだけで政策が決まってしまい、十年後、二十年後を考えていなかったということでしょう。再び必要数の医師を確保しようとしても医学部レベルから始めていては遅すぎます。医師を教育し使い物になるようにするまでには十年近くかかるのです。アメリカのように専門職職員を外国から輸入するのがもっとも対応が早いわけですが、アメリカと違って喜んで日本に来てくれる外国人はそう多くはないでしょう。
 アカデミックラダーを上り始めると永久職につけるまでに2,3回の評価関門があって、生産性のない研究者はそこで除かれます。しかし各大学で行われるこういった評価はだめな人を除くためのもので、良い人を選択するためのものではありません。大学もできればせっかく採用して投資した人材ですから成功してもらいたいと思っているのです。しかし研究費を供給する主に政府機関は、すべての研究者をサポートできるだけのお金がないので、そこでは優秀と考えられる研究のみしかサポートできません。そして研究計画を査定する側はその研究計画の価値を常に十分理解できるわけでもないので、優れた研究計画なのに認められない不運なものが出てきます。そうした不運がその研究者のキャリアにクリティカルな場面で現れたのが、上の例だったのだと思います。
 皆、危機感はあるのですが、何といってもお金の問題なのでお金をどうにかしない以上、何の解決策もありません。仮にブッシュが無駄づかいを止めても、NIHの体力が健全なレベルに回復するまでにはしばらくかかるでしょう。じっと耐えるしかありません。
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研究費申請書

2007-04-12 | お金
今日、レビューの依頼を受けました。普通の論文のレビューの依頼ではなく、驚いた事にイスラエルの研究者がイスラエルの科学基金に申請した研究計画のレビューでした。どうしてイスラエルの科学基金が研究費申請書のレビューを私に頼んでくるのでしょう?この基金はイスラエルでの日本の文部科学省またはアメリカでのNIHのようなものみたいです。日本では科学研究費の申請を文部科学省にしたら、普通日本人がレビュ-すると思います。イスラエルでは国内の人間がピアレビューをすると利益相反が大きいのでしょうか?あるいは単に国内でレビューできる人が忙しすぎるか数が少なくて、外国にレビューのアウトソーシングをするのでしょうか?興味本位でなんだか悪いようですが、とりあえず乗ってみようと思い承諾しました。
 その後、研究計画書が送られてきたのですが、全部で50ページほどの文書のうち、研究計画と予備結果の分はシングルスペースで約15ページです。4年分で$350,000の研究費を申請してあります。申請書の分量はNIHの小規模の研究グラントとほぼ同量なので、リーズナブルな分量だろうと思いますが、申請書はヘブライ語ではなく英語で書かれているのです。Budget JustificationもUSドルで示されています。もちろんイスラエルにはワイスマン研究所という世界トップクラスの研究所がありますし、外国からの留学生も沢山受入れているでしょうから日本よりは英語環境はより整っているはずです。それでも私の乏しいイスラエル人との交流の経験からは、非英語圏の中で彼らの英語はフランス人なみにヘタな方だと思います。そんな中で、NIHなみの分量の英語の研究申請書を国の研究基金が要求するのですから、気合いが入っているなと思いました。日本で同じ事をやったらどうなるでしょうか?むかし私の知っていたころの日本の科研申請は、たった数ページしかないくせに、どこに判子を押せとか、枠からはみ出すな、とかどうでもいい事ばかりに厳しく、形だけという感じで申請書の内容を十分評価できるようなものではありませんでした。おそらく過去の実績とか有名度とかそんなもので評価されていたのではないかと思います。過去の実績が重要なのはどこでも同じでしょうが、これではいくらよい研究計画があっても若手は評価されにくいのは間違いないでしょう。もし、英文で15ページの申請書の提出を日本でも要求すれば、それだけで申請者の能力はかなり評価することが可能になるのは間違いないと思います。また当然レビューアに対しても英語によるクリティークの提出を求めねばなりません。これは明らかに書き手およびレビュー側に時間の負担を強いることになります。研究費の割り振りを研究者内で行うわけですから、そうした時間の負担を避けたい研究者はみな嫌がるでしょう。しかし、英文で科学の成果を発表し、英語でコミュニケーションすることを求められる研究の世界では、科研申請およびそのレビューをを英語でさせるということは、長期的には日本の研究界にとって利点が大きいと思います。
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Money makes the world go around

2007-03-31 | お金
地獄の沙汰も金次第といいますが、生物学研究もこれなしには一歩も進みません。研究費がおりてきたら、ちょっと高額な実験もできるだろうと思って期待していましたが、そこから給料引いた残りの金額を見たら、期待も一気にしぼんでしまいました。これだけテクノロジーが発達してきても、金を生み出す機械というものはないのですね。
 でもよく考えたら、いない相手から借金する技術はあるようです。アメリカでソーシャルセキュリティー (SS) が破綻してきて、政府は個人年金の積み立てに税金の優遇処置を導入しました。401k、403bやIRAとかがそうですが、ほとんどの人がそれらの積立金を証券会社などによる株式や債券へ投資で運用していると思います。投資した金額が引退時期までに増えていってくれるのをみな期待するわけですが、そうして増えた分はいったいどこからやってくるのでしょう?株式投資ということを株式の取引のみ限って短期間の売買を考えてみると、基本的に、安く買った人が値があがったので株を売る、その差額が利益ということですね。そしてその株を買った人は、買った時点においては将来高く売れるであろうという期待感をもって買う。もし引退資金のための株式投資によって出る利益がこうした売買の積み重ねにあるのなら、株価は全体として上がっていってくれないと困るわけです。3次元空間だけで静的に考えただけでは、無から有が生まれるわけはないわけですから、お金はどこかからどこかへ移動しているだけです。しかし、アメリカの多くの人が引退資金のかなりを税制優遇による株式投資に頼っているということは、この永遠の右肩あがりを期待するこのシステムはある程度安定である必要があるといえそうです。このシステムは将来株を買ってくれる人がいることが前提になっています。その人たちは自分たちが買ったよりも高い値段で株を買ってくれることを期待されています。そうしてその人たちも引退後の心配をしだしたら、高くなった株を買ってやはり将来それ以上に高い株を買ってくれる人がいることを期待するわけです。つまり、このシステムは最後の最後に株取引そのものが無くなった時に株券を握りしめているババを引いた人の存在を見て見ないふりをすることで成り立っているようです。つまり将来のまだ見ぬ誰かにババを次々に先送りし、ある意味、返すつもりのない借金をしているように見えます。現実ミクロでみると、株で損する人はいっぱいいて、実際その人たちのお金が証券会社の会社員の給料や個人年金投資者の引退資金になっているのだと思うと、もっと生産的な方法はないものだろうかと思ってしまいます。アメリカの資産運用は、日本やその他の国の株式市場を喰いものにして成り立っているようですから、アメリカの場合はお金はアメリカ以外からやってくるという単純な図式なのかもしれません。
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