日本円、一ドル150円に向かうかというような円安で日銀が円買い、ドル売りの介入。ザルの穴を手で塞ぐようなもので焼石に水。水を止めるとかザルを変えるとかしないとどうにもならないのに、いつもの小手先の誤魔化しのやってるふり、結局は成り行き任せでどんどん状況を悪くするというのは日本政府の伝統なのですかね。
一ドル85円だった頃とさらに昔の固定相場制の頃の一ドル360円の時代を覚えている人間にとっては、この円の価値の変動は感慨深いです。戦後日本の高度経済成長、Japan as No1、そして絶頂を迎えバブルの後、経済は停滞から急激に衰退。戦後の焼け野原から脅威の復興と繁栄のを達した日本が、政治腐敗によってあっという間に学問も人々の生活も先進国から脱落。これだけのことが半世紀あまりの間に起こりました。祇園精舎の鐘の声、沙羅双樹の花の色ですか。
私は経済学者ではありませんけど、その素人脳で考えても日本政府の経済政策はメチャクチャです。無能なのではなく政治腐敗による意図的なものだと思います。だからタチが悪い。デタラメな経済政策によって起こされた経済不振のメカニズムは非常に単純な話だと思うので、ちょっと長くなりますけど、整理してみたいと思います。
今回の急激な円安は、円が弱くなっただけではなくドルが高くなったせいでもあります。今年のアメリカの金利引き上げの影響で、実際ドル以外の外貨も下げています。アメリカでは、昨年まで記録的な低金利で30年固定ローンの年利が3-4%というレベルでした。この低金利時代に入る15年ほど前は6%以下であればホームローンは安いと言われていましたが、去年まで超低金利だった30年ホームローンの年利は今では、6-7%に戻っているようです。この差は30年蓄積すると大きく、例えば昨年に50万ドルのローンを組んだ場合の支払いと今年の利率で30万ドルちょっとのローンを組む場合との支払いは同じレベルになるそうです。カネというものは幻なのですけど、われわれの生活に及ぼすその力は現実です。アホらしいですな。
金利の引き上げは、借金を難しくしてカネの流通を減らす目的で行われます。同様に、税金(特に消費税など)を引き上げることは同じ効果があります。なので、金利を上げたり増税したりすることは景気を冷え込ませ、株価を下げます。事実アメリカ株はこの一年で20%以上下げ、コロナ前の水準に戻ってしまいました。
アメリカが金利を引き上げたということは、アメリカでは景気が加熱しすぎてインフレが度を超えつつあると判断したということでしょう。実際、アメリカでは物価上昇が著しいです。今後、この金利政策が成功すれば、段々とアメリカの景気は悪くなり、物価上昇は止まるはずで、そうなればまた金利が下がり株価が上がるというサイクルを繰り返すと思いますけど、それまでは金利の高いドル買いが進むでしょうからドル高円安は続くと思われます。
同じ理屈で言えば、日本でも金利を上げれば、円買いが進んで円高になるはずです。しかし、この不景気では金利を上げることはできません。この間、普通預金の金利を見て改めて驚きました。0.001%だそうです。一千万円預けて一年の利子が百円です。金利が低いのは不景気だからですから、円安を何とかしたいのならば、国内の景気をまず上げることが必須です。輸出国とは言われていましたが、実は日本のGDPの6割は内需ですから、まずは国内でモノやサービスが売れ、カネが社会で円滑に循環しなければなりません。
景気を上げるためには、国民の可処分所得を上げればよいわけですから、普通は減税し、国がカネをバラまき、カネの流通を上げるということをすれば良いはずです。他の国ではやっています。減税は世界90カ国でコロナによる経済停滞に対する対策として行われてきました。なのに、日本では逆に消費税を上げました。そしてますます景気を停滞させました。メチャクチャです。プライマリーバランスがどうとか防衛費増加が必要とかいう財務省や自民党は、今、飢えて死にそうなのに、食費を老後の貯蓄や警備費用に回して、餓死する方がいいとでも思っているのでしょう。
バラマキはアメリカでは、無差別に小切手を直接国民に配り、経済活動を維持しました。日本では5万円の給付金を出すだけでも貧困家庭を選りすぐり、業者を介入させて中抜きさせます。それでは経済刺激効果はありません。こうした経済政策は、政府が、無差別にタイミング良くに直接国民に十分な量をバラまかないと意味がありません。アベノミクスでの金融緩和はバラマキで景気をよくするはずでしたが、国民に行き渡らず、企業に流れ内部留保となって単に企業の貯蓄になりました。確かに雇用は増えたようでしたが(ただこの数字もベノミクスの効果を盛るために、統計を改竄されたせいで、信用できません。 公文書の改竄や隠蔽が堂々と行われも咎められないような、 本当の三流独裁国になってしまいました、、とほほ)、結局、不安定で低賃金の非正規雇用が増えただけで、経済活動は活発化しませんでした。その一方で消費税を上げるというようなことをしました。例えてみれば、アクセルは踏んでいるがガソリンは不完全燃焼で動力にならず、その一方でブレーキも同時に強く踏んでいるという状態です。それでは、前に進むどころか日本経済が止まるのは当然です。
不景気だ、円安だと言いながら、バラマキもマトモにできず、減税もしない、それも自民党の利権体質と財務省の緊縮財政によって権力を維持したいと願う利己的な理由です。
一方、多少の希望もあります。日本に経済政策で成功し注目を集めている自治体があります。明石市です。明石市は住民の流入と子供の出生増加にによって、人口は毎年増加、出生率は1.7という驚異的な数字を誇っています。この理由は市の子供に投資するという政策で、子供を持つ家庭への特典を増やし子供を育てやすい街を作ろうとしてきた市政の政治主導による成果です。子供は未来の財産という観点から子供に投資し、子育てをしやすい環境を作り上げた結果、子供の人口や若い家庭が増え、結果、子供の教育や習い事を提供するビジネスが発達し、経済活動が活発になり、それが市の財政を潤すという好循環を作ってきました。こうして、不景気の時には、必要かつキーとなるところに呼水となるカネを回していくことで、好循環を開始させるのが政治がすべきことです。明石市が特別スゴイ技を使ったのではなく、当たり前の政策を市民の利益のために実行してきたというだけなのです。明石市長は乞われて、明石での成功事例を国政レベルでも説明してきました。しかし、利権でがんじがらめで己が票のことしか頭にない自公政権と自省の権力維持にしか興味のない財務省は、このごく当たり前の政策をやろうとしません。そもそも「憲法や法を破らない、国会で嘘をつかない、公文書を改竄したり隠蔽したりしない、人を脅したり貶めたりしない、賄賂を使わない、、、」人間として基本の「き」さえできないのだから、当たり前のことが当たり前にできないのも当然なのでしょうけど。