数日前、North Carolinaでlockdown解除後、1日コロナ感染者数の記録を更新したという話を聞きました。 患者数の上昇はスローダウンしたとはいえ、まだまだ増えています。経済的に持たなくなって解除をする地域が増えるとおそらく患者数はまた急上昇すると思われます。
Herd Immunityというものがコロナの場合に本当に成立するのかよくわかりません。インフルエンザ同様、免疫が長期持続するわけでもなさそうですし。ただし、最近のデータだと全く無症状な人の半数ぐらいが今回のコロナに対する抗体を持っているようです。おそらく、これは過去の別のコロナの感染によって獲得された免疫であり、今回の新型にも反応したものと考えられます。このあたり、PCRではなく無症状の人々の抗体の検査とフォローが今後の予測の上で有用だろうと思います。
いずれにせよ、この傾向をみていると、終息がいつになるのか全く予測がつきません。欧米では数年かかるでしょう。かなりの数の臨床試験がすでに施行中で、基礎的研究も世界中で進行中ですが、ただちに実地に応用されて、ウイルスが抑え込めるというわけでもありません。私は全くの門外漢ではありますげ、なにかできることはないだろうかと考え始めました。
今回のコロナ、それから前回のSARSは、上気道よりも肺細胞に感染しやすく、重症化するケースが多いのが怖いわけですが、その重症化のメカニズムはよくわかっているわけではないようです。ウイルス感染への重要な防御システムの一つはインタフェロンですが、興味深いことに、SARSの時の研究などから、インターフェロンのレベルと重症さは正に相関しており、今回のCOVID-19でもその傾向が見られたということです。これは単純に、病気が重いのでそれに抗するためにより多くのインタフェロンを出しているのだ、と常識的に解釈することもできますが、一方、SARSの時のある種のマウスの実験からはインタフェロンシグナルをブロックしてやるとむしろ重症化が防げるとというデータもあり、インタフェロンは両刃の剣である可能性があります。
今回、ヒト化したマウスを使った報告の第一報が某N誌に発表されましたが、このモデルでは新型コロナは比較的マイルドな病状しか呈しませんでした。この理由はいろいろ考えられるわけですけど、一つに、このヒト化マウスのヒト化レベルが十分でないという可能性も高いのでは、と思いました。というのは、最近、某C誌に出版された別の研究で、コロナウイルスのレセプターの発現はマウスとヒトではインタフェロンのシグナルに対して異なった反応をするという知見を、読んだからでもあります。この研究ではさらに、ウイルスの細胞侵入に必要なレセプターとプロテアーゼは一様に発現しているわけではなく、肺ではある種の細胞に比較的限定して共発現しているということも報告しています。おそらく、上気道よりも肺炎を起こしやすく、よって重症化しやすい理由の一つは、肺にとりわけウイルス親和性の高い細胞が存在するからではないかと推測されます。
というわけで、動物モデルはこれからますます必要になりますが、ヒトでの病態生理の理解はまだ不十分であり、現存の動物モデルにはそれぞれに問題があると思われます。(実験の目的にもよるわけですが) それで、単にヒト型蛋白を発現させるだけでなく、もうちょっとヒト化レベルを高めたマウスを作ったら、研究の役に立つのではないかなあ、と思った次第です。
すでに大勢の専門家がコロナ研究用のヒト化動物の制作に取り組んでいるのかも知れませんし、平時なら、まず門外漢は「お呼びでない」と門前払いされるのが自明なネタなので、考えもしないのですけど、、、。需要ありますかね。