百醜千拙草

何とかやっています

アベコベ

2016-11-29 | Weblog
戦後日本の発展は、アメリカの青写真によって作り上げられたが、日本はそのアメリカ支配の縛りの中で面従腹背、自国の利益を追求してきました。その中で沖縄一県にババを押し付け続けるという悲劇を生んだわけでもあるわけですが。そして近年、アメリカ覇権が傾き始め、世界各国がアメリカから距離をとって巻き添えを食わぬようにと注意を払う中で、日本政府は、かつては生き残るための手段としての「対米隷属」が、今やほとんど「教義」となってしまい、それ自身が目的化してしまっている様相です。官邸に至っては、自分が何を目的に何をしているかもどうも理解できていない様子。やることなすことアベコベなのは、歴史認識、客観的かつ俯瞰的で長期的な視野に立った情勢判断と行動の能力に欠けているからでしょう。愚かな行動をとって国民や諸外国に批判される前に、まずは「安倍でもわかる政治思想入門」でも読んでもらいたいものです。

そのアベ政権の歴史認識と判断能力の欠如を示す最近の行動に呆れた田中良紹さんの最近の解説が良かったので、貼り付けます。

日本が自由貿易を主導してトランプを説得するという身の程知らず フーテン老人世直し録(264)

アメリカ大統領選挙の結果を読み違え、結果が出る前にTPP協定を衆議院で強行通過させた安倍政権は、TPP撤退を選挙公約に掲げたトランプが次期大統領になったことに慌て、摩訶不思議なことを言い始めた。

保護主義の台頭を抑えるため、日本がTPPに代表される世界の自由貿易を主導し、トランプ次期大統領を粘り強く説得していくというのである。まるで日本が自由貿易のリーダーであるかのようで、アメリカ人が聞いたらびっくり仰天腰を抜かすのではないか。
、、、
トランプの勝利で「TPP脱退」は米国民の「民意」となった。それを外国人が、とりわけ日本人が説得して覆すことなどあり得る話ではない。やれば足元を見られて逆に徹底的に揺さぶられ、日本の国益を吸い上げられるのが関の山だ。
、、、
以下は有料記事なので、ちょっとだけ抜き書き

安倍総理はトランプを「信頼に足る指導者」と持ち上げた。 ところが直後にトランプはインターネット動画で「TPP脱退」を明言する。
、、、
安倍総理は帰国すると自由貿易を主導してトランプ次期大統領を粘り強く説得していくと言い始めた。そうでも言わないと今国会が何のための国会かということになり、アメリカの現政権にすり寄ることしかできない安倍総理の外交能力のなさが浮かび上がってきてしまうからである。
、、、
日本は資源に乏しく資本主義に遅れを取った国である。強者の餌食にならないよう細心の注意を払わなければならない。常に自分と同等の基準を要求してくるアメリカに対し様々な手段を弄して自国経済を守る必要があった。

戦後の日本に僥倖をもたらしたのは冷戦時代の米ソ対立である。世界の共産主義化を恐れるアメリカはヨーロッパではドイツ、アジアでは日本を「反共の防波堤」とし、両国経済を発展させることで共産主義の浸透を防止しようとした。
、、、
そのころの日本は様々な手段で輸入を抑え、輸出にだけ励む貿易立国であった。 これがアメリカの怒りを買いアメリカは常に日本の保護貿易主義をやり玉に挙げた。、、、様々な障壁に守られた日本の市場をこじ開けるためアメリカは日本の経済構造そのものをアメリカと同じ仕組みに変えようとする。それが80年代から続く「構造協議」や「年次改革要望書」であり、その延長上にTPPがある。
、、、
冷戦が終わりグローバリズムの時代が到来すると、「唯一の超大国」アメリカの考え方が世界を覆うようになった。
低賃金を求めて資本は国境を越え、中国、ベトナム、バングラディシュ、ミャンマーなどを次々に国際市場に引き込む。、、、それがデフレを生み、また先進国の中間層は雇用を奪われて没落する。そして富裕層と貧困層の格差が限りなく広がるようになった。

、、、アメリカが世界の覇権を握るために進めたグローバリズムで国民は幸せになったのか。まるで逆ではないか。その声を代弁したのがトランプであり、サンダースであった。 、、、

それにしてもさんざん保護貿易で経済を豊かにしてきた日本が、アメリカ型の経済構造に変えられて、いまや自由貿易のリーダーを自認しているが、そのことで国民が豊かになっているわけでは決してない。

むしろ「デフレからの脱却」を叫ぶ安倍総理が気づくべきは、行き過ぎた自由貿易がデフレをもたらすという昨今の世界経済の動向なのである。
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お休みの音楽

2016-11-25 | Weblog
アメリカ大統領選挙後のバタバタが今だに続いており、ニュースを聞く限り、やはりトランプほど国家の元首として不適格な人間はいないと認識を新たにする日々です。まだヒトラーでないだけマシか、と思うしかないです。しかし、日本にとっては、実は良い影響があるかも知れません。内向き、保護政策のトランプは、日米同盟にもTPPにも積極的ではなさそうです。これらは極東におけるアメリカ覇権主義のコアであり、それから手を引くということは、極東の安全保障は、アジア諸国で考えろ、ということだからです。トランプが極東からアメリカ軍を引き上げるとなると、安全保障(おそらく最も実際的な問題はインド洋、東シナ海を運行する貿易船の安全に関してではないでしょうか)は、イヤでも中国、フィリピン、インド、などのアジア諸国と共同で賄う必要が出てきて、自然と東アジア共同体の形成を促進し、七十年来続いた対米隷属、その犠牲になってきた沖縄の問題が解決に向かう可能性があります。日本の官僚組織は対米隷属を一種の道具として政治を操ってきました。対米隷属ゆえに官僚は政治を強くコントロールすることができたとも言ます。ですから、日米同盟からアメリカが手を引いてTPPが潰れるということは、同時に官僚政治からの脱却にもつながるかも知れません。アメリカ抜きのTPPに意味がないと政府が言うの、それでは対米従属の道具として何の価値もなくなるからでしょうj。
 トランプは気に入りませんが、行きすぎたグローバリゼーションに歯止めがかかり、労働者と資本家のバランスを取り戻し、日本もアメリカからの独立を実現することになるのであれば、人間に問題があっても、目をつぶりましょう。しかし、問題は、この人の思考は、"Deal or no deal"の短期的、短絡的思考で動いていることで、現在は、国民の投票のために内向き保護政策を打ち出していますが、日米同盟やTPPが金になると踏めば、平気でコロコロと政策を変えそうな点でしょう。

さて、それはそれとして、残りの人生、意義ある日々にしなければならんな、と思うことが増えました。やる価値のあることに集中するために、できるだけ安らかな気持ちで過ごせるようにと、寝る前には、意識的に、美しいものや楽しいものに注意を向けるようにしています。

最近の就寝時の音楽は、バッハの二つのバイオリンのためのコンチェルトです。この第二楽章を聞きながらうとうとするのが最高です。Youtubeで幾つかの演奏を聴き比べてみました。6年前パリでの録音された諏訪内さんとスタインバッヒャーの演奏。さすが、一流のプロ、二人の共演は素晴らしい。二挺のバイオリンの澄み切った音が奏でるフーガ。ソロの協奏曲でハイテクなカデンツをよりも、最近はこういう音楽が好みです。

この第一バイオリンのArabellaさんは、どうも日本人とドイツ人のハーフのようです。ソロでの演奏も聞いてみました。素人の私が言うのもナンですが、素晴らしい。ジャズ風に言えば、強力にスイングする演奏。対して第二バイオリンの諏訪内さん、渋い、うまい。でももうちょっと色気があってもいいのでは。でも、その辺が諏訪内さんの魅力なのでしょうね。




こちらは、フランス、Nemtanu姉妹によるブカレストでの演奏。表情豊かに体全体で演奏しているのがいいです。

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よく似た二人

2016-11-22 | Weblog
続 壺 齋 閑 話で紹介されていたニュースから。

ハミルトンというミュージカルを見に行った時期アメリカ副大統領予定のペンスは、観客から拍手とブーイングを受け、ショーの後の舞台挨拶の中で次のように言われたらしいです。

多様なアメリカである私たちは、新政権が我々や、地球や、子供たちを守ろうとせず、譲ることのできない権利を保護しようとしなくなるであろうことに、危機感と不安を覚えています。、、、しかし、このショーによって、あなたがアメリカの価値観を守ることを考え、われわれ全員のために働いていただけるようにと心から願っております。

これにトランプが腹を立て、ツイッターで、こう言ったそうです。

劇場というものは安全で特別な場所であるべきだ。昨晩のハミルトンのキャストは、マイク ペンスという大変良い人間に対して非常に無礼だ。謝れ!

このニュースを紹介したブログ主さん(続 壺 齋 閑 話 )の感想。

安倍総理が朝日やTBSなど、気に入らないものを攻撃するところとよく似ている。

トランプ、いい年して精神年齢は幼稚園児なみですな。アメリカの一国民(黒人)が次期副大統領となる人に対して不安と要望を述べたことに対して「謝れ!」ですからね。これで大統領が務まるとは到底思えません。
そういえば昔、マッカーサーは「民主主義において、アメリカやドイツが45歳ならば、日本はまだ12歳の少年だ」という発言をしたそうですが、アメリカはそれから70年も経ってすっかりボケが入って幼児退行してしまったちゅーことですかね。トランプが正式に大統領に任命される前に、現職の大統領を差し置いて一国の首相がのこのこ面会に行って、アメリカの属国としてのニッポンの姿をあらためて世界に曝け出し、隣国に「朝貢」と揶揄されて、笑いものになったアベ氏。
結果、まだ、大統領でもなく、ロクに政治のことも知らず、政権の青写真でさえ定かでない人間と、何の実のある話もできるわけもなく、、、。
元外務省、佐藤優氏、曰く

トランプ-アベ会談は「異常」なことだ。正式な元首であるオバマをすっ飛ばして、時期大統領予定候補者に会うということは外交儀礼上極めて異常なことで、世界のどの国もそんな非常識なことはしない。就任前の大統領と他国の元首が会談するということは「初めての出来事」と言われているのは、これまでにそれほど非礼な国家元首は現れなかったからだ。
 外交会談の報道の表現では、「冷たい雰囲気の中で」と表現される事はない。今回の「あたたかい雰囲気の中で」という表現になっているのは友好的でなかったということだ。(友好的雰囲気であれば、友好的と普通は表現されるから)ちなみに「実務的雰囲気の中で」という表現は喧嘩気味であったという意味。
トランプが「信頼できる人であることを確信した」という主観的表現になっているのは(つまり、客観的な事実の記載がないということは)、相手からなんの言質もとれなかったということを示している。つまり会談は失敗であったということだ。
 会談は総理官邸の勇み足、外務省の不作為。外務省は止めなければならなかった。
 APECの前、日露会談の前に、トランプに会うことによって、オバマ政権の反感を買うことで、日露関係にも悪影響が懸念される。(APECでどんな顔をしてオバマに会うつもりなのか)やらない方がマシ。サッカーでいえばオウンゴールだ。
 安倍は選挙前まではヒラリー支持であり、ヒラリーとしか会わなかった。それが急に手のひら返しでトランプに擦り寄って、それを世界の目に晒されて、日本は信用のある国だと思ってもらえるのか?


そのAPECでの様子について、元外交官の天木さん「オバマ大統領と立ち話すらできなかった安倍首相

APEC首脳会議に出席した安倍首相の姿が見えない。それはそうだろう。各国首脳は、保護主義に走るトランプを牽制することで精一杯だからだ。
そんなトランプと真っ先に会ったにもかかわらず、トランプの保護主義に釘をさすどころか、「信頼できる人物であると確信した」と絶賛して迎合した安倍首相に、あきれ果てているからだ。
唯一の首脳会談がプーチン大統領との会談だが、北方領土問題の進展は無理だと引導を渡された。
、、、オバマ大統領との会談はどうなったのか。まったく報道がない。ということは、立ち話さえ出来なかったということだ。日米同盟を最優先する日本の首相が、首脳会議の場で米国の大統領に会わない、会えない、などということは、前代未聞だ。世界にさきがけてトランプ氏との会談を急いだ代償だ。、、、


きっこの日記では、別の記事が紹介されていました。

コーネル大学の酒井直樹教授(日本思想史・比較文学)「安倍晋三とドナルド・トランプは非常に類似している。両者ともポピュリストで、ナショナリストであり国際情勢に関して単純な考え方を持っている。両者とも、強い反知性傾向があり、日本には移民はほとんどいないにもかかわらず、アベはトランプの反移民、反マイノリティーの立場を共有している。性差別主義もまた同様だ。、、
アベは反共産主義イデオローグであり、大日本帝国の栄光を夢見つつ、中国の軍事力強化を心配している。彼は、戦後憲法の改変と、冷戦中の極東でのアメリカの軍事力優位の枠組みの中での日本の軍事力増強に熱心である。彼は、本質的に極東におけるアメリカの代理人であり、トランプが極東でのアメリカの経済的サポートを減らそうとしていることを非常に心配している。
日本の内閣はTPPに非常に前向きであり、アベの目的の一つはTPP脱退に関してのトランプの意見を変えさせることである。トランプは明らかに大企業利益優先であるため、長期的には彼の意見が変わることはあり得るが、現時点ではそれはない。
極東におけるアメリカ覇権は明らかに低下しており、アメリカ軍進駐のみによって維持されるものではすでにない。TPPは極東における汎アメリカ主義維持のための最後のチャンスである。


この方は、アベ政権がしようとしていることは、アメリカの属国としての日本が、極東で汎アメリカ主義の下、第一の手下として他のアジア諸国の上に(でもアメリカの使いパシリだが)立つことだと考えているようです。ま、それなら、アベ氏の考える「大日本帝国」とは何ともみみっちいものですな。「小日本帝国」ぐらいに修正すべきでしょうね。内弁慶なのですかね、日本会議の面々は。

ちなみに、なぜ発効しない可能性の高いTPPにここまで前のめりになるのかということに関して、「すでにTPP法案は貿易協定ではなく農水利権の草刈り場と化している」という意見を見ました。多分、当たらずとも遠からず、やっぱりカネと力、ちゅーことですな。
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Chomsky's take on Trump

2016-11-18 | Weblog
前回、予備選の段階でのチョムスキーの大統領選に関する意見を紹介しましたが、その後、大統領選が終わった後のインタビュー記事が11/14に出たのを見つけました。

Trump in the White House: An Interview With Noam Chomsky

ちょっと長いので、飛ばし飛ばし適当に意訳してみました。興味のある方は原文を読んでみてください。カッコの補足などは原文にはないものです。

(質問)ノーム、考えられないようなことが起こってしまいした。予測に反して、ヒラリークリントンにトランプが勝ち、マイケルムーアが「卑劣で、無知で、危険なパートタイムの道化の、フルタイムの反社会人間」と呼ぶところの男が次のアメリカ大統領になることになりました。このアメリカ政治最大のどんでん返しとなった有権者の意思を決めたものは何だと思いますか?

チョムスキー:質問に答える前に、われわれがどう反応するかにもよりますが、人類の歴史で最も重要な日となるかもしれない11月8日に何が起こったのかをちょっと考えてみるのは重要だと思います。
誇張ではないですよ。
11月8日の最も重要なニュースはほとんど触れられることはなかったのです。このこと自体に意味があります。

11月8日、世界気候機構(WMO)は、COP21のパリ協定を推進するために開かれたモロッコの気候の変化における国際会議(COP22)において、報告を行いました。WMOは過去5年は史上で最も温暖化が進んだと報告したのです。さらに、海面の上昇、予想以上のスピードでの北南極の氷、特に南極氷河の融解が起こることを報告しました。北極海の氷の量は、すでに過去5年間、それ以前の過去29年の平均を28%も下回っているばかりか、北南極の氷による太陽光線の反射能の低下による冷却低下効果をもたらし、地球温暖化が促進していいます。WMOはまた、他の厳しい状況や見通しの報告とともに、現在の温度はCOP21で定めた限界温度に危険なほど近づいていると報告しています。

11月8日のもう一つの歴史的意義を持つかもしれない出来事もほとんど注意を払われませんでした。世界で最も強力な国が選挙を行い、その結果、政府、議会、最高裁、の完全なコントロールを共和党が握った問いうことです。これで、共和党は世界史の中で最も危険な組織となったのです。

最後の文句は突飛で言語道断に聞こえるかも知れませんが、そうでしょうか?この党は人類の生命の破壊に向かって突き進むことに専念しているのです。このような立場をとったものは過去に例がありません。これは誇張だと思いますか?われわれが今、目にしたものをよく考えてみてください。

共和党の予備選挙の間、ジェブ ブッシュのような中道者を除けば、すべての候補者が今、起こっていること(温暖化)を否定しました。ジェブ ブッシュは、全ては不確定であるが、水圧破砕法のおかげでもっと天然ガスを掘れるのだから、何も心配することはない、と発言しました。また、ジョン カシクは、温暖化が起こっていることは認めたが、「オハイオで石炭を堂々と燃やせばいい」と付け足しました。

最終候補、現在では次期大統領ですが、彼は、石炭を含む化石燃料の使用をもっと増加させるといい、規制を外し、再生エネルギーへと向かおうとする発展途上国を助けることを拒否し、総じていえば、崖っぷちへと一刻も早く向かおうと言っているのです。

トランプはすでに、環境保護院(EPA)を無くする第一段階として、悪名高い温暖化否定論者のマイロン エベルをEPA移行の責任者に据えました。エネルギー問題におけるトランプのアドバイザーである億万長者の石油会社役員であるハロルド ハムは彼の(政権移動後の)予測を述べましたが、予想されたものでした。規制の撤廃、企業と金持ちの減税、化石燃料の増産、オバマが止めたダコタ パイプラインの開通。株式市場は素早く反応しました。破産申請をした世界最大の石炭会社であるピーボディー エネルギーを含むエネルギー会社の株価は、トランプの勝利の後、50%も上がりました。
共和党の現実否定はすでに感じられます。、、、

(その後、バングラディシュを例に挙げ、海面の上昇と異常気象によって、バングラディッシュだけで数千万人の難民が出るであろうこと、この難民たちは、温暖化を作り出したアメリカなどの国へ向かうことになるであろうこと、人間が作り出した破滅的な環境の変化は悪くなりさえすれ、よくなることは見込めないこと、とりわけ南アジアでの被害が増えるであろうこと、現時点でもすでにヒマラヤの融氷によってインドでは三億人の人々が適切な飲料水が欠乏していること、などを述べています。また、もう一つの人類の生存を脅かす大きな問題は、核による破壊であると言っていいます。)

質問に戻ります。正確には、クリントンはトランプよりも多く票を集めたようです (100万票ほどクリントンが上)。トランプの勝利はアメリカの投票制度による(Electral College制)によるもの。興味深いのは、18-25歳の若年層においてクリントンははるかに支持が高く、サンダースはさらに支持が高かったことです。

現在の情報によると、トランプは白人層、労働者クラス、年収が5万ドルー9万ドルほどの中の下クラス、田舎、大学教育を受けていない層において、記録的な支持を受けています。これらの人々は中道派エスタブリッシュメントに対する怒りを共有しており、イギリスのEU離脱の投票結果と同じく、中道派政党の崩壊を示しています。多くの怒りは、過去のネオリベ政策の犠牲になったためです。前FRB議長のグリーンスパンの証言の通り、2007-08年の経済崩壊までの間の彼の成功は、「労働者の職の不安定さの増大」に基づいたものでした。虐げられた労働者は、ネオリベの基準からすれば健全な経済の指標である「上がらぬ給料や劣化する福利厚生」に文句をいうこともなかったのです。

このような経済セオリーの実験体となった労働者は、その結果に満足はしていません。ネオリベの経済の絶頂であった2007年でさえ、一般労働者の給与は以前よりも低く、男性労働者の給与レベルは1960年代と同等でしたが、一方で巨額の利益は上位1%のトップの懐に入ったのです。これは市場の圧力でも彼らの努力の結果でもなく、むしろ政治的決定によるものだと経済学者のDean Bakerは近年の論文で述べています。、、、

(以下、労働者の搾取を許すアメリカのシステムについての意見と、トランプ支持者の描写が続きます。)トランプ支持者は、トランプが彼らの酷い状況を改善するために何かをしてくれると信じさせらているのですが、実際の彼の政策はその逆です。

投票出口での調査では、トランプの支持者はトランプが「変化」をもたらすと見られているのに対して、クリントンでは苦境が続くことを示すと考えていることがわかりました。トランプが引き起こす「変化」はおそらく有害で悪い方への変化でしょうが、そうしたユニオンなどの組織を持たず、孤立化している地方の人々にとって、トランプの「変化」がどういうものになるかは、おそらくよく理解できていないのでしょう。(労働者の苦境という点においては)1930年代の大恐慌の時に多くの労働者が希望を持っていたことと、現在の労働者が絶望を抱えていることが決定的に違います。

他にもトランプの勝利に利したものがあります。研究によると、「白人優越主義」は南アフリカよりもアメリカ文化に強い力を持っています。将来、白人はマイノリティとなると予測され、従来の保守的文化が危機に瀕していると思われていることです。(白人優位のアメリカ文化が変わることに抵抗があるということ)

地球温暖化に関しては、40%のアメリカ人は何が問題なのかを理解していません。、、、

民主党は、労働者階層に対する真摯な関心を70年代までに捨ててしまい、以来、彼らから敵階級とみなされるようになりました。(共和党の)レーガンが親しみやすいジョークを言ったり、ジョージ ブッシュが発音をわざと誤ってみたり(Yale大学で彼があのように喋っていたとは考え難い)して、(普通の労働者階級のアメリカ人に仲間とみなされようとしたのと同じく)、トランプは、政党な怒りを持つ人々の声となったということです。

教義主義システムは人の怒りを、企業から(その企業がデザインした)政策を実行する政府へと向かわせました。企業と投資家の利益を過剰に守るためのシステムは一様に「自由貿易協定」とメディアでラベルを張り替えられます。
ビジネス界にとっては、人々の嫌悪が(資本家ではなく)政府官僚組織に向かい、政府が人々の総意を反映する、国民の国民による国民のための機関となるかもしれないという(期待によって起こる)反政府的な考え方に向かうことは、喜ぶべきことです。

(質問)トランプはアメリカ政治の新しい動きを示しているのですか、あるいは従来の政治にうんざりした人々の反ヒラリー票の現われですか?

新しさは何もないです。両党ともネオリベ期間の間に右傾化しました。現在の新民主党は、かつての「中道共和党」と呼ばれたものと同じです。バーニーサンダースが提唱した「政治改革」はアイゼンハワー(1950年代、共和党)を驚かせるようなものではありません。共和党は金持ちと企業優遇する方向へ向かったが、それでは票が取れないので、政治的に組織されていない団体へと近寄りました、キリスト教原理主義者、移民排斥主義者、人種差別団体やグローバリゼーションの犠牲者たちです。

その結果は明らかです。こうした支持層からの候補者、バックマンやケインやサントラムはあまりに極端なので、共和党主流派は彼らを降ろすのに苦労しました。2016年は、それ(共和党主流派によるトランプ降ろし)にしくじったのです。

クリントンは恐れ嫌われた政治を代表している一方、トランプは「変化」を代表しました。キャンペーンは彼の政策の吟味がされることなく成功しました。トランプは「アメリカ人全員を代表する」と言ったが、国がここまでひどく分裂しており、彼自身が女性やマイノリティーを含むアメリカの多数のグループに深い嫌悪を表明している中で、そんなことがどうしてできるのでしょうか?イギリスのEU離脱とトランプの勝利に類似を感じませんか?

イギリスのEU離脱、ヨーロッパの右翼化、国粋主義の台頭に(それらのリーダーはトランプの勝利を我がもののように祝福した)類似点が多く見られます。オーストリアとドイツの選挙を見てみると、1930年代の辛い時代の記憶が蘇ります。今だにヒトラーの演説は覚えています。意味はわからなかったが、その調子や聴衆の反応は身震いするようなものでした。

(質問)トランプには、経済、社会、政治問題における彼のスタンスを決めている政治理念が欠けているようですが、彼の振る舞いには、明らかに権威主義的なものがあります。トランプが「友達ヅラをしたファシスト」の台頭を示しているという意見は正しいですか?

私は、長年、カリスマ性のあるイデオローグの危険性について述べてきました。この社会にたぎっている恐れや怒りを利用して、それを本当の悪の根源ではなく、より壊れやすいターゲットにそれを誘導するような人間です。それが、社会学者バートラムグロスが「友達ヅラしたファシスト」と35年ほどの前の研究で呼んだものです。しかし、それは実直なイデオローグであることが必要です、ヒトラーのようなタイプです。つまり、唯一のイデオロギーは「自分だ」というような(トランプのような)タイプではない人間です。しかしながら、トランプを野に放った「力」を考えると、危険であることに間違いはありません。

(質問)共和党政権となり、上院、下院、最高裁を共和党がコントロールすることになるのですが、次の4年間、アメリカはどうなるでしょうか?

多くの部分がトランプのアドバイザーと誰が任命されるかによるでしょう。今のところ、あまり魅力的な人選ではないですが。

トランプがライアンのような財政政策を取るならば、裕福層には大きな恩恵があるでしょう。トップ0.1%の層は14%以上の減税となる一方、一般には全く減税はないと予想されます。、、、、
一つ明るい動きはトランプが約束したインフラストラクチャー政策です。これはオバマの経済振興政策と本質的に同じであるのですが、それを隠しています。共和党議会で、負債を増やすことを理由に潰されてきたものです。当時は、その通り(負債の増大を起こす)だったかも知れませんが、現在の低金利を考えると、確実にトランプの政策に組み入れられるでしょう。しかし、極端な裕福層への減税と国防省への予算増大とセットになって。

(インフラ政策反対者に向けて)逃げ道はあります。ディック チェイニーがブッシュの財政官オニールに「レーガンが 財政赤字は問題ないことを証明した」と説明した通りに。つまり、共和党が人気を得るために作り出した財政赤字は、誰か(民主党が望ましい)にツケを回して、後始末をさせれば良い、ということです。このテクニックは短期的にはうまくいくかもしれません。

(質問)トランプとプーチンはお互いを認め合っているようですが、アメリカーロシアの新たな関係についてはどうですか?

一つの希望的観測はロシアとの国境線での危険な緊張の緩和があるかも知れません。(ロシアとの国境であり、メキシコ国境ではありません)。また、ドイツのメルケルや他のヨーロッパの指導者たちにすでに見られるように、ヨーロッパがトランプのアメリカを距離を置こうとするかも知れません。ひょっとしたら、プーチンが復活させようとしているゴルバチョフが考えたような軍事同盟なしのユーラシア大陸安全保障システムの実現へと進むかも知れません。

(質問)トランプ下でのアメリカの外交政策は、オバマやブッシュ政権下以上に、軍事的なものになるでしょうか?

これについては自信を持って答えることはできません。トランプはあまりに予測不可能です。言えることは、動員と活動を組織化して行うことで、政策に大きな影響を与えることはできるということです。



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示唆される社会の崩壊

2016-11-15 | Weblog
前回、アメリカ大統領選に見られたような煽動型キャンペーンをする候補が勝ってしまうということは、国民の不満が鬱積しているということを意味していると私は思い、そう書いたわけですが、今回の大統領選についてチョムスキーがどういう見解を述べるのか興味を持って調べてみました。残念ながら、大統領選後の彼の意見を見つけることはできませんでしたが、チョムスキーは6年前、すでに、トランプのような候補が現れれば大統領に選ばれるだろう、という予言(?)をしていて、「恐ろしいことである」と語っていたことを知りました。また、今年の2月の時点でトランプが人気を集め出した頃の彼のインタビュー記事を見つけました。

Chomsky: Trump's rise due to 'breakdown of society ーチョムスキー:”社会の崩壊”ゆえにトランプは躍進する

(当時のトランプの躍進に関して)「恐怖と新自由主義の社会の崩壊」(を感じる)とチョムスキーは答えた。 「人々は、孤立し、無力で、理解できない強い力の犠牲になっていると感じている」
 チョムスキーは、トランプが台頭できる社会情勢と1930年代の大恐慌の時の類似性を指摘し、さらに「大恐慌当時は、客観的には、貧困と苦しみははるかに大きかったが、貧しい労働者や失業者の中でさえも、希望の感覚というものがあった。しかし、それは今はない。というのは、主に戦争労働運動の増大と主流の外にある政治団体の存在のためだ」と述べた。 、、、
チョムスキーは、過去のバーニー・サンダース(予備選での民主党候補)のキャンペーンに貢献したが、スイング州(民主党と共和党支持が選挙の度によく入れ替わる州)に住んでいたならば、彼は「絶対に」共和党ではなく、クリントンに投票すると述べた。インタビューでは、チョムスキーはサンダースを賞賛したが、選挙は主に「買う」ものであるという選挙制度故に、彼が勝てるチャンスのはあまりないと述べた。


アメリカ人を辞めたい、カナダに移住したい、カリフォルニアは州をやめて独立したい、トランプの当選を受けて、感情的になっている人も多いようですが、カモミールティーでも飲んでリラックスしましょう。世界は広いです。上には上があり、下には下があります。北の将軍様みたいなのもいます。政治の素人だからこそ、できることもあるかも知れません。もちろん、とんでもないことを大統領令でやろうとするかも知れませんし、当然の政策に拒否権を使うかもしれません。ただ、彼の主な動機はエゴでしょう。大きな専用飛行機にTRUPと大書して空を飛んでみたい、成金趣味丸出しのトランプタワーをマンハッタンのど真ん中に立てて、その最上階からセントラルパークを見下ろしながら、ミスユニバースの若い女の子にお酌をさせたい、そんな子供じみた欲求の延長が大統領というわけで、チヤホヤされればそれで満足するのだろうと思います。アベ氏のように「大日本帝国の復活」みたいな狂気じみた野望は持ち合わせていないだろうと、私は思います。その辺は議会の人間もアドバイザーもわかっているだろうし、トランプがそのような単純な人間であれば操縦するのは難しくないだろうと私は楽観しているのです。

ただ、トランプを担いでいる一部の連中は、社会的混乱を望んでいます。泥棒するには火事場がいいのです。そういう連中は、トランプ支持、反トランプ層の両方を煽って、対立を起こさせることが第一の目的とも言えるでしょう。現在のところ、トランプは社会の歪んだ不満の鬱積を示す単なる象徴でしかないわけですが、彼が大統領になった後には、扇動者であるトランプを利用して扇動を拡げようとする一部の連中と、トランプを頭に乗せたままで従来の共和党路線を踏襲していきたいと考えている保守勢力の駆け引きが始まるだろうと思います。その勢力同士がお互いの利害の一致する部分で妥協し、ボヤ程度の火事が起こるのではないかと私は予想しているわけですが、火事というものは、ちょっとしたタバコの火の不始末から丸々一軒が全焼に至るわけで、火遊びほど怖いものはありません。チョムスキーのいう社会の崩壊は、それを意図するものによって人為的に煽られたボヤが、結局、コントロールできなくなって、国中に広がるように起こるのだろうと思われます。いずれにせよ、普通に真面目にやっている人には迷惑な話です。

トランプ個人をいくら嫌っても、そのトランプを大統領にした社会の歪みは解消されません。とりあえずは、トランプがあまり尊敬できない人間であっても、彼がホワイトハウスでバカをやっても、笑ってスルーするぐらいの鷹揚さがある方が精神衛生に良いだろうと私は思っております。人間的に難があってもいいではないですか。成金が大統領になるというアメリカ資本主義を絵に描いたような話で、将来はJFKよりも面白い映画のネタになりそうです。大統領夫人が20歳以上も年下の東欧のモデル出身でもいいではないですか。イタリアにはベルルスコーニというつわものもおりました。それでもイタリア人は、地震や経済困難にあっても日々の生活を楽しむ心を忘れません。「社会の崩壊」も嘆くことはありません。形あるものは、いつかは壊れるのですから。

ところで、ベルルスコーニの発言が愉快です。トランプの発言もジョークだと思えばいいでしょう、世界は劇場です。なんでも面白がれる人の勝ちです。

ベルルスコーニ、迷言集(Wikipediaから)

「選挙期間中はセックスを断ちます」と公に宣言した。投票を1週間後に控えていたため、事実上1週間だけの禁欲宣言だった。

バラク・オバマがアメリカ大統領選に勝利した話題に触れ「オバマは若く、ハンサムで、そして日焼けまでしています」。ミシェル・オバマ大統領夫人に関しても「君たちは信じないだろうけど、2人でビーチに行ったんだ。なぜなら奥さんも日焼けしているからね」と語った。

イタリアで多発するレイプ事件に関して、「イタリアには可愛らしい女の子がたくさんいるから、レイプをなくすことは無理だ」と発言した。

イタリア中部地震発生の際、家を失くした人々の被災者キャンプを見て、「キャンピングホリデー」と発言し、被災者の怒りを買った。また被災者キャンプで医療活動に従事していた女性医師に対し「あなたからの蘇生措置なら喜んで受ける」と言い、そこにいた黒人牧師に対し「いい感じに日焼けしてますね」と発言した。
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黒塗り、言い訳、なし崩し

2016-11-11 | Weblog
世の中、思いもかけないことが起こるものですな。どう見ても大統領としての資質に欠けている人間が勝ってしまったということですが、冷静になって考えたら、これは、アメリカ人(特に中級ー下流のブルーカラー白人)が、トランプに大統領になって欲しいと願ったからではなく、民主党政権での彼らの生活に不満が募ったための「反民主党」票が結果的に共和党に流れ、さらにその結果として共和党ノミニーであるトランプを勝たせた、ということに過ぎないのでした。ま、トランプが取った戦略は東京都知事の選挙戦略と同じ、Natureが指摘したように、国民の不満に手を突っ込んでの扇動です。だから彼の言うことは一定せず、しばしば矛盾しているのです。地上げ屋上がりのビジネスマンで、イデオロギーがあるわけでもなく、国家運営を十分に考えてきたわけでもなく、政治の内情に詳しいわけでもない。だからこそ、人が聞いて喜びそうなことをその時、その時の都合に合わせて、適当にしゃべるわけです。

だから、私は、トランプが大統領をやったところで、それほど危険なことは起こらないし、オバマ時代と大して何も変わらないだろうと思います。彼が国家の舵取りをするわけではなく、舳先に据えられるだけのことですから。レーガンも8年もやりましたからね。

民主党と共和党の政権が行ったり来たりしても、どっちにしても大差のない政治しかできないのだから、誰がなっても同じです。ま、それに、英語もマトモに喋れないジョージプッシュが政権にあった時にアメリカ研究界に及ぼした負の影響、親子揃って中東に侵略戦争を仕掛けて非道を尽くしたことなどは、いまだに覚えていますから、それに比べればトランプの方がまだマシかもしれません。

いずれにせよ、アメリカでは一般労働者と専門労働者の格差、教育の格差が広がり、持たざる白人層の募った不満がかなりのレベルに達しているのは間違いありません。残念ながら、これは政権が共和党に変わって、多少、移民制限をしたりしたところで、無くなるものではありません。トランプは一種のガス抜きで、大統領選というのはそのためにあり、どちらが政権を取っても、国民ではなく権力者の利益を優先する(陰謀論的に言えば)「カバルのアジェンダ」が実行されるだけのことです。日本はその極端な例と言えるでしょう。国民にとって、大統領も首相も、いわばクリスマスツリーの頭につける飾りみたいなもので、その飾りをいくら叩いても何も変わりません。叩かれすぎて汚くなったら、今回のように飾りを新しいのに変えるだけのことですから。

さて、アベ政権、TPPの衆院強行採決に東京新聞は厳しい批判。この政権、デタラメ、メチャクチャですが、それを隠そうともしないところがもう末期です。TPP発効に必要なアメリカの賛成、そのアメリカの大統領にTPP反対のトランプが選ばれたことで、TPPの発効はされない可能性が高まりました。その点は喜ばしいことです。その発効されない可能性の高い協定に前のめりになって、有無を言わさず、強行採決するというのは、外国から見たら理解に苦しむキチガイ沙汰ではないでしょうか。事情通の人はアベ氏個人がTPP一番乗りをしたとか、戦後初めて改憲したとか、歴史に悪名を轟かせたいと言う個人的なエゴゆえにやっている、と解釈する人もいますが、これに賛成している自民党員も揃いに揃って、そこまで愚かだとは思えません。ま、カネなのでしょうな。

TPP国会決議なし崩し 「聖域」関税撤廃 「情報公開」黒塗り

 政府が環太平洋連携協定(TPP)交渉への参加を決めた二〇一三年に、衆参両院は、コメや麦などの「重要五項目」の聖域確保、十分な情報公開など八項目を政府に求める決議を行った。与党は十日にTPP承認案と関連法案の衆院通過を目指しているが、国会決議は守られておらず、「筋が通らない」と疑問視する声が出ている。 (清水俊介)
 国会決議は、一三年三月に安倍晋三首相が交渉参加を表明したことを受け、自民、民主(当時)、公明各党などが共同提出。参院が四月十八日、衆院は翌十九日にそれぞれ農林水産委員会で決議した。
 関税撤廃によって国内産業が「深刻な打撃」を受けることを懸念した上で、重要五項目は「除外又(また)は再協議の対象」とし、「聖域が確保できないと判断した場合、(交渉からの)脱退も辞さない」よう求めた。
 現実には、TPPに「除外」の規定はなく、全ての項目が交渉のテーブルに。重要五項目を構成する五百九十四品目のうち、約三割にあたる百七十品目について関税が撤廃された。
 関税が維持されたのは百五十五品目。これらについても、新たに低関税や無関税で輸入する枠が新設されるなど、変更がない品目はゼロだったことが今年四月の国会審議で明らかになった。野党側は「守れた聖域ゼロ」と批判するが、政府は「関税撤廃の例外やセーフガード措置を獲得した」と反論している。
 一三年の国会決議は、企業や投資家が貿易相手国を訴えることができる「投資家と国家の紛争解決手続き(ISDS)」の条項には合意しないよう求めた。しかし、協定にはISDS条項が盛り込まれている。
 国会決議は、交渉で集めた情報について「国会に速やかに報告」し「国民への十分な情報提供」を行うよう求めていた。
 ところが、政府は今年四月、野党が公開を求めた交渉の関係資料を、日付と表題以外は全て黒塗りで開示。政府は「交渉過程は公表しないのが前提。結果を議論してほしい」(首相)との姿勢に終始している。


日付と表題以外は全て黒塗りした資料を「開示」して、交渉が終わった後の結果を議論しろ、とは、バカですか。そういうのを後の祭りというのではなのですかね。いつも、なし崩し的にやってしまって、取り返しのない状態になってから、反省するフリをするのがこの国の政府のいつもの手口です。そして、それをそのまま言い訳として平気で口にする首相。
カモミールティーでも飲みましょう。
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Evidence-based funding

2016-11-08 | Weblog
東京新聞の社説、週のはじめに考える 若手に研究費をばらまけ から。

 軍学共同研究が話題になる一方で、基礎科学の危機が叫ばれています。「役に立つ」ばかりが研究目的ではありません。急減する若手研究者を支えたい。
 きっかけは、ノーベル医学生理学賞の受賞が決まった大隅良典・東京工業大栄誉教授の訴えです。
 受賞決定直後の記者会見で、自らの研究について「人がやらないことをやろうと酵母の液胞の研究を始めた。がんにつながるとか、確信して始めたわけではない。基礎科学の重要性を強調したい」と話しました。
◆「役に立つ」の危うさ、、、一方で「科学が役に立つというのが、数年後に企業化できることと同義語になっている」と最近の風潮を批判しました。理学部長会議も声明の中で「『役に立つ』研究推進の大合唱が基礎科学を目指す若手の急激な減少をもたらしています」と警告しています。、、、
◆1人に年間100万円を、、、大隅さんは日刊工業新聞のインタビューで「年間百万円のお金があれば、やりたいことをやれる研究者が日本にはたくさんいる。もう少し研究費をばらまいてほしい」「小さな芽をたくさん育てなければ、大きなとんがった成果は生まれない。、、 文部科学省は先月十三日、大学から支給される研究費が年百万円に満たない研究者が約八割とするアンケート結果を発表しました。
、、、防衛省が軍民両用の基礎研究費として百十億円要求しています。評判の悪い予算をやめて、文科省予算を増額すればよいのです。一万一千人に百万円ずつ配れます。
 


私も同様に思います。税金で賄う研究を投資であるとすると、プロならば、目先のリターンを目指して一部の成長株に集中投資することはしないでしょう。Divertification は長期投資の基本であり、集中投資はは短期リターンを狙ってバクチで負けるいつものパターンです。

アメリカNIHでは、数年前から「evidence based funding」というような概念の元に、研究資金の配分を最適化していこうと考えているようです。現在のところ、NIHが資金を提供した研究者がどれぐらいの研究成果を上げているかということを分野を超えたメトリクスを開発して評価するというようなことをやっている段階です。例えばこういうようなサイトを立ち上げています。アメリカも日本同様、研究費の獲得がブッシュ政権以来、困難となっているのに加え、研究費の総額は変化していないのに、インフレによる経費の上昇、規制の増加、そして増え続ける研究費申請応募数に伴い、ブッシュ前と比べて、採択率は-50%の減少、購買力は20%以上の減少を示しており、研究を志す若手の優秀な人々は減少していると思います。(当然ですな)

問題のコアは、金に対して研究者の数が多すぎることに集約できます。そのバランスを長期的にどうとっていくのか、それは研究機関や学位授与機関、政府、複数のパーティーの利害が複雑に絡み合うので、簡単ではないでしょうが、根本的な解決はそれしかありません。クリントンが短期的リターンを目指して急激に研究資金を増やしたこと、その後ブッシュが同様に短期的視野で研究費を抑制したことが、以来15年近くに及び、まだまだ続くであろう、現在の研究費問題の原因となっていると思います。

とは言え、NIHはNIHでできることをしなければなりません。Evidence-based fundingのアイデアの元になっているのは、税金による研究資金の分配が国家の投資であるとした場合に、そのリターンを考慮して、次の投資ストラテジーを考える、というごく当たり前の考えです。そうした投資方法と単に無闇にバラまくのとどちらがリターンが良いかは、研究の場合はやってみて長期的に解析するしかありませんが、少なくとも、理論とデータに基づいて投資方法を見直していこうというのは、科学的アプローチであり、少なくとも、研究配分方法について評価することは可能になると思います。しかるに、現在、資金配分法には、研究費の投資のリターンを公平に定量的に評価することが困難であるという問題以前に、そもそも、投資効率はほとんど評価されていないと言って良い現状があります。すなわち、研究者にとって研究費の獲得というのはすでにゴールであり、その金によって何が生み出されたかという点はfundingの決定に直接関与しないのです。もちろん、論文を第一の研究成果とすれば、論文の書けない人にはまず研究費は当たりませんから、「生産性」の評価はされていますが。現状は、研究費申請に書いた内容など、すぐ時代遅れになるし、もちろん研究費の申請の目的は、計画にある研究を遂行することではなく、研究費を獲得することですから、多くの場合、評価の対象になった研究計画のかなりの部分は遂行されないと思います。もちろん、私はそれはOKだと思います。研究費が降りた時点で、計画を忠実に遂行するよりも、より有意義なものに研究費が使われて、より大きな価値を生み出す方が上ですから。同じ研究費でも、グラントはコントラクトとは違います。

研究費配布に関しては、私は、少額のグラントを増やして、広くばらまいた上で、生産性を主な基準とした競争的研究資金分配を積み上げるという方式が良いだろうと思います。分散投資の上に一部の資金で成長株に集中投資するというやり方です。それで金が足りないのであれば、金ができるまで、私ならインデックスファンドを買いますね。多少負けても大丈夫なぐらいの体力もない時には、バクチをすると負けます。貧すれば鈍する、引き寄せの法則ですね
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Make Science Great Again

2016-11-04 | Weblog
8合目まで登ったところで行き詰まり、頂上を見上げながらどうしたものかと焦りを募らせる日々です。仕方がないのでできることをひたすら探しています。そんな合間にも、Low-keyな論文のレビューが三本。私のところに回ってくる論文で面白いと思うものなど滅多にありませんけど、相手に合わせてそれなりにやります。誰かがやらねばならないコミュニティー サービスですし。クオリティーの低いものは大体、著者のやる気や真面目さからしてダメなものです。やる気のないものにはそれなりのやる気でレビューします。ま、それでも淡々と、統計はサンプル数と統計方法を書いてくださいとか、原稿は正しい文法で書いてください、とか、コントロールはちゃんととりましょう、とか、バカみたいなことを毎回、書いています。そういうレベルの論文が多すぎてサイエンスの議論にまで到達しないのです。しかし、時折、ムカっとくる論文もありますね。三つのうち二つがそうでした。一つは日本人の研究室からのそこそこのレベルのジャーナルだったのですが、数年前によく似たモデルを使って出した論文を焼き直したような論文なのに、そのオリジナルの論文をロクに議論していないのです。新規性を損なわないように、意図的に過去の自分の仕事を隠したように見えました。あと二人のレビューアーのうちの一人も、私と同じコメントを書いたので、結局、リジェクトになった様子です。もう一本は、中国からで、これは、全く同じマウスを使い、過去に出版した論文とオーバーラップする結果を書いていながら、その論文を議論するどころか、引用すらしていないのです。これは意図的に隠しているわけで、私は、こういう不正直なことをする人々が、どうも我慢できないのです。ま、それでハラを立てて、ブログに愚痴を書いているのですから、これらの論文のレビューに要した時間に加えて、ハラを立てた分、余分に時間を無駄にしている自分が一番バカなのは明らかなのですけど。しかし、人間、なかなか、理性で感情はコントロールできませんね。くだらないことにハラを立てないようにしないといけません。他人を変えることはできません。

アメリカ大統領選が近づきました。どこで、どう間違ったのか、Donald Trumpから寄付のお願いのメールが来ました。その文句が面白いのでペーストしておきましょう。カネがすべてではないと言いながら、寄付を募るちゅーのは如何なものか。Nastyなのはお互い様。そのカネを使って、ネガティブキャンペーンを垂れ流すのでしょうが、目くそ鼻くそですな。

My son Eric came up with a Big League idea, and it’s simple: If we can get every one of my supporters to contribute $20.17, just one time, Crooked Hillary’s big spending special interest cronies won’t be able to save her!

Money isn’t everything in an election. I’ve proven that in this race.
But for Hillary Clinton, believe me, money IS everything – she would have zero chance without her big dollar donors, nasty TV ads and the lying liberal media!

Eric’s plan is tremendous. Help us make it a huge success. I’d love to see your name on the list he provides me each morning.
Help me win in 7 days and Make America Great Again!
Best wises,

Donald J. Trump

教え子である極東の某首相を批判して、二つの「ムチ」と評した法学部教授がおりました。「無知」と「無恥」だそうです。大統領選候補を並べると、二つのムチと一つのムチ、どちらがマシかという究極の選択みたいに見えます。当然ながら、研究界はクリントンを支持。Nature Front pageの「Hillary Clinton will make a fine US president And not only because she is not Donald Trump」 ではトランプをこき下ろした上で、その危険性について次にように言っています。

Trump is the product of a social phenomenon that cannot be ignored. He has tapped into a much larger undercurrent of legitimate anger that is fuelling political upheaval in many countries. (トランプは無視できない社会現象の産物だ。彼は、多くの国で政治的混乱を起こす正当な「怒り」の巨大な底流に手を入れてそれを利用している)

ま、煽動型劇場政治ですな。人々の不満を煽り、仮想敵を作って鬱憤ばらしさせることで支持を得る、昔ながらの子供だましです。しかし、民主主義の恐ろしさは、そうしたポピュリズムだけで一部の人間に権力を集中させてしまうことが起こり得ることです。ナチスの例を挙げるまでもなく、人々が十分に成熟した判断力を持っているわけではないですからね。

トランプのこの陳腐なセリフ「Make America Great Again」聞くと、気持ちが悪くなりますが、どうもこれはギャグのネタにもなっているようで、Natureでは、フロントページ(@ScientistTrump will make science great again)で、トランプの言い回しで研究を風刺をツイートするScienceTrumpが話題に取り上げられていました。

Scientific Donald ‏@ScienceTrump
I hear Crooked Hillary is modeling her tax plan after university overhead. Crazy idea, would hate to be in the @Caltech bracket!

Scientific Donald ‏@ScienceTrump
93% of my tweets are not plagiarized

てな具合です。おヒマならどうぞ。
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一挙三損

2016-11-01 | Weblog
ニュースの見出しに一言。

1. 豊洲盛り土なし決定 副知事ら8人前後に責任 11年8月の会議焦点。

実行犯を特定するということのようですけど、副知事の責任は問われるのに、知事の責任追及まで及ばないのは、理解に苦しみますね。都の最高責任者である知事が「記憶にない」とか「もう年だから」とかで済まされてはならんでしょ。

2. 小池百合子都知事、二階俊博幹事長に“おわび” 処分の7区議が面会提案を拒否。

自民党の意志に反して、都知事選に出た小池知事を支持したとして離党勧告処分にした区議に自民党幹事長が逆にすり寄ろうとした事件。慇懃に拒否。自民党もみっともないですな。とにかく多数を確保して権力を維持するといういじましい根性で動いているのがあからさまで何とも。機を見るに敏で、小泉仕込みの劇場政治で都知事になったな小池知事ですから、もはや自民党と近く付き合うのは得策ではないと読んでいるのでしょう。自身が主催した「政治塾」とやらに数千人集まったらしいですから、小池劇団(新党)を作って、自民党政治と戦う(フリ)「小池劇場」の新しい芝居を考えているのだ、というゲスの勘ぐりも当たらずとも遠からず。どっちもどっち、国民不在はいつものこと。

3.核兵器禁止条約 決議案が国連の委員会で採択 日本は反対。
NHK - 国際NGO、ICAN(アイキャン)の核兵器廃絶国際キャンペーンの川崎哲国際運営委員は、今回の決議案に日本政府が反対したことについて、「驚くとともに憤りを感じている。日本は核のない世界を目指すという目標を掲げておきながら、核兵器禁止条約の交渉を拒否した。日本政府はこれまで核兵器を持つ国と持たない国の橋渡しをすると言ってきたが、今回反対したことで、完全に軸足を核保有国側に移したと言える。国内でも理解されるとは思えないし、強く抗議をしていきたい」と述べました。

呆れ果てました。日米同盟があるので、立場上、どうしても賛成できないのであれば、中国のように採択を棄権して、賛成できないことを「察してもらう」こともできたのです。なのに「反対」票を入れるとは。その一方で日本は国連で「核廃絶」を訴え続けてきているわけで、こういうのをOxymoronというのではないでしょうかね。不特定の隣人は愛することはできても、自分の隣人は愛することはできない、という冗談を思い出しました。
反対票の言い訳も詭弁にしか聞こえません。世界で唯一の被爆国である日本、世界最大の原発事故での放射線被害で福島の人々の生活を破壊した日本、が核兵器と核兵器用プルトニウム生産施設である原発に反対の意を示さずにどうするのか。いつまでも、アメリカ先生に怒られる、とか回りの人にいじめられる、とかセコい自己中心的な理由で、大義を堂々と主張できないのは、情けないとしか言いようがないです。「いつまでも親や周りの人間の顔を窺ってオドオドしているから、国際社会では、誰も一人前に扱ってくれないのです。義を見てせざるは勇なきなり、知っていてやらないことは悪事をなすことと同じですから。唯一の被爆国が世界人類の平和のためにできることをしない、というのは「悪」です。これで、また日本は綺麗ごとだけ並べるくせに、何もできないアメリカの飼い犬だということをあらためて世界の人々は認識したことでしょう。一つの投票行動で、被爆国としての悪を行い、日本がアメリカの属国であることを大っぴらに表明し、言うこととやることが一致しない信用できない国であることを見せつけるという一挙三損をなしました。

4. クリントン氏、メール問題でFBI長官を非難
(CNN) 米大統領選の民主党候補ヒラリー・クリントン氏の私用メール問題で、連邦捜査局(FBI)のコミー長官が新たなメールを調査していると議会指導部に通知したことに対し、クリントン氏は29日、大統領選直前の動きとして「前代未聞」だと述べて長官を非難した。クリントン氏は遊説先のフロリダ州デイトナビーチで支持者らを前に、「選挙直前のタイミングでこのように実体のない情報を公開するのはおかしい」と主張。さらに「前代未聞の、深く憂慮すべき事態。有権者には事実の全容を知らせるべきだ」と力説した。

前代未聞はアメリカでの話。日本ではもっと露骨なのが、2009年の政権交代前に、当時、最大野党の党首であった小沢氏の失脚を狙って、自民党と検察が「陸山会事件」という架空の事件をでっち上げた事件がありました。メディアも国家権力も長いものに巻かれている日本はもっと陰湿でエゲつないと思いますね。

ニュースを見ると、結局、全部愚痴になってしまいました。次回からはほのぼの、明るい話にしようと思います。
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