私の所属機関内のポスドク向けグラントの審査の第二弾がやってきました。第一弾で、二十数件の申請を読んだのですが、専門ではない分野のグラント申請を二週間で仕事の合間を縫ってやるのは大変でした。ダメなグラントを落とすのは簡単なので、上中下ぐらいのグループに分けるのはそう難しいことではありません。第二弾はこの三つのレビューグループが選んだ各上位グループをランク付けして、上から10人ほどを選ぶという作業になります。一通り目を通しましたが、ランク付けは正直言って不可能です。基礎科学、臨床研究、技術開発エンジニアリング、という基本的な考え方が全然違う分野で様々なトピックを扱っていますから、それを比べて、門外漢の人間がランク付けするというシステムにムリがあると思います。しかも、この第二弾は最初のスクリーニングで競争率3倍を勝ち抜いてきたグラントで、どれもいい出来なのです。(イタリア人には悪いですが、平行してやっているイタリア政府へのイタリア国内研究者のグラントのレベルに比べたら、雲泥の差があります)どのグラントも素晴らしい出来なのですが、お金には限りがあるので、第一予選通過者の約2/3の応募者はグラントは貰えません。グラントを貰える人と貰えない人の差は、正直、ありません。そして、こんな小さなグラントでも、貰えなくてがっかりする人の気持ちが目にみえるようで、この作業はつらいです。これが貰えないばかりにポスドクを続けられなくなって、人生、変わる人もいるかも知れません。ま、私も人の心配をしている場合ではありません。このグラントに限らず、グラントが当たる当たらないは本当に紙一重で、当たるべき人が当たらず、当たるべきでない人が当たることも多くあるだろうと思います。研究に限らず、ビジネスだともっとシビアで不公平でしょう。ま、そういう「ゲーム」だと割り切ってやれることをするしかありません。
その審査ですが、ポスドク用のグラントということで、今回はプロジェクトの内容に加えて、応募者の業績とか履歴とか注意して見ました。私がポスドクだったころに比べて、はるかに見栄えのする人が大勢います。私のようなものに審査されて気の毒だなあ、と思ったりします。超一流雑誌に筆頭著者で数本ある人も珍しくありません。一昔前なら、とっくに独立職についているべき業績の人が、ポスドク用の小さなグラントに応募してきています。複数の機関でポスドクを数年ずつやって、ウチの施設でさらにポスドクをやっている人も珍しくありません。その間、しっかりと論文も発表しています。ポスドク10年以上やっている人もいました。業績もそれなりにあります。思うに、それでもこのようなレベルのグラントに応募する理由は、それだけ研究費やpositionを獲得するのが、難しくなっているということなのだと思います。ちょっと、気が滅入ってしまいました。
さて、T大の論文不正事件に関して、私も建前上会員の学会が発行する雑誌に"Publisher's expression of concern"という一文が発表され、2007年以降にこの雑誌に掲載された5本の関連論文が上げられていました。T大の調査結果を待って、出版社としてはこれらの論文の処分を決めるとのこと。一連の不正の手口というのは、Photoshopによるデータ加工なのですが、直接、この責任著者をよく知っている人の話によると、この方はコンピューター音痴なのだそうで、自分ではPhotoshopでデータを加工したりするような能力はない、ということでした。事実、T大を辞めてからの講演を聞いた人の話によると、スライドの質が劇的に劣化していたということで、ご自身での画像やプレゼンテーションファイルの作成は得意ではない様子だったそうです。とすると、不正の実行犯は、責任著者の人ではなく、研究室に代々受け継がれていた悪しき伝統(?)を受け継いだ院生、ポスドクの人々なのではないかと予想されます。これまでの業績には特筆すべきものがあると私は思いますから残念です。
さて、フクシマ原発、週末、朝日新聞に次にような記事。
昔よくやった分子生物実験では、37ベクレル、半減期14日の放射性同位元素を扱うだけでも、何ヶ月も厳重に管理しなければなりませんでした。一リットルあたりその十億倍レベルでセシウム137だけでも半減期が30年という汚染水が、何万トンあったのか知りませんが、事故後から現在に至まで海などに放出されたということです。また半減期はほぼ半永久的と言ってよい高濃度のトリチウム汚染も発表されました。検査は選挙前からやっているのに、都合の悪いニュースは選挙後に発表されるというのが、なんとも東電です。
もう一つ、気の滅入る話。亀井さんも無念でしょう。
米保険会社の代理店と成り下った日本郵政の衝撃 天木直人
加えて、今日のニュースでは、政府は、医療保険の高齢者への負担増案を発表し、日銀総裁は消費税増税は経済成長が損なわれることにはならない、と講演したというニュース。どこまで、国民をバカにしているのでしょうかね、この連中は。つけあがるのもいい加減にしろと言いたいですね。
その審査ですが、ポスドク用のグラントということで、今回はプロジェクトの内容に加えて、応募者の業績とか履歴とか注意して見ました。私がポスドクだったころに比べて、はるかに見栄えのする人が大勢います。私のようなものに審査されて気の毒だなあ、と思ったりします。超一流雑誌に筆頭著者で数本ある人も珍しくありません。一昔前なら、とっくに独立職についているべき業績の人が、ポスドク用の小さなグラントに応募してきています。複数の機関でポスドクを数年ずつやって、ウチの施設でさらにポスドクをやっている人も珍しくありません。その間、しっかりと論文も発表しています。ポスドク10年以上やっている人もいました。業績もそれなりにあります。思うに、それでもこのようなレベルのグラントに応募する理由は、それだけ研究費やpositionを獲得するのが、難しくなっているということなのだと思います。ちょっと、気が滅入ってしまいました。
さて、T大の論文不正事件に関して、私も建前上会員の学会が発行する雑誌に"Publisher's expression of concern"という一文が発表され、2007年以降にこの雑誌に掲載された5本の関連論文が上げられていました。T大の調査結果を待って、出版社としてはこれらの論文の処分を決めるとのこと。一連の不正の手口というのは、Photoshopによるデータ加工なのですが、直接、この責任著者をよく知っている人の話によると、この方はコンピューター音痴なのだそうで、自分ではPhotoshopでデータを加工したりするような能力はない、ということでした。事実、T大を辞めてからの講演を聞いた人の話によると、スライドの質が劇的に劣化していたということで、ご自身での画像やプレゼンテーションファイルの作成は得意ではない様子だったそうです。とすると、不正の実行犯は、責任著者の人ではなく、研究室に代々受け継がれていた悪しき伝統(?)を受け継いだ院生、ポスドクの人々なのではないかと予想されます。これまでの業績には特筆すべきものがあると私は思いますから残念です。
さて、フクシマ原発、週末、朝日新聞に次にような記事。
東京電力は27日、福島第一原発2号機海側の坑道で採取した水から、1リットルあたり23億5千万ベクレルの高濃度の放射性セシウムを検出したと発表した。事故直後に坑道に流れ込んだ汚染水が今もたまったままになっているとみられる。
26日に坑道内の水を採取したところ、1リットルあたりセシウム134が7億5千万ベクレル、セシウム137が16億ベクレル含まれていた。ストロンチウムなどのベータ線を出す放射性物質も7億5千万ベクレル検出された。事故直後に海に流れ出した汚染水とほぼ同程度の濃度という。
26日に坑道内の水を採取したところ、1リットルあたりセシウム134が7億5千万ベクレル、セシウム137が16億ベクレル含まれていた。ストロンチウムなどのベータ線を出す放射性物質も7億5千万ベクレル検出された。事故直後に海に流れ出した汚染水とほぼ同程度の濃度という。
昔よくやった分子生物実験では、37ベクレル、半減期14日の放射性同位元素を扱うだけでも、何ヶ月も厳重に管理しなければなりませんでした。一リットルあたりその十億倍レベルでセシウム137だけでも半減期が30年という汚染水が、何万トンあったのか知りませんが、事故後から現在に至まで海などに放出されたということです。また半減期はほぼ半永久的と言ってよい高濃度のトリチウム汚染も発表されました。検査は選挙前からやっているのに、都合の悪いニュースは選挙後に発表されるというのが、なんとも東電です。
もう一つ、気の滅入る話。亀井さんも無念でしょう。
米保険会社の代理店と成り下った日本郵政の衝撃 天木直人
まるで絵に描いたようなシナリオどおりの対米従属だ。きょう7月26日の各紙が一斉に書いている。日本郵政が米保険大手アフラックのがん保険を全国の郵便局で販売することがわかったと。TPPの交渉が始まったばかりのこのタイミングでこの発表だ。あまりにも屈辱的だ。日本郵政が生き残りのためにかんぽ生命の業務拡大をしようとした時、民営圧迫といって真っ先に反対したのは日本のがん保険市場独占を狙った米国保険会社である。そして米国政府はそれを公然と支援した。その米国はTPPで例外なき自由化を日本に対して求めて来た。ところが自動車と保険分野に限ってはTPP交渉の事前協議とやらで、早々と日本に対し例外を要求し、日本はそれをあっさり丸呑みさせられた。すなわち日本政府は昨年11月にかんぽ生命ががん保険の独自商品販売を申請をしてもこれを認めない方針を米国に表明したのだ。これでどうやって日本郵政は生き残れるのかと思っていたら、米がん保険会社の代理店となるというわけだ。日本郵政が米保険会社の下請けと成り下がって日本の保険市場を独占し、日本の保険会社を公然と締め出すのである。しかもそれがこれから始まるTPP交渉における米国からの圧力をかわすための政治的配慮だという。どこまで日本政府は対米従属的であるのか。それを当たり前のように報道する日本のメディアもまた米国の代理店に成り下がっている。あきれ果てた日本である(了)
加えて、今日のニュースでは、政府は、医療保険の高齢者への負担増案を発表し、日銀総裁は消費税増税は経済成長が損なわれることにはならない、と講演したというニュース。どこまで、国民をバカにしているのでしょうかね、この連中は。つけあがるのもいい加減にしろと言いたいですね。