マイナンバーカードに健康保険や運転免許などなど、個人情報を一括してしまおうという話が出て、先の国葬のように反対の声が上がり、署名活動まで始まりました。国民が真剣に危惧するにはそれだけの理由がありますが、中でも「政府が信用できない」、「政府がこんな事業を遂行できる能力があると思えない」というのが最大の理由でしょう。
そのほかにも、いくつか反対の理由はあります。
まずは法的な問題。国民皆保険制度の元では、これはマイナンバーの強制になるので、マイナンバーは任意とする法律に違反します。それから、保健証番号があれば保険診療が受けることができるという法律があるので、マイナンバーを取らないことを選択した国民が保健医療を受けれなくなることになる可能性があり、これは権利の侵害になるということ。
第二に、システムの問題。個人情報を金融口座情報などと一括して管理することになるが、その安全はどう保障するのか、という問題。
そして第三に、ロジスティックな問題。そのカードを紛失したり盗まれたりしたらどうするのか、あるいは個人情報が遺漏した場合にどう対処するのかという問題。
最後に、これはすでに報道されていますが、システムを作る業者の利権に絡んでいるといういつもの自民党の問題。つまり、税金の中抜きのための「やってるフリ」プロジェクトであるということ。
ソーシャル セキュリティー(社会保障)番号で個人情報を紐づけているアメリカでも、ソーシャル セキュリティーカード(ただの紙切れですが)を持ち歩くこともなければ、保険証も運転免許も別々に管理しており、SS番号がこれらに明記されることも今はありません。ソーシャル セキュリティーカードは大切に保管してむやみに持ち歩かないことを推奨されています。
このように多くの人が多くの理由でマイナンバーカードへの情報一本化に反対していますが、結局、この案に反対する最大の理由は「政府が信用できないから」なのです。
そりゃそうでしょう。国会で平気で嘘をつきまくり、憲法は守らない、法律は破り、国会を軽視し閣議決定で何でもやりたい放題、公文書は改ざんし、統計数字は操作され、情報開示請求をすれば、全部、海苔弁で出してくるような政府を信用しろという方が無理です。そもそも、前科が多すぎる。消えた年金問題、安倍は「最後の一人まで調べてお支払いします」と約束したが、やはり口から出まかせのウソ。年金台帳でさえまともに管理できないし、失態を犯しても知らぬふり。
さて、政府の無能と利権の話は置いておいて、アメリカのように国民背番号制を導入するのは、国と国民の双方にとってメリットとデメリットがあります。国民にとってのデメリットは、この番号が銀行口座、納税情報、運転免許などのさまざまな個人情報と結びついていることでしょう。今の日本政府の能力では個人情報の漏洩は最大の懸念ではないでしょうか(情報がきっちりと守られるなら、メリットでもあるわけですが)
アメリカでの社会保障番号は、基本的に社会保障を受けるのに必要な番号で、納税記録から納めた社会保障税(年金)の総額とクレジット数に応じて支払額が決まります。国からの年金給付やサービスを受けるのに必要な番号です。然るにマイナンバーに国民は不安は感じてもあまりそうしたメリットが目に見えません。なので、この背番号制を普及させるには、国民にとってメリットがあると納得してもらう必要があります。
その比較的簡単なやり方があります。ベーシック インカム(BI)を導入することです。BIは国が国民全員に給付金を振り込むわけですから、振り込み口座に納税記録とリンクしたマイナンバーが必要であるといえば、拒否する国民はまずいないでしょう。つまり、保険証も運転免許もマイナンバーカードに一本化するからマイナンバーを使わないと困ったことになるぞ、と脅す北風戦略をやめて、逆にお金をあげるからその口座に番号をつけてください、という太陽作戦をやれば良いのです。
それで、本題、BIは実現可能かという話。日本の現在の税収でBIが可能かどうかは専門家がすでに多くの議論をしていて、簡単に言えば、社会保障制度(年金と生活保護)の大部分をBIによって代替させることで可能と考えられているようです。BIで労働意欲が削がれるのではないか、という懸念はおそらく杞憂でしょう。BIは精々今の国民年金支給額レベルぐらいに設定されることになり、それだけでは生きていくので精一杯というレベルなので、労働のインセンティブが損なわれることはないと思われます。もう一つ、BIは破綻を防ごうとすると、給付はその国民または永住者に限る必要があるので、自然と外国人の受け入れは制限されることになります。あるいは、外国人にはアメリカの社会保障と同じく、10年以上のクレジット数の納税がなければ受け取れないという縛りをつける方法もあります。外国人の受け入れが制限されることは良い面も悪い面もありますから、ここはもう少し考える必要があります。また、BIは公平に国民に給付され、生活保護の大部分をなくしてしまうわけですから、生活保護の不正受給問題や逆に生活保護支給拒否問題も解決し、ワーキングプアと貧困の問題を改善するでしょう。
もうすでに長くなったので、続きはまたの機会に。