RNA関係の1日シンポジウムに参加しました。
有名どころを集めた豪華メンバーでしたが、多少、盛り上がりに欠けました。つまり、分野が、ある程度成熟してきて、今では、未知の大陸を冒険するようなワクワク感が乏しくなってきたのです。人々は、少しずつコアなテーマから外れていって、応用研究、ビッグデータを使った包括的研究、生物レベルでの各臓器での研究、という感じで、みんなで一つのテーマを追求する時代は終わり、今は、各々の家へ帰って、それなりにやる時期にきているのだなあ、と思いました。
私は、そもそも最初から家から出ていないので、スタンスは変わりません。ずっと、自分の分野であまり誰からも相手にされないながら、それなりに幸せにやってきました。研究の中身はむしろ以前よりは濃くなってきたように自分では思いますけど、逆に人々の興味は薄れていっているようです。(研究資金の獲得という点からは、これは大きな問題です)
かつて分子生物が急激に広がった時、研究は「分子」を中心に展開することが可能でした。例えば、WntならWntの研究を、脳でやったり腎臓でやったり、ガンでやったりしてもOKでした。今は、ほぼ完全に臓器別、疾患別です。ある臓器、疾患を研究する中で、特定の分子を取り上げるというスタンスでないと、「何屋」なのか、と思われます。それでも、安定してやっていくには、臓器/疾患と分子の二つを専門として持っていることは、必要なようです。臓器/疾患が縦の糸、分子が横の糸、そんな感じで自分の居場所を確保していくことになります。
RNAシンポジウムは、機能性RNAという横糸で広く基礎から様々な臨床までをまとめた会でしたが、縦糸の方がどうしても強いので、それで仕切られてしまうのです。縦糸が強いということは、流動性が乏しく、システムの柔軟性に欠けるということです。世の中が不景気になると、自分の利益の確保を第一に考えるので、排他的な傾向が強まって分野の硬直化が進むのでしょう。
私の現在の居場所もいつまであるかわからないようなものなので、新たに別の住処を探す必要があると感じています。まだ硬直のゆるい場所で比較的スムーズに移れる場所は、もうほとんど見つかりません。新たな住処は新たに作っていくしかありません。
新たに作って人に認識してもらうというのは大変なことですので、これは組み合わせでいくしかありません。思うに、そういう事情で、研究スタイルは従来の生物学から生命工学的な方面の方へと全般的に流れつつあるのでしょう。大手研究室では、新たな技術やシステムで古いものを研究するという研究スタイルを発明し、そこで何らかの(再)発見をするという戦略で、発見を継続させていっているように見えます。
非常に大雑把に研究スタイルという点から生命科学研究の過去の動きを俯瞰すると、形態学の時代、生化学の時代、分子生物学の時代、遺伝子学の時代と流れてきたように思います。そして、現在は一言では形容しがたい多様な時代となっているように感じます。遺伝子学からの発展としてビッグデータを扱うゲノム学、ニューロサイエンスでの必要から生まれた数々のイメージングテクノロジー、ステムセル研究から発展してきた工学的研究、そしてこれらを組み合わせたスタイルと種々様々です。十年後にどうなるのか、全く読めません。
思うに、本当にイノベーティブで多くの研究に影響を及ぼす発見や発明は約十年の潜伏期間をおいて突然、世の中に出てくるように思います。バクテリアでの遺伝子組換え技術、高等動物での遺伝子操作技術、大量シークエンシング技術、Crispr/Casなどです。そうした発見や発明が、研究界全体をドラマティックに変化させます。
だから、私もあまり先のことは心配せず、自然な流れに乗るつもりで、自分の興味をもっていることに集中しておくのが良いのだろうと感じています。先のことは誰にもわからないのですから。
有名どころを集めた豪華メンバーでしたが、多少、盛り上がりに欠けました。つまり、分野が、ある程度成熟してきて、今では、未知の大陸を冒険するようなワクワク感が乏しくなってきたのです。人々は、少しずつコアなテーマから外れていって、応用研究、ビッグデータを使った包括的研究、生物レベルでの各臓器での研究、という感じで、みんなで一つのテーマを追求する時代は終わり、今は、各々の家へ帰って、それなりにやる時期にきているのだなあ、と思いました。
私は、そもそも最初から家から出ていないので、スタンスは変わりません。ずっと、自分の分野であまり誰からも相手にされないながら、それなりに幸せにやってきました。研究の中身はむしろ以前よりは濃くなってきたように自分では思いますけど、逆に人々の興味は薄れていっているようです。(研究資金の獲得という点からは、これは大きな問題です)
かつて分子生物が急激に広がった時、研究は「分子」を中心に展開することが可能でした。例えば、WntならWntの研究を、脳でやったり腎臓でやったり、ガンでやったりしてもOKでした。今は、ほぼ完全に臓器別、疾患別です。ある臓器、疾患を研究する中で、特定の分子を取り上げるというスタンスでないと、「何屋」なのか、と思われます。それでも、安定してやっていくには、臓器/疾患と分子の二つを専門として持っていることは、必要なようです。臓器/疾患が縦の糸、分子が横の糸、そんな感じで自分の居場所を確保していくことになります。
RNAシンポジウムは、機能性RNAという横糸で広く基礎から様々な臨床までをまとめた会でしたが、縦糸の方がどうしても強いので、それで仕切られてしまうのです。縦糸が強いということは、流動性が乏しく、システムの柔軟性に欠けるということです。世の中が不景気になると、自分の利益の確保を第一に考えるので、排他的な傾向が強まって分野の硬直化が進むのでしょう。
私の現在の居場所もいつまであるかわからないようなものなので、新たに別の住処を探す必要があると感じています。まだ硬直のゆるい場所で比較的スムーズに移れる場所は、もうほとんど見つかりません。新たな住処は新たに作っていくしかありません。
新たに作って人に認識してもらうというのは大変なことですので、これは組み合わせでいくしかありません。思うに、そういう事情で、研究スタイルは従来の生物学から生命工学的な方面の方へと全般的に流れつつあるのでしょう。大手研究室では、新たな技術やシステムで古いものを研究するという研究スタイルを発明し、そこで何らかの(再)発見をするという戦略で、発見を継続させていっているように見えます。
非常に大雑把に研究スタイルという点から生命科学研究の過去の動きを俯瞰すると、形態学の時代、生化学の時代、分子生物学の時代、遺伝子学の時代と流れてきたように思います。そして、現在は一言では形容しがたい多様な時代となっているように感じます。遺伝子学からの発展としてビッグデータを扱うゲノム学、ニューロサイエンスでの必要から生まれた数々のイメージングテクノロジー、ステムセル研究から発展してきた工学的研究、そしてこれらを組み合わせたスタイルと種々様々です。十年後にどうなるのか、全く読めません。
思うに、本当にイノベーティブで多くの研究に影響を及ぼす発見や発明は約十年の潜伏期間をおいて突然、世の中に出てくるように思います。バクテリアでの遺伝子組換え技術、高等動物での遺伝子操作技術、大量シークエンシング技術、Crispr/Casなどです。そうした発見や発明が、研究界全体をドラマティックに変化させます。
だから、私もあまり先のことは心配せず、自然な流れに乗るつもりで、自分の興味をもっていることに集中しておくのが良いのだろうと感じています。先のことは誰にもわからないのですから。