百醜千拙草

何とかやっています

生き延びるために泳ぐ

2024-07-30 | Weblog
パリ オリンピックが開幕しました。今や商業主義に陥り、4年前は、賄賂、利権に中抜きと、その腐敗ぶりとボッタクリ男爵の悪名ばかりが印象に残った競技会でしたが、今回は、オープニングセレモニーで、世界から大反発をうけました。平和の祭典という建前のオリンピックのオープニングで、あれをみて世界の平和への意図を感じますかね?あれで、多様性の尊重とか人類愛への賛美を感じますかね?近代民主主義の確立へと導いたフランス革命をモチーフに使うのはわかります。しかし、それを断頭したマリー アントワネットで象徴させるというのは余りに短絡的で、かつチープな演出と言わざるをえません。そして、「最後の晩餐」のパロディーを思わせるパフォーマンスは、嫌悪感を抱かせるものでした。これはどうも「最後の晩餐」ではなく、ギリシャのオリュンポス12神を意図したものだったようですが、このパフォーマンスを「最後の晩餐」のパロディーだと思い込んだ人が圧倒的だったようで、特にクリスチャンの人々から多くの文句がでました。クリスチャンだけではありません。イスラム教ではイエス キリストは重要な預言者の一人で、それを揶揄したことにイスラム教徒の少なからずも怒りました。実際、イスラム国家であるイランはこの演出に怒り、フランス大使を呼びつけて抗議しました。それだけではなく、聖書の故事から偶像崇拝、拝金主義を象徴する「金の牛」を配置したステージ、そして「蒼い馬」の疾走。蒼馬はヨハネの黙示録に出てくる第4の騎士が乗る馬であり、複数の小説のタイトルにも使われているように、それが意味することは「死」です。これらを見て不愉快になる人は多いでしょうが、啓発的だと感じる人は余りいないでしょう。
 芸術は人間の感情を揺さぶるものですけど、感情を揺さぶるものがすべて芸術とはいえないでしょう。感情が揺さぶられるのはあくまで芸術そのもののエクセレンスに伴う二次的な結果であって、人の感情を刺激することそのものを目的とした打算的で浅薄な演出は邪道であります。刺激的であること自体が目的なら、ポルノビデオでもいいのです(実際、出演者の一人は睾丸がパンツからはみ出していたみたいですが)。

このパフォーマンスを監督したのが、フランスの役者で劇監督のThomas Jollyという42歳の男で、ネットではユダヤ人の同性愛者であるという噂が飛び交っています。その真偽はともかく、平和の祭典のオープニングで、これほど多くの人を不愉快にさせるような演出をするというのは、それが意図的でないならば、観る人の立場に立って心情を思いやる能力を欠いていると言わざるを得ません。先日の東京知事選でも思いましたけど、寿命が伸びたせいなのか教育の問題なのか、現在の40歳というのは精神年齢は10歳ぐらいになってきているのではないでしょうかね。かつては「不惑」の年と呼ばれたものですが。

さて、オリンピックの偽善性は、昔から指摘されてきており、スポーツと平和の祭典という建前であっても、従来から国威発揚の道具として、政治的に利用されてきた催しものでした。自国の選手が勝てば国旗を振りかざす心理というのは自然な同胞愛に根ざす一方、それは同時に、差別思想に利用され「愛国心」という名のもとに、大衆のコントロールや戦争に利用されてきました。(正直、私は「愛国心」などという言葉をためらいなく振り翳す人間は詐欺師だと思っております)それは別にしても、そもそも、仮にもオリンピックが平和の祭典というのなら、どうしてイスラエルを参加禁止にしないのでしょう。そうした抗議の声は開会前からありました。ICJは、先日、正式に「イスラエルはアパルタイト国家であり、不法にパレスティナを占拠している」と判決を述べましたが、アパルタイト国家であった南アフリカは1964年から1988年まで、同じ理由でオリンピック出場禁止処分を受けていたのです。南アフリカはダメでイスラエルは良い、ウクライナが攻撃されるのはダメでもパレスティナなら良い、こうしたダブルスタンダードを見ていると、一体どういう連中がオリンピックや西側諸国を牛耳っているのかよくわかります。しかし、観客は正直です。入場式でのイスラエルの入場には会場はブーイングの嵐、ユーロビジョンの時を思い出しました。

そして、日本は史上最多の400人を超える選手団が盛大に入場しました。一方で、パレスティナと言えば、総勢15人にすぎません。最小の選手団です。

その理由は、この十ヶ月で、300人以上のパレスティナ人競技者がイスラエルに殺されたからです。

そのパレスティナ選手団の旗手を務めた24歳の水泳のValerie Taraziが開会に先立ち、述べたメッセージを下に紹介します:
、、、スポーツは人間の基本的な権利の一つです。私たちは競技に参加できることを光栄に思いますが、すべてのパレスティナ人が、日々、直面している厳しい現実を、私たちは無視することはできません。
 私たちは世界中で、最も幸運なパレスティナ人です。私たちは、競技に参加することができます。しかし、その権利はパレスティナの子供からは奪われてしまいました。彼らはスポーツをする自由がありません。生き延びるための泳ぎを覚えることでさえ、彼らにとっては今や贅沢なのです。
 パリでの競技に備えている中で、私はニュースを見ました。そして、パレスティナの人が(海に落とされた)援助物資を手に入れようと泳いでいる姿を見ました。私は競技のために泳ぎます。しかし、彼らは生存のために泳いでいるのです。、、、
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テロリスト、ネタニヤフ

2024-07-23 | Weblog
先週のイスラエルと欧州のメディアの情報だと、国際犯罪裁判所(ICC)がようやくネタニヤフとIDFのギャラントに逮捕状を出すという話です。これまで、イギリスやアメリカはICCのネタニヤフに対する逮捕状発行に異議申し立てを行ってきましたが、イギリスは意見を変えたようです。これはどうも先日のイギリスの選挙の影響のようで、17日、労働党政権は、ICCへの異議申し立てを取り下げるとイギリス議会は発表しました:
しかし、これは別に労働党がイスラエルのジェノサイドに反対しているからではないようです。事実、労働党のpro-Israelの方針に変化はないようで、下に触れるイエメンへのイスラエルの爆撃の露払いをしたのはイギリス空軍だったという話。イギリスはICCの加盟国であるため、単に、ICCの判断を支持しないと筋が通らないというだけだったようです。

オランダ、ハーグに本拠をおくICCは、日本を含む世界124カ国が加盟国となっていますが、米中露は加盟していません。ネタニヤフに逮捕状が発行された場合、ネタニヤフが加盟国のどこかに入った場合、加盟国はネタニヤフを逮捕する義務を負うことになります。ネタニヤフは24日に予定されているアメリカ議会での演説のために、どうもアメリカに到着したようですが、この記事によると、ネタニヤフの飛行機「シオンの翼」は満席でのアメリカ-イスラエルの飛行では、途中で給油することが必須になるそうで、直行するには制限のかかった旅行を強いられるとのこと。逮捕状が速やかに発行され、ネタニヤフの帰りの飛行機がICC加盟国のどこかに不時着することを心から願ってます。

先週は、イスラエルのジェノサイド対策に、後方支援をしてきたイエメンのフーチ派がテル アビブのアメリカ領事館を"Yaffa "と呼ばれる新型ドローンで爆撃したというニュースがありました。Yaffa はテルアビブ地域のアラブ名です。イスラエルご自慢の「Iron Dome」とやらは何をしていたのでしょうね。市民に対する一方的な攻撃は、誰がやったにせよ、非難されるべきですが、これが因果応報でなくて何でしょうか?イエメンのフーチ派は「テルアビブはもはや安全ではない、テルアビブの市民は避難するように」と声明を出しました。この攻撃は、イスラエルの第二の都市を数千キロはなれた場所からピンポイントで攻撃できることを証明しており、フーチはいつでもイスラエルの都市を攻撃できるとの示威行動です。イスラエルは報復としてイエメンを爆撃し、イエメンは大陸弾道ミサイルをイスラエルに向けて発射、イエメンは「徹底的にやるべきことをやる」と宣言。フーチはイスラエルとの長期の戦争を想定していると述べ、受けて、ヒズボラはイエメンを支持するとの声明を発表、そして、イランはイスラエルのイエメンへの爆撃を非難。

北からはヒズボラ、南からはフーチ、東にイランとシリア、西にはエジプト、北西にトルコ、アラブとイスラム諸国に囲まれて、いつの間にか形勢は逆転しつつあるようです。アメリカの兵器はテル アビブ経由で入ってくるようですから、テル アビブ空港の機能を破壊すれば、イスラエルの兵力は半減すると思われます。

さて、7/18は、南アフリカの人権運動の闘士で大統領だったネルソン マンデーラの誕生日で、現在はネルソン マンデーラ国際記念日として、彼の偉業を偲ぶ日となっています。「我々の自由はパレスティナの自由がない限り、不完全だ」と述べたマンデーラはつい15年前までは、アメリカにテロリストと認定されていた人物です。客観的にみて、アメリカとイスラエル、マンデラとパレスティナ、どちらがテロリストなのかは明らかでしょう。その南アフリカのアパルタイド政策を終わらせた Boycott, Divestment, Sanctions(BDS)運動が、反イスラエル運動の戦略として展開され、ボディブローのようにイスラエルにダメージを与え始めているようです。イスラエルの産業はかなりの打撃を受けています。そして、ICCの逮捕状はネタニヤフの行動範囲を大きく限定することになります。ここで一番の問題はアメリカということになります。ジェノサイドを犯して推定18万人以上の市民を虐殺し、ICCから逮捕状が出される人間をわざわざ国外から呼んで議会で演説させ、両政党が揃って総立ちの拍手を送り、パレスティナの子供を殺すための大量の武器弾薬を供給する、というキチガイ沙汰がまかり通る国がアメリカです。

さて、国際司法裁判所(ICJ)が審議中であった、イスラエルの国際犯罪の訴えに対し、ICJは週末に判決を出しました。判決では「イスラエルはアパルタイド国家であり、長年に渡りジェノサイドを行い、不法にパレスティナ人の土地を占拠してきており、これらは直ちに改められるべきである。国連加盟国はイスラエルに対する投資を引き上げ、制裁を課することを考慮すべきである」と述べました。同調するかのようにパキスタン政府は正式に「ネタニヤフはテロリストである」との認識を示し、今や、イスラエル支持はシオニストに汚染されてきたアメリカ、イギリス、EU諸国の一部(とインド?)のみとなったようです。そして、これまでは、イスラエルのジェノサイドに関しては、パレスティナへの人道支援のみにとどめていたロシアでしたが、外相ラブロフは、「(フーチ派を支援していると思われる)イランではなくイスラエルの方が戦争を仕掛けている。ロシアは(国際社会での)責任を果たすため、いつまでも沈黙してはいないだろう。例えば、シリアを見るが良い」と述べ、軍事介入の可能性を示唆しました。

まだ先ではないかと思われていた中東発の第三次世界大戦が着々と近づいて来ているような不気味な予感を感じさせます。ロシアが口にしたことは、多くは「そのままのこと」を意味しており、その言葉は真剣に熟考する価値があると私は思います。

現在、BRICS側は着々とその世界への影響力を強めており、ロシアの力はより強大になって行くと思われます。サウジのペトロダラーが終わり、BRICS経済圏の中で米ドルによる決済がなくなったとき、ドルのパワーは失われ、アメリカは大きくその影響力を失うでしょう。そうなれば、アメリカがかつてのヨーロッパ諸国のように、帝国主義を捨て「普通の」国となることを選択せざるを得なくなり、これまでのように、世界各地に出かけて行っては、適当な理由をでっちあげて、戦争をやり続けることは不可能になるのではないかと思われます。

さて、アメリカの大統領選では、予想通りバイデンが撤退を表明、カマラ ハリスを候補にするという話ですが、いずれにしても民主党の惨敗に変わりはありません。バイデン、ハリス、トランプ、全員、AIPACに金で雇われたシオニスト議員であり、彼らのイスラエルに対するスタンスは同じです。先日、ハリスは記者会見で「イスラエル軍が難民キャンプを攻撃するのは不法と思うか?」と問われて「イスラエルのやることに口を出す立場にない」と返答しました。この言葉からこの人のスタンスは明らかです。見た目は有色人種でも、中身はジェノサイド ジョーと同じです。民主党政権が続けば(続くと思えませんが)パレスティナ人の虐殺は続きます。トランプが勝ったとしてもパレスティナに関しては同じことでしょう。しかし、トランプが勝つならば、多少はマシな方向に変化する可能性はあります。

従来のエスタブリッシュメントの外からきたトランプが、自分自身で自慢していたことの一つは、「トランプ政権の4年はアメリカが唯一戦争を始めなかった期間である」ということです。トランプのその動機の根底に善意があるとは思いませんが、これは事実です。私はトランプの人間性が大嫌いですが、大統領という職を務める人間としては、バイデンよりはマシかも知れぬと思っております。少なくともトランプが大統領になれば、これまでの人を殺して金儲けをしてきたアメリカ軍産ビジネスはこれまで通りには行かなくなるのではないかと思います。ただ、「取引」の損得勘定だけでやってきた男で、大した政治的信念があるわけでもないでしょうから、また方針はコロコロ変わるかも知れません。思うに、トランプの予測不能さというのはその底の浅さからきているのかも知れません。

さて、トランプが大統領になってウクライナから手を引けば、ウクライナ周辺は安定し、ウクライナ発の世界大戦は回避できるでしょう。そうなれば、さらに国民からのアメリカファーストへの圧力が強まり、ひょっとしたらイスラエルへの支援も終わることになるかも知れません。普通はそうはならないですが、トランプの予測不能さというのがいい方向に転がれば、それは、これまでのアメリカ帝国主義に基づく世界秩序を変える劇薬となるかも知れません。このエゴセントリックなこの男が、権力をもったときに何をしでかすかわかないことを私も恐れていますが、現時点ではその予測不能さはStatus quoを打破する唯一の可能性でもあると思わずにはおれません。毒をもって毒を制す、ですかね。
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先制攻撃

2024-07-16 | Weblog
先週のNATOサミットでは、NATOはアグレッシブにロシアを非難しウクライナ戦争へ深くコミットしようとするそぶりを見せています。どこまで本気なのかわかりませんけど、世界にとっては危険な状況になりつつあります。
ウクライナはそもそもNATOのメンバーではないし、NATOはそもそも北太西洋の安全保障(防御)機構であります。そのNATO(アメリカ)が35年前のソビエトとの約束を破りつづけて、東進を繰り返し、2002年には一方的に弾道弾迎撃ミサイル制限条約を破棄し、「北大西洋の防衛」という名目をはるかにこえて、NATOメンバーですらないウクライナ政府軍の対ロシア戦争を支援しようとしています。

以前に触れたように、このウクライナの戦争に至ったウクライナをNATO側に引き込む企てはオバマ政権時代から計画されたものでした。オバマ政権がウクライナのクーデターを支援し、ウクライナの親ロ政権を転覆させた2014年、ウクライナ東部を巡る新政府軍 vs 東部独立派軍との内戦が激化し、結果、現在の事態へとエスカレートするに至りました。今のバイデン政権とNATOが、80-90年代のアメリカ対ロ強硬派が主張していた「ロシアの黒海へのアクセスを封鎖するようにロシアをNATO加盟国で包囲する」という目標を諦めていなかったのか、ウクライナの中立性がロシアにとってどういう意味を持っているのかを理解していないのか、あるいは本当に第三次世界大戦を望んでいるのか、私には分かりかねますけど、多分、その全てがある程度は当たっているのだろうと思います。

アメリカとか日本とかウクライナとか、われわれは包括的に呼んで、あたかも一国の全体の利益のためにその政体があるかのように、我々は思い込むクセがありますけど、歴史を見てみれば、そして、近年のグローバル化を見てみれば、「国」というのは、単に地理的な概念にすぎなくなってきています。アメリカ政府や日本政府がアメリカ国民や日本国民全般の利益と安全と繁栄を望んでいるわけでないのは明らかです。むしろ、そうした国の一部の支配者層がその国の国民を搾取し、戦争を口実に、戦争の道具として使って、富と力のヒエラルキーを維持してきました。江戸時代の参勤交代のようなもので、中央主権を維持するためには地方や一般国民が豊かであっては、むしろ困るのです。富の偏在こそがグローバル化した世界の支配者層が望んでいることで、彼らは、経済的に階層化された社会の頂点にい続けるため、国民は「生かさず、殺さず」、日々の目先の生活のことで頭がいっぱいという状況に置いておくシステムを構築してきました。そして、その構造が不安的になってくれば、戦争という非常事態に持ち込んで、リセットすればいい、死ぬのは下々の一般国民だ、とでも思っているのでしょう。彼らにとっては国境はないに等しく、常に安全な場所にいることができるのですから。

アメリカでもイスラエルでも、思うに、その支配者層は自国がロシアの核兵器で荒廃し、数多の国民が犠牲になっても、大きなダメージはなく、むしろ、そうして人口が減ってくれた方が良いとでも思っているのではないか、とさえ想像します。ですので、NATOやアメリカが過去35年間、ロシアを挑発し続け、2014年にウクライナ政府を転覆させて、ロシアと敵対させ、現在、わざわざウクライナのNATO加盟の可能性をちらつかせて、意図的にロシアを世界大戦に引き込もうとしているのだと考えているのだとしても、驚きません。

幸い、NATOの加盟条件に「他国との紛争のないこと」「政治的に透明な民主主義国家であること」という条項があります。前者をウクライナは満たさないのは明かですし、後者についても今のゼレンスキー政権は選挙で選ばれた大統領ではなく、臨時軍事政権の独裁政権になっているので、NATO加盟国がその規則を重んじるならば、ウクライナのNATO加盟は基本的に不可能だとは思います。しかし、嘘と約束を重んじないことでは定評のあるアメリカですから、そのあたりは力で捻じ曲げてくるかも知れません。

NATOが全面的にウクライナ側に立ってのロシアとの戦争は、米ソ軍事衝突であり、即ち第三次世界大戦のことですから、そうなって迷惑を被るのは主戦地の周辺国です。前にも述べた通り、NATOメンバーのハンガリーはNATOのウクライナ支援に強く反対しているし、黒海を挟んだ同じくNATOメンバーのトルコも同じスタンスです。日本と言えば、いつもと同じでアメリカの命令には「ワン、ワン」と二つ返事。北大西洋の自衛に、太平洋の島国が、自分からわざわざ首を突っ込んで、戦争ビジネスの捨て駒にされるために憲法改悪し、自国とは無関係の米ソ戦争に、米兵の代わりに自衛隊員を出して犠牲にし、たっぷりと軍事費を負担させられて、そのツケはわれわれ国民に回す、っていうのはどの世界のマヌケなのでしょう。相手から、都合よく使われて腰抜けぶりをバカにされているのに、何の勘違いしているのかニヤける増税メガネ。

世界の平和を望む人々は、当然、戦争反対です。NATOやウクライナの「平和を守るために戦争する」という言明自体がoxymoronであり、「平和を守るため」にはあらゆる手を使って戦争を避ける知恵が必要です。勇ましいことを言う人ほど知恵がない。そういう人間を我々は警戒し、立ち止まって深く考える必要があると思います。

かつて自民党がまだ多少はマトモだったころ、宮沢喜一が「『保守』とは立ち止まることだ。立ち止まって考えること」と「保守」と言う言葉を定義しましたが、立ち止まって考えれば、戦争をすれば、勝っても負けても、国民が死に、国が疲弊し、社会が破壊される、それで徳をするのはごく一部の支配層の人間だけであると言うことは明らかではないかと思います。

ロシアを激しく非難し挑発するNATO(アメリカ)は煽動者であり、東ヨーロッパのみならず世界の平和を脅かす存在となってきました。NATOは中国もウクライナにおけるロシアの戦争の「決定的な支援者である」と非難しましたが、それに対し、中国は、「NATOの声明は冷戦的な考え方と好戦的なレトリックに満ちており、挑発的であり、明らかな嘘と中傷に満ちている。(NATOは)対立を煽ってはならない」(中国外務省、林健報道官)と述べました。つまり、戦争を起こしたい連中の意図を冷静に指摘して批判したわけです。

そして、週末、トランプが襲撃されました。まだ状況が混沌としていますが、時期大統領になる可能性が濃厚なトランプに大統領になってほしくない勢力がやったと仮定すれば、最も怪しいのはウクライナでの戦争を拡大させたい連中でかと思われます。私はトランプという男が人間的に嫌いですが、時期大統領としては、バイデンよりはちょっとだけマシかもしれぬと思っています。それは、トランプはウクライナへの軍事支援を止めると言っているからで、ウクライナはアメリカの軍事支援がなくなれば、現政権はロシアと交渉するしかなくなり、とにかく戦争は止まるからです。

さて、そのNATOの態度に、プーチン自身も、「NATOは第三次世界大戦を起こそうとしている」と直裁的に述べましたが、かつて、プーチンは下のようにも言っていたのはNATO、アメリカを含めて世界は覚えておくべきでしょう。

「50年前、レニングラードのストリートは私に一つのルールを教えてくれた。
 もし戦いが避けられないのなら、先に攻撃しろ、と」
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選挙の週

2024-07-09 | Weblog
先週は選挙の週でした。
まずは、イギリスの総選挙で労働党が地滑り的勝利を収めて政権交代となりました。労働党の前党首であり、パレスティナ支援を訴えてきたJeremy Corbynは、今回、無所属で立候補し議席を回復。イスラエルのジェノサイドを支援してきたスナクの保守党は壊滅的敗北となりました。一方で2ヶ月前の補選で議席を回復したばかりのGeorge Gallowayは、南アとイスラエルのアパルトヘイト問題の深くコミットしてきた議員でしたが、残念なことに落選してしまいました。現在の労働党のパレスティナ問題やウクライナ問題へのポジションは保守党と大差ないような感じで、この今世紀最大の殺戮と人権蹂躙に強く反対を打ち出しているものではありません。先の労働党党首であったCorbynは「反ユダヤ」カードを切られて、党を追放されましたから、この政権交代がイスラエル-パレスティナ問題に大きな影響を与えることは期待薄ではないかと思います。

アメリカ大統領選、あの史上最悪の米国大統領候補討論会の後、民主党はバイデンをどうするのか、という床屋政談でネットは多少盛り上がっております。「バイデンはアルツハイマーや認知症があるのではないか」との記者会見での質問に政府広報官が「時差ボケや風邪やらで調子が悪かった」というような言い訳で乗り切ろうとしたのがますます、「バイデンは公務執行不能」であるとの国民の確信を強めました。直ちに辞任が必要な状態に見えます。この状態であと4年半はあり得ません。それでも、討論会場に出てくるだけ、マシと言えます。現役都知事でありながら、後ろめたいことが多すぎて、討論や対面の記者会見から逃げまわる、学歴詐称と権力者へのすり寄りで政界を渡ってきた「緑のたぬき」おばさんよりは潔いでしょう。

バイデンの独立記念日翌日のツイート

これ、ほんとにバイデンがツイートしたのか影武者なのかAIなのかわかりませんけど、民主党としては、もうバイデンで戦うしか他に手がない、という玉砕モードなのでしょう。もし、民主党に黒人かヒスパニックでオバマ並みのカリスマのある若手が居れば、バイデンと差し替えることも可能であったかも知れません。白人で男性で高齢なのでは、いくらバイデンよりも能力と魅力があっても勝てる見込みはなく、かといって女性で有色人種であるからと言っても、カマラ ハリスはあくまでバイデンの添え物として選ばれたわけでメインは務まりません。いずれにしても都会のヒスパニックや黒人層を支持基盤にしてきた民主党であるのに、白人のバイデンがパレスティナというアパルタイト政策の加害者であるイスラエル支援を続けて多くのパレスティナ人を殺してきたという事実を、黒人やヒスパニックの支持層が受けつけないのではないかと私は思います。東部のマサチューセッツやニューヨークはともかく、ひょっとしたらカリフォルニアやハワイなどは民主党支持州でなくなるかも知れません。

そして、土曜日はイランの大統領選。宗教国家であるイランは大統領よりも最高指導者の方が強い影響力があるようです。これまで保守強硬でハメネイ氏と保守派の政権が一致していましたが、今回は欧米との対話を掲げた改革派、ペゼシュキアン氏が当選。選挙システムそのものが与党に有利に設計されている中での改革派の勝利というのは意義深いと思います。それに「対話」があることはいいことです。例え、それが罵り合いであったとしても、対話のある間は戦争にはならないわけですから。

人気低迷のマクロン政権が自爆解散して行われたフランス総選挙。フランス国民の右傾化傾向は以前から話題になっており、選挙では当初、極右政党「国民連合」が躍進しましたが、共闘の結果、決選投票の結果は左派連合が第一党となりました。喜ばしいニュースは、勝利後の演説で、代表のメランション(多分、次期大統領)は、「われわれはパレスティナを国家として認める必要がある」と述べ、聴衆が歓声をもって応えました(下のビデオの1:15あたり)。フランス一般国民のジェノサイド非難の声を代表する政権となって、イスラエルの犯罪を止める力になってほしいと思います。

ところで、ガザでのイスラエルのジェノサイドによる犠牲者数についての記事が、臨床医学雑誌、Lancetに出ています。
"Counting the dead in Gaza: difficult but essential" (Lancet 7/5/2024, Khatib R et al). 
UNによる公式発表では犠牲者は37,000ですが、さまざまの状況証拠から推測すると186,000人かそれ以上、ガザの人口の7.9%にあたる人々が殺されたと考えられると述べています。
医療は人道主義に基づき、医学研究は人類の健康と幸福の促進のためにありあります。LancetもNEJMもその他の医学雑誌もそうした精神に基づいて、知見をdisseminateするプラットフォームであります。このコレスポンデンスの最後に"Editorial note: The Lancet Group takes a neutral position with respect to territorial claims in published text and institutional affiliations."と断ってありますが、医学雑誌であるLancet編集部はgenocideという大量殺人を非難するというポジションも明確にしておくべきではないでしょうか。

話をもどして、日曜日は東京都知事選。胸糞悪い選挙戦と選挙結果でした。討論やジャーナリストから逃げ回る緑のたぬき、新宿での街頭演説では「辞めろ!」コールに沈黙する場面もありました。東京の公的資産を企業に売り払い、巨大な公金を利権企業に流す一方で、都民のための政策の公約は達成ゼロ。一般の国民、都民から広く集めた税金を利権企業に流す「富の逆再分配」のいつもの自民党政治がこの8年東京都でも行われてきました。巨大な財源を持つ東京、「緑のたぬき」の選挙戦を支援しているのは利権に群がる自民党と公明党。そして、8年やって公約達成ゼロ、議会での答弁拒否率7割、学歴詐称がバレ始め、自民と創価学会の組織票だけでは心もとないとなって、ひっぱり出してきたのが石丸某という地方の市長だった男。パワハラ体質で市議会と問題を起こし、名誉毀損などで訴えられ、現在裁判に2連敗中。この無名の田舎の市長が二位の得票率。カラクリは自民党(と、おそらく統一教会)による選挙支援。どうも反小池票を割るための捨て駒だったようで、本人にしてみれば、ここで名前を売って自民党から国政へというハラなのでしょう。選挙後のインタビューのビデオクリップを見る限り、単に頭が悪いのでなければ、どうも誠実に対話するということができず、対話は反則技を使っても勝てばいいとでも思っているようなタイプのようです。 余計なお世話ですけど友達いるのかな?

選挙結果は、自民党の思惑通り、利権ファーストの学歴詐称おばさんが「東京大改革3.0」で三選。8年、二期も改革をやって成果ゼロ、やったことは、都民の大勢が反対する「再開発」という名の利権業者への東京の資産叩き売り。そのために築地や神宮外苑など歴史ある財産を次々と破壊し、精々数百万円レベルの無駄なプロジェクトに48億の予算をつけて電通(子会社)に中抜きさせる。改革と称して破壊と略奪を繰り返し、東京を公金目当ての企業の草刈り場にしてきたくせに、もっとやるらしい。

ま、しかし、結局は、東京都民の選択です。都民の中には創価学会も統一教会もいろんな人がおります。その中で、都政の実情や候補者について、客観的に評価できるだけの知識をもって、自ら判断できる人間は、残念なことに多くはありません。ゆえに民主主義は衆愚政治と呼ばれ、政治家のレベルは国民のレベル以上にはならない、と言われるわけで。
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カレー味の...

2024-07-02 | Weblog
先週もいろいろありました。一週間は短いと思いますけど、日々の出来事を思い出すとその短い期間にも色々なことが起こっていることが実感されます。

先週の大きなニュースの一つはジュリアン アサンジュの出所ですかね。2006年のWikiLeaksの創設によって、世界に名を知られることになったアサンジュは、この活動を通じて国家の犯罪を明らかにし、ジャーナリズムに大きな貢献をしました。彼が明らかにしてきた数々の国家の犯罪の中で、最大のインパクトがあったのは、アフガニスタンとイラクでのアメリカ軍の機密文書の公開ではなかったでしょうか。国家の機密を盗み出すことは犯罪ですが、それを公開する者を罰するのは筋違いであります。まして、その機密が国家の犯罪である場合は、いわば公益通報のようなものであって、むしろ、それがジャーナリズムの本質的な役割と言って良いでしょう。

Wikileaksと彼の活動に対しては、複数の機関がその貢献に対して賞賛をおくってきた一方で、アメリカ政府は、アサンジュを刑事告発。先週もボリビアでのクーデターを支援して失敗したアメリカ政府ですが、さすがに世界中で他国の内政に軍事的に介入し、70件にも及ぶ数の国家転覆を企てたとされる国ですから、色々とバラされては困るのはわかります。アサンジュは2010年にスウェーデンで性加害を仕立て上げられて、国際手配されイギリスで逮捕、勾留されました。スウェーデンはとっくの昔にこの件を終結させたのに、なぜか勾留は解かれぬまま、このほどアメリカとの司法取引がようやく、成立しサイパンで有罪を認める代わりに釈放されて、ようやくオーストラリアに帰りました。

人道主義と真っ向から対立しているのが欧米の帝国主義であり、それは姿形を変えて存続し、現在も人類の不幸を生み出し続けています。ジャーナリストの活動などを通じて、世界の人々が「知る」ことが、そうした人類に対する国家的犯罪を抑制していく第一歩であると私は思います。人道主義、すなわち我々自身と世界の人々の安寧と平和を実現しようとする活動において、「知は力」であり「無知に住ずることは不善」であります。世界や自らの国やその政府をまずは知り、そして自らの頭で思考することなしに、それらを改善できるわけがありません。ジャーナリズムとは人々を啓蒙し、権力の暴走をペンの力で抑制する活動であり、村上春樹風に言えば、「常に卵の側に立つ」べきものです。残念ながら、現在の日本のマスメディアは、「壁」の側に立って「卵」を搾取する権力の広報機関と成り果ててしまいました。メディアが保身第一で、事なかれ主義の単なる傍観者、もしくは権力者のプロパガンディストして存在しているのなら、それはもうジャーナリズムでがありません。

もう一つの話題は、大統領選にむけてのトランプとバイデンの公開討論でしょうか。他の大統領候補者、ジル スタインやロバート ケネディJrらは、二大政党制というプロレス興行から弾き出されて、討論にも参加できず。アメリカやイギリスでは、この二大政党制というシステムが定着して、人々は投票によっていずれかの政党の政策を支援することが「民主主義」だと考えさせられているようです。しかし、アメリカや日本やイギリスが「民主主義国家」だというのは羊頭狗肉というものです。いずれの政党も一般国民の利益を考えていはいません。もしそうであれば、富は適切に再配分され、格差は縮まっていくはずですから。実際に起きているのは、その真逆であり、政府に直接影響を及ぼすことができるだけの経済力や権力を持つものが、彼らの利益のために庶民を搾取し続けているのが現実です。大統領選を戦うのに50億ドル以上の金がかかり、日本の衆議院選には立候補するだけで、最低でも300万円の金を預けなければならないような国が民主主義国家であるはずがありません。金の出所が選挙前から政治を支配しているのです。イスラエルやウクライナの政策に見られるように、実際の政治を動かしているのは、そのどちらでもあってどちらでもない勢力であり、実際は、国民は選挙というセレモニーで、あたかも彼らが政策決定に参加しているかのような幻想を持たされているだけと言っても良いでしょう。

昔の職場では、リサイクルに回す紙は、白黒印刷の紙とカラー印刷の紙に分別するように別々の容器が用意されていましたが、廃棄紙を収集に来る人が、分別した容器の中身を一緒くたにまとめて持っていくのを見て、何のための分別だったのだろう、と思ったことがありました。二大政党制はこのリサイクル容器を思い出します。どちらに投票しても、結局、政策は似たり寄ったり、共通しているのは一般市民の利益よりも、政治家と一部の金を力を持つ者の利益のための政策(カバルのアジェンダ)が粛々と実行されていくということです。

多額の献金が可能な資本家、組織票を纏めることができる宗教団体、政治家の地位を維持させてくれるそうした一部の団体の便宜を図るために、彼らには補助金を出し、公共事業を請け負わせ、減税してやる一方で、消費税などを増税して一般国民にツケを回して帳尻を合わせる、それが政府のやっていることです。アメリカ政府も同じことで、その典型例が、政治家に対するAIPACの献金と脅迫によるイスラエルへの軍事支援政策でしょう。アメリカがイスラエルを支援しなければ、今回のような規模の民族殲滅を目指したような大量殺人は不可能だったのですから。

さて、大統領候補者討論、4年前のこの二人の討論もひどかったですが、今回は前回以上で、舞台に上がったのは、一人はボケ老人で、もう一人は犯罪者。「カレー味のう◯◯」か「う◯◯味のカレー」かという究極の選択の例えを思い出しましたが、実のところは、二人とも「う◯◯味のう◯◯」。通常は、選挙戦の後半に支持率アップさせるような減税とか利下げとかの政策を打つことができる現職者が有利なはずですが、今回は、イスラエルのジェノサイドを支援し続け、インフレを押さえきれずに利下げもできず、社会格差をどんどん広げてきて、ただでさえ評判の悪いバイデンなのに、これほどまでのモウロクぶりを討論会で見せつけたのでは、彼の勝ち目はありません。スウィング ステートは全部、共和党に取られて民主党は歴史的敗北を喫するでしょう。この討論の前、国際紛争に詳しいイギリスの議員George Gallowayはインタビューで「米大統領選はトランプの地滑り的勝利におわる」と言っていましたが、正確には「バイデンの地滑り的敗北」であって、結果、我々は大統領に最も相応しくない人間が二度も大統領になるという悲喜劇を見せられることになるようです。ま、大統領にふさわしい人間など民主党にもいませんけど。バイデンを降ろして候補を差し替えるにしても時間も適当な候補者もない状態では、民主党の勝利はまずないでしょう。(と、書いていたら、バイデンは大統領選から降りるらしい、といううわさが聞こえてきましたが、どうなんでしょう)

ただ、トランプが大統領に再選された場合に、一つよいことは、ウクライナの戦争が終わるであろうということでしょうか。バイデンが二期目を続けたのでは核戦争になりかねません。トランプは以前からウクライナへの支援を取りやめて、資金を国内に回すと明言してきました。先週、ゼレンスキーが突然、戦争終結のための交渉の計画を口にしだしたのは、バイデンの勝ち目がないと悟ったからかもしれません。交渉といっても、ロシアの要求は2014年時のウクライナのクーデター時から変わっていないので、ゼレンスキーがロシアの要求を飲むか飲まないかの二者択一ですが。

しかし、トランプが大統領に再選されたとしても、イスラエルの支援は継続され、パレスティナの迫害は止まらないでしょう。それほど「反ユダヤ」カードはアメリカの政治家に対して強力であり、一旦「反ユダヤ」のレッテルを貼られたら、それは政治生命の終わりを意味することになります(少なくともこれまでは)。

イスラエルに対するイスラム、アラブの反感は高まる一方。同時に、先日、話題にした通り中東周辺の国々、イラン、エチオピア、サウジアラビア、エジプト、UAEなど、イスラム系国家は続々とBRICSへ参加していっています。いくらアメリカが支援するとは言え、イスラエルがこれからも中東でバカ続けると、ロシアがアラブ連合軍を引き連れて出てきます。そうでなくてもヒズボラの兵力はすでにイスラエルを圧倒しているという話です。ロシアがコーカサスを下れば、それは核兵器による第三次世界戦争を意味し、イスラエルのみならずアメリカ本土も無傷ではすみません。しかし、トランプがその危機を回避できる知恵を持っているとはとても思えません。
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