青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

林鉄の残滓微かに

2019年12月04日 23時00分00秒 | 大井川鐵道

(山懐の駅に憩う@接岨峡温泉駅)

程よく色付いた山肌と、朝の冴えた空気が残る接岨峡温泉駅。始発の井川行きがホームで出発の準備中。車両は夜間滞泊をしているようですが、乗務員の方々はどうやらこの駅までクルマで出勤して来ている模様。駅前には接岨峡温泉の湯を引いたコテージ「森林露天風呂」があります。駅の周囲にはこの施設を含め何軒かの民宿や食堂があり、大井川を挟んで犬間と接阻という二つの集落が形成されていますが、いずれも長島ダムによって集落の移転を余儀なくされた人々によって作られた新しい集落のようです。この駅も、元々は「川根長島」という名前でしたが、ダム湖の完成による付け替えによって名前が変更となっています。温泉開発によって観光需要を囲い込もうという方向性は分かりますが、温泉地と言うにはあまりにも規模が小さすぎて、正直ここから発展しそうな雰囲気はありません。

色付いた葉が、トンネルを通り抜けて来た列車の風圧でハラハラと落ちてきます。長島ダム付近では見頃だった紅葉も、接岨峡温泉より先では既に落葉が目立つようになっていました。ここから先、尾盛から閑蔵を通って井川までは、まさに人跡未踏の色濃い山峡を進んでいく井川線です。正直撮影ポイントは関の沢の鉄橋を見晴らす展望台くらいしかなかったのですが・・・展望台への道は崩落により通行止めになっていました。

機関車を入れたら交換もギリギリになりそうな有効長の接岨峡温泉の駅は、森を切り拓いた小さな平地に作られた駅で、林鉄の雰囲気を今に残しています。クレオソートの匂いがツンとする枕木が積まれた線路際の保線小屋は、この奥大井で保線やダム工事に従事する労働者の飯場だったのだろうか。トンネルの向こうに、さらに山の奥を目指して線路は続いていますが、次の駅にあたる尾盛の駅はケモノ道すら接道していないという全くのクローズドな秘境駅として有名。一応この接岨峡温泉の駅から尾盛に向かっては、線路沿いに棄てられた遊歩道があるそうで、これを伝って行くと(かなりのガレ場などを超える技術と勇気があれば)尾盛駅まで行けないこともないらしい。一応ウェブでは成功例のレポなんかも上がってはいますが、結構危険が伴うのではないかと・・・チャレンジするのは勝手ですが、遭難しても当方責任は一切負いませんのであしからず(笑)。

 


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