青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

アプト区間、上から見るか?下から見るか?

2019年11月27日 23時00分00秒 | 大井川鐵道

(中段の構え@アプトいちしろ~長島ダム間)

90パーミルの勾配を長島ダムの堤体の高さまで登って行く、アプトいちしろ~長島ダム間のアプト区間を県道の市代橋から。平成2年に完成した長島ダムの建設によって、川根市代駅(現:アプトいちしろ駅)~川根長島駅(現:接岨峡温泉駅)の間の大部分は水没することになりましたが、井川地区などからの強い存続の求めなどもあって、この区間は新線を作って付け替えることになりました。その結果登場したのが、アプト区間と奥大井レインボーブリッジという井川線の新たな見どころです。・・・ん?「新線」だの「新たな」だのと言ってますけど、よくよく考えたら長島ダムの竣工が平成2年という事は、来年でアプト化から数えて既に30年になる。歳月の流れは速い。

坂下側にED90のロコ2機を連結し、シーソー型のPCコンクリート橋で大井川の本流を超え、紅葉染まる奥大井の山肌を登って行く201レ。奥泉より先はほぼ沿線人口のない井川線ではありますが、この光景はすっかりお馴染みとなった井川線の白眉ともいえるシーン。アプト方式なんて珍しいものをよく作ったなあという印象もあるのですが、トンネルを新たに掘削して迂回路を切り開くよりもよっぽど建設費が安く、工期も短いのだとか。もちろん観光需要が主なので、機関車の付け替えなどに時間を要する事がさして障害にならない路線の性質というのもあったと思うけど。

 長島ダム駅から、今度は山を下りて来る402レを市代林道から。トンネル出口の紅葉が鮮やかだ。【ED+ED】+【DD+スハフ+スロフ2】+【DD+スハフ3+スロフ1+クハ】という多客期らしい堂々たる編成。ちなみにDDが2機連結されているのは、途中の接岨峡温泉駅で編成を増結しているためです。後方の【DD+スハフ3+スロフ1+クハ】は接岨峡温泉で夜間滞泊していた編成で、朝一番で井川までを往復し、接岨峡温泉で千頭から来た201レが切り落とした【DD+スハフ+スロフ2】とくっついて、402レで千頭へ返して行きます。

まさに見頃となった紅葉を眺めながら、アプト式区間の桟道を一望の下に出来る市代林道からの俯瞰。以前は道路沿いの崖は刈り払われて見通しが良かったのだが、いつの間にか崖から伸びた灌木と雑草に覆われてだいぶ視界が狭まってしまっている。このアングルも脚立持ってきて精一杯に下の雑木を交わしてやっとこさ作ったアングルなのですが、まあバランス崩して足踏み外したら脚立ごと30mくらい滑落して大井川にドボンである。あまり端っこに近づき過ぎぬよう、ファインダーの外側にも注意を払われたい。

ダム下にある「アプトいちしろキャンプ場」が開いておりましたので、キャンプサイトからの構図で。ここからは、大井川の水面に近いところから見上げるようにアプト区間を撮る事が出来ます。列車の窓から大勢の乗客たちが手を振っているのが見えて、さすがに最盛期の井川線は千客万来の盛況であります。この日は長島ダム周辺の紅葉が一番冴えていた感じがしたので、上段の市代林道、中段の市代橋、そして下段のアプトいちしろキャンプ場と三つのアングルからアプト区間を楽しんでみました。アプト区間、上から見るか?中から見るか?下から見るか?って感じですね。

山懐に、EDの重々しい電制の音とホイッスルが木霊すると、キャンプ場に来ていたキャンパーたちが一斉に手を振る。アプト区間を撮るには、ここの他にも寸又峡へ行く県道から分かれてダム上の尾根を辿った「うさぎ辻」からの大俯瞰ってのもありまして、実はそこから紅葉の景色を狙いたかったんだけど・・・どうも何年か前から途中の道の落石がひどくてダメっぽかった。関の沢の展望台に行く道も落石で通行止めになってたんだよな・・・この辺りの地質は脆くて、生半可な土木工事ではどうにもならない大崩落が頻繁に起こるからね。誰かが住んでいるわけでもない展望台に行くだけの道を直すのに莫大な金をかけられないという事情も分かるのでしょうがないんだけど、残念だったなあ。まーさか「〇さ行かねが」みたいに落石の山を越えて潰れた道を行くようなマネも出来ませんのでね(笑)。


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