(在りし日の第七橋梁@会津横田~会津大塩間)
昨日のブログのほぼ同じ位置から第七橋梁を撮影した写真。およそ9年前の梅雨の時期であった。この写真からも、橋の流出前と後ではかなり川幅が違うのが分かる。増水した水の勢いで川の両岸が洗堀され、川岸に生えていた樹木などは根こそぎ持ってかれてしまったんだろうね。この区間の復旧には85億円と4年の期間が必要と算定されているようですが、その多くは只見川の橋梁部分の再架橋にかかる時間と経費とされています。
運休中の会津川口~只見間ですが、もとよりこの区間は営業時でも1日3往復の運行しかない超閑散区間でした。平時の輸送力の確保という観点で言えば、現状運行されている代行バス(ジャンボタクシー)で十分に間に合います。そんな状況でしたんで、JR東日本はさすがにこの区間を復旧させるだけの費用も理由も捻出しないだろうなあと。廃止とはしないまでも、休止として事実上の棚上げに持ち込むのだろうなあと個人的には思っていました。しかし、長期に亘る地元福島県と沿線市町村の熱心な働きかけと費用負担の折り合いが付き、なんとこの区間を正式に鉄道で復旧することが昨年末に決定しています。これは驚きのニュースでしたねえ。
勿論、復旧にこぎつけた最大の理由は、ただ熱心にお願いしただけでなく、「この区間を上下分離方式とし、県が復旧後の線路などを保有・管理し、その費用を負担すること」を地元自治体が表明したことでしょう。復旧費についても、JR東には1/3を求めるに留め、県と地元17市町村が残りの50億円近くを負担します。復旧に向けてのロードマップは完全に描かれたと言えます。
このブログを書いている現在、只見線の復帰を後押しする「鉄道軌道整備法改正案」が審議されています。JR東日本が只見線の復旧に慎重であった理由として、現行では「激甚災害によって被災した線路の復旧については、運営会社が黒字の場合は補助金は出しません」という法律の壁がありました。そりゃJR東にしても、いくら黒字が溜まり切ってるとはいえ、1日3往復の閑散区間に85億円も身銭を切って復旧させるなんて「ステークホルダーの皆様のご了解が得られない」という紋切り型の言葉で切り捨てられてしまう事案。ただし、この改正案が可決されれば、「被災した路線の単体ベースの赤字」が3年続いていれば、企業の赤字黒字に関係なく復旧費用の最大1/3の補助金が出ることになり、これはある意味只見線復旧特別法のようなものなのだそうです。「JR東に求めるのは復旧費用の1/3」という地元との取り決めを踏まえ、「復旧の1/3の補助金を出しますよ」という法令の後押しというのがミソですね。
いよいよ6月中旬から本格的な復旧工事が始まるとされていますが、その下準備でしょうか、この日の沿線には、関係者の姿が多く見られました。北海道などを見ていると、路線を残したいという熱意だけでは正直どうにもならなくて、やっぱりカネをいくら出せるかという現実のお話が大きく立ちはだかります。この復旧へのスキームが実を結んだのは、福島県が大きく窓口になって沿線市町村の熱意を集約し、熱意を証明する覚悟を持った支援策を打ち出した事。それが事業者たるJR東日本を動かし、国会でその復旧を補完する政令が発議されるまでになりました。ここまで漕ぎ着けた関係者各位の努力には誠に頭の下がる思いがしますが、復旧させるだけでは絶対にペイしない金額を投じるからには、すべからくどこまで鉄道を絡めた地域振興が図られるかの結果を出していかなければなりません。只見線を繋げ、回遊ルートを復活させた後、利用の促進とともに地元の盛り上がりと賑わいの創出をどうするかは課題となりそう。
それでも、まずはめでたい復旧への動き。
止まっていた時が動き出すのは、計画で言えば2021年度ということになりそうです。
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