面白い記事を読んだ。村上龍が編集するJMMのメールマガジン「from911/USAリポート 第318回」(07.9.1付)だ。タイトルは「国境を越える味覚」で、筆者の冷泉彰彦氏は、米国ニュージャージー州在住の作家である。
記事によると、ニューヨークの辛口レストランガイド「ザガット・サーヴェイ」のベスト31軒(30点満点中、27点以上)の中には日本食レストランが7軒も入っている。それらのお店の日本料理は、@約70ドル(約8千円)もするという(通常のディナーは6千円程度)。
ニューヨークでは80~90年代に日本人駐在員向けの日本食レストランができ始め、その後、和洋折衷の「フュージョン(融合)料理」の段階を経て、今は《「日本風日本料理」とでも言いましょうか、アメリカ人が「これがホンモノの日本だ」と考えた高級日本料理》の段階にあるそうだ。
《アメリカの中の物好きなグループが、明らかに異文化としての「日本食」に惚れ込んでいる》《日本食にのめり込んで大枚をはたき、「スシバーではヒカリモノも食べるのが通だ」とか「ギンジョウシュのサケは甘ったるいことがあるので、サケを選ぶならジュンマイの中から良いブランドを探すべきだ」とか言っているのは、何とも壮観》
《そこには、アメリカでは珍しい自国文化に対する「自己否定」の感情があります。健康志向で細かなところまで配慮の行き届いた日本食を賞賛するというのは、アメリカの食文化を「不健康」で「無神経」なものだとする心理の裏返しだからです》
冷泉氏は、そこから政治的な姿勢にも飛び《日本食という異文化にここまで熱心になるという心情は、どう考えても一国主義・孤立主義の心情とは正反対のベクトルがそこに働いていることを示しています。これからの日米関係を考える上で、この感覚は重要なのだと思います》。
確かに、最近の地球温暖化防止への熱心さは、かつて京都議定書離脱という暴挙に出た同じ国の政策とは思えない。異文化や他国の意見に広く耳を傾けようとするスタンスへの転換が読み取れる。
そこでハタと気がついたのだが、肝心の私たち日本人が「大切な日だから美味しい和食を食べよう」という機会は、どんどん減っている。ホテルでフランス料理、とかワイワイ中華料理、という機会の方が多いのではないだろうか。
8千円の高級和食となれば、幹部級サラリーマンの接待とか年配の方を囲むお祝いの席や送別会、法事の食事くらいしか思い浮かばない。居酒屋チェーンへ行っても和洋中韓折衷だ(麺類や丼物、回転寿司といったB級和食はよく食べるが)。
写真は春日ホテル(奈良市登大路町)の、夏の会席料理だ(奈良県調理技能向上展に出品された見本 06.7.27)。丸茄子の炊き出し、大和肉鶏の一人鍋、天然鮎の塩焼きなど、地元食材などを使った「健康志向で細かなところまで配慮の行き届いた日本食」のオンパレードである。
自国の、また地元文化の良さをしっかりと舌と胃に刻む意味からも、時々は「日本風日本料理」「大和風和食」を賞味したいものだ。
記事によると、ニューヨークの辛口レストランガイド「ザガット・サーヴェイ」のベスト31軒(30点満点中、27点以上)の中には日本食レストランが7軒も入っている。それらのお店の日本料理は、@約70ドル(約8千円)もするという(通常のディナーは6千円程度)。
ニューヨークでは80~90年代に日本人駐在員向けの日本食レストランができ始め、その後、和洋折衷の「フュージョン(融合)料理」の段階を経て、今は《「日本風日本料理」とでも言いましょうか、アメリカ人が「これがホンモノの日本だ」と考えた高級日本料理》の段階にあるそうだ。
《アメリカの中の物好きなグループが、明らかに異文化としての「日本食」に惚れ込んでいる》《日本食にのめり込んで大枚をはたき、「スシバーではヒカリモノも食べるのが通だ」とか「ギンジョウシュのサケは甘ったるいことがあるので、サケを選ぶならジュンマイの中から良いブランドを探すべきだ」とか言っているのは、何とも壮観》
《そこには、アメリカでは珍しい自国文化に対する「自己否定」の感情があります。健康志向で細かなところまで配慮の行き届いた日本食を賞賛するというのは、アメリカの食文化を「不健康」で「無神経」なものだとする心理の裏返しだからです》
冷泉氏は、そこから政治的な姿勢にも飛び《日本食という異文化にここまで熱心になるという心情は、どう考えても一国主義・孤立主義の心情とは正反対のベクトルがそこに働いていることを示しています。これからの日米関係を考える上で、この感覚は重要なのだと思います》。
確かに、最近の地球温暖化防止への熱心さは、かつて京都議定書離脱という暴挙に出た同じ国の政策とは思えない。異文化や他国の意見に広く耳を傾けようとするスタンスへの転換が読み取れる。
そこでハタと気がついたのだが、肝心の私たち日本人が「大切な日だから美味しい和食を食べよう」という機会は、どんどん減っている。ホテルでフランス料理、とかワイワイ中華料理、という機会の方が多いのではないだろうか。
8千円の高級和食となれば、幹部級サラリーマンの接待とか年配の方を囲むお祝いの席や送別会、法事の食事くらいしか思い浮かばない。居酒屋チェーンへ行っても和洋中韓折衷だ(麺類や丼物、回転寿司といったB級和食はよく食べるが)。
写真は春日ホテル(奈良市登大路町)の、夏の会席料理だ(奈良県調理技能向上展に出品された見本 06.7.27)。丸茄子の炊き出し、大和肉鶏の一人鍋、天然鮎の塩焼きなど、地元食材などを使った「健康志向で細かなところまで配慮の行き届いた日本食」のオンパレードである。
自国の、また地元文化の良さをしっかりと舌と胃に刻む意味からも、時々は「日本風日本料理」「大和風和食」を賞味したいものだ。