tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

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名仏いろいろ(4)聖林寺のご本尊

2007年12月26日 | 仏像
毎日新聞奈良版に好評連載中の「チャレンジ!奈良検定」に、こんな問題が出ていた(7/12付)。

Q.桜井市にある聖林寺(しょうりんじ)の本尊は。
A.(ア)十一面観音(イ)阿弥陀如来(ウ)子安延命地蔵菩薩(エ)不動明王

正解は、子安延命地蔵菩薩である。 これは、超有名な(ア)の十一面観音と答えさせようと仕組まれた引っ掛け問題だ。ご存じ「乾漆十一面観音像」は、もとは大神神社(三輪明神)の神宮寺だった大御輪寺(だいごりんじ・大三輪寺とも)にあった仏さまだ。現在は客仏として、聖林寺に祀られている。
※十一面観音像の写真
http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0c/c0/8b5cf7f0608d9da71bde6b328bcedf83.jpg

この観音さまは、和辻哲郎が『古寺巡礼』(岩波文庫)で絶賛しているほか(入江泰吉の写真も掲載)、ありとあらゆる仏像関係書で紹介されている不朽の名仏である。それに対し、ご本尊の子安延命地蔵菩薩は、ほとんど知られていない。

それどころか、いとうせいこう&みうらじゅんの『見仏記』(角川文庫)では
《頭の中には、あの魅惑的な十一面の顔しかない。「うわっ」 ところが、堂内で我々を待ち受けていたのは、マンガみたいな顔をしたどでかい石仏だった。優雅な十一面観音とは、およそ縁もゆかりもない圧倒的にユーモラスな地蔵である》などと紹介されている。

だから、私が奈良検定1級受験者用の「体験学習プログラム」でこのお寺を訪ねることになったとき、最も期待したのは、正真正銘のご本尊を拝むことであった。

このお地蔵さんは、江戸時代の僧・文春が、姉が何度も出産で苦労したことから一念発起し、4年7か月に及ぶ托鉢で集めた浄財で建立したものだそうだ。江戸期には、難産で苦しむ女性がこの周辺にも多かったのだろう。だから今もこのお寺は、安産・子授けの祈祷寺として栄えている。

それが写真の仏さまである。丈六仏というのか、とにかく大きいお地蔵さんだが、拝みに来られる女性たちにとっては、さぞ優しく頼りがいのあるお姿に映ったことだろう。

聖林寺に拝観に来られる方は、このご本尊の横をドヤドヤと通り過ぎて、耐火構造の収蔵庫に安置されている十一面観音さまの方に向かうが、江戸時代から今日まで、悩める女性を優しく見守り続けてきたこの仏さまも、ぜひ拝んでいただきたいと思う。

※写真は、いずれも8/12撮影。
コメント (2)
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