tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

観光地奈良の勝ち残り戦略(8)奈良の社会的効用

2007年12月25日 | 観光地奈良の勝ち残り戦略
先日、観光統計に関する話を聞く機会があった。和歌山県で開かれた「第1回観光経済国際シンポジウム」(10/15 主催=国交省・世界観光機関)に出席された方からのまた聞きである。

私たちは観光産業という言葉をよく口にするが、「観光産業」は正式な産業分類ではない。通常、産業は宿泊業、飲食業などの「供給サイド」でカウントされる。一方観光は「需要サイド」で定義される活動であり、それは宿泊、小売り、レストランなど複数の産業によって構成される「楽しみ」の活動であるからだ。

だから今まで、観光に関する供給も消費も、ちゃんとカウントされてこなかった。GDPに占める観光の貢献度合いなども、実はよく分からなかった。

そこで今《観光立国の実現には、世界共通基準に基づく観光統計の整備および分析が不可欠と考えられ、「観光立国推進基本計画」においても観光統計の整備は必要な施策として盛り込まれた》(10/27付 週刊観光経済新聞)

《世界観光機関(UNWTO)は、観光サテライト勘定(TSA)という統計手法の導入が必要としている。TSAは、国民経済計算体系(SNA)の中では把握することが困難であった観光活動を、SNAに準拠しつつ抽出するもので、観光関連の消費、付加価値、雇用等が把握でき、国民経済における観光産業の貢献度を客観的に測定できるもの。現在、世界80カ国で導入されている》(同)
http://www.kankoukeizai-shinbun.co.jp/backnumber/07/10_27/kanko_gyosei.html

確かにこれは必要なことだ。観光政策の立案にしろ、マーケティングにしろ、ベースとなる統計数値(金額)が出ていないことには、戦略の立てようがないからだ。

そこで、はたと気がついた。観光という「楽しみの活動」を金額ベースでカウントするのは良いとしても、そこから抜け落ちてしまうものがあるのではないか。とりわけ「奈良観光」では、金額でカウントされないものが余りにも多い。

奈良公園も平城宮跡も、タダで入れる(金額ではカウントされない)。だからお弁当と水筒さえあれば、一日中遊べる。東大寺も興福寺も、境内にはタダで入れる(特定の施設のみ有料。塀で囲っている京都のお寺とは、そこが違う)。おん祭りもお水取り(おたいまつ)も燈花会も、タダで見物できる。奈良市だけでなく、吉野山も馬見丘陵公園も橿原神宮もタダだ(冒頭の写真は奈良公園=11月下旬の撮影)。

タダで提供しているこれらのサービスを「奈良の社会的効用」(「効用」は「費用」の逆の意味)と名づけ、金額換算すれば、膨大なものになるだろう(例えば奈良公園の入場料を長居植物園並みの200円、東大寺の拝観料を金閣寺並みの800円として計算する など)。

奈良には日帰り客ばかり来るので、おカネを落としてくれない(ゴミだけ落とす)などと嘆いているのではなく、この膨大な「社会的効用」を全国にアピールすれば、他府県の人は「ああ、奈良は良いことをしてくれているのだな」と気づいてくれるはずだ。県民も、地元が社会に与えている「効用」を知ることで、地元の良さを見直し、地元を大切にする気持ちが高まってくるだろう。

それはまた、「景観」や「風情」など、これまでおカネにカウントされてこなかった奈良の「観光価値」を計る1つの尺度になるかも知れない。県下の大学やシンクタンクあたりが、この作業にひと肌脱いでもらえないものだろうか。

※参考:観光地奈良の勝ち残り戦略(7)RYOKANへの期待
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/2016747b78500e54b96fd4e6d8cf92f6

※まもなく「奈良市景観計画」に対する意見募集の締め切りが来る(12/28締切)。ぜひ、ご意見を市へお送りいただきたい。
http://www.city.nara.nara.jp/icity/browser?ActionCode=content&ContentID=1195430446960&SiteID=0&ParentGenre=1194926856160
これに関しては、以下のブログ記事末尾の南都さんのコメントが参考になる。
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/7c6c09b3e6732e329d8471198a6dace4
コメント (16)
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