tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

西陣美術織 奈良館

2010年03月02日 | 奈良にこだわる
毎日新聞奈良版(2/21付)に「西陣美術織奈良館 十一面観音像の掛け軸も 西陣織20点、上三条にオープン」という記事が出ていた。《奈良の仏像などをモチーフにした西陣織約20点を集めた「西陣美術織奈良館」が奈良市上三条町にオープンした。京都市の「西陣美術織工房」が、平城遷都1300年祭に合わせて開館した》。

《館内には同祭の公式マスコット「せんとくん」を織り上げた作品を展示。聖林寺(桜井市)、法華寺(奈良市)、室生寺(宇陀市)の十一面観音像(いずれも国宝)をあしらった掛け軸もある。中でも法華寺の十一面観音像の掛け軸(縦約2メートル、横約80センチ)は約20色で、縦糸を約4000本、横糸を5万本も織り上げた力作。500年後まで色あせないという。午前10時~午後6時。水曜定休。入館無料。問い合わせは西陣美術織奈良館(0742・26・1833)》。



上三条(かみさんじょう)といわれてもピンと来ないだろうが、奈良で「上」は東、「下」は西のことなのだ。奈良ワシントンホテルプラザが下三条町である。同館は、三条通を東に上がってきて、やすらぎの道との交差点の辺り、奈良市観光センターの向かい(ミドーカメラの筋向かい)、(株)村田はんやビルの2階にある。

外付けのコンクリート階段を上がり、ドアを開けて驚いた。正面に法華寺、左に室生寺、右に聖林寺それぞれの十一面観音さんが勢揃いしておられたのだ。思わず手を合わせたが、これは圧巻だ。本物の仏さまがライトに照らされて、そこに安置されているような錯覚を覚えた。

写真データをもとに、機械と職人の技で織り上げた掛け軸なのである。館長の吉田秀高さんがルーペをかざすと、細かい織り柄が見える。正真正銘の織物なのだ。時間とともに「本物→写真→織物」と、3段階を経てやっと織物に見えてきた。これは素晴らしい出来映えだ。写真が、その三体(掛け軸だから、正しくは三幅)である。



そういえば、以前「聖林寺の国宝・十一面観音像を西陣織で再現」という記事を読んだことがある(08.1.17付 産経新聞)。《天平彫刻を代表する傑作の1つとして知られる聖林(しょうりん)寺(桜井市下)の国宝・十一面観音立像(奈良時代)を西陣織で原寸大に再現した掛け軸を、京都市上京区の「西陣美術織工房」(蔦田文男社長)が織り上げた。18日に同寺へ奉納する。同寺は多武峰(とうのみね)街道近くの山あいにあり、収蔵庫に安置される十一面観音立像は高さ約2メートルで優美さを漂わせている》。

極楽園
三好和義
日経BP社

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《西陣美術織工房は、昨年夏に「西陣織物語ミュージアム」を開館させたことを記念し、西陣織の高度な技を知ってもらおうと同像の掛け軸制作を発案。1年がかりで制作した。縦約180センチ、横約65センチのほぼ原寸大で、曲線や細部も実物に近いよう緻密(ちみつ)に再現し、立体的な迫力も出した。蔦田社長は「殺伐とした社会の中で、十一面観音を織り上げ、西陣織の匠の技も伝えたいと思った。ここまで緻密なものはないのでは」と話している》。

別の新聞には、こんな記事が出ていた。《仏像の写真をパソコンでデジタルカメラの画素のように細かく解析し、4000本の黒い縦糸に12色の横糸2万本を織り込んで再現した。糸の準備は3カ月前から始め、織る作業は70代の職人が約1カ月かけたという》(08.6.11付 信濃毎日新聞「西陣織で実物大に再現 飯田・元善光寺の阿弥陀如来像」)。
http://www.shinshu-liveon.jp/www/topics/node_75978

《同工房は、西陣織の伝統技術の継承や後継者育成を目指し、3-4年前から奈良、京都を中心に各地の仏像を織っている》《同工房の蔦田社長は「コンピューターによる最新技術の活用で、西陣織の伝統技術の可能性が広がった。立体感や重厚感を楽しんでほしい」と話している》。

魅惑の仏像 十一面観音―奈良・室生寺 (めだかの本)
小川 光三
毎日新聞社

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最新の技術に職人の技が加われば、こんな素晴らしい美術工芸品が産まれるのだ。トップ写真の掛け軸は非売品だそうだが、他の作品は「○○,○○○円」ほどで販売されている。掛け軸をアレンジした仏さまの額装もある。著作権の関係で、写真を掲載できないのが残念だ。
http://www.asahi-net.or.jp/~kw4h-sehr/hotoke11.html

館長の吉田秀高さんは、とても親切に説明して下さる。何より、入場無料という太っ腹が有り難い。ぜひいちど、お訪ねいただきたい。午後6時閉館なので、ご注意を。



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