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これは驚いた。新井満氏の『千の風になって』が、先行書籍からのパクリではないかという疑惑が、ネット上で大きな波紋を広げているのだ。私は寮美千子さんからの情報で初めて知ったのだが、きっかけはTwitterのこんな書き込みだったそうだ。
※HARMONIA(寮美千子の意見)
http://ryomichico.net/bbs/review0011.html#review20100312151134
《私はずっと「千の風になって」ブームにうさんくさく思っていた。売ってはならんものを売っているぞ、と》《新井満『千の風になって』の背後には、こんなことがあったのか。本当なら許されないことだよなあ》(3/10 1:43AM 松浦晋也氏)。
http://twitter.com/ShinyaMatsuura/status/10264460319
ジャーナリストの佐々木俊尚氏も、Twitterで《あまりにも酷い「千の風になって」の盗作問題。新井満氏と朝日新聞はきちんと回答すべきではないか》と書いておられる(3/10 6:45PM 佐々木俊尚氏)。
http://twitter.com/sasakitoshinao/statuses/10302758863
これら情報のネタ元は、南風椎(はえ・しい)氏のブログである。
※南風椎氏のブログ「森の日記」
http://blog.greetings.jp/?cid=6
![]() | 1000の風―あとに残された人へ (ポケット・オラクル・シリーズ)三五館このアイテムの詳細を見る |
ブログ「天漢日乗」には《1995年6月、南風椎氏は、1000の風―あとに残された人へ という書籍を三五館から出版した。この書籍が新井満の「千の風になって」の大元であり、新井満がそれを剽窃して現行の「千の風になって」の「和訳」を行ったのは、南風椎氏のblog「森の日記」を読む限り、動かしがたい事実ではないかと思われる。是非、以下をご一読下さい。なお、新井満が講談社から写真詩集『千の風になって』を刊行したのは、2003年6月のことで、南風椎氏の著作との先後関係は明らかである》。
※わたしは「千の風になって」を歌わない(天漢日乗)
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2010/03/nhk-4625.html
天漢日乗には、南風氏の8本のブログ記事が紹介されている。《これを読むと驚くのだが南風椎氏と新井満とは旧知の間柄だったのである。(5)には南風椎氏と新井満が一緒に収まった写真が掲載されている。まだ「小説家になりたい」と言っていた電通マンの頃の新井満だ。そして、驚くべきことに(6)を読むと、南風椎氏の『1000の風』の写真のアイデアを新井満『千の風になって』の表紙がパクっているのだという。で、これを南風椎氏に見せたらしい》。
《旧知の人間の著作物を盗んで平気(新井満は「南風椎の本がなかったら自分があの詩に出会うことはなかったし、本も歌も作れなかった。これからは取材のときも講演でもそのことをかならず最初に言います」と言って帰ったと(6)には書いてあるが、本当にそれを実行してるんですか?)というのだけでもアレだけどそれをその本人に堂堂と見せるという神経は全く理解出来ない》。
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ちなみに、南風椎氏の訳を紹介する。氏のブログからの引用である。
『1000の風』 訳 南風椎
私の墓石の前に立って
涙を流さないでください。
私はそこにはいません。
眠ってなんかいません。
私は1000の風になって
吹きぬけています。
私はダイアモンドのように
雪の上で輝いています。
私は陽の光になって
熟した穀物にふりそそいでいます。
秋には
やさしい雨になります。
朝の静けさのなかで
あなたが目ざめるとき
私はすばやい流れとなって
駆けあがり
鳥たちを
空でくるくる舞わせています。
夜は星になり、
私は、そっと光っています。
どうか、その墓石の前で
泣かないでください。
私はそこにはいません。
私は死んでないのです。
Copyleft by Hae Shii 1995-2010
いかがだろうか。寮美千子さんは慎重意見である。当ブログ記事に寄せていただいたコメントによると《訳文比較の結果、新井満氏が南風椎氏の先行作品を参考にしたであろうことは、ほぼ明らかです。しかし、法的に「盗作」と呼ぶべきものかどうかはむずかしい。翻訳で、先行作品を参考にすることはよくあることです。その場合、先行作品に敬意を払い、参考資料として提示するなどの対処が必要。新井氏と南風氏は友人だったのですから、少なくとも挨拶は必須です。新井満氏が礼を失したことが、今回の騒動の原因だと思います》。
※寮美千子さんによる訳文比較(HARMONIA)
http://ryomichico.net/bbs/review0011.html#review20100312171653
なるほど。新井氏の非礼は明らかであるが、裁判になったとき、南風氏が「盗作だ」と主張して勝てるかどうかは分からない、ということなのだ。さすがにプロの作家らしい冷静な判断である。
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私がこの騒動でもう1つ思い知らされたのは「Twitter」の威力である。週刊ダイヤモンドが1/23号で「2010年ツイッターの旅 140字、1億人の「つぶやき」革命」という特集を組んだとき、正直「そこまで言うか」と思ったが、南風椎氏が《Twitterの威力に目を見開いている。昨日たった一日でこのブログへのアクセス数が8万を超えて驚いていたのに、今日はまたそれを超えそうな勢いなのだ》と書かれているのを知り、その猛威に驚かされた。
http://blog.greetings.jp/?eid=161
南風氏がどの辺りを「落としどころ」にするのか、現状では不透明だが、行きがかり上、私もこの問題を追っかけて行くことにしたい。
http://blog.greetings.jp/