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地消地産で地域内の経済循環拡大を(by 藻谷浩介氏)/観光地奈良の勝ち残り戦略(121)

2018年04月05日 | 観光地奈良の勝ち残り戦略
やや古い話で恐縮だが、「第9回観光力創造塾」(主催 南都銀行および奈良県)の模様が奈良新聞(3/8付)に掲載された。全容はこちら(PDF)に掲載されている。充実したシンポジウムで、とりわけ藻谷浩介氏(日本総合研究所 主席研究員)の講演が光っていた(耳の痛い話だったが)。

キーワードは「地消地産」、地産地消(地元産品を地元民が消費する)ではない。「地元で消費するものには、1%でも多く地元産品を使おう」という意味である。皆さんにも参考になると思うので以下、藻谷氏の発言だけを抜粋してみる(太字は、私が特に印象的だったところ)。

訪日外客数(いわゆるインバウンド客数)は、2016年には2400万人でした。これを国別に分けて、さらに相手の国の「国民の何人に1人が1年の間に来日したのか」を計算してみます。この数字が小さいほど、日本ファンのリピーターが多いわけです。

米国の場合、1年間に国民の260人に1人が来日しました。それが中国となると、220人に1人で、すでに米国より来日頻度が高くなっています。カナダ人は139人に1人で米国人の2倍、オーストラリア人は50人に1人で、米国人の5倍の頻度でした。

それでは韓国人は? なんと桁違いの10人に1人です。台湾パスポートの人となると6人に1人、香港パスポートの人は5人に1人が1年間のうちに来日しました。韓国・台湾・香港を見れば、中国人客がまだまだ増加することは明らかに予想できますし、カナダ・オーストラリアを見れば、米国人客ももっと増えることが予想できます。


インバウンド観光は、膨大な潜在需要を抱える数少ない分野なのです。これを地域経済活性化に活かさない手はありません。ところでその「地域経済の活性化」には5段階あります。

①知名度・話題性アップ→②客数増加→③売上増加→④所得増加→⑤地域内経済循環拡大

の各段階です。①と②は、首長さんや広告代理店や旅行代理店が喜ぶ話ですが、実際に経済を温める効果はないので、まったく飛ばしてしまってかまいません。話題にならずとも、客数が増えずとも、単価の高い少数の固定ファンが繰り返し来て、売上が増えればいいのです。

ですから意味があるのは③からですが、採算割れ価格でやっているようでは、幾ら売上が増えても④の所得増加に辿り着きません。そして関係者の所得が上がったとしても、そのお金が再度地域内で使われて、直接観光事業をしていない一般住民にまで回るようでなければ、つまり⑤の地域内経済循環拡大が起きなければ、地域経済は活性化しないのです。

逆に⑤まで行けば人口が増えます。奈良県内の各観光地は、どの段階でしょうか? ①で止まっていませんか? ⑤の地域経済循環拡大を実現するためのキーワードは「地消地産」です。よく聞く地産地消(地元の特産品を地元民も消費すること)ではなく、地消地産。「地」元で「消」費するものには1%でも多く「地」元「産」を使おう、ということ。観光客に出す食材や土産物の原材料はなおさらです。

これにより、売上の中で地元に戻って回る部分を1%でも増やすことができ、農業や建設業や製造業の売り上げも増え、人口増加が実現していきます。北海道のニセコ町や、沖縄県内各地が典型例です。反対が大阪のたこやきで、原材料に一切地元の物を使っていませんから、売上が大阪に還元されません。

高い旅費を払ってわざわざ遠くから来る観光客は、遠くから来るほど「地消地産」を求めています。安ければ喜ぶのではなく、「今だけ・ここだけ・自分だけ」であればあるほど喜んで、高い単価を払います。客の側に立って考えて、顧客に高いお金を払うだけの「言い訳」を提供できているほど、観光地の中の地域経済循環が高まります。

栄える観光地は「行く言い訳」が立つ場所なのです。「あそこは安いから」というのは最悪の「言い訳」で、それでは④の所得増加はありえません。お客さまが価格以外の「言い訳」を持って選ぶ地域だけが残ります。なぜそこに行き、お金を使うのか、お客の目で「言い訳」を考えましょう。

地域経済循環を拡大する観光とは、わざわざ行く「言い訳」が立ち、滞在時間が長く、食事回数、泊数が増える観光であり、繰り返して訪れてなじみ客になってもらえる観光です。地元民の「当たり前」こそ、お客にとっては魅力であり不思議です。「当たり前」でないものを知ろうと来た人の「言い訳」を立たせ、何が「有難い」のかお客さまの本音を聞き出すことが勝負です。

多くの観光地は時代遅れの店と同じです。周遊コースなどというのは、昭和の時代の国内観光客のニーズに対応したもので、今の時代の外国人観光客に必要なのは滞在場所を作ることです。①の知名度を狙って宣伝などしているお金があったら、顧客満足度を調査しましょう。きっと今すぐやるべきヒントが見つかります。


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