tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

奈良で子育てと本づくり/編集者・ライター 加藤なほさん

2018年08月05日 | 奈良にこだわる
 僧力結集―奈良のお坊様に会いに行こう!
 大和真菜
 京阪奈情報教育出版 (あをによし文庫)

南都銀行の社内報「なんと」第284号(2018年春号)の巻頭言は、京阪奈情報教育出版所属の編集者でライターの加藤なほ(筆名:大和真菜)さんだった。加藤さんは生駒市在住で二児の母である。子育てと編集の仕事の両立は大変だと思うが、うまく両立され、『僧力結集』などの好企画を連発されている。まずは全文を紹介する。

編集ライター 加藤なほさん 奈良で子育て本づくり
私は現在、奈良の出版社で書籍の編集者をしています。独身時代に東京の出版社で編集の仕事をした経験があり、10年前に奈良の子育て情報誌の編集スタッフになりました。すでに結婚し二児の母になっておりましたので、子育て経験や保育士の資格が活きる仕事でしたが、たまたま隣の部署だった月刊誌『大和路 ならら』の記者もさせて頂くことに。

記者になりたてのころ、奈良国立博物館の教育室長だった(現帝塚山大学教授)西山厚先生のもとへ、お水取りの取材のために同行する機会に恵まれました。その時の言葉が今も忘れられません。先生は「修二会の僧侶は、お堂を中心に愛を叫ぶ」というのです。僧侶が「南無かん」 「南無やーっ 」とご宝号を唱える(叫ぶ)ときのことをそう表現されました。

どこかで聞いたことのある フレーズですが、「こんなに奈良のこと、伝統行事のことを面白く伝える人がいるのか」と大きな衝撃を 受けました。「自由な表現で、奈良を語る人がいる。型にはまった表現でなくていいのか」と気づくきっかけになりました。
 
その後、子育て情報誌が休刊すると同時にフリーの編集ライターになりました。子どもを優先し、自分の仕事を諦めることが多い中、たまたま知り合った出版社の社長に「企画書を書いてみないか」といわれ、書いた企画書が通り、出版することに。それが『僧力結集』(京阪奈情報教育出版)という本です。「現代社会に巣くう諸問題に対し、僧侶はどう考えるのだろう」という切り口 から、12ヵ寺20人の僧侶にインタビューし、社会問題、心の問題を問答することで、皆さまの問題解決の一助となるように構成しました。
 
まだ手のかかる子どもがいる中で 編集ライターを続けてきましたので、挫折ばかりの日々でしたが、そのような状況の中で依頼された仕事は、すべてが貴重であり、ただただ有難く感じられました。本の制作に必要となった修験道の勉強のため、薬師寺の修験部の方々と稲村ヶ岳へ登拝させて頂いたり、ふだんお目にかかれないようなお寺のご尊像について取材できたり。そこには思わず手を合わせたくなる瞬間が多くありました。

未知の世界が広がっていくようで、取材のたびに、目に見える景色すべてに感謝をするようになりました。奈良の持つパワーにいつも圧倒され、言葉を仕事にしている身なのに言葉で表現することをためらうほどです。悠久のときを経てもなお、現代に伝わる宝物の数々に触れる、感じることができる。これが奈良の魅力なのかもしれません。
 
見渡せばそこかしこに歴史あり。音羽山、三輪山、龍王山、大和三山、葛城山、金剛山、二上山、生駒山など、奈良盆地を囲む山へハイキ ングすることが趣味になりました。 山頂から望む景色から歴史を感じ取ることができます。子どもを連れて日帰りで登りやすいのでおすすめです。今年高校生になった娘が歴史好きな子に成長したのも、奈良を連れ歩いたおかげかもしれません。
 
現在は出版社に所属し、書籍編集を任されています。コンセプトは 「地元ならではの本」。小さな出版社だからこそ叶うことがあります。たとえば細かいニーズに対応した本であること。ここであれば発行部数 2000冊を売ったらヒット作です。現在は『大和橘』『玄昉』『奈良 墨』などの企画が進行中です。大手では取り上げないようなディープな対象を本で伝えることで、記録として残していけたらという想いで活動しています。


「修二会の僧侶は、お堂を中心に愛を叫ぶ」とは、いかにも西山先生らしい表現だ。二月堂の観音さまに祈る「南無観世音菩薩」が、回数を重ねることで途中から縮まって「南無観(なむかん)」になるのである(「南無薬師如来」は「南無やー」になる)。

また女人大峯「稲村ヶ岳」に登ったというのも、すごい。この山は天川村にある大峰山脈の山で、標高1,726m、関西百名山の1つである。まさに頭ではなく体で奈良を感じ、それを編集の仕事に活かしておられるのだ。

1974年生まれの加藤さんは、今年でまだ44歳。今後ますますのご活躍を期待したい。ガンバレ、なほさん!



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする