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田中利典師の『霊山へ行こう』(11)頑張れ!お坊さん

2023年03月05日 | 田中利典師曰く
金峯山寺長臈(ちょうろう)田中利典師は以前、『霊山へ行こう』という対談本を準備されながら、上梓されなかった。利典師はその原稿(自らの発言)に大幅に加筆され、Facebookに17回にわたり連載された(2023.1.21~2.10)。心に響く良いお話ばかりなので、当ブログでも紹介させていただいている。
※トップ写真は大和郡山市・椿寿庵のツバキ(2010.2.6 撮影)

第11回のタイトルは「起きろ坊主!」、いささか挑戦的・挑発的なタイトルだ。師によれば「お寺は、先祖供養などを通して培われてきた日本の情緒や形を伝え、守っていってほしい」、しかしなかなかそうは行っていないという現実がある。

寺は明治維新時の「神仏分離令」「肉食妻帯蓄髪勝手令」などで痛めつけられ、また戦後は農地改革(農地解放)で田畑(財産)を失った。師は、これからお寺は淘汰されていくのではないかと危惧する。そこで出た言葉が「起きろ坊主!」なのである。では師のFacebook(2/2付)から、全文を抜粋する。

シリーズ「山人vs楽女/起きろ坊主!」⑪
著作振り返りシリーズの第6段は、実は校了まで行きながら上梓されなかった対談書籍の下書きの、私の発言部分を大幅に加筆してみました。内容はなかなか面白い。みなさまのご感想をお待ちしております。

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「起きろ坊主!」
お寺もお坊さんが私物化させたことに問題があります。まあ、寺経営も大変なのですけどね。明治維新時、廃仏毀釈で、お寺がひどい目にあう時代がありました。さらに大東亜戦争に負けて、農地解放になり、寺院の経済基盤のコアのところを失います。

でも寺っていうのは継続させるのが前提なのです。昔はいろんなところから人材を集め、家庭を持ってないので、その中の優秀な人が寺を継いだものですが、明治からはお坊さんも家庭を持てるようになり、更に戦後は経済的に苦しいわけですから、たくさんの弟子をかかえたり出来なくなります。

それで自分の息子が法灯を継いでいくようになった。浄土真宗は江戸時代からやっていたそうですが、他の宗派ではそういうことは希有だった。そうなると、弊害が出てきて、まるで寺が寺続(お寺の家族)の財産のようになってきます。それによって、一般の寺外の人にとって、お寺の敷居が高くなり出入りしにくくなってきた。

寺ってのは本来、檀家のものでもないし、お坊さんのものでもない。寺は仏さん、御本尊のもの、というのが基本だったはずです。そういう基本的な考えがなくなってしまって、一般の人はだんだん寺に行きづらくなるし、寺も来てもらっても困る、って話になってくる。いわば自分の家ですからね。特に、檀家でもない人なら余計に、来られても、奥さんたちは困る。檀家さんだって面倒くさいのに、っていう話です。

やや極端なものいいではありますが、まあ、そういう現状ですから、このままではお寺が淘汰されてしまうのも無理はないと思います。ある意味ではそれでしょうがないかなという気はしますけどね。寺でもなんでも、社会性を損なってしまったら、ある種淘汰されるのは仕方ないことですよ。そして本物しか残れないようになる。

そうは言ってもデスね。藤原正彦さんがいうところの、情緒や形っていうか、近代以前の日本のよきものを継承しているよりどころとして、寺がもってる境内とか歴史とか雰囲気とかは、ほんとに捨てがたいものがたくさんあります。

この中で育まれたものには、たくさんのよいものがありますから、簡単にアメリカナイズされた現代の悪しき日本社会に駆逐されてほしくはないです。やっぱりですね、先祖供養などを通して培われてきた情緒や形を伝え守っていってほしいのです。いまの制度が保たれている間にねえ。

しかも、優秀なお坊さんもいっぱいおられますからね。私はもし、すごく大きな寺の息子に生まれていたら、何もしなかったでしょう。だから私の友人で、とても優秀な僧侶でりっぱなお寺でいながら、いろんなことをやっている人がいて、それを私はとても尊敬するんです。

私なんかは、もともとなんにもないから、なにかをしないとしょうがないので、世界遺産だの、紀伊山地三霊場会議だの、修験道大結集だの、弘法大師プロジェクトだのと、まあいろんなことをやってきたわけですが、そんなのは普通なんです。持ってないんだからやらなきゃしょうがない。

でも持っている人はなにもしなくても生きていけるわけです。それでも新たなことをやっているって人はホントに偉い僧侶だと私は思います。そういう意味で、繰り返しになりますが、なにもない私のようなお坊さんはなにかをしないとしょうがないわけですよ。

といってぼーーと寝てる坊さんも大勢いますわね。そこのところは楽女先生たちに頑張って貰って、お寺の中で胡座をかいて、寝てるかごときのお坊さんたちを起こしてまわってもらいたいですね。

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「起きろ坊主!」って、また友人達をなくしてしまいそうな言動ですねえ。本当は心底、応援してまーす。いまの社会は日本が持ってきた良きものを貶めたり、壊すのが政治やマスメディアのトレンドになっています。怒らなくちゃ。「起きろ坊主!」ではなく、「怒れ坊主!」かな。「みんな、ようなれ」ですわ。
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