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手水屋に祭られる大国主と須勢理姫、「夫婦大国社」(春日大社境内)/毎日新聞「やまとの神さま」第39回

2023年03月28日 | やまとの神さま(毎日新聞)
NPO法人「奈良まほろばソムリエの会」は毎週木曜日、毎日新聞奈良版に「やまとの神さま」を連載している。先週(2023.3.23)に掲載されたのは〈日本唯一の夫婦大国さま/夫婦大国社(奈良市)〉、執筆されたのは同会会員の毛利明さんだった。
※写真は、櫓(やぐら)が煙出しとして残る夫婦大国社=奈良市春日野町で

この神社、少し複雑だ。大黒天(厨房の神・七福神)、大国主(出雲の神・国土の神・縁結びの神)、須勢理姫(すせりひめ=大国主の妻)が複雑に絡んでいるのである。日本大百科全書「大黒天」によると、

元来ヒンドゥー教の主神の一つで、青黒い身体をもつ破壊神としてのシバ神(大自在天)の別名であり、仏教に入ったもの。(中略)中国南部では床几 (しょうぎ) に腰を掛け金袋を持つ姿になり、諸寺の厨房 に祀 られた。わが国の大黒天はこの系統で、最澄 によってもたらされ、天台宗の寺院を中心に祀られたのがその始まりといわれる。

その後、台所の守護神から福の神としての色彩を強め、七福神の一つとなり、頭巾をかぶり左肩に大袋を背負い、右手に小槌 (こづち) を持って米俵を踏まえるといった現在よくみられる姿になる。商売繁盛を願う商家はもとより、農家においても田の神として信仰を集めている。民間に流布するには天台宗などの働きかけもあったが、音韻や容姿の類似から大国主命 (おおくにぬしのみこと) と重ねて受け入れられたことが大きな要因といえよう。


平安時代、出雲の神さまだった大国主とその妻の神像を春日大社の手水屋(厨房)にお祭りした。しかし厨房の神さまといえば大黒天。しかもわが国で大黒天は、大国主と同一視される(=習合している、どちらもダイコクだから)。だからここは「大国主と須勢理姫」の出雲の夫婦神をお祭りしているが、同時に厨房の神「大黒天」(=大国主)もお祭りしているということになる、ああややこしい。

夫婦大国社の前には、いつもたくさんのハート型の絵馬が掛けられている。色もピンク色で、とてもかわいい。水占(みずうら)同様、バレンタインデーの時期には特に増えるようだ。では、記事全文を紹介する。


この写真は、るるぶ&more から拝借した

世界遺産春日大社の境内と周辺には、摂末社(せつまつしゃ)62社が点在します。その一つ、春日若宮社の南側に鎮座する夫婦大国社(めおとだいこくしゃ)は、古くから篤(あつ)く信仰されています。

祭神は春日若宮社の神饌所(しんせんしょ=台所)だった国重要文化財「手水屋(てみずや)」内の厨子(ずし)に祭られます。手水屋の土間には台所の名残として竈(かまど)や流し台が置かれ、柿葺(こけらぶき)の屋根には煙出し(櫓 やぐら)が残ります。

由緒は平安時代の1135(長承4)年3月甲子(きのえね)の日、春日社の正預(しょうのあずかり=神職)中臣祐房(なかとみのすけふさ)が出雲の神霊を迎え、名工卜弁(ぼくべん)が二体の神像を彫り、手水屋の守護神として祭ったことに始まります。 
 
七福神の大黒天(大国主命 おおくにぬしのみこと)とその妻である須勢理姫命(すせりひめのみこと)が揃って祭られ、日本唯一の夫婦大国さまです。

須勢理姫命は、頭上に米櫃盥(こめびつたらい)を掲げ右手に杓子(しゃもじ)を持つ珍しい神さまで、縁結び、商売繁盛、夫婦円満のご利益があります。昔から杓子を納める風習があり、現在はハート型の絵馬を奉納します。水に浸すと文字が浮かび出る「水占(みずうら)」も人気です。

周辺の福の神十五社の巡拝もでき、高畑町からの参道(祢宜道 ねぎみち)には、葉を財布に入れると長者になるという竹柏(なぎ)が繁(しげ)っています。秋の恒例祭のほか60日に1度の甲子の日に甲子祭があり、いつも参拝者で賑わいます。(奈良まほろばソムリエの会会員 毛利明)

(住 所)奈良市春日野町160
(祭 神)大国主命、須勢理姫命
(交 通)JR・近鉄奈良駅からバス「春日大社本殿」下車、徒歩約10分
(拝 観)境内自由
(駐車場)有料(春日大社駐車場)
(電 話)0742・22・7788


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