2019全豪オープンの錦織4回戦、対カレノブスタ戦をずっとテレビで観続けた。
身長はそれほど差がないし、ビッグ・サーバーという評判もないし、格別の得意技がありそうでもないし、ランキングは下だし、多少のつまずきはあっても、ほぼ確実に錦織が勝てるだろうと思って観始めた。
ところが紆余曲折も浮き沈みもふんだんに盛り込んだ、5時間あまりの終わりの見えない劇を観続けることになった。
もしも錦織の敗けで終わっていたら、この5時間をどうしてくれるんだという絶望的落胆を味わうことになっただろう。
鼓動が速くなってるのが胸に手を当てなくても分かり、掌に汗も滲みだして、たちの悪い心理劇を観た気がする。
二人のプレーヤーの一挙手一投足と表情に現れる心理にシンクロして緊張と弛緩の5時間だった。
錦織がアンフォーストエラー(イージーミス)をやって悔しがると・・
『うなだれるな、それを相手に見せるからダメなんだー』と思う。
相手のペースに乗せられたストローク戦をして、錦織の返しが甘くなったところで強く打たれてポイントを取られると・・
『相手に合わせてどうするんだー、相手を走らせておいて、戻る動きを見透かした逆のコースへ鋭く返す得意のショットをなぜ打たない!?』と思う。
コーナーをついた強いショットを相手がかろうじて返した時に、錦織は気の無い突っ立ったような動きでイージーな返しをして危うくポイントを取り損ねそうになることが時々あって危うい・・・
『小さくステップして慎重に確実に決めなくてどうする!! 遊ぶんじゃない!』と思う。
セットを落としそうな雰囲気になったら・・
『もう次のセットに賭けるという切り替えをして、思い切った捨て鉢勝負ショットで行こうぜ、無理に粘って体力失うんじゃない!』と思う。
サービスゲームで40ー0とリードしていて、そこでファーストサーブを入れられなかった時でさえ必ずセカンドサーブは緩い確実サーブをするのに対して・・
『カウントが絶対有利なんだから、気持ちにゆとりを持って、セカンドサーブでもファーストサーブのつもりの高速サーブをなんで打たないんだー!?』と思う。
チャレンジ権を使い切ることなく、いつもセットが終わってしまうことについて・・
『ラインジャッジマンの誤審が多いのだから、どんどん(チャレンジ)して息を整えたらいいのに、なんで権利行使をあまりやらないんだろう?』と思う。
それにしてもラインジャッジマンの誤審の多い試合だった。
『なんでラインを中心にした20センチくらいの帯状にセンサーを埋め込まないのだろう、簡単なはずなのに』と思う。
最終セットタイブレークのトラブルはお粗末だった。
どうみたってラインジャッジマンは、あのときに声を上げるべきではなかった。
主審の目の前でのことなのに、しかも錦織が打ち返したと同時にジャッジをするなんて・・しかも誤審だった。
カレノブスタにすれば、ジャッジがあったのだから、そこでプレイは中断で、やり直しとなるはずだと要求するのは当然。
自分がかろうじてやっと入れたボールだったのが、そこでやり直しになるなら超ラッキーなわけで、審判のせいにしたくなるのは理解できる。
主審が錦織のポイントとしたのは、あれなら6分4分くらいで正解だっただろうと思われる。
でもじつははああいうのを錦織なら失敗しかねなかったのだけれど、錦織は自分の目の前であり、ラインにかかっていたのを確認して相手が取れないところにちゃんと打ち込んだ。
試合終了後、カレノブスタは主審と最後の握手をしないだろうとすぐに思ったけれど、その通りどころかかなり荒れていた。
最後の最後に後味が悪いことになったけれど、錦織は本当によくやった。
次はジョコビッチ戦だから、もう必死の応援ハラハラムードの観戦はしないでおこう。
ランキング9位で、全豪オープン第8シードなのだから、ベスト8で十分じゃないか。
ジョコビッチには勝とうなどと思わずに、のびのび無心に戦ってください。
そうすれば勝機もあるかも・・密かに期待しちゃってる。