エッセイ  - 麗しの磐梯 -

「心豊かな日々」をテーマに、エッセイやスケッチを楽しみ、こころ穏やかに生活したい。

さみどり光る 山間の棚田

2010-05-30 | 自然観察
              ハラビロトンボ 未成熟♂


 数日前の新聞「福島民報」のエッセイに、一つの短歌が添えられていた。

 空を鳥を抱きこみたる田の水に
    時間の苗のさみどり光る ”  
晶子

 与謝野晶子の歌であれば、心して味わったが、「時間の」とは何だろうか。何か哲学的な意味合いがあるのだろうかなどと考えた。
でも、『時間』は「とき」で、ただ今の素晴らしい情景を詠んだものと思うことにした。

 しばらく続いた雨も上がり、ときどきぼんやりした影を作る程の明るい曇り空になった。
我が家から2、3キロ、近くの幹線道路をさけて、山際の道を入ると、そこには、まさに晶子の詠った「さみどりに光る苗」が静かに揺れる田があった。
 山間に段々に連なる小さな田には、すべてを抱きこんでくれるように緑の木々、薄日の射し始めた空、木に巻きついて垂れ下がるフジの花が映っていた。
 田に注ぎ、田から流れ出る水音だけが響いていた。ここにも至福の空間があった。



 今年は休田するのだろうか、水の入らない田の草の原が広がっていた。そこは一面オオジシバリの黄色で、ところどころにムラサキサギゴケと思われる紫色の群落とハルジョオンの白がきれいな世界だった。ひと株だけ、ピンクの濃い珍しいハルジョオンが目立って咲いていた。







 べニシジミが乱舞し、ウスバシロチョウがたおやかに舞っていた。そして、踏み入った足元から、突然飛び立ったハラビロトンボを今年の初めて見ることができた。まだ成熟していない黒っぽい♂で、あの青いひたい部分が実にさわやかな初夏を告げてくれた。





 また、今年初めてエゾイトトンボの♂、♀を見ることができた。いよいよトンボの季節の到来だ。
(2010.5.29)


エゾイトトンボ♂

エゾイトトンボ♀